【特集2】日本のグリーン水素製造の評価と実力 規格づくりの議論で世界をリード

2025年3月3日

【インタビュー】河野龍興(東京大学先端科学技術研究センター教授)

―日本のグリーン水素製造技術の評価は。

河野 前職時代に、2万kWのメガソーラーから水素を製造する福島県浪江町の「FH2R」プロジェクト」の立ち上げに関わっていた。大型化に適しコスト的に優位なアルカリ式の水電解装置を採用し、世界最大規模の電解装置(1万kW)を組み込んで、2020年に世界に先駆けて実証を始めたことは大きな意義があった。その後、FH2Rの水素は東京2020オリンピック・パラリンピックでも活用された。現在、地元のJR浪江駅前では再開発の計画が立ち上がっており、この水素利用を視野にプロジェクトを進めている。

―技術を培う人材の育成も重要だ。

河野 私の研究室には大手電力、重電メーカーや大手商社から多くの若い優秀な人材が学びに来ていて、私自身が35年以上開発してきた水素技術(製造・貯蔵・利用)を教えている。水電解装置は定格運転が基本で、出力が不安定な再生可能エネルギーで水素を製造することは技術的に大変難しい。浪江をはじめとする「水素製造による調整力」は電力系統の調整力としても期待が持てるため、特に電力会社にはこの技術領域を主導してもらいたい。将来的には1万kW級よりさらなる大型化が必要だと考えている。

―日本の技術は優位性を保てるのか。

河野 水電解装置による水素の製造を利用して電力系統を調整するには規格(グリッドコード)がない。現在、ISOで規格づくりの議論を進めており、私も日本の代表として参画している。日本の事例を反映させて世界をリードしたい。