【特集2】知見を基に公平・中立を維持 鋭い視点を合わせた誌面作成を

木藤俊一/石油連盟会長

このたび、「エネルギーフォーラム」が、創刊70周年を迎えられましたことを心よりお喜び申し上げます。

貴誌の前身である「電力新報」が、創刊25周年を機にエネルギーフォーラムに改題されてから半世紀近くが経ちます。この間、人々の生活に欠かせない石油を含めたエネルギー全般について的確に報じられたことに敬意を表します。

平時・有事問わず安定供給 変わらぬ液体燃料の重要性

奇しくも、私ども石油連盟も、貴誌とともに歩み続け、今年で創立70周年を迎えます。この間、平時・有事を問わず、一貫して消費者の皆様にとって必要とされるエネルギーの安定供給に努めてまいりました。可搬性・貯蔵性に優れ、エネルギー密度が高い液体燃料である石油の重要性・有用性は、今後も変わることはありません。石油業界は、エネルギー供給の担い手として、液体燃料が将来の長きにわたって消費者の皆様に選ばれるよう、既存の製油所を、カーボンニュートラル燃料を製造する拠点に転換していくことなどを目指しています。貴誌には、このような石油業界の取り組みについて繰り返し報道いただき、改めて深謝しております。

今年は、2月に「GX2040ビジョン」「地球温暖化対策計画」「第7次エネルギー基本計画」といったエネルギーの重要政策が閣議決定されました。

エネルギー基本計画にも記載されている通り、無資源国である日本にとっては「S+3E」がエネルギー政策の基本です。第7次計画の策定にあたり、エネルギーのベストミックスなど様々な議論が尽くされました。石油は一次エネルギー供給の3割以上を占めていますが、2040年度においても一定のシェアを維持する見通しが示されました。一方、50年カーボンニュートラル社会の実現に向けては、再生可能エネルギーの多様化、国際的な資源獲得競争、革新的な技術開発など、エネルギー分野に影響を及ぼすさまざまな不確定要素があり、事業者側の投資予見性を高めることや、国民理解を醸成することが必要です。国民にとっての関心も一段と高まることが想定される中、これらを調査・分析し、的確に情報発信する報道機関としての「エネルギーフォーラム」の役割は、より一層強まるものと拝察いたします。

引き続き、エネルギー全般の専門誌の先駆者として、70年にわたり築き上げられた知見を基に、メディアとして公平・中立な報道と、貴誌ならではの鋭い視点がベストミックスされた誌面作成を大いに期待しています。

今後の貴誌のますますのご発展を祈念申し上げますとともに、エネルギー産業のさらなる発展に向けて今後ともご尽力賜りますようお願い申し上げます。

【特集2】戦後から有益な情報提供に尽力 エネ・環境・経済の発展に貢献

田中惠次/日本LPガス協会会長

このたびは、「エネルギーフォーラム」が70周年を迎えられましたこと、心よりお慶び申し上げます。貴誌は戦後から今日まで70年間の長きにわたり、われわれエネルギー業界関係者に有益な情報提供に尽力されてきました。

創刊時の「電力新報」に始まり、今日では、電力、ガス、石油、石炭、火力、新エネ、デジタル、環境、政策までのエネルギー全般の幅広い分野まで網羅されております。わが国の経済成長とエネルギーの変革とともに進化されており、わが国のエネルギー・環境・経済全般の発展に大きく貢献されましたことに改めて敬意を表します。

過去70年を振り返りますと、高度経済成長期に入り急増する電力需要の中、エネルギーの主役は石炭から石油に交代し、二度の石油危機を経て脱石油に向かいました。その後、原子力、LPガスが普及。次に天然ガスが加わり、地球温暖化と電力自由化を迎えました。2011年には東日本大震災による電力の供給危機、再生可能エネルギーという選択肢が登場。エネルギーの転換期に入り社会構造が変化する中、エネルギー業界は技術の進歩、供給体制の変革などにより、わが国の産業、社会、国民生活向上に大きく寄与してきました。

3つの新政策が閣議決定 化石燃料のCN化進行へ

折しも環境問題でいえば、昨年は世界の平均気温15・1℃と観測史上最も高い1年となり、産業革命前の水準より1・6℃も高くなりました。初めて1・5℃を超過し、温暖化対策の一段の強化を求める声が国際的にも広がりつつあります。

そのような中、わが国は、今年2月に「GX2040ビジョン」と「第7次エネルギー基本計画」「地球温暖化対策計画」を閣議決定しました。

言い換えると、エネルギーの安定供給を行いながら、エネルギーと産業構造を脱炭素型に転換させ、経済成長を目指すものであります。当協会のLPガスを含めた化石燃料(石油・都市ガス・LPガス)のカーボンニュートラル(CN)化に向けた対応を一段のスピード感を持って進めることが喫緊の課題ともなっております。

エネルギー問題は、わが国内外の政治・経済・外交にも直接関係するものでもあります。こうした中、貴誌の長年の経験と蓄積に裏打ちされたさまざまなエネルギー全般に関する広範な報道は、今後さらにエネルギー業界の発展に欠くべからざるものになると思います。貴社におかれましては、今後とも国内外はもとより、エネルギー政策までも含めた誌面の充実を図られ、エネルギー業界全般の発展にますますご尽力いただきますようお願いして、日本LPガス協会の祝辞とさせていただきます。

【特集2】既存技術の利点を集めた製造装置 再エネの出力変動への追従が可能

【三國機械工業】

三國機械工業(東京都墨田区)は、工場やプラントで使用するための産業機械を販売するエンジニアリング商社。現在、同社が水素製造向けに扱うのがAEM(アニオン交換膜)方式水電解装置だ。独Enapter社が2017年に販売を開始したもので、日本では新技術として紹介されているが、すでに世界52カ国、約5000台の導入実績がある。三田逸郎プラント営業部長はその特徴について「AEM水電解方式はアルカリ水電解方式とPEM(固体高分子膜)水電解方式の利点を兼ね備えている。アルカリ水電解方式の弱点である生成水素の純度や再生可能エネルギーの負荷変動に対応する応答性、負荷・間欠運転の制限を克服しながら、PEM水電解方式のようにプラチナやイリジウムといった希少金属触媒を使用しない」と説明する。

希少金属なしで低コスト化 弱点克服する技術を採用

同装置は、99・999%の高純度の水素を3・5MPaGの高圧で生成する。電極反応はアルカリ水電解方式と同じだが、アルカリ水電解では水酸化カリウム(KOH)を約30%含有した水溶液を使うため腐食性が高い。これに対し、AEM水電解方式は約1%の薄い水溶液を利用するため、そうした心配が少ない。また、PEM水電解方式と同じ膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)構造で、高速応答性や広い運転範囲、間欠運転を許容するなどの特性を持ち、再生エネの出力変動にも追従する。

PEM水電解方式の製造プロセスはProton(H)をキャリアとするため酸性環境となり、電極触媒やガス拡散層に希少金属を使う必要がある。これに対してAEM水電解方式は水酸化イオン(OH)をキャリアとした弱アルカリ環境のため貴金属を使う必要がなく、低コストで装置ができる。また陰極から排出される水量が少なく、水の回収プロセスが不要なためシステムを簡素化できる。

Enapter社の装置はAEMスタックを必要な製造規模に合わせて拡張する仕組みを採用している。このため、スタック単体の能力は小さく、2・4kWの電力で毎時0・5N㎥の水素が生成できる。同社ではスタックを一つ載せたシングルコアと複数搭載したマルチコアの二つのモジュールを用意しており、使用環境の規模に応じた装置を構成することが可能。MWクラスで毎時210N㎥以上の大規模水素生成も実現できる。

さらに、一つのスタックに不具合が生じても稼働を継続できるのも大きな強みだ。導入する工場の製造ラインを止める必要がなく、修理・交換は必要な箇所のみ実施して対応可能だ。

カーボンニュートラル実現に向けては、水素製造においても再エネの利用は避けて通れない。しかもコスト低減が求められる。そうした状況に既存技術の良いとこ取りのAEM水電解方式は、今後国内で大きな関心を集めていきそうだ。

MWクラス装置「AEM Nexus 1000」

【特集2】ゼロカーボン電力を万博会場に供給 エネルギーの未来像を映し出す

【関西電力】

関西電力は、4月13日~10月13日に大阪市夢洲地区で開催する「EXPO2025大阪・関西万博」で、「Beyond 2025」と題し、七つのエネルギープロジェクトに取り組む。

開催に先立ち関電は昨年9月、同博覧会向けにゼロカーボンの電力を供給する契約を2025年日本国際博覧会協会と締結した。契約電力は、4万5000kWで25年4月から26年3月末まで、パビリオンを含む会場全体に供給する。ゼロカーボンの電源としては、再生可能エネルギーや原子力発電に加えて、水素の活用も予定する。

万博・IRプロジェクトチームの前林ダニエル慎吾マネジャーは「1970年の大阪万博では、日本初の商用PWRである美浜発電所(福井県)で発電した原子力の電力を会場まで届けた。今回の万博ではゼロカーボンの各種発電方式を組み合わせて供給し、未来社会の『あたりまえ』を万博会場で先行して実現したい」と説明する。

水素関連プロジェクトの一つが水素発電実証。経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) が進めるグリーンイノベーション基金の助成を受けて、万博の期間中、水素混焼発電実証を行う。姫路第二発電所(兵庫県姫路市)のガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)発電1基(約49万kW)を使い、最大30 vol%まで水素混焼を行い、信頼性・安全性などを確認する。この電気を万博会場まで送り届ける計画だ。水素事業戦略室技術開発グループの松下吉文チーフマネージャーは「水素は燃焼速度が速く、従来のGTCCをそのまま使うことはできない。GTCCの燃焼器などを改良し対応した。このほか、周辺設備も拡充した。この設備をゼロカーボン水素で稼働する」と話す。

さらに水素燃料電池船では、岩谷産業が船舶建造・運航と船舶用水素ステーションの設置を、関電はエネルギーマネジメントと船舶用充電設備の建設を担当する。水素燃料電池船「まほろば」は燃料電池と蓄電池で稼働するため、水素と電気の二つの制御が必要だ。そこで関電は、南港発電所(大阪市住之江区)に水素充填と電気充電の設備を設置。水素事業戦略室事業開発グループの辻慎太郎マネジャーは「水素はフル充填に2時間、電気はフル充電に7~8時間かかる。水素充填は相当のエネルギーが必要で、充電と同時に行うと系統に負荷がかかる。エネルギーの平準化、コスト、時間に制約がある中で、どう供給するかなどを実証する」と語る。

原子力由来も燃料の一部 プロジェクトの拠点へ供給

これらのプロジェクトでは、福井県おおい町と県、ふくい水素エネルギー協議会が供給する原子力由来の水素も燃料の一部として使用。水素製造では、関電の原子力発電所から電力供給を受けて、おおい町の水電解装置を用いる。製造した水素は、姫路第二発電所と南港発電所に陸路で運搬するという。関電は「未来社会の実験場」となる万博を舞台に、エネルギーの未来像を映し出したい考えだ。

水素混焼発電を行う姫路第二火力発電所

【特集2】クリーンエネ市場の開拓へ先手 広がりを見せる日本勢の挑戦

日本企業は水素のサプライチェーンに必要な要素技術を磨き上げてきた。政府は各社で培った強みを生かし、需要創出とコスト低減を促す構えだ。

次世代クリーンエネルギーの水素を巡る官民の挑戦の舞台が広がっている。技術開発や実証試験にとどまらず、商用化を見据えた取り組みも熱を帯び始めた。コスト低減と需要開拓を両輪に水素社会への道筋を切り開くことができるか。日本勢の力量が試されようとしている。

トライアル取引が始動 供給者は山梨県の企業に

製造時にCO2を排出しない再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」の利用拡大に向けた新たな取り組みが、2月に動き出した。東京都が日本取引所グループ傘下の東京商品取引所と共同で行う「グリーン水素トライアル取引」で、1月24日に都内で記念セレモニーを開催。出席した小池百合子知事は「水素取引所を立ち上げることで、売買が活発に行われ、身近で活用される社会を実現していきたい」と力を込めた。

セレモニーに参加した小池知事ら関係者 提供:東京都

取引には、グリーン水素の供給者が入札で販売し、利用者が入札で購入する方式を採用。最も低い販売価格と最も高い購入価格でそれぞれ落札され、その差分を都が支援する。今回の入札では、山梨県が50%出資するやまなしハイドロジェンカンパニー(甲府市)が供給者として落札。同県産のグリーン水素を供給することになった。

既に同県北杜市では、サントリーホールディングスや東レ、東京電力ホールディングスなどが国内最大規模となるグリーン水素製造施設の建設を進めており、今年中の稼働を予定。要となる設備は、再エネ由来の電力で水を電気分解し水素を作る「やまなしモデルP2Gシステム」。そこで取り出した水素をパイプライン経由で、サントリーの天然水工場などへ供給する。

各地で水素のサプライチェーン構築に向けた計画が動き出す中、政府は2023年に「水素基本戦略」を6年ぶりに改定。水素の導入量を40年までに年間1200万tに拡大する目標を掲げた。24年10月には、水素の社会実装を促す「水素社会推進法」が施行。2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画でも同法に触れ、既存燃料との価格差に着目した支援を講じて「将来の産業競争力につながる黎明期のユースケース作りをしたたかに進める」と明示した。

ただ、水素の普及に向けたコストの壁は高く、海外の一部地域で建設・人件費の上昇や物価の高騰を理由に計画を見直す動きが表面化している状況だ。

それでもEU(欧州連合)や英独などの25カ国・地域以上が野心的な水素戦略を表明し、その旗を降ろしていない。多様な資源で作れる水素の用途は幅広く、市場が広がる可能性を秘めているからだ。国際エネルギー機関(IEA)によると、50年のカーボンニュートラル実現に向けて世界の水素需要量は22年の約5倍に拡大する見通し。単位量当たりの水素を作る際に排出されるCO2の量「炭素集約度」を数値化し環境負荷を評価する動きも、市場拡大の追い風になりそうだ。

主な水素製造手法の例 出典:資源エネルギー庁

それだけに日本は、得意技術を生かさない手はない。水素基本戦略では、30年に日本企業が生産する水電解装置を国内外で15GW程度導入する目標を掲げるとともに、特許出願で先行する燃料電池などを生かす方針も盛り込んだ。資源エネルギー庁水素・アンモニア課の担当者は「日本企業は『水素を貯める・運ぶ・使う』という各段階で、世界に先駆けて要素技術を磨いてきた。そこで蓄積してきた知見や経験を生かせば、世界の脱炭素化に貢献しながら日本の産業競争力の強化にもつなげられる」と強調する。

本特集では、水素社会づくりに挑む官民の最新動向を追う。

【特集2】地の利を生かして大転換を図る 発電・熱・原料を先駆的に利用

【川崎市】

水素に取り組む先駆的な自治体の一つが川崎市だ。国の「水素基本戦略」より2年早く、2015年に「川崎水素戦略」を策定。菅元首相が「カーボンニュートラル宣言」を表明した20年には、ブルネイからメチルシクロヘキサンに変換した水素を運び、発電所使用で実証するなど確かな実績を築いてきた。

こうした経験を踏まえ22年、新たに「川崎市カーボンニュートラルコンビナート構想」を策定した。その背景にあるのが川崎ならではの産業構造だ。川崎臨海部には石油・化学コンビナートをはじめ、約2700もの事業所が立地する。製造品出荷額は政令指定都市の中でトップクラス。一方、臨海部立地企業の上位30社が市全体のCO2排出量の7割以上を占めている。臨海部国際戦略本部成長戦略推進部カーボンニュートラル推進担当の江﨑哲弘担当課長は「CO2を限りなくゼロにしつつ、高い産業競争力の維持・強化も図っていく」と話す。

同構想のポイントは、「地の利」を最大限に生かすこと。柱の一つが、コンビナートに近接する川崎港で海外からCO2フリー水素などを受け入れ、カーボンニュートラルエネルギーの供給拠点を作ることだ。川崎臨海部には800万kW以上の火力発電所が集積する。燃料を水素に置き換えるとともに、CO2フリーの電力供給で一般消費者など、脱炭素化も進めていく。

二つ目が、同じく臨海部に立地する素材・化学プラントや廃プラスチック工場などを活用した炭素循環型コンビナートの整備構築だ。将来、水素などへのエネルギー転換が進むと石油に代わる炭素資源が必要になる。そこで、首都圏からの廃プラスチック回収やCO2などの再資源化を進めることで、炭素資源から素材・製品などを製造する体制を構築する。三つ目の柱としては、臨海部の企業間連携・ネットワーク化により、水素をはじめとするカーボンニュートラルなエネルギーの地域最適化を進める方針だ。

企業や自治体との連携強化 協議会設立で93社が加盟

臨海部全体での取り組みにはさまざまな連携が必要だ。こうした中、川崎市は「川崎カーボンニュートラルコンビナート形成推進協議会」を設立。臨海部の企業をはじめ、技術面や資金面で連携が見込まれる企業を含む93社が加盟している。また、京浜工業地帯を構成する東京都や横浜市とは連携協定を結んだ。

商用化を見据えたプロジェクトも動く。川崎市が低未利用地の活用を進める中、市内の扇島におけるJFE東日本製鉄所の高炉休止後の跡地に、日本水素エネルギーが行う「液化水素サプライチェーン商用化実証」の液化水素国内基地の整備が決まった。30年度の商用運転に向けた実証事業の拠点とする。

市が民間企業と連携して実施した調査によると、川崎臨海部の水素需要は年間約42万t、近隣の羽田空港および周辺エリアの水素需要は年間約4~6・6万tと潜在需要がある。水素エネルギーの「商用化」という次なる目標に向け、川崎市の取り組みが注目される。

「市の特色を出したい」と江﨑さん

【特集2】CNニーズに応える事業を拡大 供給基盤構築と需要創出を推進

【東邦ガス】

製造業が盛んな東海地域では、カーボンニュートラル(CN)への対応を検討する企業が増えている。同地域のエネルギー事業をけん引する東邦ガスの元には、そうした企業からの相談が数多く寄せられる。同社はこうした要望に応えるべく、都市ガスへの燃料転換、CCUS(CO2回収・利用・貯蔵)やe―メタンなどの技術開発を着々と進めてきた。需要家の低・脱炭素化に資する取り組みを継続しつつ、近年、同社が注力しているのが水素供給基盤の構築だ。

水素製造プラントを新設 幅広い水素需要に対応

同社は、その一環として知多緑浜工場(愛知県知多市)の「水素供給拠点化」を進めている。同工場敷地内に水素製造プラントを建設し、昨年6月に運転を開始した。これまでも、オンサイト型水素ステーションなどを通じて水素の製造・供給を行っており、同プラントの建設を足掛かりに、早期に水素サプライヤーとしての地位を確立する狙いだ。

知多緑浜工場に新設された水素プラント

カーボンニュートラル開発部カーボンニュートラル開発第二グループの青山高幸課長は「天然ガスと水蒸気を反応させて水素を製造する。製造能力は1日当たり1・7tで、これは燃料電池車(FCⅤ)約340台分に相当。FCⅤのほか、熱分野での代替エネルギーや工業用原料としての活用が可能で、幅広い水素需要に対応できる」と同プラントの意義を語った。

水素製造時に発生するCO2は、顧客のニーズに応じて当面はクレジットの活用で相殺しつつ、将来的にはCO2の回収・利用も検討する。具体的な例の一つとして大成建設、アイシンと共同で、コンクリートにCO2を固定化するプロジェクトを推進中だ。

さらに、水素供給をはじめとしたあらゆる産業ガスの供給に強みを持つ大陽日酸とアライアンスを構築。これにより、年に1度行われるプラントの点検期間の際にも滞りなく供給できるほか、有事の際にはバックアップ供給を受けることが可能となった。

同工場の敷地内には拡充用のスペースを確保しており、水素製造工程におけるCO2の回収・利用や、需要拡大に応じて製造能力の増強を検討する。

【特集2】製造装置の信頼性が顧客に好評 e‐メタン利用も武器に市場開拓

【大阪ガス】

水素は次世代エネルギーとして期待が高まる一方で、産業用ガスとして利用する歴史が長い。同用途向けに大阪ガスが2003年度に発表したのがコンパクト水素製造装置「HYSERVE」シリーズだ。エンジニアリング部の池田耕一郎課長は「プラント型の大型設備と比較して価格とスペース設置を従来の半分にしながら、運用面ではボタン一つで起動・停止が可能、遠隔監視による無人運転もできる製品に仕上げた」と話す。

低コストと省スペースの実現に寄与したのが独自の触媒などの技術だ。水素製造では、まず、13A都市ガスやLPガスから付臭剤を除去。これには「超高次脱硫剤」を使用する。ガスの改質工程では、「水蒸気改質触媒」でH2を主成分とする合成ガスに改質する。さらに、この合成ガス中のCOをH2に転化。同工程に「CO変成触媒」を用いる。最後に、水素PSA工程で不純ガスを除去し高純度のH2だけを送出するなど、各工程で貢献する。

23年9月には、同シリーズで最大能力を持つ「HYSERVE―300X」を発売。従来機を改良し、さらなるコストダウンと設置面積縮小を図った。水素製造では300N㎥時の能力を維持しながら、原料から水素を生み出す改質効率は最高レベルを実現。99・999%の高純度で水素を製造する。装置の縮小化では、製造フローを見直し、構成機器の削減を図りコストを低減しつつ、従来機より設置面積を約40%縮小した。

ものづくりの現場で採用 ライセンスで海外にも展開

国内で同装置を導入するのは、ものづくり分野の顧客がメインだ。累計で約40台販売実績がある。産業用ガス向けに販売やエンジニアリングを手掛ける大阪ガスリキッド水素ソリューション部の杉田雅紀部長は「当社の安心手間いらずのサービスが、製品の製造工程で水素供給を止められない、24時間連続で使用する企業など、高い信頼性を求めるお客さまに支持されている。水素ステーション(ST)用途でも導入実績がある」と語る。

海外にも展開中だ。韓国ヒュンダイモーターグループに同装置の韓国国内での製造と日本以外への販売に関するライセンス供与を行っており、韓国はもとよりアジア圏もターゲットにしている。Daigasガスアンドパワーソリューション海外営業チームの徳田氏忠士マネジャーは「韓国で燃料電池車(FCV)は約2万台販売され、FCバスも定期運行する。水素ST向けの同装置の稼働率は日本国内の装置と比較にならないレベルで高い」と話す。また、アジアでは台湾などがカーボンニュートラルに向けて水素利用の検討を進めており、同装置の導入も候補に上がっている。

同装置は、都市ガスやプロパンのほか、バイオガス由来のメタンガスやe―メタンを使用することもできる。クリーンな水素製造が可能だ。今後、活躍の場をさらに広げていく。

コスト低減と設置面積縮小を図った

【特集2】日本のグリーン水素製造の評価と実力 規格づくりの議論で世界をリード

【インタビュー】河野龍興(東京大学先端科学技術研究センター教授)

―日本のグリーン水素製造技術の評価は。

河野 前職時代に、2万kWのメガソーラーから水素を製造する福島県浪江町の「FH2R」プロジェクト」の立ち上げに関わっていた。大型化に適しコスト的に優位なアルカリ式の水電解装置を採用し、世界最大規模の電解装置(1万kW)を組み込んで、2020年に世界に先駆けて実証を始めたことは大きな意義があった。その後、FH2Rの水素は東京2020オリンピック・パラリンピックでも活用された。現在、地元のJR浪江駅前では再開発の計画が立ち上がっており、この水素利用を視野にプロジェクトを進めている。

―技術を培う人材の育成も重要だ。

河野 私の研究室には大手電力、重電メーカーや大手商社から多くの若い優秀な人材が学びに来ていて、私自身が35年以上開発してきた水素技術(製造・貯蔵・利用)を教えている。水電解装置は定格運転が基本で、出力が不安定な再生可能エネルギーで水素を製造することは技術的に大変難しい。浪江をはじめとする「水素製造による調整力」は電力系統の調整力としても期待が持てるため、特に電力会社にはこの技術領域を主導してもらいたい。将来的には1万kW級よりさらなる大型化が必要だと考えている。

―日本の技術は優位性を保てるのか。

河野 水電解装置による水素の製造を利用して電力系統を調整するには規格(グリッドコード)がない。現在、ISOで規格づくりの議論を進めており、私も日本の代表として参画している。日本の事例を反映させて世界をリードしたい。

【特集2】燃焼と蒸気供給技術を融合 専焼・混焼の両モードを実現

【川重冷熱工業】

業界に先駆けて1970年代から水素を燃料とするボイラーを開発・製造してきた川重冷熱工業は、その知見を生かし、水素焚の貫流ボイラーの開発に注力している。

2021年には、小型貫流ボイラー「WILLHEAT(ウィルヒート)」に水素専燃バーナーを搭載した製品を開発・発売した。同製品は98%の定格ボイラー効率を誇るウィルヒートに、NOx(窒素酸化物)排出量を世界最小に抑えた「ドライ式低NOx水素専焼バーナ」を組み込んだものだ。

従来は、蒸気噴霧や排ガスの再循環などで水素燃焼によるNOx排出量を抑えていたが、これには熱損失を伴う。独自の水素と空気の混合方式を用いるドライ式バーナーで、熱効率を維持したまま低NOxを実現した。

23年12月には、大型貫流ボイラー「Ifrit(イフリート)」に水素専燃・混焼機能を追加。培ってきた各種ボイラーでの水素燃焼技術とイフリートの蒸気供給プロセスを組み合わせた。水素と天然ガスの混焼モードと2つの燃料を個々に燃焼する専燃モードを切り替えることで、「水素専焼」・「水素混焼」・「天然ガス専焼」の3つのモードを実現した。混焼時は水素を熱量比で0~30%まで調整可能。同社は今後も水素関連の技術開発を進め、顧客の需要に応えていく。

ウィルヒート(左)とイフリート

【特集2】CNニーズに応える事業を拡大 供給基盤構築と需要創出を推進

【東邦ガス】

製造業が盛んな東海地域では、カーボンニュートラル(CN)への対応を検討する企業が増えている。同地域のエネルギー事業をけん引する東邦ガスの元には、そうした企業からの相談が数多く寄せられる。同社はこうした要望に応えるべく、都市ガスへの燃料転換、CCUS(CO2回収・利用・貯蔵)やe―メタンなどの技術開発を着々と進めてきた。需要家の低・脱炭素化に資する取り組みを継続しつつ、近年、同社が注力しているのが水素供給基盤の構築だ。

水素製造プラントを新設 幅広い水素需要に対応

同社は、その一環として知多緑浜工場(愛知県知多市)の「水素供給拠点化」を進めている。同工場敷地内に水素製造プラントを建設し、昨年6月に運転を開始した。これまでも、オンサイト型水素ステーションなどを通じて水素の製造・供給を行っており、同プラントの建設を足掛かりに、早期に水素サプライヤーとしての地位を確立する狙いだ。

カーボンニュートラル開発部カーボンニュートラル開発第二グループの青山高幸課長は「天然ガスと水蒸気を反応させて水素を製造する。製造能力は1日当たり1・7tで、これは燃料電池車(FCⅤ)約340台分に相当。FCⅤのほか、熱分野での代替エネルギーや工業用原料としての活用が可能で、幅広い水素需要に対応できる」と同プラントの意義を語った。

水素製造時に発生するCO2は、顧客のニーズに応じて当面はクレジットの活用で相殺しつつ、将来的にはCO2の回収・利用も検討する。具体的な例の一つとして大成建設、アイシンと共同で、コンクリートにCO2を固定化するプロジェクトを推進中だ。

さらに、水素供給をはじめとしたあらゆる産業ガスの供給に強みを持つ大陽日酸とアライアンスを構築。これにより、年に1度行われるプラントの点検期間の際にも滞りなく供給できるほか、有事の際にはバックアップ供給を受けることが可能となった。

同工場の敷地内には拡充用のスペースを確保しており、水素製造工程におけるCO2の回収・利用や、需要拡大に応じて製造能力の増強を検討する。

熱分野導入に向けた新開発 8割超の高効率燃焼を達成

熱分野への水素導入拡大に向けた技術開発にも力を入れている。中でも注目されているのが、昨年末に水素燃焼化に成功した工業炉バーナー、「水素対応リジェネラジアントチューブバーナ」(リジェネバーナ)だ。蓄熱体を備えた二つのバーナーを一対として利用し、交互に切り替えて燃焼することで、チューブ内で燃焼させたガスの排熱を回収・利用するリジェネ方式を採用。これにより、排気損失ベースで80%以上という高い熱効率での水素燃焼を実現した。また、一部の部品を交換するだけで都市ガス燃焼と水素燃焼を切り替えることができる仕様となっており、導入コストの低減にも成功した。

ただ、水素燃焼には都市ガスとの性質の差に起因する難点がある。都市ガスと比べて火炎温度が高く、また燃焼速度が速いため、NOX(窒素酸化物)排出量の増加やバーナー部品の劣化を引き起こす。

こうした課題を解決すべく、同社が注目したのが「多段燃焼」だ。多段燃焼は、燃焼用空気を分割して炉内に送り込むことで段階的な燃焼を可能にする。リジェネバーナへの多段燃焼の導入では、バーナーのノズルなどの一部部品を変更し、燃焼可能な箇所を増やすことで対応。これにより、火炎温度が低下し、NOX排出量を都市ガス燃焼時と同程度まで低減させた。技術研究所カーボンニュートラルの山本朱音氏は「多段燃焼の導入で、熱効率を維持したまま火炎温度を低下させることが可能となり、課題であったNOX排出量の大幅低減につながった」と説明。「これから耐久性などをテストし、問題がなければ今年末にも商用化する」(山本氏)計画だ。

青山課長は「ガス・電気に加えて水素もエネルギーの軸として位置付けており、お客さまのCNに資する取り組みを推進していく」という。水素の需要創出と供給網構築に着々と歩みを進めていく同社から今後も目が離せない。

【特集2】既存エンジンを応用して開発 500kW級専焼エンジンの実証開始

【三菱重工エンジン&ターボチャージャ】

国内有数の内陸型工業都市として栄えてきた相模原市で、各種エンジンの製品開発に取り組んできたのが三菱重工エンジン&ターボチャージャだ。三菱重工グループとしてCO2排出ゼロを掲げ、現在はディーゼルやガスエンジンを母体とした水素エンジンの製品化に乗り出している。

具体的には、昨年5月に6気筒の500kWクラス水素専燃エンジンの実証設備および供給設備を相模原工場内に設置し、実証試験を開始した。水素は、可燃範囲が広く燃焼性が高いという特性があるため、逆火やノッキングなどの異常燃焼が発生しやすい。一連の実証試験を通じて、これらの特徴を考慮しながらエンジンの燃焼安定性などを検証する。製品化は、2026年度以降になる見込みだ。

需要家の多様なニーズに応えるべく、混焼にも力を入れている。21年8月には、東邦ガスと共同で、コージェネ用の45

0kW級ガスエンジンを用いた試験運転を実施。体積比で35%の混焼に成功した。さらに23年11月には、5.75MW(1MW=1000kW)ガスエンジンの単筒試験機での実証を行い、混焼率50%(体積比)までの安定燃焼を確認した。同社は専燃と混焼のどちらの要望にも応えるべく、これからも製品開発を強化していく構えだ。

500kWクラス水素専燃エンジン

【特集2】国内初の旅客輸送する水素船 大阪中心部と万博会場を結ぶ計画

【岩谷産業】

岩谷産業が国内初の旅客船として造船会社と開発を進めていた水素燃料電池船「まほろば」が1月末、報道陣に公開された。4月の開幕へカウントダウンが始まっている2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の一般向け移動手段の一つとなる。

運用は京阪グループの大阪水上バス社が担う。大阪・中之島からユニバーサルスタジオジャパンを経由して会場のある夢洲までをおよそ1時間で移動する。

同船は21年に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として採択され建造が始まった。水素を燃料とすることから、従来の内燃機関船と違い、走行時にCO2や環境負荷物質を排出しない移動手段となる。また臭いがなく、騒音・振動の少ない優れた快適性を実現する。

「水素を動力源にして商用として人を運ぶ船はこれまで存在しなかった。(万博では)この船を通じてエネルギー利用としての水素の可能性を多くの人に伝えていきたい」。水素本部の佐野雄一・水素バリューチーム部長は力を込める。

燃料電池車の部材を転用 民間の英知を結集し建造

全長33m、幅8mで150人の乗船が可能だ。駆動の主要部分となる燃料電池スタックと水素タンク(70MPa、130㎏)は燃料電池自動車ミライを手掛けるトヨタ自動車製を船用に転用している。日本勢の技術を組み合わせて建造したことにも大きな意義がある。

建造に合わせて同船専用の水素供給ステーションも整備された。岩谷産業は関西電力とも連携し、関電の南港発電所の敷地内を活用して、供給インフラを整えた。元になる水素は、岩谷産業の水素製造工場から運び込む計画だ。水素サプライチェーン全体を鑑みると、現時点では水素製造時にCO2を排出してしまう。そのため、CO2排出ゼロの移動手段とは言い切れない。しかし、ゼロに向けたトランジション期の技術開発として、同船が誕生した意義は大きい。

万博会場への移動を支える「まほろば」

【特集2】東京五輪のレガシーを受け継ぐ 選手村跡地で先駆的なエネ事業

【東京ガス】

東京五輪・パラリンピックのレガシーを受け継ぐエネルギー事業が始まった。東京ガス100%子会社の晴海エコエネルギーは、昨春から選手村跡地の大規模複合街区「HARUMI FLAG」で、導管(PL)による水素供給を開始した。実証事例は、北九州市などであるが、民生向け事業では国内初だ。近隣の水素ステーション(ST)で製造し、低圧用に0・1MPaまで減圧した水素を供給する。

PLの総延長は約1㎞に及び、水素流量は1時間当たり150㎡ほど。4カ所の住居街区と1カ所の商業街区に供給し、屋外にある純水素型燃料電池を稼働させている。住居街区にはパナソニック製の5kWタイプ燃料電池を計24台、商業街区には東芝製の100kWタイプを1台設置。電気は共用部の照明など、熱は足湯向けなどだ。STでは高圧ガス保安法、水素の街区供給にはガス事業法、発電を伴う燃料電池の使用には電気事業法と、三つの法令に対応している。

中高圧対応の導管を敷設 付臭剤でガス漏れを検知

保安面では、二重三重の対策を施した。カスタマー&ビジネスソリューションカンパニーの清田修企画部エネルギー公共グループマネージャーは「未経験の取り組みだったが、都市ガス事業のノウハウを最大限に活用した」と話す。

PLの施工では、従来、0・1MPa未満の低圧供給に用いるPE管ではなく、中圧・高圧供給に対応した鉄管溶接仕様の導管を採用した。外部からの強い力で変形してもひび割れや破損しない耐久性があり、阪神・淡路大震災の強い揺れにも耐え抜いた実績がある。PLを埋め戻す作業では、上部に防護鉄板を敷設した。もし、工事などでショベルカーが触れても傷つかない仕様になっている。また、水素には付臭剤を添加して、微量漏えいでも発見できる。

マンション群のうち分譲の約4000戸にはエネファームが設置され、水素キャリアの活用も見据えた「水素Ready」の体制も構築済みだ。安全やコストを含めて水素の民間利用を広げる上で、今後の街の行く末に関係者は熱い視線を注ぐ。

水素の供給を受ける晴海地区

【特集2】トータルソリューションに注力 高純度水素製造からCO2回収まで

三菱化工機】

都市ガスやLPガスから水素を製造する装置「HyGeia(ハイジェイア)」を製造・販売している三菱化工機。同社が主力とする技術の一つが、水蒸気改質(スチームリフォーミング)法によって高純度(99・999%)の水素をオンサイトで製造することだ。燃料電池自動車向けの水素ステーションをはじめ、化学・鉄鋼産業や工業ガスとして水素を利用するユーザー向けなどに、これまで60年近くにわたって200基程の導入実績を重ねてきている。

同社は現在、CO2回収技術の開発に力を注ぎ始めている。その経緯を水素・エネルギー営業部の山口修水素・エネルギー営業課長はこう説明する。「当社が手掛ける装置は化石資源から水素を製造する技術であるため、CO2を排出してしまう。お客さまの脱炭素ニーズに応えるためにも、CO2回収技術をラインアップしておくことは避けて通れない課題だと認識している」

CO2回収技術に注力 PSAと膜技術で脱炭素

そうした中で二つの技術開発に取り組んでいる。一つ目がPSA(圧力スイング吸着)だ。この技術では圧縮したガスを吸着塔に送り、吸着剤によってガスを吸着させ、圧力変化を繰り返しながら目的となるガスを高純度に精製・回収する。昨年6月に、川崎市の自社工場内に回収設備を設置。水素製造時に発生する排ガスから95%を超える濃度のCO2回収の実証に取り組んでいる。ハイジェイアだけではなく、各種燃焼設備との組み合わせを想定した回収技術の開発に注力している。

二つ目は「膜」だ。CO2分離用分子ゲート膜と組み合わせた水素製造装置の開発を進めている。同社と次世代型膜モジュール技術研究(MGM)組合(京都)が共同で提案した技術で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「二酸化炭素分離膜システム実用化研究開発」の助成事業として取り組む。これまでIGCC(石炭ガス化複合発電)などの高圧ガス源のプラント向けを想定して開発を進めてきたMGM組合の膜技術を、中圧の水素製造システムへと適用できるようにカスタマイズする。三菱化工機は水素製造装置にこの膜を組み込み、高純度の水素を製造すると同時にCO2を回収する。両者は分離回収コスト、低炭素水素の製造コストの経済評価を進めていく予定だ。

23年6月に策定された「カーボンリサイクルロードマップ」では、膜分離法が明記されており、CO2分離・回収技術のコスト低減に向けた技術領域の一つに掲げられている。同社はハイジェイアの「単品メーカー」としてだけではなく、CO2回収までを含めた脱炭素へのトータルソリューションを支える取り組みを加速させていく。

CO2回収装置を組み合わせて実証している