岸田文雄首相が2021年10月8日の国会所信表明で打ち出した「クリーンエネルギー(CE戦略)」の議論がいよいよ始まった。経済産業省は12月16日、クリーンエネルギー戦略検討合同会合(座長=白石隆・熊本県立大学理事長)の初会合を開いた。
「クリーンエネルギーを中心とした社会システム全体での大きな構造転換に向け、現実的かつ段階的な移行・転換の道筋が求められている。昨年末のグリーン成長戦略、今年秋のエネルギー基本計画を踏まえ、供給サイドに加え、需要サイドでのエネルギー転換を意識した議論をお願いしたい」
保坂伸・資源エネルギー庁長官の冒頭あいさつが物語るように、議論のテーマは多岐にわたる。事務局が提示した検討用資料も計115頁に上る膨大な量だ。経産省の意気込みが伝わってくるが、具体的には一体何を議論するのか。

①エネルギーを起点とした産業のGX=再生可能エネルギー、水素、アンモニア、原子力、蓄電池などの分野ごとに、投資を後押しするためのビジネス環境整備の方策、②GX時代の需要サイドのエネルギー構造転換=製造プロセスで化石燃料・原料を用いる産業部門や民生、運輸部門について、海外事例なども踏まえ、具体的なエネルギー転換の処方箋、③GX時代に必要となる社会システム、インフラ導入=化石から非化石へのエネルギー転換などに必要となる新たな社会システム、インフラの導入への対応策―。
配布資料からは、これといったイメージが浮かんでこない。実は合同会合が目指す方向性については、岸田首相が12月6日の臨時国会の所信表明で分かりやすい言葉で表現している。それが、「目標実現には社会のあらゆる分野を電化させることが必要」。つまりCE戦略のポイントは「オール電化社会の実現」にあるのだ。
抜け落ちた「原子力」 注釈にこっそりと……
そう考えると、大量の資料も筋道立てたものに見えてくる。残念なのは、電化社会を支える供給力確保の抜本対策、すなわち「原子力をどうするのか」という論点が抜け落ちていることだ。
事務局が秋口に作成した当初の「アジェンダ案」には、安定供給確保の処方箋として「原子力は既存設備の徹底活用の方策(長期運転、再稼働の徹底推進)」が盛り込まれていた。しかし政府関係者によれば、衆院選を経て夏の参院選も控える中「原子力を前面に打ち出すのは時期尚早。CE戦略は需要サイドを中心に議論する」方向に。その後の事前資料では「脱炭素化に伴うコスト増への対応」の注釈として、「この議論の中で原子力を使わざるを得ないことを議論か」と書くにとどまった。
「こそこそやるから逆に怪しまれる。CE戦略では原子力の必要性を明示し、国民的議論を巻き起こしてほしいのだが…」。大手エネルギー会社の幹部は、ため息交じりにこう話す。あらゆる分野の電化に伴って、停電リスクが増大したら元も子もない。今こそ、政府としてのメッセージを堂々と国民に発信することが求められる。



