コージェネや再生可能エネルギーに代表される分散型ビジネスが活況だ。最近ではVPPなど需要側を巻き込んだ新しい商機や系統安定化の取り組みが進む。
エネルギー業界で「分散型」といえばガスによる分散型電源、つまりコージェネのことを総称することが一般的だった。しかし、エネルギーシステム改革の流れは、分散型をもう少し広い意味でとらえ始めている。
「分散型リソース」というワードを聞いたことがあるだろうか。コージェネ、再エネ発電、蓄電池といった発電側設備だけでなく、需要側設備も分散型として取り入れて、電力系統の需給調整に組み込もうという概念だ。
例えば夏場によく発生する電力需要のピークは、従来は石油火力発電などで賄ってきた。しかし、石油火力の稼働率は総じて低く、脱炭素の流れとも相まって、大手電力は閉鎖していく傾向にある。では、ピーク時にはどうやって需給バランスを調整するのか。そこで、需要側の分散型リソースの出番だ。発電側の出力や発電量が減る分、需要側の使用量などを減らして調整する。そうした需要分を分散型リソースと呼び、VPP(仮想発電所)ビジネスとして、調整力機能を果たそうと多様な事業モデルが生まれつつある。
火力発電のような大規模電源が担ってきた調整力が少しずつ失われつつある中、こうした新しい事業モデルは、再エネ大量導入時代へ向かうための新たな調整力として欠かせないものになる。
大阪ガスでは、家庭用エネファームを分散型リソースとして活用し始めている。エネファーム1台当たりの規模は1kWにも満たないが、何百台、何千台と束ねることで、大きな威力を発揮する。LPガス販売大手のニチガスではEVや蓄電池の普及を見据えて、電気とガスのハイブリッド給湯設備を組み合わせた家庭用エネルギーマネジメントのシステムを構築中だ。「EVを含めた家庭用の設備を駆使しながら電力ピーク需要などに対応したい」(ニチガス)と、LPガス事業者としては異例の領域に踏み出そうとしている。
清掃工場で合成メタン 次世代燃料生み出す
新しい分散型事例も生まれている。日立造船では、神奈川県小田原市の清掃工場で、CO2と水素を人工的に合成させてメタンをつくるメタネーションに取り組んできた。経済性に多くの課題を抱えるが、「CO2排出拠点」が次世代型燃料を生み出す拠点に生まれ変われば、分散型の概念が一気に変わる。こうした地域ごとの分散型に対する取り組みは脱炭素や地域産業の活性化の点で、環境省も後押しする。本特集では、そんな新しい分散型の事例を取り上げる。