ホルムズ海峡封鎖に伴う石油危機が続く中、高市首相は経済界などの声も聞かず平時の演出に躍起になっている。
「節約」の呼びかけが政権内でタブー視されていることで、かえって国民は政府の対応に不信感を募らせている。
高市早苗首相の発言は盛り過ぎている―。
イラン情勢の長期化は世界的な原油供給に深刻な影響を及ぼしており、専門家の中にはかつての中東戦争以上の石油危機になるとの見方も出ているほどだ。こうした情勢下でも原油の中東依存度が9割を超える日本政府に焦りの色は見えてこない。高市首相は5月11日の参院決算委員会で「原油も石油関連製品も日本全体として必要となる量は確保できている」と強調した。 だが石油・石化業界関係者は、高市首相の楽観論とは裏腹に一様に浮かない表情を浮かべる。

ある元売り関係者は「政府がガソリン補助金を出し続けることで消費が促進され、結果として備蓄が枯渇する可能性がある。(中東以外の)代替調達でカバーできると言うが、原油の質にばらつきがあり中東のように縦横無尽に活用できる原油ではないこともある。そういう現実を飛び越えて供給は万全であるかのような印象を与えることには疑問を感じる」と話す。
その備蓄についても、公表されている量と実際に使える量には違いがあるという。「タンクの底部には水や沈殿物が溜まっていて、実質的に石油精製で使用可能な原油の量は、タンク容量全体の8~9割程度だろう」(元売り関係者)。経済産業省では、5月中旬現在で約208日分の備蓄があるとしているが、額面通り受け取れないのが実態というわけだ。
「目詰まり」の実情 需要側の認識と乖離
現場の最前線の感じ方は高市氏の認識とは異なり、焦燥感に駆られているとも受け取れる。 特にプラスチックや合成ゴム、塗料などの原料になるナフサの不足は目に見えて深刻化。カルビーは5月中旬、「ポテトチップス」などの主力製品の包装を白黒にすると発表した。カラー包装用塗料の原料不足に対応せざるを得なかったという。カルビー以外にも日清製粉ウェルナやカゴメもナフサ不足による対応を余儀なくされた。ほかにも特に医療分野で製品が不足し、万全な医療体制が組めなくなっている事態に陥っている。
ところが、高市氏は4月24日の衆院厚生労働委員会でナフサの供給問題に関し「調達のメドが立ちつつある」との認識を示した。実際の状況とはかなり異なる見解だ。この国会での発言に整合性を取りたかったのか、政府はカルビーに異例ともいえるヒアリングを実施した。ある政府関係者は「ヒアリングという名の圧力と言える。カルビーはかなり詰められたようだ。でもいくら政府が民間に圧をかけても、ないものはないのだから仕方ないだろう」と述懐する。
政府は、民間側が流通の過程で目詰まりを起こしているのが不足の原因と指摘する。大手化学メーカー関係者は「混乱状態で十分な供給がこの先も見通せない中で在庫を確保しよう、できるだけ使わないようにしようとするのは当然の商行為だ。それを目詰まりというのか」と、民間の対応を問題視する政府の姿勢に不信感を抱く。そうした現実を知ってか知らずか、高市氏は「まもなくそんなに心配していただかなくてもいい情報もお伝えできる」と楽観的な見解ばかりを披露している。
しかし報道各社の世論調査を見れば、国民は原油不足に不安を覚え「節約」や「省エネ」を啓発すべきだと要求している。
経団連や連合など有力団体も、同様のスタンスだ。要は、高市政権と需要側の認識に大きな乖離がみられるのだ。こうした状況が生じる理由を探ると、高市氏の政治姿勢に起因していることが分かる。










