【特集2】バイオ由来CO2でe―メタン製造 使用電力はLNG冷熱活用し発電


【東邦ガス】

50年のCN実現を目指し、都市ガス業界が力を入れるメタネーション。石炭や石油からの燃料転換やエネルギーの高度利用といった足元の取り組みの先にある「ガス自体の脱炭素化」に向けた革新技術の一つだ。

日本ガス協会は、メタネーションで製造したe―メタンを30年にガス販売量の1%、50年に同90%という高い目標を掲げている。

東邦ガスは3月31日、愛知県知多市と連携し、バイオガス由来のCO2を活用したe―メタン製造実証を開始した。製造方法は、すでに技術が確立しているサバティエ方式。水を電気分解して水素をつくり、CO2と反応(サバティエ反応)させてe―メタンを生成する。

実証が行われているのは、知多市南部浄化センターと隣接する知多LNG共同基地だ。浄化センターでは下水汚泥処理でメタンとCO2を主成分とするバイオガスが発生。東邦ガスは17年から、このバイオガスを精製して受け入れ、都市ガスの原料として利用している。

バイオガスの精製過程ではCO2を多く含むガス(オフガス)が発生するが、今回のe―メタン製造実証ではこのオフガスに含まれるCO2を原料として活用する。CO2を地域資源として活用する環境性の高い取り組みといえよう。

e―メタン製造に必要な水素の製造などにおいて電力を消費するが、今回の実証ではLNGの冷熱を利用した冷熱発電による電力を活用することで、実証試験全体での温室効果ガス(GHG)排出量を抑えられているという。

SHK制度への適用目指す 国内初の都市ガス原料に

GHG排出量の管理も徹底している。リアルタイムでのガス製造量などの遠隔監視に加え、排出量や炭素強度(CI)値を見える化するシステムをIHIと構築し、管理している。

また実証で製造したe―メタンの環境価値について、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)のSHK制度(温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度)で、需要家によるe―メタン利用時のCO2排出をゼロと扱うことも目指している。

東邦ガス技術研究所カーボンニュートラルグループの萩野卓朗課長は「環境価値などを適切に評価する取り組みにより、e―メタンの普及に向けて制度面でも貢献できたらいい」と意気込む。

今回の実証で製造したe―メタンは、国内で初めて都市ガス原料として利用される。自動車部品などを手掛けるアイシンとは、e―メタンを原料とする都市ガス供給について合意した。

東邦ガスは将来的なe―メタンの本格導入に向けて、実証で得られた成果や都市ガスとしての利用を通じて、製造設備の大規模化や低コスト化といった技術課題の解決につなげる考えだ。また普及拡大に必要な仕組みづくりにも貢献していくという。

都市ガスの未来を創る取り組みから目が離せない。

知多e―メタン製造実証施設の開所式

【特集2】グループの総合力で低炭素化推進 病院のレジリエンスにも貢献<


【西部ガス】

将来の脱炭素社会を見据え、ガスコージェネレーションシステムを導入し、低炭素化とレジリエンスの両立を実現した先駆的な病院がある。

福岡県大牟田市と隣接する熊本県荒尾市にある「荒尾市立有明医療センター」は、2023年10月、敷地内に新築移転した。竣工から50年以上が経過し、老朽化や耐震補強の必要性などの課題が顕在化したためだ。

新病院は荒尾市唯一の急性期病院で、同市のほか周辺市町村の中核病院として、24時間・365日救急医療に対応しているほか、災害時にも災害拠点病院として継続した診療が可能となっている。

ここでは東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)が、系統電力の停電時も発電可能なヤンマーエネルギーシステム製の定格出力400kWガスエンジンコージェネをエネルギーサービスで導入し、メンテナンス・省エネルギー運用を実施している。

燃料の都市ガスを供給するのは、西部ガスグループ傘下の大牟田ガスだ。同センターは同社の供給区域外に立地しており、導管網と接続されていなかった。

そこで、同じく西部ガスグループの九州ガス圧送が同社大牟田工場から西部ガス熊本までの間に敷設していた総延長52 kmの中圧導管を利用した。その中圧導管から分岐する1700mの導管を大牟田ガスが新たに敷設して、同センターにガス供給している。導管はポリエチレン製で耐震性が高く、停電時にも電気と熱供給が可能だ。

導管敷設で供給エリア拡大 学校給食センターも下支え

新たに敷設した導管沿いには、天然ガスへの燃料転換を提案できる大規模需要家が複数あり、天然ガス普及に力を入れている。大牟田ガスでは、この導管沿いに22年に竣工した荒尾市・長洲町学校給食センターにも既にガス供給を開始している。

大牟田市や隣接する荒尾市は、かつて炭鉱で栄えた地域で、現在でも石炭を燃料に使っている企業もある。

一方、50年ネットゼロの流れを受け、低・脱炭素エネルギーを求める企業も増えている。そういった新規大口需要家に天然ガスを供給するため、この導管以外に総延長千m級の導管を新たに2本敷設したという。

大牟田ガスの猿渡孝徳部長は「大牟田市は人口が全盛期の半分近くまで減少している。そのため、家庭用のお客さま数とガス販売量も減少傾向にある。そこでガス販売量を伸ばすため、供給区域を広げながら、法人のお客さまの獲得に注力している」と語る。

同社の中嶋覚取締役は「今後も西部ガスグループの一員としてその総合力を活用しながら、TGESとも連携・協業し、天然ガスの普及を推進することで、地域の低・脱炭素化に大いに貢献していきたい」と意気込む。

定格出力400kWのガスエンジンコージェネ

【特集2】LPガスインフラを業界でシェア 先端技術を駆使し環境対策を先導


ガス事業を高度に効率化するプラットフォームの拡大を狙うニチガス。サプライチェーン全体のCO2排出量削減に貢献することが狙いだ。

ニチガス

LPガスの充填から配送に至る一連のプロセスを先端技術で効率化する――。そんな仕組みを提供するプラットフォーム事業の拡大を目指しているのが、ガス事業をはじめとした総合エネルギー企業大手の日本瓦斯(ニチガス)だ。カーボンニュートラルの実現という社会要請を踏まえた取り組みで、2030年を目標に業界全体のCO2排出量を20年比で半減することを視野に入れている。

LP業界の関東圏では、約5000社に上る事業者が入り乱れてオペレーションを行う結果、非効率となっている。そこで22年11月から、「LPG託送」と呼ぶ同業他社向けサービスの提供を始めた。LPG託送の拠点となるのが、世界最大規模のLPガスハブ充填基地「夢の絆・川崎」(川崎市川崎区)。約40万の利用者獲得を目標にLPG託送市場の開拓と業界全体のCO2排出量削減に挑む。

基地に実装したのが、デジタルツイン技術。ガスの検針から充填に至る一連の工程で集めた各種データを仮想空間上のAIで分析・処理し、物流業務の効率化と最適化を追求している。客先のガスメーターには、IoT機器「スペース蛍」を設置し、1時間単位できめ細かく自動的にメーターの情報を取得できる。

企業活動に伴うCO2排出量は、自社から直接排出した「スコープ1」、間接的に出る「スコープ2」、サプライチェーンを通じて排出される「スコープ3」に分類される。

エネルギー利用の最適化へ スマートリモコン導入を視野

同社はLPG託送をスコープ1、3のCO2排出量削減につなげるなど、各段階の脱炭素化に注力。さらに顧客ごとに適したCO2排出量削減策も提案する。特に、ガスと電気の両方でお湯を沸かすハイブリッド給湯器は好調で、数量が約2年間で7倍に達した。同給湯器に電気自動車(EV)用充電器や太陽光発電などを組み合わせたセット販売にも力を入れる方針で、蓄電池や各機器を遠隔制御して家庭でのエネルギー利用を最適化するスマートリモコンの導入も計画中だ。吉田恵一・専務執行役員は「50年の『ネットゼロ』実現に向けて、各スコープの取り組みに段階的に力を入れていきたい」と意欲を示した。

全自動でオペレーションする充填プラットフォーム

【特集1】省エネ基準引き上げへ正念場 事業者の段階的な挑戦を政策誘導


【インタビュー】佐々木 雅也/国土交通省住宅局参事官付建築環境推進官

―カーボンニュートラル(CN)の要請に応え、建築物の対策をどのように進めますか。

佐々木 政府は、2050年にCNを実現するとともに、気候変動対策の国際的な枠組み「パリ協定」に基づき30年に温室効果ガス排出量を13年比で46%削減することを目指す中、日本のエネルギー消費量の約3割を占める建築物の省エネ対策が重要となっています。そこで、50 年にストック平均で、建築物の消費エネルギーをゼロに近づけるZEH・ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス/ビル)基準の水準の省エネ性能を確保する目標を掲げました。

―当面の重点施策について教えてください。

佐々木 重要なファーストステップが、25年4月施行の改正建築物省エネ法により、住宅やそれ以外の非住宅に関わらず全ての新築建築物に省エネ基準適合を義務付ける動きです。これを弾みに、30年度以降に新築される住宅・建築物の省エネ性能をZEH・ZEB基準の水準に引き上げることを狙っています。

―ZEH・ZEB基準に向けた手応えはいかがですか。

佐々木 22年度時点で新築する建築物の8割以上が省エネ基準に適合し、ZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能への適合率も急伸しています。とりわけ住宅をZEH基準に高める取り組みは、省エネ改修を促す低利融資制度や拡充した住宅トップランナー制度などの高い省エネ性能に誘導する支援策の効果で、30年度への道筋が見えつつあります。

 一方で、非住宅のZEB化に目を移すと大規模事業者が多く、そうした事業者の省エネ努力が鍵を握っています。ESG(環境・社会・企業統治)投資を促す機運の高まりを背景に各事業者は、省エネ性能に優れたものを出していかないと市場やステークホルダー(利害関係者)から評価されないと意識しています。この分野は自然に省エネ性能が上がっていくでしょう。

―事業者にとって省エネ化のハードルは高いと言えます。

佐々木 確かに、事業者が省エネ性能を高めるためには技術力の向上が必要です。そこで、満たすべき省エネ基準を段階的に引き上げる方式を取り入れました。延べ面積2000㎡以上の大規模非住宅(新築)については、17年度に省エネ基準への適用を義務化した後、24年度に基準をワンランク高め、30年度にZEB水準に引き上げるというスケジュールを立てました。踊り場をつくることで、事業者が対応しやすくした形です。

 中規模非住宅(300㎡以上、2000㎡未満)も比較的順調に推移していくでしょう。ただ、300㎡未満の小規模非住宅や住宅が省エネ性能を高めるハードルは非常に高いと言えます。国内の建物件数が約40万件と多い上、その施工に地域の工務店や設計事務所が多く関わっているからです。この壁をクリアできるかどうかが、建築物全体の省エネ水準を底上げするための重要なポイントです。

 ZEBは、断熱性能が高い壁や窓、電力消費の少ないLED照明などの省エネ機器でも減らせない分を、太陽光などの再生可能エネルギーを利用して賄おうという考えで設計・建設されたビルを指します。ところが建築物が高くなればなるほど延べ床面積が増えて消費エネルギーも増える一方、太陽光パネルを設置するスペースが限られています。中高層ビルのZEB化は簡単ではありませんが、事業者には頑張ってほしいです。

使い方の工夫が課題 全段階のCO2削減も重視

―エネルギーマネジメントの役割も重視されています。

佐々木 快適性や建築文化を考慮しながら省エネ性能を追求する必要があります。そこで重要になってくるのが、建築物の使い方を工夫する取り組みです。運用時のエネルギー使用をマネジメントするシステムで効果的に消費量を削減する展開の可能性に注目し、検討を始めたところです。デマンドレスポンス(DR)を進める経産省の省エネ施策と直接連動していませんが、基本的なスタンスは同じです。省エネ市場の開拓が進めば、事業者が高い省エネ基準に挑戦しやすくなるでしょう。

―GX(グリーン・トランスフォーメーション)の観点から注目する政策課題は何ですか 

佐々木 建材の製造や施工から建築物の解体に至る全段階のCO2排出量を削減する「ライフサイクルカーボン」という概念が重要になっています。このうち使用段階の「エネルギー消費」が建築物省エネ法による規制の対象で、省エネ基準への適合義務化により今後CO2削減が見込まれる一方で、残る部分をどう削減していくかが新たな政策課題となるかもしれません。

ささき・まさや 2004年早稲田大学大学院理工学研究科修了。国土交通省入省。住宅総合整備課課長補佐、総理大臣補佐官付秘書官、ユネスコ派遣などを経て、23年7月から現職。

【特集1】システムとしての全体最適化が鍵 規制対象外の企業にも取り組み促す


【インタビュー】木村拓也/資源エネルギー庁省エネルギー課長

―2022年の省エネ法改正後、事業者の省エネ行動にどのような変化がありましたか。

木村 前回の法律改正は、合理化の対象を非化石エネルギーを含むすべてのエネルギーとすること、非化石エネルギー転換を促すこと、電力需給に合わせ電気の需要を最適化すること―の3本柱で行ったものです。

 22年度は日本全体でエネルギー効率が3・6%改善しました。これは、ロシアによるウクライナ侵略を契機としたエネルギー価格高騰への対応や、法律を含め国内外の要請で脱炭素化を進める一環で、事業者が取り組みを強化したことによるものです。エネルギー安全保障の確保やカーボンニュートラル(CN)の実現に向けて、事業者による省エネは、また一段ギアを上げていくステージになっています。政府は、GX(グリーン・トランスフォーメーション)経済移行債も活用しつつ、省エネ補助金、中小企業向けの省エネ診断などを拡充し支援しています。

―事業者の省エネの余地はどれだけあるのでしょうか。

木村 消費機器の高効率化のためイノベーティブな技術開発を進めることに加えて、データを活用した工程の管理や、事業所、企業間の連携など、システムとしての全体最適を追求していくことが、大胆な省エネの鍵になると考えています。

 また、中小企業では省エネや脱炭素の取り組みを始めた事業者は、まだ数割にとどまっているのが実情です。そこで今年7月、地域で中小企業などの省エネを支援する枠組みとして「省エネ地域パートナーシップ」を立ち上げ、9月に開いた第1回会合には174の金融機関、43の省エネ支援機関などが参加しました。省エネ補助金や省エネ診断などの認知度を高めつつ、省エネ法の規制対象ではない企業も含めて、取り組みを促すことが狙いです。

―非化石転換やデマンドレスポンス(DR)の取り組みについてはいかがですか。

木村 非化石エネルギー転換については、法改正後、中長期の計画の作成や実際の非化石燃料の使用量などについての報告を求めています。CNに向けて事業者の意識は相当変わってきましたが、具体的な非化石転換を将来に向けてどう進めるのか、官民一緒に考えていかなければなりません。

 電気需要の最適化では、今年は事業者に対し需要の上げ下げDRを行った回数の報告を求めますが、来年はそれに変化させた「量」も加わることになっています。非化石転換、電気需要の最適化の取り組みは端緒に就いたばかりです。事業者にこれらを促しつつ、次のアクションをどう起こしていくかが課題であると認識しています。

家庭の非化石化を推進 調整力としての活用も

―具体的にどのようなことが考えられますか。

木村 事業者にとって比較的ハードルの低い非化石転換の手段は、太陽光発電を導入することです。現在、審議会において、工場の屋根に着目し、従来型と比較して軽量なペロブスカイトなど次世代太陽電池の導入も見据え、どれだけ太陽電池を設置する余地があるのか、改めて確認してもらう仕組みを検討しているところです。  

 また、産業分野のみならず家庭の省エネ・非化石転換も大きな課題です。これについては、家庭のエネルギー消費の約3割を占める給湯器について、機器メーカーに対し、給湯器が使う化石エネルギーの量について、自ら目標を立てて達成していただくスキームについて議論しています。

 家庭の給湯器は、沸き上げる時間を電力需給に合わせて変えるDRの潜在性も高く、外部からの指令に応答できるような機能の装備を機器メーカーに行っていただくことで、再エネ出力制御の抑制などに有効に活用できると期待しています。

―省エネというと経済の縮小をイメージしがちです。

木村 日本のエネルギー消費量は省エネ努力により減少を続けてきましたが、22年度は省エネよりも生産活動の影響が大きく出ました。生産活動の縮小によりエネルギー消費の総量を減らすことは、縮小均衡にしかならず、健全な姿ではありません。生産量が増加する場合にエネルギー需要が伸びることはあり、経済活動を活発化させつつ、エネルギー消費効率を高めることによって、需要の伸びを抑制する―ということが省エネ法の趣旨であり、追求すべき経済成長の在り方です。

きむら・たくや 2000年東京大学法学部卒業、通商産業省(現経済産業省)入省。欧州連合日本政府代表部赴任などの後、近年は人事管理政策、通商紛争対応、G7貿易大臣会合などを担当。23年7月から現職。

【特集1】DR対応のパイオニア 九州から他工場へ展開


【東京製鐵】

産業分野において、いち早くDRの取り組みを始めたのが電炉大手の東京製鐵だ。18年に九州工場(福岡県北九州市)で「上げDR」を導入。それ以来、今年春までに累計42日にわたり九州電力からの要請に応じてDRを実施し、計2124万kW時の電力需要を創出した。

九電管内では、17年ごろから再エネの出力抑制が全国に先駆けて社会問題化。電力消費の大きい電気炉のDR資源としてのポテンシャルの高さに目を付けた九電から、再エネ余剰時の昼間に、割安な夜間と同等の料金で電気を供給する条件を持ち掛けられたことが、操業時間を一部調整して上げDRを実施するきっかけとなった。

鉄スクラップを電気炉で溶解する「製鋼」と生成した半製品を都市ガスで加熱して加工する

「圧延」の製造プロセスのうち、DRの対象となるのは製鋼工程だ。トータルの操業時間は事前に決まっているため、上げDRに対応するには、従来の操業パターンから生産時間を調整し、要請に備える必要がある。そこで、昼間の電気料金が適用される午前8時から午後10時までの時間帯を調整の対象とした。

従来の平日の操業パターンでは、午後9時から翌日午前9時ごろまで製鋼を行っていたが、DR実装後は午後10時から午前8時までに短縮。減らした操業時間分はDR要請時にまとめて実施するパターンへと変更した。昼間料金での操業を余剰電力による安価な電力に切り替えることで、電力コストをトータルで削減できている。

エネルギー効率面でも良い効果が出ている。圧延工程では、製鋼後の半製品を約1200℃まで加熱する必要があるため、製鋼から圧延に移る時間が短いほど加熱に必要な都市ガスの使用量が抑えられる。DR対応の操業体制では、製鋼と圧延の同時操業時間(シンクロ率)や製鋼後に熱いまま圧延する割合(ホット率)が約10%向上。都市ガス使用量の減少により、エネルギー効率が改善された。

DR対応分の電力については、今年度から非化石証書を活用して実質CO2フリーとし、同社の長期環境ビジョン「Tokyo Steel EcoVision 2050」で掲げる、CO2排出量の大幅削減に向けた一助にもなっている。

九州工場での成果を受け、他工場への展開も進めている。今年春からは、岡山工場(岡山県倉敷市)で上げDRを実装した。中上正博岡山工場長は「当社で発生するCO2の75%が電力を起因とする。再エネの最大限の活用に協力することで、社会全体のCO2削減に貢献していきたい」と、脱炭素社会を推進する観点からも上げDRは有効である点を強調する。

同社は、現在も取り組んでいる下げDRの実施にも意欲を見せる。DR対応の先駆者の取り組みは、他社が追随すべき好事例となりそうだ。

今年春までに2千万kW時超の需要を創出 提供:東京製鐡

【特集1/座談会】実質ゼロに向けた新たな制度スタート 産業や暮らしの在り方は?


省エネ関連2法の改正が来年で一区切りとなる中、いよいよ各分野で対策の加速段階に入る。政府はさまざまな分野で規制強化を図るが、さらにどんな策が有効なのか、専門家が語り合った。

【出席者】

田辺新一/早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科教授

西村 陽/大阪大学大学院工学研究科招聘教授

前 真之/東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授

左から田辺氏、西村氏、前氏

―改正省エネ法が施行されて1年が経過しました。改めてどう評価していますか。

田辺 省エネ法はオイルショック後に化石エネルギーの使用合理化を目的に制定されましたが、今回の改正で中身が大きく変わりました。主な変更点は、まず非化石を含む全てのエネルギーが使用合理化の対象になりました。二点目が、非化石転換に関する措置。三点目が、負荷平準化のため夜間電気を使用すべき状況でなくなりつつある中で、需要の最適化に向けた措置です。特に使用合理化の対象拡大のインパクトが大きく、これまで電気の一次エネルギー換算係数が化石燃料基準で1kW時当たり9・76MJでしたが、全電源平均に改め、23年度は8・64となりました。

西村 元来の省エネ法は化石エネの消費量に視点が当たり過ぎ、再生可能エネルギー拡大のディスインセンティブになっていましたが、法改正が企業の意識をプラスに変えました。同時期にエネルギー価格の高騰を経験した需要家が非化石転換の必要性を意識。屋根乗せ太陽光が急拡大し、産業分野ではPPA(電力購入契約)に熱心に取り組み始め、新たなオプションを活用する余地ができました。

 確かに、産業界に対しては良い影響があったかと思います。ただ、エネルギーミックスにある石油換算(㎘)の省エネの値は、これこそ節油の象徴なので、CO2換算など新しい示し方を考えるべきでしょう。

【特集1まとめ】省エネの理想と現実 非化石化の高い壁にどう挑むか


2023年4月に改正省エネ法が施行され1年半が経過した。

50年のカーボンニュートラル社会実現に向け、

合理化対象に従来の化石燃料や化石燃料由来の熱・電気のみならず、

太陽光や風力などの再エネ由来の電気、水素・アンモニアなどを取り込んだものだ。

石油危機以降の「合理化=消費量削減」一辺倒ではなく、

引き続き化石燃料の使用を抑制する一方で、

非化石エネルギー転換とともに、それに合わせた需要の最適化を促す狙いがある。

足元では法改正の実効性を高めるべく、新たな規制や制度の検討も進む。

資源エネルギー庁や学識者の取材を通じて、最新の政策議論をレポートするとともに、産業界の省エネ活動の今を探った。

【アウトライン】 省エネ法体系見直しのインパクト 需要家のエネ消費行動を変革できるか

【インタビュー】太陽光を生かし切る経済・社会実現へ 将来は「DR法」への衣替えを

【レポート】地下に眠るリソース 蓄熱槽で再エネフル活用

【レポート】DR対応のパイオニア 九州から他工場へ展開

【座談会】実質ゼロに向けた新たな制度スタート 産業や暮らしの在り方は?

【インタビュー】システムとしての全体最適化が鍵 規制対象外の企業にも取り組み促す

【インタビュー】省エネ基準引き上げへ正念場 事業者の段階的な挑戦を政策誘導

【特集1】太陽光を生かし切る経済・社会実現へ 将来は「DR法」への衣替えを


太陽光などの再生可能エネルギーの活用策として期待される「上げDR」。市村健氏は、需要家が積極的に取り組むための環境整備の必要性を訴える。

【インタビュー】市村 健/エナジープールジャパン代表取締役社長兼CEO

―省エネ法の改正をどう評価していますか。

市村 法改正により電力の需要最適化が明記され、需要家はデマンドレスポンス(DR)の取り組みに関する定期報告を求められるようになりました。アグリゲーター事業者にとっては需要家にアピールしやすくなり、DRをさらに加速させる大きな転機になったと言えます。

 とはいえ、需要の上げ下げに関わる簡易なものから一次調整力の供出といった高度なものまで、DRへの取り組み方はさまざまです。一層の推進には、より高度なDRを高く評価する仕組みが求められます。「エネルギー消費原単位年1%以上」の削減分に、太陽光発電を生かす需要最適化分を評価する現行の仕組みは有効ですが、今夏のDR発動頻発で需要家の気持ちが離れつつあることを懸念しています。一層評価する仕組みがあれば、前向きになるのではないでしょうか。

需要家の負担軽減へ 可視化で需要をシフト

―今後、事業者に求められる役割とは。

市村 2026年度に導入予定の排出量取引制度、その後の炭素税の本格導入とうまく組み合わせ、DRを訴求していくことです。需要を最適化するということは、太陽光発電量に合わせて需要を創出するということ。この上げDRによって再エネの出力抑制を低減できれば、電力のCO2排出原単位を下げ排出量削減に寄与し、炭素税が導入されたとしても需要家負担は軽減できます。

 需要家にとって大切なことは、1円でも安い電気の供給を受けることです。ですが、排出量取引や炭素税が制度として導入されるからには、制度対応しつつ料金を下げるための対策を講じるしかありません。そのために第一段階として重要なのが、電気をどれだけ、どのように利用しているのかを可視化し、いつでもどこでも把握できることであり、その結果、CO2排出原単位が低い昼間の時間帯に電力需要を誘導していくことです。

また、現在のDRは、需給ひっ迫時に送配電事業者の要請に基づいて実施されるのが主流です。「エリアで発動回数にばらつきがあり不公平だ」という需要家の声もあります。民民契約に基づく経済DRにシフトさせていくことも、アグリゲーターの役割だと考えています。

―政策への要望はありますか。

市村 省エネはオイルショックを契機に生まれた言葉であり、ある意味で我慢を連想します。DRの本質は太陽光を生かした需要最適化であり、そのために「発電」「需要」「市場価格」の正確な予測を提供するデータ解析領域という新たな雇用も生みます。将来はぜひ、「DR法」へと衣替えし、経済成長を加速させる法体系としていただきたいですね。

いちむら・たけし  1987年慶応大学商学部卒、東京電力入社。米ジョージタウン大学院MBA修了。原子燃料部、総務部マネージャーなどを歴任。15年6月から現職。

【特集1】地下に眠るリソース 蓄熱槽で再エネフル活用


【東京電力エナジーパートナー】

「再生可能エネルギーが拡大していく中で、いかに電力需要をシフトさせていくかは電力会社が考えなければならない重要なテーマ。手段が限られる中で、蓄熱槽は非常に有効なツールになると期待している」

こう語るのは、東京電力エナジーパートナー(東電EP)カスタマーテクノロジーイノベーション部DRオペレーショングループの小林淳マネージャーだ。 同社は9月、読売新聞とオフサイトPPA(電力購入契約)を締結。グループ会社の東京発電が群馬・茨城県に太陽光発電所(発電容量計1300kW)を建設し、2025年3月以降順次、読売新聞本社ビルと東京北工場(東京都北区)への電力供給を開始する。

その再エネをフル活用するために構築するのが、本社ビルの地下に備えられた2000tの蓄熱槽をデマンドレスポンス(DR)に活用するスキームだ。空調利用が少ない春や秋の日中など再エネが余剰となる時間帯に熱を貯めることで、年間230万kW時を見込む太陽光の自家消費率100%を目指す。これが達成できれば、両施設で消費する電力の13%を太陽光で賄い、938tものCO2削減につながるという。

同スキームは、アズビルが開発した蓄熱制御アプリケーションと、エナジープールジャパンが提供する発電と需要の予測技術やDR運用ノウハウを組み合わせ、なるべく簡易に蓄熱と放熱の最適な運用を可能にすることが大きな特徴となっている。

読売新聞は、14年に現本社ビルが竣工して以来、10年間で30%の省エネを達成した。今回のスキームの導入により、改正省エネ法が志向する「省エネ+非化石転換+需要最適化」を具現化。さらに、30年に13年比CO2排出量46%削減、50年ネット・ゼロを目指す上での足掛かりとしたい考えだ。

小林マネージャーは、省エネ法の定期報告でDRの対応回数の報告が義務付けられたことに強い手ごたえを感じているという。改正前までは、DRの報酬目的、あるいは需給ひっ迫警報の発令時など緊急時であればDRに協力しても良いというスタンスがほとんどだったが、最近ではより積極的なDRへの参加を希望する事業者が増えてきたからだ。より大きな需要をシフトし需給の最適化を図るべく、今後もDRリソースの掘り起こしに注力していく。

PPAと蓄熱槽を活用したDRのスキームを構築する

【特集1】省エネ法体系見直しのインパクト 需要家のエネ消費行動を変革できるか


カーボンニュートラル社会の実現に向け、省エネ法の体系が大きく見直された。それを機に、さまざまな規制、制度に関する検討が始まっている。最新動向をレポートする。

文|門倉千賀子

2050年カーボンニュートラル(CN)社会の実現には、エネルギー供給サイドの脱炭素化のみならず、省エネの深掘りや非化石エネルギー転換といった需要サイドの取り組みが不可欠だとの認識が、国内外で高まっている。

昨年12月にアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では、30年までに「年間のエネルギー効率改善率を世界平均で2倍にする」ことで合意。今年6月に伊・プーリアで開かれたG7(主要7カ国)の首脳声明では、省エネを「エネルギー転換における第一の燃料(first fuel)であり、クリーンエネルギー移行に不可欠な要素」と位置付けた。

国内に目を向けると、昨年4月に改正省エネ法が施行。石油危機を受け、1979年に化石燃料の消費抑制を目的として制定された同法は、「合理化の対象拡大」「非化石エネへの転換」「電気需要の最適化=デマンドレスポンス(DR)の促進」を三本柱に、電化を強力に推進する法体系に様変わりした。

図1 需要側のCNに向けた取り組みの方向性

【特集1まとめ】原子力「主力化」のリアル DX・GX時代を担う基幹エネへ


脱炭素化、エネルギー安全保障の強化、自給率の向上、安定供給の確保……。

あらゆる観点から世界中で脚光を浴びている原子力発電。

わが国でも本格的なデジタル社会の到来を目前に、電力需要の急増が話題だ。

現行のエネルギー基本計画では依存度を「可能な限り低減」としているが、

岸田文雄政権下では「最大限活用」へと大きくかじを切った。

「原子力主力電源化」が徐々に現実味を帯びてきた格好だ。

再稼働の加速や新増設の実現に向けて乗り越えるべき課題をあぶり出し、

国益に資する原子力政策の在り方を探る─。

【アウトライン】各国が主力電源化の利点を再認識 世界で復権する原子力の現在地

【寄稿】原子力「最大限活用」へのヒント 国民理解と規制の抜本改革を

【インタビュー】第6次の愚を繰り返さず実質議論へ 原子力活用の国家意思明記を

【座談会】エネ基で重要性の明記が不可欠 原子力主力化は国益の源

【特集2】アンモニア燃料船の安全を評価 日本主導の国際ルール策定に貢献


【日本海事協会】

2026年11月、国産エンジンを搭載し、アンモニアを燃料とする「アンモニア燃料アンモニア輸送船」が完成する。この世界初の取り組みは、海洋分野における脱炭素化実現に向けた大きな一歩になると期待されている。「日本の技術で海と未来を変える」を合言葉にこのプロジェクトに参画しているのは、日本郵船、ジャパンエンジンコーポレーション、IHI原動機、日本シップヤード、日本海事協会の5社のコンソーシアムだ。日本の船級協会として一世紀以上にわたり船舶の安全性を第三者として証明してきた日本海事協会は、このアンモニア燃料アンモニア輸送船の安全性評価を担当している。

プロジェクトが担う役割は四つある。

第一が、国際海運のネットゼロ・エミッション達成に向けた取り組みをリードすること。燃焼してもCO2を排出しないアンモニアを使用したアンモニア輸送船の開発・建造を通じ、アンモニアを燃料とする船舶の実用化を推進していく。

第二がアンモニアバリューチェーン(価値連鎖)の構築だ。アンモニアの用途は、従来の化石燃料から火力発電所の混焼などへと移行し、需要が急増すると想定。アンモニアを効率的に幅広く供給できるバリューチェーン構築を促していく。

第三に、日本海事産業の強化だ。海洋国の日本にとって海事産業の繁栄は、経済安全保障上重要だ。ネットゼロ・エミッション実現に向けた燃料転換を好機とし、日本を代表する海事産業企業の技術力を集結し、高い環境性能と安全性を備えた船舶を他国に先駆けて供給することを目指している。

安全の定義作りに尽力 日本の海事産業を後押し

第四に、船舶燃料としてのアンモニアに関する国際ルール化だ。現状、IMO(国際海事機関)は、アンモニアを船の燃料としては認めていない。国際ガイドラインも未整備だ。日本海事協会が国土交通省と連携し、コンソーシアムを通じてアンモニア燃料船舶の開発に関与することで得られた知見をIMOに提供することで、アンモニア燃料船の議論をけん引する構えだ。

技術部の酒井竜平氏は「何を基準に安全であるとするのか、『安全のコンセプト』を定めていくことが非常に難しい作業だった」と語る。例えば、アンモニアを通す導管は漏洩防止のために何重に覆うのが適切なのかという課題一つを取ってみても、考慮すべきことは多くあった。

日本海事協会は、プロジェクトを通じて得られた専門的知識を国交省海事局に提供してきた。その貢献が実を結び、今年12月、アンモニア燃料船に関する初めての国際ガイドラインが発表される予定だ。四方を海で囲まれ、資源や食糧のほとんどを輸入に頼る日本にとって、日本が策定までリードしてきたガイドラインは、海事産業がさらなる発展を目指す際に大きなアドバンテージとなるだろう。

アンモニア燃料によるアンモニア輸送船

【特集2】エネルギーと化学品のシナジー追求 脱炭素化の移行期を強力に後押し


【三井物産】

三井物産は、水素・アンモニア戦略の中で、燃焼時にCO2を排出しない「クリーンアンモニア」を脱炭素社会の実現に役立つ次世代燃料の有望な選択肢の一つと位置付け、国内外で調達先の開拓やサプライチェーン(供給網)づくりに力を入れている。同社は、経済成長が著しいアジア市場などを舞台に約50年にわたりアンモニアの取り扱い実績を積み上げてきた。その間に蓄積した経験や知見を生かしてアンモニアの利用拡大を後押ししたい考えだ。

日本政府は「グリーン成長戦略」の中で、2050年に「世界全体で1億t規模を日本がコントロールできる供給網を構築する」という目標も掲げた。

三井物産はこうした目標の達成を後押ししようと、クリーンアンモニアの製造から輸送・利用・販売にいたる一連のプロセスに参画している。ベーシックマテリアルズ本部メタノール・アンモニア事業部クリーンアンモニア事業開発室長の高谷達也氏は「これまでアンモニアを扱ってきた化学品セグメントと、エネルギーセグメントが連携してシナジー(相乗効果)を発揮し、脱炭素社会への移行期に貢献したい」と意欲を示した。

世界的な視野で市場開拓 協力的な関係で仲間づくり

米国では、窒素系肥料最大手CF Industries Holdings(米イリノイ州)との間で、窒素と化石燃料由来のブルー水素を合成した「ブルーアンモニア」の事業化に向けたFS(実現可能性調査)を進めることで合意し、22年7月に共同開発契約を締結。24年後半のFID(最終投資決断)を目標に準備を進めている。メキシコ湾で年間120万t規模の生産を目指す。

5月には、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油会社(ADNOC)グループや韓国のGSエナジーと連携し、UAEでアンモニア製造プラントの建設を開始。27年に生産を始めるとともに、追加設備を導入して製造過程で排出されるCO2を回収・貯留し、30年までにクリーンアンモニアの製造を開始する予定だ。

三井物産は、国内各地で計画するアンモニア供給事業にも協力している。例えば、三井化学やIHIと手を組み、大阪堺・泉北工業地域にアンモニア供給拠点を設けるとともに、関西・瀬戸内エリアを含めた広域の需要地に供給網を形成。3社はこうした取り組みの実現に向け、経済産業省の「非化石エネルギー等導入促進対策費補助金(水素等供給基盤整備事業)」に応募し、5月に採択された。

「燃料の生産国と需要国が事業上のリスクをシェアし、協力的な関係で仲間づくりを進めていかなければ、安定成長する新エネルギー市場が育たない」とエネルギーソリューション本部水素ソリューション事業部水素マーケット開発室長の天野功士氏。豪州では、1万kW規模のグリーン水素製造設備の建設を進めている。総合商社の強みを生かし、各国・地域の需要や制度の動向を見極めながら、クリーンアンモニアに加えて水素市場も段階的に攻略する方針だ。

アンモニア製造プラントのイメージ

【特集2】米国での低炭素事業を主導 化石資源で磨いた手腕を発揮


【INPEX】

米国テキサス州・ヒューストン港で、低炭素アンモニア事業の本格展開に向け動き出しているのがINPEXだ。

エア・リキード(AL)、LSBインダストリーズ、VMHの計4社でコンソーシアムを組成。天然ガスを原料に水素を製造し、2027年までに年間110万tのアンモニアを商業生産する計画だ。ALの空気分離装置やCO2回収技術を組み合わせながら効率的に水素やアンモニア転換を図り、CO2を地中に埋める。

さらに、VMHが運用している既存のアンモニアターミナルを活用し、LSBの製造ノウハウと販売網を生かす。4社は、すでに事業化調査を終えており、概念設計も間もなく完了する。

同社水素・CCUS事業開発本部事業推進ユニットの神谷剛人ジェネラルマネージャーは、「水素とアンモニアの事業会社をそれぞれ設立する予定で、いずれにも当社が主導的な役割を担う。海外における低炭素事業で日本企業が製造から販売まで主導するユニークな取り組みになる。販売先は、アジアを中心としてエネルギー用途を想定しており、欧州も視野に入れている」と説明する。

国内で初めての一貫実証 ベンチャーの新技術を駆使

同社は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)やエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の協力を得ながら、米国の「ミニチュア版」ともいえる取り組みを国内でも実証事業として行っている。

新潟県柏崎市の自社ガス田を生かして、天然ガスから水素をつくる。その際に出るCO2をEGR(排ガス再循環)としてガス田に注入し、CCUSを行いながら天然ガス生産を促進する。その天然ガスから年間700tの水素を製造し、うち100tをアンモニアに変換する。水素は水素エンジンを通して発電する計画で、規模は小さいが、生産から利用までの「一貫実証」は日本で初めての取り組みとなるという。

この工程で注目すべきことがある。それは新しい技術を使ってアンモニアを生産することだ。ベンチャー企業、つばめBHB社が生み出した新触媒を用いることで、低温低圧での生産が可能になる。「従来のハーバー・ボッシュ法とは異なる手法で、小規模でも効率的な生産が可能になる。新しい製造手法を用いることで国内の技術革新にもつなげていきたい」(同)

25年から生産を始める計画で、実証後はその成果を活用し新潟県内で既存のインフラを活用したブルー水素製造プラントを建設し、30年までに商業化を目指している。

これまで中東やオーストラリアを中心に、石油やLNGの生産・販売をコア事業としてきた同社にとって、「アンモニア」は未知の領域だ。エネルギー利用を目指すなら安定生産と安定供給が至上命題。これまで化石資源で培ってきた知見を生かしながら、アンモニアの安定的なハンドリングに向けて、同社の腕が試される。

柏崎市では国内初の実証が行われる