【空本誠喜 日本維新の会 衆議院議員】新増設の青写真を描け

そらもと・せいき 1964年広島県生まれ。87年早稲田大学理工学部卒業、92年東京大学大学院工学系研究科原子力工学専攻・博士課程修了。93年東芝に入社し、原子力事業部に配属。2009年衆議院議員選挙で初当選(広島4区)、現在3期目。

東芝の原子力事業部を経て衆議院議員となり、福島第一原発事故では影で官邸を支えた。

現在は日本維新の会の経済産業部会長として、政権与党の政策を主導する。

1964年、広島県生まれ。幼稚園児の頃から「将来はロケット博士と総理大臣になってノーベル賞を取る」と親戚のおばあさんに豪語していた。この会話は言霊となり、人生の目標へと変わった。

小学生になると『宇宙戦艦ヤマト』のテレビ放送に夢中になった。放射能で滅亡寸前の地球を救うため、ヤマトが14万8000光年彼方のイスカンダル星に放射能除去装置を取りに行く物語だ。そこで「自分も将来は放射能除去装置を作ろう」と誓った。

高校生になり、今後の世界はエネルギーと食料が大きな問題になると考えた。物理が得意だったので、科学者・技術者を目指して早稲田大学理工学部、東京大学大学院原子力工学専攻へと進んだ。「東大の原子力の研究施設は茨城県東海村にあって、高速加速する陽子ビームを使って高速中性子を発生させたり、トリチウム(三重水素)を含んだターゲットにデューテリウム(二重水素)を加速衝突させる核融合実験を行ったりして研究を楽しんでいた」

その後は東芝に入社し、原子力事業部に配属された。「原子炉は『釜の底』まで見ている」と言う通り、沸騰水型原子炉(BWR)の炉内に水中ロボットを入れ、炉底の確認作業などのマネジメントを行った。発電所の寿命延長や保全技術に関する業務、高速増殖炉「常陽」の開発・共同研究といった原子力関係の仕事はほぼ全て携わった。毎年数件の特許明細書の申請も担当した。

30代になると、放射能除去装置開発と並ぶもう一つの夢、総理大臣に向けて動き出した。東芝在籍中の98年、旧自由党の国会議員一般公募に合格。旧自由党は民主党と合併し、2003年と05年の衆院選に民主党公認で出馬した。しかし、内閣官房長官などを歴任した自民党の中川秀直氏に敗れた。その後、3度目の正直で挑んだ09年の衆院選で初当選を果たした。


誕生日に発生した東日本大震災 エネルギー安全保障にこだわる

福島第一原子力発電所事故は国会議員として迎え、〝影武者〟として事態収束に奔走した。当時の菅直人首相は原子力安全委員会に不信感を募らせており、空本氏が官邸直轄の緊急助言チームを組織した。昼夜を問わず、低レベル汚染水の海洋放出とモニタリングの実施、避難者へのニュースレターの発行、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の活用などを官邸経由で東京電力と関係省庁に指示。東日本全滅という「最悪シナリオ」の作成も検討した。「3月11日は私の誕生日で、因縁を感じずにはいられない。放射能除去装置がこの世にあればと心底思った」

現在は日本維新の会の経済産業部会長(兼エネルギー安全保障分科会長)を務め、政策論議をリードする。「石油は国家備蓄などで約1年分を確保しているが、地政学リスクと発電コストが高い。天然ガスはリスク、コストともに低いが、長期貯蔵が難しい。石炭はCO2を多く搬出するが、コストは低く、貯蔵が容易だ」。こう整理した上で、エネルギー自給率を高めるために重視すべき電源について「ベースロード電源として最も期待できるのは原子力。次に高効率で温室効果ガス(GHG)排出を抑制した火力発電、その次に再生可能エネルギー」と分析する。さらに地球規模でGHGを大幅削減するために最も効果的なのは、新興国の石炭火力を日本の優れた火力技術に置き換えることだと訴える。

原子力分野でもリアリズムを追求する。「革新軽水炉の新増設と高速炉の開発・実用化による核燃料サイクルの確立が現実的」として、「どこに立地するか、具体的な青写真を示すべき時にきている」と政策の前進を望む。一方、技術開発は否定しないが、小型炉は分散化による核セキュリティ問題、高温ガス炉は核燃料サイクルの実現性、核融合は事業成立性が課題だとの評価だ。

再エネや新エネルギーについては、「国土が限られる日本でグリーン水素の大量生産は難しい。将来的には『液化グリーン水素』を輸入することになるだろうが、輸送コストが課題。アンモニア専焼は技術的にも経済的にも実用化の可能性は低い。CCS(CO2回収・貯留)も地元合意や経済性の観点で有効なら開発すべきだが、50年カーボンニュートラルには間に合わない」と鋭く切り込む。

地元ではドブ板活動を徹底する。瀬戸内海に面した離島が多い選挙区で、島内を自転車で駆け回る。1日12時間、100㎞以上走る日もあるという。夢のノーベル賞については「あと30年、90歳くらいまで研究に没頭できれば可能性はあるかもしれない。新たな蓄電技術を発明したら間違いない」と笑みを浮かべる。原子力の専門家が連立与党のエネルギー政策を支えているのは心強い。

エネルギーの羅針盤構築へ トリレンマ解消に向け支援強化

【巻頭インタビュー】アンジェラ・ウィルキンソン/世界エネルギー会議事務総長 兼 CEO

政治的緊張が続く世界において、エネルギートリレンマの解消は一層複雑化している。

世界エネルギー会議初の女性事務局長に、今後の展望と日本の役割を聞いた。

アンジェラ・ウィルキンソン ロイヤル・ダッチ・シェルやブリティッシュ・ガス、経済協力開発機構(OECD)など、多様なセクターで上級職を歴任。2017年に世界エネルギー会議に参画し、エネルギー転換に向けたツール構築や戦略的洞察プログラムを主導。19年より現職。

―世界エネルギー会議(WEC)の特徴を教えてください。

ウィルキンソン 1923年に設立され、非政府組織・非営利組織の立場から、エネルギーに関する幅広い問題について、関係者が意見を交換することができる唯一の世界的機関です。私は6代目の事務総長であり、創設以来初の女性としてこの役職に就任しました。

WECでは20年前、エネルギートリレンマという新しい枠組みを導入しました。エネルギーをうまく管理していくためには、安全保障、手頃な価格へのアクセス、環境の持続可能性の視点が必要です。これに対し、われわれは、解決策を提示するのではなく、支援する立場を貫いてきました。

現在、世界は政治的な緊張の中にあり、われわれは、ソフト面での支援を維持・発展させることに力を注いでいます。そして、多様でつながりを重視した現代のエネルギー社会の実現に向けた「新しいエネルギーコンパス」を構築していきます。


次の危機を見据えた議論を 包括的な視点が不可欠

―ロシア・ウクライナや中東での紛争が続き、エネルギー資源価格がそれぞれ値動きを見せました。ボラティリティや不確実性がここ数年のキーワードかと思いますが、今後の見通しや注目点をお聞かせください。

ウィルキンソン 世界各国のエネルギー業界のリーダーたちの声を聞く中で、懸念点に関していくつかの共通認識があります。第一に、現在のマーケットは極端なボラティリティの中にあり、コモディティ価格の不安定さが大きな課題となっています。第二に、エネルギー安全保障への関心が再び高まっていること。そして第三に、世界的なインフレや気候変動の影響を受けながら、エネルギーが「手頃な価格」であるかどうかという点が重要視されています。

エネルギートリレンマは常に存在していますが、今改めて見直す動きが拡大しています。ただ、国によっては政治的理由で、一つか二つの要素しか見ていない場合もあります。ここで見逃している要素が、次の危機につながることになります。安全保障か脱炭素か、手頃な価格か気候変動か―といったどちらかを選ぶのでなく、全ての要素を包括し「オア」でなく「アンド」でつなげる考え方が重要です。

―データセンターなどによる電力需要の急増が見込まれています。このトレンドについての課題認識や、今後の対応方針を考える上で必要な視点は。

ウィルキンソン 「需要の津波」は昨年から登場した話題であり、背景にはさまざまな要素があります。中でもAIの電力ニーズが急増している点は重要です。また、人材開発・発展の動きも大きく関わります。この組み合わせで需要が生まれており、発展途上国で顕著です。そしてデジタルのチャレンジには二つの側面があります。AI向けの電力需要増と、エネルギーをより効率的に管理するためにAIを活用するという面です。

ただ、今後こうしたスマートインテグレーションが進むと、サイバーセキュリティも重要となります。デジタル化はある意味で諸刃の剣と言えるのです。

―需要トレンドもあり、原子力ニーズが再び高まっています。

ウィルキンソン 原子力ルネサンスは世界で今話題の議論です。ただ、ある特定の技術についてではなく、さまざまな技術のルネサンスが起きているという認識です。例えば、再生可能エネルギーをある程度の規模に増やし維持するには、安定した調整力が必要で、それは原子力やガス火力から生み出されます。そして、多様でクリーンなエネルギー源の規模拡大が必要です。

日本では、既存の原子力を今後も継続して使い、同時に洋上風力の開発にも力を入れていますね。他にバイオガスやeメタンなどのクリーン燃料の開発も進み、そこにCCS(CO2分離・貯蔵)の実装も視野に入れています。どの技術も良い・悪いと一概に言うことはできず、あらゆる技術の可能性を検討する必要があるはずです。ただ、原子力に対する見方は政治的な影響を受けており、だからこそ、各国で見方が異なります。最善の結果を得るためには、パーフェクトを求めないことが重要だと思います。


高市新政権に期待感 エネ安保に新たな視点を

―日本の第7次エネルギー基本計画についてどう評価していますか。

ウィルキンソン 日本のエネルギー政策が高い成熟度に達していることを示していると感じています。安全保障、手頃な価格へのアクセス、持続可能性といった多様なニーズに対して、エネルギーシステムをいかに適切に管理していくかという視点が反映されています。また、他国の政策と共通する要素も見受けられ、エネルギートリレンマのバランスをどう取るか、そして急速に変化する国際情勢の中で、柔軟かつ迅速に対応していく姿勢が計画に盛り込まれている点は非常に重要です。

―日本初の女性総理が誕生しました。高市早苗新首相は、安全保障を特に重視しています。新政権に果たして欲しい役割は。

ウィルキンソン 高市新政権には、既存のエネルギー安全保障の枠組みにとらわれることなく、新たな視点を持ち込んでもらいたいです。これから、エネルギー供給の多角化を図るだけではなくレジリエンスの強化もさらに重要になってくるでしょう。新たな価値を生み出し、エネルギー安全保障という言葉を書き換えて欲しいと思います。

【需要家】非化石価値の転換期 国内外で制度見直しへ

【業界スクランブル/需要家】

再エネ価値評価の適正化の観点から、非化石価値取引市場の見直し議論が動き始めた。短期的な対応策として、FIT証書の市場取引に関わる下限価格の引き上げと上限価格の撤廃、非FIT証書の需給バランス引き下げが提案され、審議会ではこの方針が全面的に賛同された。また、2030年度以降を視野に市場の在り方を抜本的に見直す方針も合意された。

時を同じくして、30年頃の本格運用開始が見込まれるGHGプロトコル改定版の検討作業も進展をみせており、スコープ2の算定基準が大きく見直される方向だ。パブコメで示された改定案では、GHG排出量削減に用いる証書に①時間的、②空間的な同時性―を求めている。①はいわゆるアワリーマッチング、②はTSOエリア内や広域同期系統エリア内での需給マッチを求めるもので、証書の活用要件が厳格化される方向だ。

またFIT制度について、改定案では「標準供給サービス(公的支援や規制によるコスト回収などを伴う供給)」に該当するとし、FIT証書の価値を一定の比率を超えて特定の需要家に帰属させることはできないと整理されている。適用除外や経過措置も検討されているが、改定案に沿えば、非化石証書活用の前提は大きく変容する。

従来、FIT制度により供給主導で進んできた日本の再エネ導入だが、脱・卒FITの下では需要が導入を律速することになる。その上で前述のような変化を見据えれば、国内の再エネ電力の取引環境はさらに複雑性が増すとみられる。需要家は、電源確保へのコミット強化や、環境価値に対する対価の考え方を再考する必要があろう。(P)

【再エネ】簡単ではない国産化 新政権の出方に注目

【業界スクランブル/再エネ】

高市早苗首相が「私たちの美しい国土を外国製の太陽光パネルで埋め尽くすことは猛反対」と明言した通り、メガソーラー開発の規制強化がなされる見込みだ。筆者も国費の流出につながる再エネ支援には否定的だが、再エネの急速な普及拡大に安価な中国製太陽光パネルが貢献してきたことは事実である。

再エネ産業の国産化は容易ではなく、意欲的な導入目標を掲げながらも外国製品を規制する施策は、国民や企業の経済的負担を増やすことに他ならない。競争力のあるクリーンなエネルギーが求められるが、国産の新技術として期待されるペロブスカイト太陽光や核融合の早期実用化には、技術開発や価格競争力に課題があると言わざるを得ない。恐らく短期的にはLNG調達や原子力の活用が現実解になると思う。

最近、北海道の釧路湿原のメガソーラーを巡る反対運動が活発化しているが、この問題の本質は規制種調査範囲や開発面積の境界線の認識のずれといった手続き上の不備にある。こうした事例をもってメガソーラーが無秩序に開発されてきたと総称するのは言い過ぎだろう。釧路市は国に規制強化を申し入れたが、既に国定公園など開発禁止エリアは整理されており、地域ごとの上乗せ規制は各自治体に委ねてきた。この方向性は悪くない。

2030年以降には太陽光パネルの大量廃棄時代が到来する。海外製品との価格競争に陥らないよう、国内のリサイクル技術開発や体制の構築、運用維持など、再エネ設備から運用面に補助金を振り向けるべきではないか。高市政権でエネルギー政策がどう変わるか注目したい。(K)

仏主導で対米自立に向かう欧州 核シェアリングの実現へ課題山積

【原子力の世紀】晴山 望/国際政治ジャーナリスト

米国の「核の傘」が揺らぎ、欧州は自衛の道を本格的に模索し始めた。

「欧州の核」構想は希望か幻想か。米国頼みの安全保障体制が転機を迎えている。

欧州がロシアとの戦争に巻き込まれても、米国は助けてくれないのではないか─。米国第一主義を掲げるトランプ氏が1月に米大統領に復帰して以後、欧州諸国は疑心暗鬼に陥っている。トランプ氏は時に、欧州と敵対するロシアのプーチン大統領に接近を図ろうとまでするからだ。欧州諸国は真剣に「自立」を探り始めている。

欧州は安全保障で自立できるのか


核兵器の数と種類が不足 ロシアとの圧倒的な戦力差

最初に動いたのはフランスだ。マクロン大統領は3月5日のテレビ演説で「フランスが保持する核兵器による抑止力を、欧州全体で使うための議論を始める」と表明した。これまで欧州の安全保障を支えてきた米国の「核の傘」が破れ傘となっても、フランスがその代役を果たそうという宣言と言える。

マクロン氏は2020年2月にも、フランスが欧州の集団安全保障で中心的な役割を果たすと提案し、欧州諸国に戦略的対話を呼びかけた経緯がある。今回はさらに踏み込み、フランスを中心とする「欧州の核」構想を打ち出した。

この発言をドイツが強く支持した。2月の総選挙で勝利を収めた中道右派「キリスト教民主同盟(CDU)」のメルツ党首は「欧州を自力で守るために、あらゆる努力をしなければならない」と発言、マクロン氏が持つ危機感を共有した。さらに、ロシアと国境を接する東欧諸国もマクロン氏の提案に賛同する。

ポーランドのトゥスク首相は「米国は信用できない」と不信感をあらわにしたほどだ。

マクロン氏はその後、核兵器を搭載するフランス戦闘機を欧州各国に派遣する考えを含め、欧州の核抑止力を向上させる考えを示した。米国は現在、ドイツ、オランダ、イタリア、ベルギー、トルコの5カ国に核爆弾約100発を配備し、有事の際は各国の戦闘機に載せる「核共有(シェアリング)」を実施している。フランスもそれと似たようなことをする準備があるという提案と言える。

ただ、「欧州の核」構想には課題も多い。最大の問題は、核兵器の数と種類が絶対的に足りない点だ。

ロシアは5580発と世界最多の核兵器を保有する。大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)など威力の大きな戦略核兵器だけでなく、戦場で使う戦術核兵器を約2000発持つなど種類も豊富だ。

一方、フランスの核兵器数は290発とロシアの約20分の1に過ぎない。仮に、英国が「欧州の核」に加わっても、合計で500発足らずだ。保有する核兵器の種類も少なく戦術の幅も狭い。英仏両国の主力はSLBMで、両国はこれを4隻ずつの原子力潜水艦に載せる。だが、戦闘機搭載用の核兵器はフランスしかなく、それも54発にとどまる。ありていに言えば、仏英両国の核戦力は米国の「核の傘」を補完する力はあるが、代替する力は備えていない。米国がソ連(ロシア)に対抗するため長年かけて築いてきた「核の傘」は、「欧州の核」にそうやすやすと置き換えられるほど柔なものではない。

【火力】kW時確保の盲点 設備運用面での弊害

【業界スクランブル/火力】

現在議論されている「小売事業者に対し、実需給3年前に想定需要の5割、1年前に7割の電力量(kW‌時)を確保させる」という制度案は、燃料調達の予見性を高める狙いがあるものの、電力システム全体の実運用に深刻な影響を及ぼす恐れがある。

電力需要は時間とともに大きく変動し、同時同量が常時求められるが、今回の対策により想定需要の一部を確保させることは、発電設備の運用を矩形的に固定してしまうことになる。これまで需給調整を供給力全体で行ってきたが、7割が固定化されることで、変動対応を残余の設備だけで担うこととなり、すでにひっ迫している調整力不足を一層深刻化させる懸念がある。さらに、調整力としての運用が特定設備へ集中すれば、過度な稼働やメンテナンス制約を通じて設備信頼度を低下させかねない。結果として、燃料確保の予見性を高めるはずの制度が、むしろ予備力や調整力の確保を困難にし、供給信頼度を損なう形で発電事業者の首を絞める恐れがある。

問題の本質は、議論の当事者である国、有識者、送配電、小売り、さらには発電事業者までもが、燃料確保に意識を奪われ、発電設備の運用現場で行われている調整力確保の対応に思いが至っていない点にある。燃料調達リスクの低減を図ることも重要だが、その施策が周囲にどのような影響を及ぼすのかについて、より慎重な検討が求められる。

発電設備の運用を巡っては複数の市場が乱立し、再エネ優先給電ルールも相まって整合性を欠く事例が散見される。今回の検討が制度間の齟齬を整理する契機となるのか、それとも一層の混乱を招くのか、注視が必要だ。(N)

業界の歩みから未来を展望 万博に続く成功の道を探る

【リレーコラム】平 慎次/ボストンコンサルティンググループマネージング・ディレクター&パートナー

 プライベートを含めて大阪・関西万博を数回訪れることができた。各国の建築物や大屋根リング、また、25年後の将来世界の体験などを純粋に楽しんだ。自然との調和を重視しつつ、AI・ロボットなどの技術進化と共生する生活は、今取り組んでいるGXとDXの進みが結実する世界を示唆していた。

激動の25年を歩んだ電力業界一方で過去に目を向けると、個人的には約25年の間、電力・エネルギー業界に携わってきた。新卒で東京電力に入社した当時、非常用電源の建替工事で漏電を起こしてしまい、深夜に超高圧変電所がブラックアウトして何も役に立たなかった情けない思い出がある。

この間、業界では多くの変化が起きた。原子力データ改ざんなどの不祥事、新潟県中越沖地震などの災害、東日本大震災と福島原子力発電事故、小売り全面自由化・送配電法的分離、再生可能エネルギーの大量導入、脱炭素化・サステナビリティの潮流、そしてAI・データセンターによる電力需要増など、なんと大きなイベントが起きる業界かと思う。これに加えて、国際情勢・地政学の影響、燃料ボラティリティリスク、安全保障などにも配慮が必要になっている。

インフラ・公益事業で安定と思われがちだが、電力・エネルギー会社の経営マネジメントは難度が高いと感じる。現場での設備の保守・メンテナンスや災害時の緊急対応もこなしながら、不透明な事業環境下で暗中模索しつつも経営をかじ取りしなければならない。2000年前後には、世界のインフラ・公益事業会社の時価総額ランキングで東京電力がトップ10に入っていたと記憶するが、今年にはトップ30にも日本企業の名前が見当たらない。時価総額で全てを語るつもりはないが、経営力に差が出たのは否めない。

未来を見ると、今後の電力需要増に対応するため、電源開発の拡大をはじめとする令和のインフラ大構築時代に入る。一方で、ヒト・モノ・カネが足りない社会構造上のボトルネックにも直面している。高齢化や労働人口減少による技能者不足、地政学・インフレが相まったサプライチェーンの混乱、企業の財務体力の弱体化もあり、高度経済成長期のインフラ構築よりも立ちはだかる壁は高い。本当にできるのかと疑念もわくだろう。

これらのチャレンジングな状況をポジティブに捉えると、エネルギー会社にとっては活躍と成長のチャンスとも言える。万博で描かれたような将来を実現するために、そして万博の成功に続くように、日本企業の経営力向上に少しでも貢献すべく志高く取り組みたい。

たいら・しんじ 東京電力で技術マネジメントを経験後、ボストンコンサルティンググループに入社。エネルギー企業を中心にシナリオプランニングなどで支援する。脱炭素・水素アンモニア・データセンター分野などに精通する。

※次回は、GX推進機構の重竹尚基さんです。

【原子力】原潜の保有を検討せよ 核兵器と原子動力は別物

【業界スクランブル/原子力】

日本の周辺には隣国の防衛力が自国の軍事力より低いと見れば、平然と侵略するような国連安保理の常任理事国がある。国民を守るには抑止力として世界の最先端防衛力を持つことが必須だ。

自民・維新の連立政権合意書には「次世代の動力を活用したVLS搭載潜水艦の保有にかかる政策を推進する」とある。既に米英豪の軍事同盟「AUKUS」では米英から豪への原子力潜水艦の提供が決まっており、さらに米大統領は韓国の原潜保有を認めた。北朝鮮が原潜の開発に乗り出す中、わが国も保有を検討すべきである。

被爆国日本は核拡散防止条約を批准し、国際原子力機関(IAEA)に加盟しているため核兵器の保有は厳禁だ。しかし、位置を特定されにくい原潜で通常兵器による反撃能力を保有することは、防衛力として極めて効果的である。日本の原潜は米露のように世界中を相手にする必要はない。守備範囲は日本周辺だけだから高濃縮ウランは不要。低濃縮ウランで数年持てば十分だ。原子力船「むつ」も低濃縮ウランだった。

同船の失敗は原子力開発初期に背伸びし過ぎた検討不足にあったが、その経験はその後の全ての原子力・放射線関連施設に反映されている。舶用に使える小型炉の研究は原子炉メーカが続けており、繰り返し製造してコストダウンに結び付けば、海上運輸の脱炭素化も目指せる。原子力技術と人材の確保にもつながる。原子力基本法、日米原子力協定、IAEA保障措置協定などとの関係は精査・検討が必要だが、手続きや整理の問題に過ぎない。過去の政府見解など気にせず、時代の流れに対応することが重要だ。(T)

【シン・メディア放談】さまざまあった2025年 揺れる世界で試される日本

〈業界人編〉電力・石油・ガス

今年も国内外で大きな変化があった。日本のエネルギー政策は荒波を乗り越えられるか。

─初の女性首相誕生から1カ月が経過した。安全保障や財政を巡る国会答弁が話題を呼んだが、エネルギー政策はどう見ているか。

石油 正直、まだよく分からない。原子力は再稼働と次世代炉開発の推進、メガソーラーは規制すると言っているが、具体的な方策はまだ出てきていない。

電力 原子力には前向きなので、大手電力会社は期待しているだろう。一方、自前の再生可能エネルギーを展開する新電力などは、どんな規制になるのかと懸念を抱いている。いま表に出ている話は、核融合やSMR(小型モジュール炉)、再エネ国産化、メタンハイドレート開発といった中長期的な話ばかり。どれも重要だが、任期中にどんな成果を上げられるかは未知数だ。ガソリン税の旧暫定税率の廃止や電気・ガス料金補助を実施するが、これは「物価高対策」としての位置付けだ。

石油 暫定税率の財源問題はどうなるのか。今年は埼玉県八潮市で痛ましい道路陥没事故があった。インフラの修繕費用は足りていない。恒久財源を赤字国債で賄うのはあまりに無責任だ。

ガス 赤沢亮正経済産業相はエネルギーの専門家ではないが、政策の飲み込みがかなり早いらしい。それにアメリカのラトニック商務長官との関係性を見て分かるが、冗談を言って場を和ませるのも得意だ。まずは原発再稼働をしっかりと進めてほしい。それが物価高対策にもなる。

石油 柏崎刈羽原発の再稼働が秒読み段階に入ったが、朝日が11月7日に1面で県民意識調査の結果を報じた。3面には「柏崎刈羽、県民意思とは 30キロ圏内、『拒否感が強い』」とあったが、この見出しはおかしい。確かに野党系県議は再稼働に「拒否感が強いことが分かった」と言っているが、調査結果は拮抗している。再稼働に反対という「意思」を強く感じさせる見出しだ。毎度言っているが、再稼働させない場合にどう安定供給を実現するのか、現実的な対案を出してほしいね。


サハリン2は大丈夫か NOと言える日本

─2025年度上期の中間決算が出そろった。皆さんの業界はどうだった?

石油 堅調だが先行きの不透明さは増している。ENEOSは合成燃料(eフュエル)の商業化計画を一時的に見合わせた。1ℓ当たり700円では採算が合わないからだ。『選択』11月号の記事で話題の宮田知秀社長はその辺りの判断がシビアだ。

ガス 電力・ガスは為替や期ずれの影響で好決算が目立つ。ただ、余力が生まれたところで、投資先がなかなか見当たらない。水素もアンモニアも収益化が見えてこない。

【石油】政治的必要性が優先 暫定税率の年内廃止

【業界スクランブル/石油】

12月31日に暫定税率が廃止される。財源を巡って抵抗してきた自民党も、総裁・税調会長の交代で、あっさり年内廃止に同意した。国会対策もあるから野党への譲歩は必要だし、高市トレードで円安も進んだから輸入物価対策は必要なのだろう。首相が財政規律を重視しないこともあるかもしれない。1バレル当たり65ドルの原油は、1ドル=100円なら1ℓ当たり41円、150円なら同61円だから、円安で自動的に約20円値上がりした。政治的必要性は全てに優先する。

しかし、暫定税率・道路特定財源は、田中角栄の国土建設の「夢」であり、「知恵」であった。また日本の自動車社会成長の原動力であり、同時に金権政治と〝土建屋国家〟の基礎だっただけに、そのガソリン税を半減するというのは感慨深い。それだけに、国土インフラの維持管理のための安定財源を見つけることは大変だろう。

軽油引取税は地方税・地方財源で、知事会から暫定廃止に反対する声も強かった。野党も沈黙してきた。なぜか高市首相は総裁選から廃止を主張し、来年4月の廃止となった。確かに、物流コストの引き下げ効果はあろう。地方財政への影響から、新年度実施ということなのだろう。

ただ、ガソリン税の減税分である1ℓ当たり25・1円が値下がりするわけではない。補助金10円の同時廃止で差し引き15・1円と、二重課税分2・5円の値下がりにとどまる。さらに混乱防止のため、補助金は12月11日まで3回にわたり約5円ずつ段階的に増額、実質的な減税分の値下げは年内には実施される。逆に、減税による値下がり感は、薄まるかもしれない(H)

ロシアと関係深める中国 敵失が経済強靭化に貢献

【ワールドワイド/コラム】国際政治とエネルギー問題

トランプ米政権による高率関税政策や、ウクライナ侵攻に伴うG7、EU(欧州連合)の対ロシア制裁により、中国は恩恵を受け、政治・経済的なパワーを増している。

ウクライナ侵攻以降、中国のロシア産原油の輸入量は、2023年にサウジアラビア産を抜いて首位となり、初めて1億tを突破した。さらに、制裁の影響で、中国は露産原油を国際価格よりも割安で大量に調達できる。

一方、輸入第2位のインドとロシアの関係は、先行きに不透明感が漂う。インドの露産原油輸入は、20年の日量約5万バレルから23年には164万バレルへと急増し、ロシアが最大の輸入先となった。インドは原油輸入国であると同時に、世界第2位の石油製品輸出国でもあり、モディ政権の「Make in India」政策の下、リライアンスやナヤラ・エナジーなどが製油所の精製能力を強化してきた。しかし、今年10月にはトランプ政権がロスネフチやルークオイルなど露石油大手との取引に対する追加制裁を発動。これを受けインド政府もロシア産原油の輸入停止方針を打ち出した。

このためロシアは中国への依存を強めている。人民元での取引に応じるロシアの姿勢は、石炭に代わる安価で安定的なエネルギーを求め、人民元の国際化を目指す中国の利益にかなっている。

14年のクリミア併合に伴う経済制裁を契機に、中露は30年間、最大380億m³のガス供給契約を締結し、これを運ぶパイプライン「シベリアの力」が19年に稼働した。そして、ウクライナ侵攻後の制裁を受けて、現在は「シベリアの力2」へと進んでおり、欧米の制裁圧力が加わるたびに、両国は長期的にコミットを深めてきた。ロシアからの安定供給を背景に、中国は米国からの原油輸入を激減させ、LNG輸入も今夏までには実質ゼロとなった。中国の弱点だったエネルギー安全保障は、ロシア制裁やインドへの外交圧力によるいくつもの「棚ぼた」で格段に進展した。

さらに産業政策においても、中国は技術やサプライチェーンの米国依存脱却を図っている。特に26~30年に向けては、米国への依存度が高かったAI・半導体分野で「自主可控(Independent & Controllable)」を目標とする。トランプ政権による中国向け半導体輸出規制や高関税政策は、中国の戦略的サプライチェーン確立を後押しし、同国を製造大国から製造強国へと押し上げる要因となっている。

こうした動きを踏まえると、トランプ外交やロシア制裁は、皮肉にも中国経済の強靭化に貢献してきたと言える。棚ぼたの連続、いわば利敵行為である。これをありがたく受け取る中国のエネルギー安全保障とサプライチェーンの確立は、トランプ政権以降も続く中国の基盤として日本に不可逆的な影響を与え続ける。日本はトランプ大統領との関係構築だけでなく、ポストトランプ政権を見据えた根本的な対策が求められている。

(平田竹男/早稲田大学教授・早稲田大学資源戦略研究所所長)

海上封鎖による台湾全停電の脅威

【ワールドワイド/コラム】海外メディアを読む

去る10月7日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、台湾の海上封鎖を意図した最近の中国の軍事演習を紹介した。この作戦は、全面侵攻よりも小さなリスクで、この島を支配下に置けることを示したという。

米国のシンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)によると、海上封鎖が行われれば、この島のLNGは2週間以内、石炭は7週間で枯渇するとのこと。台湾では、かつて原子力が発電量の52%を占めていたが、安全性への懸念や民進党の政策によって発電所の廃止が進み、5月に最後のユニットが停止。以来、発電はLNGが5割、石炭が4割、再生可能エネルギーが1割となっている。輪番停電などを実施しても、全停電までの期間は、多少引き延ばせる程度のようだ。

政府は現在、安全保障政策として燃料在庫の増加と、エネルギー構成の見直しを進める。原子力に関しては、8月に再稼働を問う国民投票が行われた。所定の投票率には未達であったが、賛成多数であった事実も踏まえ、民進党出身ながら「中国への抵抗力」を唱える頼清徳総統は、原子力安全委員会に再稼働要件の検討を指示した。一方、自給自足電源として期待する再エネの普及は目標には程遠い。足元の政策の焦点は、米国のLNG輸入を増やして中国をけん制することらしい。

さて、日本の電力供給においても発電量の7割は火力であり、燃料は海外依存である。在庫はLNGで2~3週間、石炭は4週間ぐらいであろうか。ちなみに、石油は、約50年前のオイルショックに懲りて、国家90日、民間70日の備蓄を保有する。当時の石油に代わり、発電用燃料の主力を担うLNGや石炭の備蓄がこのままでは「平和ぼけ」と言われまいか。

(水上裕康/ヒロ・ミズカミ代表)

【ガス】日米エネ交渉の妙 サハリン2の行方は?

【業界スクランブル/ガス】

トランプ大統領の一挙手一投足が世界の注目を集める中、日本の大手エネルギー企業は米国とのLNG長期契約を次々と締結している。JERAは米国産LNGを新たに年間550万t調達する方針を発表し、九州電力は年間100万tの新規契約を締結。東京ガスも正式な契約ではないものの、アラスカLNGプロジェクトへの「関心表明」を行い、条件次第では年間100万t規模を調達する可能性がある。これらの民間の対米向け投資は、貿易交渉の中で日本が米国に約束した5500億ドル(約80兆円)の対米投資の内数になると見られる。日本のLNG取扱量の上位企業が前向きな姿勢を示したことは、米国側も好意的に受け止めているだろう。

一方、日本のエネ企業にとって対米交渉のもう一つの「悩みの種」は、米国がロシア産エネルギーへの制裁姿勢を強め、日本にもロシア産LNGの輸入停止を求めている点だ。10月末のトランプ氏来日時も当件が強く求められるのではないかとの懸念もあったが、高市早苗首相はトランプ氏に対しサハリン2からの撤退は困難だとの立場を伝えた上で、「日本が手を引けば(代わりに権益取得に動く)中国やロシアが喜ぶだけだ」と毅然と説得したそうだ。

現在の米国とのエネルギー交渉では、米国産LNGの輸入拡大という前向きな対応を示す一方で、サハリン2の輸入継続を主張するなど、政府はメリハリの利いた交渉を行なっている。サハリン2への制裁除外措置の期限が12月19日に迫り、予断は許されないが、日本のエネルギー安全保障を確保するべく、引き続き政府には粘り強い交渉を期待している。(Y)

G20分断で共同声明採択されず トランプ米政権の存在感鮮明に

【ワールドワイド/環境】

10月に南アフリカでG20エネルギー転換ワーキンググループ(WG)大臣会合が開催されたが、共同声明を採択するに至らず、議長サマリーの発出にとどまった。全会一致で採択された唯一の合意文書は「クリーン調理普及のための自発的インフラ投資行動計画」である。

背景には、ウクライナ戦争やG20経済圏間の貿易摩擦などの地政学的対立がある。さらにエネルギー転換を巡る表現に関しても意見が対立した。EU(欧州連合)、日本などの先進国は、地球温暖化防止国際会議・COP28のグローバル・ストックテイクの結果に沿って化石燃料からの移行を求めた一方、中国、インドなどは、CCS(CO2回収・貯留)などの排出削減技術と組み合わせた化石燃料の継続使用を認めるべきだと主張した。米国も化石燃料の段階的廃止に反対した。また米国、フランス、日本などは、原子力と水素をクリーンな選択肢として強調したが、ドイツなどは、原子力を「グリーン」に分類することに抵抗を示した。結局、議長サマリーには「全エネルギー源アプローチ(再生可能エネルギー・原子力・ガス・CCUSを包含)」が強調された。

気候資金と公平性に関しても意見が収斂しなかった。インドやアフリカ諸国は、先進国による優遇融資と技術移転の強化を要求し、国内財政制約に苦しむ先進国は既存メカニズムを超える新たな拠出に消極的だった。

こうした対立構図は今始まったものではないが、ブラジルが議長国を務めた昨年には共同声明が採択できている。やはりトランプ政権の存在が大きかったというべきだろう。米代表団はパリ協定に関連する新たな国際的約束、特に気候資金と再エネ目標、さらにはクリーンエネルギー転換、脱炭素、気候変動といったキーワードへの言及に反対した。エネルギー政策における「国家主権」を重視し、2023年のグローバル・ストックテイクで合意された化石燃料からの移行に関する文言への支持も拒んでいる。6月のG7サミットでは重要鉱物の供給安全保障を除き、エネルギー・温暖化についてのG7の共同歩調をとれなかったのはこれが理由だ。このような状況ではロシア、産油国、中国、インドなども固有の事情を強調し、合意が一層難しくなることは不可避である。

(有馬 純/東京大学公共政策大学院客員教授)

【新電力】蓄電池事業に打撃か 需給調整市場巡る制度改正

【業界スクランブル/新電力】

先月末の制度検討作業部会で、需給調整市場の募集量削減および一次・二次市場の上限価格の大幅な引き下げが提言された。FIT制度導入時以来の一獲千金を狙い、系統用蓄電所の用地および系統を確保していた新電力含む開発業者には、衝撃が走っていることであろう。

一方で、今回の提言は唐突なものではない。需給調整市場の募集量および応札価格の適正水準に関する議論をフォローしていれば、十分に想定し得た。そもそも、電力業界の投資案件の一般的な収益率に鑑みれば、早晩、上限価格引き下げ提言が発表されることは十分予見できたはずだ。

ただ、開発を進めてきた側にも言い分はあろう。確かに今回の上限価格引き下げ後も、日々需給調整市場において、それなりのコマに落札できれば、適正利潤は確保できる。厄介なのは、募集量の削減である。募集量が3σから1σに削減されたことで、各エリアの一次市場の募集量は6割以上減少となる見通しである。もし、これまでの上限価格・募集量の想定下での開発が進み継続され、過剰な系統用蓄電所が操業することになれば、多くの蓄電所が投下資金回収不能となる恐れがある。稼働することなく放置される蓄電所が頻出となる事態は避けるべきである。

こうした事態を避けるためには、当局および送配電事業者は、系統用蓄電所の接続契約量をリアルタイムで情報発信する必要があろう。また、蓄電所を開発・運用する側としても、今後、激増する再エネ発電所の出力抑制対策のために系統用蓄電所を活用するなど、蓄電所の持続可能なビジネスモデルの構築に努めるべきである。(S)