国際政治とエネルギー問題
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、ロシア産ガスの供給構造が不安定化し、需給危機から価格が急上昇した。これを機にEU各国は、ロシア産依存を減らすため洋上風力へ大きな期待をかけることになった。同年5月には、デンマークのイニシアチブにより港町エスビアウで第1回北海サミットが開催され、ベルギー・オーステッドでの第2回(23年4月)を経て今年1月26日に、10カ国の首脳・大臣のほかEU委員会、NATO(北大西洋条約機構)などの関係者が参加する第3回がドイツ・ハンブルクで開催された。
第3回の決議は「政府首脳のハンブルク声明」「エネルギー大臣のハンブルク声明」「環北海諸国、洋上風力産業、基幹系統運用者間での北海領域への洋上風力共同投資パッケージ」である。ホスト国のライヒェ経済大臣は、2国間での「相互連系される北海洋上風力グリッドの共同プロジェクト開発の共同声明」「北海再エネ・インフラ協力の共同声明」「北海とバルト海での洋上風力共同プロジェクトを含むエネルギーの戦略的なパートナーシップの共同声明」に署名した。
主要なテーマは洋上風力への投資案件の最適化、電力系統の国境を越えた計画と資金調達、重要インフラへの保護であった。環北海諸国は1億kWまでの風車をネットワーク化することに合意。なかでもデンマーク、スウェーデンの排他的な経済水域で建設される洋上風力が発電する電力を他国の系統へ連系できるとみられている。ただ実現するには、各国で相違する規制システムと基幹系統運用者の売り上げモデルが課題となる。さらに50年には、北海での設備容量を現在の3300万kWから3億kWへと拡大し、洋上風力を環北海諸国間でネットワーク化する計画だ。
英独間の新しい洋上風力連系「Griffin Link」の合意は、EU全体の電力ネットワーク強化と北海の大規模洋上風力拡大に向けた重要な一歩となった。30年代末の稼働を目指し電力供給を最適化するほか、欧州電力ネットワーク化への基礎を構築しようとしている。今後北海では、ハイブリッドで国境を越えた連系が焦点になり、これに基づく政策の枠組みが必要になるからである。
EU諸国のエネルギー大臣は、洋上風力保護への安全保障が変化した地政学的な状況に直面した中で強化されなければならないことを強調した。そのため初めて、NATOが参加したのである。EU委のヨルゲンセン・エネルギー委員、英国のミリバンド・エネルギー大臣、そしてライヒェ氏は、「風力は敗者であり化石燃料の活用」を主張するトランプ米大統領の判断を否定した。
ミリバンド氏は風力発電の拡充が英国のエネルギー安全保障に重要で、ガス輸入からも自立し電力コストを抑制できると強調。デンマークのオーステッド電力は、洋上風力産業は発電コストを40年までに30%削減することを義務付けられていることを指摘した。トランプ氏による風力嫌悪への一つの回答を与えたと見ていいだろう。
(弘山雅夫/エネルギー政策ウォッチャー)












