都市ガス業界に衝撃走る 山口合同ガス事故の原因は?

「想定を超えた事故だった」。山口県宇部市で2025年12月4日朝に発生した大規模ガス漏れ事故を受け、山口合同ガスの田村泰郎専務は同日夕、同県下関市の本社で開いた記者会見でこう述べた。

事故の主因はガス圧力の異常と見られる。同社宇部市の支店でガバナの異常圧力を知らせるアラームが作動。宇部市琴芝町に設置されたガバナ出口で、通常の12倍というガス圧が確認された。「前代未聞の事故で衝撃を受けた」(大手ガス幹部)

12月4日の記者会見で陳謝する山口合同ガスの幹部ら
提供:朝日新聞社

全国に約2万台あるガバナの多くには、圧力が一定値を超えた場合にガスを外部へ逃がす「逃し弁」や、異常時に供給を遮断する「緊急遮断弁」が備えられている。だが、今回トラブルを起こしたガバナには、これらの安全系装置が付いていなかった。法的な設置義務はないものの、両機能を欠くガバナは全国的にも少数とされる。

同社によると、各支店の供給エリアでは基本、緊急遮断弁などの安全系設備が設置されている一方、宇部市内では設置状況にばらつきがあったという。宇部市の都市ガス供給は、かつて公営の宇部市ガス水道局が担っており、14年に山口合同ガスが事業を継承した。その際に引き継がれた設備の中に、安全弁や緊急遮断弁を備えていないガバナが残っていたという。

これを受け、経済産業省はガバナの一斉点検などを業界に求めるのか。同省ガス安全室によれば、「(12月中旬現在)詳細を調査中で、対応は未定」とのこと。宇部市での事故は、安全系装置を備えない古い設備を巡る課題を浮き彫りにした。

先行投資が結実し地域とともに発展 デジタルやCNで積極姿勢

【事業者探訪】昭島ガス

人口増加が始まる前から先行投資で導管敷設を進め、今日の地域の発展を導いてきた。

今後もDXやスマメ導入などに投資を惜しまず、CN対応にも積極姿勢を見せる。

2024年に市制施行70周年を迎えた東京都昭島市は、多摩川や玉川上水といった水資源や自然環境に恵まれながら、都心へのアクセスも良いエリアだ。

昭和30(1955)年代までは住宅がまばらだったが、市の誕生を経て40年代以降、都営・公団住宅の開発が進み人口が急増。さらに最近でも基地跡地などで新たに戸建て・集合住宅の開発が進み、地盤の強さや教育・医療施設などの充実も相まって子育て世帯の流入が目立つ。2025年の人口は24年より1200人ほど増加し、近隣の自治体とは一線を画している。

「他業種から刺激を受ける」と平畑氏

こうした発展を支えてきたのが昭島ガスだ。市内への都市ガス供給について既存ガス会社は採算が取れないと判断していたが、地域の今後のためにはガス供給が不可欠として1962年6月に同社が発足し、供給を始めた。平畑文興社長は「その後人口増とともに供給件数が増え、現在は3.7万件超に。後1~2年で4万件を超える勢いで、さらに最近では床暖房やエネファーム付きの住宅が増えていることもプラス材料だ」と好調ぶりを語る。

この他、同社設立2年後にスタートしたプロパンガスの取り付け件数は現在4700件と、目標の5000件まであと一歩の状況だ。加えて保安の高度化に注力し、集中監視システム導入率は8割超となり、都から「ゴールド認定」を受けている。 

そして電力小売りが全面自由化された2016年度から、低圧は東京ガスの取次店として、高圧はエネットの代理店として電力販売を行う。一括受電の集合住宅が増えている点がネックとなっているが、7000件を目標に営業に力を入れる。


導管敷設はほぼ完了 組織横断でDXに本腰

社長就任から45年。「最後は件数がモノを言う」という考えの下、1件でも供給件数を増やすことを常に心掛けてきたという平畑氏。「これまで導管延伸に先行投資し借金がかさんできたが、それがようやく実を結びつつある」と振り返る。15~20年間をかけ、昭島一円の他、立川・福生市の一部を含む約17平方㎞の供給エリア全域への敷設を進め、投資はほぼ完了する見込みだ。PE管への更新も着実に進め、あと1~2年ほどで低圧本支管の耐震化率が100%に達する予定だという。

そうした中、最近特に注力するのがDXで、部門横断で全部長が参加する「DX委員会」を立ち上げた。さらなる投資を伴ってでもデジタル化による業務効率化やサービスの利便性向上を図らなければ取り残されるとの意識で、スピード重視で取り組んでいる。

例えば、26年4月には基幹システムのリニューアルを予定。また、ポータルサイトで顧客の料金確認や支払いなどをより便利に行えるようにした他、ホームページをリニューアルしウェブでの申し込み完結を目指す。

また、スマートメーター導入にも後れをとってはならないと積極姿勢を見せる。これまで試験的に取り組んできたが、26年から新築には全戸に設置していく。入れ替えも4月から本格化し、10年ほどで完了させる計画だ。保安のさらなる高度化につなげ、DX委員会ではデータの活用の検討に着手している。


昭島市・東京ガスと協定 カーボンシティを後押し

重要課題である50年カーボンニュートラル(CN)を巡って、市は市域全体で30年までの「カーボンハーフ」を、さらに市の事業に伴う温室効果ガスを75%削減する「カーボンクォーター2030」を目標に据える。その実現に向け、市、東京ガスと3者で22年に協定を締結した。これまで、公共施設へのカーボンオフセット都市ガスの供給、公園立体駐車場や昭島市総合交流拠点施設にEV充電設備を設置し、再エネ100%電気を供給、といった対策を講じてきた。

CNシティ実現に向け連携協定を締結

あと5年での「カーボンハーフ」などの実現のハードルは高いが、特に家庭でのCO2削減を重視し協力していく考えだ。この他、協定に基づき小中学校での環境教育に講師を派遣したり、昭島ガス独自の取り組みで出前授業や職場体験を行ったりと、教育との関わりも重視する。

今後とも、町の発展なくして社の発展もなし。「住み続けたい街・昭島」を目指し、地域住民や子供たちが参加するスポーツを支援したり、見守りパトロールを行ったり、地域を巡回する営業車を活用した防犯協定を昭島警察署と結んだりと、さまざまな活動を展開している。

近年、全国的にデータセンターや半導体工場の立地などで将来的な電力需要増が注目されがちだが、「そうした分野が莫大な電力を要するなら、なおのこと他分野のエネルギー供給はガスが担わなければならず、30~40年に向けて果たすべき責任は大きい。他方、原子力発電所が東日本でも動き出して電気代が下がってくるなら、電力販売も一層重要になる」と強調する平畑氏。引き続き「ガスも電気も1件でも多く」というモットーの下、社員を率いる考えだ。


【地域の魅力発信】地下水100%のおいしい水

昭島市の水道は、現在都内の自治体で唯一、地下水のみを水源とする。深層地下水をくみ上げ、水が地層にしみ込む過程で炭酸やミネラル成分が溶け込む。また土壌がフィルターの役割となって不純物を取り除くため、法で義務付けられる必要最低限の塩素は付与するものの、浄化処理は行っていない。ミネラルウォーターと同様のおいしさである上、水道料金は全国屈指の安さを誇る。

慌ただしい原発立地地域の師走 泊と柏崎は前進も福井は小休止

原子力立地地域の動きが慌ただしい。北海道の鈴木直道知事は2025年12月18日、赤沢亮正経済産業相に泊3号機の再稼働に同意する考えを伝えた。北海道電力は27年早期の再稼働に向けて、防潮堤の工事などを進める。

赤沢亮正経産相と面会する北海道の鈴木直道知事(左)

電気料金や電源の確保だけでなく、20年に鈴木氏が打ち出した「ゼロカーボン北海道」を実現するためにも再稼働は不可欠だ。しかし、北海道選出の自民党議員は「積極的に推進するというよりは、仕方なく使うという感覚だろう」と推察する。確かに、道が11月初旬、知事の考えを自民党道連に伝えた際には「当面の現実的な選択肢として再稼働はやむを得ない」という控えめな表現を用いた。

鈴木氏を悩ませるのは再稼働判断だけではない。北海道では高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定プロセスで、寿都町と神恵内村が第1段階の文献調査を終えている。次のステップである概要調査に進むには町村長と知事の同意が必要だが、鈴木氏は「現時点で反対」の姿勢を崩していない。

北海道は00年、幌延深地層研究センターの誘致を巡り、放射性廃棄物を「受け入れ難い」としたいわゆる「核抜き条例」を公布した。しかし、条例には「処分方法が十分確立していない状況の下では」という留保が付いている。「国際的に地層処分が最も安全だと認められた今、条例を盾にして概要調査を拒むのは難しい」(前出の自民議員)。鈴木氏が首を縦に振るために求められるのは、道内2町村と佐賀県玄海町に加え、第4、第5の文献調査地点が現れることだ。


新潟では花角氏を信任 杉本知事後継は細かい男?

新潟県議会では、柏崎刈羽原発の再稼働を容認する姿勢を示した花角英世知事を信任する見込みだ(12月18日時点)。野党会派が不信任決議案を提出するとの憶測が流れたが、自民党などが「知事信任」の付帯決議を提出する形で落ち着いた。26年1月中の再稼働が見込まれる。

一方、気がかりなのは福井県だ。12月にセクハラ事案を受けて杉本達治知事が辞任。あるベテラン県議は「杉本氏は発言に軽さがあった。(スキャンダルが)やっぱり出てきたかという感じ」とあきれ顔だ。同県では7基の原発が稼働し、関西電力は美浜原発の後継機設置に向けて動き出した。こうした中での辞任に、経済産業省の幹部は「いま一番心配なのは福井県知事選」と気をもむ。

自民党県連は1月25日実施の県知事選に向けて、越前市長の山田賢一氏に出馬を要請した。山田氏は県庁で副知事や総合政策部長などを務めたが、原子力分野に深く関わっていたわけではない。前出の県議は「真面目だけど、とにかく細かい。県庁職員は戦々恐々としている」と明かす。

首長の一挙手一投足が国策を揺るがしかねない状況は、望ましい姿なのだろうか。

柏崎刈羽は「鉄壁の守り」で再稼働へ 現場の努力を「無視」する慎重派の不健全

柏崎刈羽の現場を訪れると、安全運転の実現に努力を惜しまぬ運転員の姿があった。

こうした事実を見ようとせず、不安だけをあおるメディアや政治家の姿勢はいかがなものか。

「中央制御室」に警告音が鳴り響いた。核分裂反応を強制的に停止するため、制御棒を一斉に挿入する「スクラム」と呼ばれる緊急操作が実施できないようだ。なぜ自動的にスクラムしなかったのか。事態を収束させるための次の一手は。5人の運転員が現状の分析と解決策を模索する─。

ここは原子力発電所ではない。柏崎刈羽原発(KK)に隣接するBWR運転訓練センター(BTC)の一室だ。再稼働を目前に控えたKKの運転員たちが、万が一の事態に備えた訓練を実施していた。

この訓練の特徴は、限りなく実戦に近いことだ。訓練でどんな「事故」が発生するかは、前もって運転員に知らされることはない。原発の不具合は、いつ、どんな理由で起きるか分からないからだ。

BWR運転訓練センター
提供:BWR運転訓練センター
中央制御室を再現したシミュレータ
提供:BWR運転訓練センター


臨機応変な対応力を養成 慎重派議員の見学少なく

2011年の福島第一原発(1F)事故以降、全国の沸騰水型軽水炉(BWR)の運転員は再稼働を目指し、この場所で鍛錬を重ねてきた。25年11月には新潟県の花角英世知事が訓練の様子を視察した。

運転員は原子力安全の最後のとりでだ。安全対策を施す作業員、不審者やテロ行為を未然に防ぐ警備員、原子力規制委員会の審査対応や国・自治体との調整を行う東京電力の社員など、再稼働に向けて多くの関係者が尽力した後、アンカーとしてバトンを託される。BTCには運転員を育成するインストラクターが約30人在籍するが、スポーツで言えば選手を育てるコーチのような存在だ。

BTCには中央制御室を忠実に再現した3基の運転シミュレーターがある。KK6、7号機などの改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)型が1基、国内で最も基数が多いBWR―5型が2基だ。ここで入社間もない未経験者から、高度な知識とスキルが求められる運転責任者までを養成する。社員・訓練生寮を完備し、初級コースでは2カ月以上にわたって基礎を叩き込む。70歳を超える大ベテランも在籍するといい、分からないことは何でも答えてもらえる。

1F事故後は訓練内容が大幅に変わった。訓練の目的は冒頭のシーンのように、不具合が生じた時に臨機応変に対応することだ。事故前は一つの機器が故障した場合など安全対策で想定された範囲が中心だったが、1F事故のような複合的で進展予測が難しいケースに対処するためには、運転員が自ら考え、判断し、行動する力を高めなければならない。

BTCの役割は運転員の育成だけではない。立地地域や周辺自治体の職員を対象とした自治体研修にも積極的に取り組んでいる。基本的なプラントの仕組みやトラブルの発生メカニズムを学んだ上で、避難訓練などに役立ててもらうのが目的だ。

「女性や子どもといった社会的弱者への対応に必要な視点を養うため、研修参加者には女性や若手職員が多い。研修を通じて、自治体間のネットワーク構築のハブとしても機能している」(BTCの長谷川真社長)

そんなBTCを一目見ようと、25年の施設見学者は前年比2倍に達した。しかし、気がかりな点がある。自治体の「議員団」が視察に訪れるが、いわゆる「慎重派」の議員の同行が少ないことだ。

1F事故からの約15年間でエネルギーを取り巻く状況は激変し、「賛成」「反対」というイデオロギー対立の時代は過ぎ去った。大切なのはフラットな視点で現場を見て、知識をアップデートすることだ。新潟県が実施した県民意識調査では、東電が実施している安全対策の中身を知っている人ほど、再稼働の条件が整っていると回答した人が多かった。慎重な立場を取る人にこそ現場の取り組みを見てほしいのに、住民の代表たる議員が、原発関連施設に足を運ぶことすら二の足を踏んでしまうのは残念でならない。

燃料を装荷しふたを閉じた6号機の格納容器
提供:東京電力ホールディングス
水密扉で水の侵入を防ぐ
提供:東京電力ホールディングス


きめ細やかな安全対策 何重もの壁で重大事故防止

実際にKKを見学すれば、重大事故が起きる確率は限りなく低いと実感できる。視察した12月8日は日本海側の冬特有のよどんだ曇天で、時折雨と強風に見舞われた。一時は竜巻注意報が発令されたが、構内では約6000人が汗を流していた。1F事故後、彼らによって構内は劇的な変化を遂げた。

原発の安全思想は、異常が発生した際に、①核分裂反応を止める、②原子炉を冷やす、③放射性物質を閉じ込める─という三点に集約できる。1F事故では、津波によって②に必要な電源やポンプが使えなくなってしまった。

「1F事故から得られた最大の教訓は『想定はいつか超えられる』ということ」(KKの林勝彦副所長)。だからこそ、KKでは事故の進展を食い止めるために何重もの壁を準備している。野球に例えれば〝最強のリリーフ陣〟と言えよう。1人が打ち込まれても、有能な投手が何人も控えている。

まず、1F事故の原因となった津波への対策は、想定される津波の最大高さ7〜8mを超える15mの防潮堤を建てた。しかし、それすら超えた場合に備えて、重要な機器がある部屋の入り口には水密扉を設置し、配管の貫通部から水が入らないようにシリコンゴムで止水処理した。原子炉建屋の側面にあった給気口を防潮壁で覆い、海抜15m以上から空気を取り入れる構造に変えた。

それでも、既存の設備で「冷やす」ことができなくなった時のために、注水や除熱に必要な機材を海抜35mの高台に用意してある。速やかに電源供給が可能な空冷式ガスタービン発電機車を設置し、燃料となる軽油は地下に10万ℓ貯蔵。さらに、そのバックアップとして電源車を20台準備した。

県主催で避難退域時検査の対応訓練 円滑かつ確実な避難体制整備を目指す

【茨城県】

茨城県は原子力事故を想定した訓練で、住民の放射線量を計測する検査要員に手順の習熟を求めた。

日本原子力発電は協定を結ぶ事業者と連携し住民の安全で円滑な避難体制整備を支援する。

原子力発電所では原子力災害を防止するため、新規制基準に基づくさまざまな安全性向上対策が講じられているが、加えて万一の重大事故を想定した訓練が全国の原子力発電所の立地地域で行われている。

茨城県は2025年11月20日、東海第二発電所で重大事故が発生したという想定による対応訓練を常磐自動車道友部サービスエリア(SA)で実施し、日本原子力発電や同社と協定を結ぶ事業者(東京電力HD、日本原子力研究開発機構、日立GEベルノバ、三菱原子燃料、原子燃料工業、原電エンジニアリング)が検査要員として参加した。

ゲート型モニターの間を通る車

避難退域時検査とは、重大事故が進展し発電所から放射性物質が放出されたという災害が起こった場合に、住民が車で一時移転・避難する途中で受ける検査で、人や車への放射性物質の付着の有無を調べる検査である。避難する人々の安全・安心を確保するための重要な検査だ。

県は検査候補地として東海第二発電所から半径約30㎞付近に避難退域時検査のための場所を44カ所候補地として定めるとともに、定期的に同様の訓練を実施している。今回は発電所の近隣住民が県南方面に避難する際の重要拠点となる友部SAで検査要員が手順や簡易除染作業など一連の流れを確認し、習熟する機会として訓練を実施した。


簡易除染で基準値以下に 安心の証に検査済証を発行

SAに到着した車両は、道路に横たわる2本の白いポールの間をゆっくりと通過する。このポールは「ゲート型モニター」と呼ばれ、タイヤに放射性物質が付着していないか放射線量を計測する。基準値を超過していれば乗員の中から代表者に車から降りてもらい、サーベイメーター(放射線測定器)で測定し、その結果、放射性物質の付着が確認された場合は、同乗者を含めて拭き取りなどの簡易除染をした上で、再検査する。基準値以下になれば検査済証が発行され、それを持って避難先へ向かうという流れだ。

測定器で車に外部汚染がないかを確認


県下のSAで初実施 第三者が訓練を評価

NEXCO東日本が管轄するSAが訓練会場となるのは初めてのこと。同社の山本卓水戸管理事務所長は「一般のお客さまがSAを利用している中、臨場感のある訓練ができた。今後も県から要請があれば協力していきたい」と語った。

日本原電の地域共生部の丸谷充部長代理は「万が一の原子力災害に備え、地域住民の皆さまの避難行動を支援できるよう体制整備を進めるとともに、普段からこうした訓練を通じて県や周辺自治体、協力協定を結ぶ事業者と連携することが重要と考えている」と強調した。

外部汚染を確認する検査要員

現場では「訓練評価」と書かれた腕章を着用した日本原子力研究開発機構原子力安全・防災研究所原子力緊急時支援・研修センター(NEAT)の評価者が訓練に立ち会い、一つひとつの作業を細やかに観察していた。評価結果は今後伝えられるが、次回の訓練をより実効的なものにする有益なインプットとなるだろう。

【中部電力 林社長】電力需要増に対応 産業集積地中部の持続的な発展に貢献

洋上風力第1ラウンドから事業撤退したものの、引き続き全国で各種再エネ開発に注力するとともに、浜岡原子力発電所の早期再稼働へ取り組みを着実に推進。

DX・GXの進展に伴う電力需要の増加に対応し、産業集積地である中部エリアのモノづくりを支え、地域の発展に貢献していく。

【インタビュー:林 欣吾/中部電力社長】

はやし・きんご 1984年京都大学法学部卒、中部電力入社。2015年執行役員、16年東京支社長、18年専務執行役員販売カンパニー社長などを経て20年4月から現職。

井関 2025年度中間期の連結決算は減収増益でした。

 中間期は、洋上風力発電事業撤退損失として136億円を計上するなど収支悪化要因がありました。一方で、夏季の高気温影響に加え、中部電力ミライズにおける電源調達ポートフォリオ組み替えによる費用削減効果の拡大などグループを挙げた収支向上努力により、通期の連結経常利益は2300億円(期ずれを除き2100億円)と、中期経営目標である「2000億円以上」を上回る見通しとなりました。金利の上昇や物価高といったマイナス面を打ち消す「稼ぐ力」を付けられたこと、そしてコストダウンが実行できたことは、何より社員の努力によるものです。


選択と集中を徹底 資本効率の向上図る

井関 今年度は「経営ビジョン2・0」の達成を見据えた中間地点であり、現行中期経営計画の最終年度です。経営目標達成への手応えはいかがでしょうか。

林 最終年度に2000億円の経常利益の確保を目指してきた中、(期ずれを除き)2100億円程度となる見通しとなり、計画は順調に推移していると実感しています。ROIC(投下資本利益率)も3・3%程度と、目標の3・2%以上を上回る見込みです。一方で、当社を取り巻く事業環境・投資環境は、米国関税政策をはじめさまざまなリスクがあり、先行き不透明な状況が継続することが想定されます。さらなる市場対応力の強化やコストダウンに加え、各事業のモニタリング、投資案件の評価などのリスク管理を徹底することにより利益水準の確保に努め、確実な目標達成を目指していきます。

ミライズはソリューション提案に力を入れている

井関 26年には次期中期経営計画を策定することになりますが、何がポイントになるでしょうか。

 物価・労務単価・金利の上昇など、当社を取り巻く事業環境は厳しい状況が続きます。そうした中で、限りある経営資源を最大限活用し資本効率を高めるため、「思い切った選択と集中」を踏まえた新しい事業ポートフォリオやその実現に向けた工程などの検討を進めており、次期中期経営計画で新たな成長戦略を示す方針です。エネルギー事業のみならず、海外事業や不動産事業、資源循環事業など多角化を進めてきた中で、いずれかの分野をなくすというわけではなく、それぞれの分野の中で選択と集中を進め、将来性のある取り組みに注力しつつ、撤退基準に抵触するものについては撤退を判断していきます。

経常利益、ROICは現行の中期経営目標を達成できる一方、ROE(自己資本利益率)は6%程度となる見込みで、その改善は当社にとって最重要課題の一つです。次期中期経営計画では、資本市場から期待されている8%を意識して目標を設定することを検討しています。

井関 25年6月に公表された電力広域的運営推進機関の需給シナリオで、電力需要が大幅に増大する将来見通しが示されました。中部電力エリアの足元の動向と将来見通しはいかがでしょうか。

 25年度の電力需要は前年度並みの水準で推移しています。米国の関税政策による電力需要への影響については、先行きの輸出産業関連の生産動向に懸念はあるものの、足元において生産計画の見直しを行った企業は少ないものと認識しており、現時点では大きな影響は生じていませんが、引き続き状況を注視していきます。

また、広域機関の見通しでは、中部エリアの24年から10年間の電力需要の伸びは全国平均に比べると下回っています。ですが、中部エリアはモノづくりが盛んな産業集積地であり、AIやロボティクスを前提とした自動化などのDX(デジタルトランスフォーメーション)・GX(グリーントランスフォーメーション)に伴うポテンシャルは高く、デジタルインフラの拡大や、カーボンニュートラル実現に向けた電化が進展することによって、電力需要が増加する可能性が高いと考えています。DX・GXの動向は需要想定に与える影響が非常に大きいことから、エネルギー政策やエリアの産業動向などに目を配り、適切に需要見通しに反映していきます。

グループ全体でのデータセンター(DC)などの大型需要誘致に加え、ミライズのソリューション活動の一環としてGX実現に向けた電化提案などにも取り組むことで、さらなる電力需要の創出につなげるとともに、モノづくりが盛んな産業集積地である中部エリアの持続的な活性化に貢献していきます。

【北陸電力 松田社長】能登の復興に注力 安定供給と脱炭素化で北陸の発展に貢献する

令和6年能登半島地震の発生から2年。地域に根差したエネルギー事業者として、グループ一丸となって復興を後押ししてきた。

能登を含む北陸地域全体の発展に貢献するべく、ビジネスの拡大と経営基盤の強化を着実に進める。

【インタビュー:松田光司/北陸電力社長】

まつだ・こうじ 1985年金沢大学経済学部卒、北陸電力入社。営業推進部長、エネルギー営業部長、石川支店長などを経て、2019年6月に取締役常務執行役員。21年6月から現職。

井関 「令和6年能登半島地震」の発生から2年が経過しました。復興状況をどう見ていますか。

松田 2024年元旦に発生した能登半島地震と、それに続く9月の奥能登豪雨により能登半島は大きな被害を受けました。着実に復興の歩みを進めていますが、完全な復興にはまだまだ時間がかかります。

北陸電力グループは配電設備、送変電設備、発電設備などに660億円にも及ぶ損害を被りました。停電については、発災後、1か月以内に復旧することができましたが、豪雨と併せて約3300本の電柱の建て替えが必要となりました。今年度中に3分の2の対応を終える予定ですが、残りの1100本は、道路の復旧状況などに合わせて進めて行く必要があるため、地元自治体などと連携して可能な限り早急に工事を進めていきます。

井関 今後の復興に向けどう取り組みますか。

松田 これまで、被害を受けた地域への移住促進や雇用創出、なりわい再建などを目的とした割引料金メニュー「こころをひとつに震災復興応援でんき」の創設や、災害により発生した流木や家屋などの解体がれきのバイオマス燃料としての活用などに取り組むことで、復興を支援してきました。割引メニューの申込件数は家庭・企業合わせて計1600件に上り、復興の後押しになると好評の声をいただいています。

また、地震により大量に発生した廃瓦(能登瓦)を有効活用するため、当社が開発した石炭灰に太陽光パネルガラスを混合し廃瓦も加えた「インターロッキングブロック」は、大阪・関西万博に出展したパビリオン「電力館」敷地の構内舗装に採用され、当社から提供させていただきました。閉幕後は全て持ち帰り、万博のレガシーとして、当社の本店ビル西側緑地帯などに再利用していく予定です。

また、自治体施設などでも活用のニーズがあれば使っていただきたいと考えています。これらの取り組みにとどまらず、廃瓦を復興事業に活用することを目指し、石川工業高等専門学校と共にフライアッシュコンクリートの活用方法についても共同研究を進めています。


災害の知見を全国に共有 レジリエンス強化に貢献

井関 和倉温泉における復興プロジェクトにも参画しています。

松田 地元の方々を中心に、単なる復興ではなく、能登に暮らす人、働く人、訪れる人全てが幸せになれる創造的復興を目指して和倉温泉のまちづくり協議会が発足しました。当社もこの取り組みに積極的に参画し、専従の社員が「脱炭素エネルギーによる地域連携プロジェクト」のリーダーを務めています。

単なる再生ではなく、将来のカーボンニュートラル(CN)にどうつなげるかや、和倉温泉の貴重な温泉熱エネルギー(温泉排熱)を活用できないかなどを目的としており、エネルギー事業者としての知見を生かし、先進的な温泉地となるよう、地域の未来を見据えた取り組みをけん引していきます。

井関 震災で得た知見の活用にも積極的に取り組んでいます。

松田 未曽有の激甚災害を経験した事業者として、ハード面のレジリエンス強化はもとより、道路状況の把握や、資材や水・食料の調達、トイレや宿泊先の確保などのバックヤード業務、そして自治体などとの連携、規制上の課題など、いわゆるソフト面が非常に重要であると強く感じました。災害で得た知見や対策を全国の関係機関に共有・展開しレジリエンス強化に貢献することが使命、責務だと認識しています。レジリエンスの強化には、ハード・ソフト両面の知見の活用が欠かせません。現在、後方支援などにかかわるソフト面の知見については、実際の災害対応に当たり体験した課題や対応案を集約し、整理を行っているところです。

道路復旧に合わせて能登半島で進む電柱建て替え

例を挙げると、地震直後、能登半島全域が緊急用務空域(=事前の現地確認・申請が必要)に指定されたことで、迅速なドローンによる巡視・点検の妨げになったほか、避難所に電気を供給する電源車の軽油燃料取り扱いにおいて消防法による事前承認が必要になるなど、規制面での壁があることに直面しました。また、1日最大1400人もの復旧作業員が使う仮設トイレのし尿処理など、さまざまな困難があった訳でありますが、当時は一つ一つ、それぞれ関係機関と調整しながら解決を図ってきました。こうした経験を踏まえ、平時のうちに、遅滞なき災害対応、課題解消に向けて、国、地元自治体などの行政機関、災害時連携協定を締結している関係各所への働きかけ、防災訓練の強化などを通じて対応の実践的なブラッシュアップを図っていくことが重要であり、引き続き取り組んでいきます。

給電設備の最適配置を導出 EVの利便性向上に貢献

【技術革新の扉】EV走行充電の最適化/東京大学 生産技術研究所

東京大学の本間教授らは、EVの「走行充電」の実現性を数理解析で検証した。

その結果、最小限のコストで同技術を社会実装できることが明らかになった。

電池残量を気にすることなく、充電なしで無制限に走り続ける―。一見、未来都市のようだが、電気自動車(EV)が走行中に道路に埋め込まれたコイルから無線で給電を受ける「走行中ワイヤレス給電システム」(DWPT)が普及すれば現実となり得る。EVにとっては、利便性が大幅に向上する技術だ。

走行充電のイメージ図

ただDWPTを敷設するには莫大なコストがかかる。そこで、東京大学生産技術研究所の本間裕大准教授らによる研究グループは、最先端の数理モデルを用いて、コストと利便性を両立できるDWPTの「最適配置」を導出。特に市街地では、利用者が一度も充電することなく走行できる「無限走行」を提唱した。


懸念は膨大な建設コスト 高速はスタンド併用が鍵

本間氏は元々、特定の制約条件の下で最も効率的になるような値を、変数を整数で表すことで計算する「離散最適化」という分析手法を用いて水素ステーションやEV充電網の最適配置といった課題に取り組んでいた。そうした中で、「充電スタンドだけではEVインフラは成立しない」ことを示唆する試算結果に直面したことがきっかけとなり、DWPTの可能性に注目し始めた。

DWPTを実装する上での懸念は初期投資が多額となる点だ。そこで、利用シーンを「高速道路」と「市街地」に分け、DWPTを無駄なく敷設する配置パターンの模索に乗り出した。

高速道路のシミュレーションでは、東京~大阪間を結ぶ「新東名・名神」(計965㎞)、東京~青森を結ぶ「東北自動車道」(計1359㎞)のデータを基に、EV普及率を30%、1㎞当たりの設備費用を2・5億円、DWPTの受益者が1kW時当たり50円を追加負担するという条件で検証を行った。

仮に全てEVの移動需要をDWPTで賄う場合を想定したところ、費用収益面のマイナスが大きく出たため、DWPTに加え、既存の充電スタンドの利用も想定した最適配置をシミュレートした。その結果、EV移動需要の95%をDWPTが、残り5%を充電スタンドで賄う構成が最も合理的であることが分かった。EVバッテリー容量が30‌kW時の場合、どちらも敷設量は200㎞程度(いずれも往復)に収められ、車両からの収益がコストを上回る。

「東京から富士、御殿場といった短~中距離移動が最も多く、長距離移動は少数だった。多数(95%)をDWPTで、残り(5%)の長距離移動をスタンドで賄うというのが、距離ごとの利用分布からも最適配置といえる」と本間氏は説明する。


2万以上の変数から算出 市街地では無限走行可能

では市街地の場合はどうか。

高速道路との違いは、赤信号で止まっている時に充電できる点だ。本間氏は市街地において、赤信号で止まる、もしくは、右左折で徐行することが多い「交差点」付近に配置するのが効率的だと考えた。

ただ、重要になるのは交差点の付近に配置する上で、何をもって最適とするかだ。そこで本間氏が設定したのが、最も厳しい条件―ほかの充電設備を使わずに、町中のDWPTだけで走行し続けられる―という「無限走行」モデルだ。この究極的な条件でさえ、必要敷設量が現実的な範囲に収まるものであれば、DWPTの実用性を証明できる。背景にはそうした考えがあった。

市街地における最適配置で重要となるトレードオフ構造


実際に市街地での無限走行をシミュレートするためには、さまざまなトレードオフを考慮する必要がある。例えば、交通量の多い交差点では、青信号の時間が長く設定されており充電への効果は限定的だが、赤信号の時間が長い細い路地の交差点では車両の数が限られる。

こうしたトレードオフを加味しながら、離散最適化を用いて、コイルを埋める場合を1、埋めない場合を0とし、各地点の組み合わせを膨大なパターンから選び出した。対象としたのは交通シミュレーションの実績がある埼玉県川越市。総延長約15

0㎞の道路を7mで分割した約2万1千個の「0―1変数」を計算した。その結果、全道路のうち、わずか2359m(1・6%未満)の敷設で、市内の全車両が無限に走行し続けられることがわかったのだ。

本間氏はこの結果について「おおよそ半数の交差点にDWPTを2個設置すればいいという水準で、現実的に実装可能な数字だ」と強調する。

本間氏は現在、高速道路、市街地において国内外問わず他エリアでも同シミュレーションを応用すべく準備を進めている。脱炭素時代のモビリティインフラは、大きな転換点を迎えつつある―。

3町村にとどまる文献調査 地点拡大に向けた突破口は

【多事争論】話題:「核のごみ」の最終処分地選定

日本が避けて通れない高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定プロセスが遅滞している。

事態打開に向け、調査を受け入れたトップランナーと専門家はどう考えるのか。

〈「手挙げ方式」はもう限界 メディアの責任も重大〉

視点A:片岡春雄/寿都町長

高レベル放射性廃棄物の最終処分場建設を巡り、寿都町では2020~22年にかけて、原子力発電環境整備機構(NUMO)が文献調査を実施した。昨年11月にはNUMOから調査報告書を受け取り、今後法律に基づき、政府から次のステップである概要調査に進むかどうか意見を聴取された場合には、住民投票を実施する予定だ。既に住民投票条例は制定済みで、中断している町民向け勉強会は雪が解けた来春以降に再開する。この冬に政府からアクションがあった場合は、もう少し待ってもらうことになるだろう。

さて、私自身は今年10月の寿都町長選で7度目の当選を果たすことができた。今回の選挙は最終処分場問題というよりは、町民の皆さんが「10年後の寿都町をどうするのか」という点に重きを置いて判断してくださったのだと思う。

寿都町の現実は厳しい。この5年間で町は一段と疲弊し、何とか首の皮一枚でつながっているような状況だ。もともと高齢者が多い中で、年間30~40人が亡くなり、出生数は10~15人しかない。さらに高校を卒業すると多くの人が町外に出ていくため、人口は毎年40人程度減っていく。10年に3443人だった人口は今年2558人にまで減少した。基幹産業である水産加工業も打撃を受けている。水揚げ量が減り、新たに養殖を始めようとしても、資金が必要だ。

この疲弊を打開し、今後の街づくりを進める上で、概要調査の実施で受け取れる最大70億円の交付金は非常に有効だと考えている。町長選で対立候補は「交付金に頼るな」と主張したが、地域を活性化させる代案を提示できなかった。


北海道ではなく日本全体の問題 国の原子力政策は言行不一致

日本はこれまで原子力発電所の恩恵を受けてきたし、今後も活用する方針だ。そうである以上、最終処分場は絶対に必要となる。建設地選定プロセスを前進させるために最も重要なのは、文献調査の実施地点が全国的に広がることだ。20年にこの問題に一石を投じる気持ちで文献調査に応募した時、トップランナーである私たちの後ろからほかの自治体が付いてくると期待していた。しかし、この5年間で文献調査を実施したのは寿都町と同時にスタートした北海道神恵内村と、24年6月に開始した佐賀県玄海町の3町村にとどまる。玄海町こそ、原発立地自治体の矜持を持って調査に手を挙げたが、全国的な広がりはなく、「北海道の問題」として見られる状況は変わっていない。

プロセスが進まない大きな要因の一つは、メディアの報道姿勢ではないか。マスコミは読者が「自分ごと」として前向きにとらえるような報道を行っていない。推進派と反対派の意見を同じ割合で併記することは少なく、基本的には反対派の意見に多くの紙幅が割かれている。町の分断や私に対するリコール運動ばかりが報道され、本来議論すべき本質が埋もれてしまった。最終処分問題は扇動的にならず、冷静な議論を行うべきだ。

メディアを通じて、寿都町の現状を見聞きした全国の首長は何を思うだろうか。「文献調査に協力しよう」とはならないだろう。こうした状況になった以上、調査に協力する自治体を待つ「手挙げ方式」はやめた方がいい。

原子力政策は「国策」だ。国策への協力が首長の進退を賭けるような重大決断であってよいのか。責任を首長に被せるやり方は間違っている。国は第7次エネルギー基本政策などで「前面に立つ」としているが、行動が伴っていない。高市早苗首相の所信表明演説でも、最終処分問題は一言も触れられていなかった。そんな中で今国会、参議院予算委員会で国民民主党の榛葉賀津也幹事長がこの問題に触れた。国が主体的に解決に向け取り組むため、一歩前進した感はある。

プロセス前進のために、今後は二つの協議体の動きが重要になるだろう。一つは「高レベル放射性廃棄物等の最終処分に関する議員連盟」の活動再開だ。特定の政党や政治家に負担を押し付けることなく、機運を高めてもらいたい。もう一つは今年設置された全国原子力発電所所在市町村協議会の「バックエンド問題に関する検討委員会」の進展だ。立地自治体が最終処分問題を真剣に考え始めており、動きに期待している。

フィンランドやスウェーデンの事例を見ても、プロジェクト成功の鍵は国が前に出たことにある。スウェーデンでは政府が多くの地点に調査をお願いし、最終的に残った2地点が誘致合戦を行ったほどだ。日本も最終的にはこうした形になるのが望ましい。

かたおか・はるお 1949年北海道旭川市出身。71年専修大学商学部卒業。75年寿都町役場入庁。2001年寿都町長選で初当選。20年高レベル放射性廃棄物の最終処分場候補地選定に向けた文献調査に応募。全国初の調査実施を実現した。現在7期目。

【エネルギーのそこが知りたい】数々の疑問に専門家が回答(2025年12月号)

LNG基地の第三者利用の実態/灯油需要が根強い理由

Q LNG基地の第三者利用は進んでいるのでしょうか。

A LNG基地の建設には多額の投資が必要です。また、LNG船や消費地との適合性を踏まえると、適地は限られており、新規参⼊者がLNG基地を建設することは容易ではありません。

こうした背景から、既存のLNG基地を第三者に利用させる制度が創設されました。電力・ガス取引監視等委員会からの建議を踏まえ、2019年1月に「適正なガス取引についての指針」が改正され、ガス製造設備の余力およびLNG貯蔵余⼒の見通しの適切な開示、LNGタンクの占有状況を適切に反映する課金標準、競争促進に資する課金標準を用いることなどが「望ましい行為」として定められたのです。しかしこの制度は全国で2件の利用実績があるのみです。どこに課題があるのでしょうか。

上記「指針」が示す内容は、もともとLNG基地が所有者のオウンリスクにより建造される競争材であることから、所有者による運用を阻害しない余力の範囲において第三者に利用させるためのもので、その利用には限界がありました。このため、LNG基地の第三者利用にどれほどニーズがあるのかを徹底検証することが有効です。LNG基地の第三者利用により、その卸取引は多様化されることが期待できます。リロード機能を持つLNG基地では、いったんLNG船からタンクに注入したLNGを別のLNG船に移して国内外に転売することが、物理的に可能です(契約内容を含めた法的制約はあり得ます)。

LNG基地から小規模なLNGサテライト基地にLNGを運ぶことを前提とした第三者利用をするといったこれまでにない展開があってもよいでしょう。競争促進に資する制度の深化が望まれます。

回答者:草薙真一/兵庫県立大学国際商経学部 教授


Q 北海道の家庭ではなぜ、灯油需要が根強いのでしょうか。

A 北海道では、家庭用エネルギーとして灯油の需要が長年にわたり高い水準を維持しています。その背景には、寒冷な気候、住宅事情、生活文化、インフラ整備の状況、そして経済的要因が複合的に関係しています。

まず、北海道の冬は長く厳しい寒さが続き、平均気温が氷点下になる期間が他地域よりも長いため、暖房の必要性が高くなります。灯油は熱量が高く、効率的に室内を暖めることができるため、寒冷地において適した燃料とされています。

住宅事情も影響を与えています。北海道では戸建て住宅の割合が高く、個別暖房が主流です。灯油ストーブやボイラーは設置が容易で、初期費用も比較的安価、ストーブは移動が簡単にできるタイプや炎が見えるタイプなどが多くの家庭で導入されています。また、冬期間は外気温が極端に低くなる分、室内を極端に暖かく保つという生活スタイルが一般的です。これは石炭暖房が主流だった時代のなごりであり、当時は温度調節が難しかったため、家全体を暖める習慣が定着しました。灯油暖房はこの文化と親和性が高く、現在も多くの家庭で受け継がれています。

さらに、都市ガスのインフラが十分に整備されていない地域も多く、電気やガスに比べて手軽に入手・使用できるという利便性も需要を支える要因です。灯油は配達サービスが充実しており、地域の販売店による安定供給が確保されていることも、利用継続の一因です。地域によっては灯油価格に対する補助制度や価格調整が行われることもあり、経済的な面でも灯油が優位に立っています。これらの要因から灯油は家庭の主要な暖房エネルギーとして、現在も根強い需要を維持しています。

回答者:沼田常好/北海道燃料団体連合会 会長

【空本誠喜 日本維新の会 衆議院議員】新増設の青写真を描け

そらもと・せいき 1964年広島県生まれ。87年早稲田大学理工学部卒業、92年東京大学大学院工学系研究科原子力工学専攻・博士課程修了。93年東芝に入社し、原子力事業部に配属。2009年衆議院議員選挙で初当選(広島4区)、現在3期目。

東芝の原子力事業部を経て衆議院議員となり、福島第一原発事故では影で官邸を支えた。

現在は日本維新の会の経済産業部会長として、政権与党の政策を主導する。

1964年、広島県生まれ。幼稚園児の頃から「将来はロケット博士と総理大臣になってノーベル賞を取る」と親戚のおばあさんに豪語していた。この会話は言霊となり、人生の目標へと変わった。

小学生になると『宇宙戦艦ヤマト』のテレビ放送に夢中になった。放射能で滅亡寸前の地球を救うため、ヤマトが14万8000光年彼方のイスカンダル星に放射能除去装置を取りに行く物語だ。そこで「自分も将来は放射能除去装置を作ろう」と誓った。

高校生になり、今後の世界はエネルギーと食料が大きな問題になると考えた。物理が得意だったので、科学者・技術者を目指して早稲田大学理工学部、東京大学大学院原子力工学専攻へと進んだ。「東大の原子力の研究施設は茨城県東海村にあって、高速加速する陽子ビームを使って高速中性子を発生させたり、トリチウム(三重水素)を含んだターゲットにデューテリウム(二重水素)を加速衝突させる核融合実験を行ったりして研究を楽しんでいた」

その後は東芝に入社し、原子力事業部に配属された。「原子炉は『釜の底』まで見ている」と言う通り、沸騰水型原子炉(BWR)の炉内に水中ロボットを入れ、炉底の確認作業などのマネジメントを行った。発電所の寿命延長や保全技術に関する業務、高速増殖炉「常陽」の開発・共同研究といった原子力関係の仕事はほぼ全て携わった。毎年数件の特許明細書の申請も担当した。

30代になると、放射能除去装置開発と並ぶもう一つの夢、総理大臣に向けて動き出した。東芝在籍中の98年、旧自由党の国会議員一般公募に合格。旧自由党は民主党と合併し、2003年と05年の衆院選に民主党公認で出馬した。しかし、内閣官房長官などを歴任した自民党の中川秀直氏に敗れた。その後、3度目の正直で挑んだ09年の衆院選で初当選を果たした。


誕生日に発生した東日本大震災 エネルギー安全保障にこだわる

福島第一原子力発電所事故は国会議員として迎え、〝影武者〟として事態収束に奔走した。当時の菅直人首相は原子力安全委員会に不信感を募らせており、空本氏が官邸直轄の緊急助言チームを組織した。昼夜を問わず、低レベル汚染水の海洋放出とモニタリングの実施、避難者へのニュースレターの発行、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の活用などを官邸経由で東京電力と関係省庁に指示。東日本全滅という「最悪シナリオ」の作成も検討した。「3月11日は私の誕生日で、因縁を感じずにはいられない。放射能除去装置がこの世にあればと心底思った」

現在は日本維新の会の経済産業部会長(兼エネルギー安全保障分科会長)を務め、政策論議をリードする。「石油は国家備蓄などで約1年分を確保しているが、地政学リスクと発電コストが高い。天然ガスはリスク、コストともに低いが、長期貯蔵が難しい。石炭はCO2を多く搬出するが、コストは低く、貯蔵が容易だ」。こう整理した上で、エネルギー自給率を高めるために重視すべき電源について「ベースロード電源として最も期待できるのは原子力。次に高効率で温室効果ガス(GHG)排出を抑制した火力発電、その次に再生可能エネルギー」と分析する。さらに地球規模でGHGを大幅削減するために最も効果的なのは、新興国の石炭火力を日本の優れた火力技術に置き換えることだと訴える。

原子力分野でもリアリズムを追求する。「革新軽水炉の新増設と高速炉の開発・実用化による核燃料サイクルの確立が現実的」として、「どこに立地するか、具体的な青写真を示すべき時にきている」と政策の前進を望む。一方、技術開発は否定しないが、小型炉は分散化による核セキュリティ問題、高温ガス炉は核燃料サイクルの実現性、核融合は事業成立性が課題だとの評価だ。

再エネや新エネルギーについては、「国土が限られる日本でグリーン水素の大量生産は難しい。将来的には『液化グリーン水素』を輸入することになるだろうが、輸送コストが課題。アンモニア専焼は技術的にも経済的にも実用化の可能性は低い。CCS(CO2回収・貯留)も地元合意や経済性の観点で有効なら開発すべきだが、50年カーボンニュートラルには間に合わない」と鋭く切り込む。

地元ではドブ板活動を徹底する。瀬戸内海に面した離島が多い選挙区で、島内を自転車で駆け回る。1日12時間、100㎞以上走る日もあるという。夢のノーベル賞については「あと30年、90歳くらいまで研究に没頭できれば可能性はあるかもしれない。新たな蓄電技術を発明したら間違いない」と笑みを浮かべる。原子力の専門家が連立与党のエネルギー政策を支えているのは心強い。

エネルギーの羅針盤構築へ トリレンマ解消に向け支援強化

【巻頭インタビュー】アンジェラ・ウィルキンソン/世界エネルギー会議事務総長 兼 CEO

政治的緊張が続く世界において、エネルギートリレンマの解消は一層複雑化している。

世界エネルギー会議初の女性事務局長に、今後の展望と日本の役割を聞いた。

アンジェラ・ウィルキンソン ロイヤル・ダッチ・シェルやブリティッシュ・ガス、経済協力開発機構(OECD)など、多様なセクターで上級職を歴任。2017年に世界エネルギー会議に参画し、エネルギー転換に向けたツール構築や戦略的洞察プログラムを主導。19年より現職。

―世界エネルギー会議(WEC)の特徴を教えてください。

ウィルキンソン 1923年に設立され、非政府組織・非営利組織の立場から、エネルギーに関する幅広い問題について、関係者が意見を交換することができる唯一の世界的機関です。私は6代目の事務総長であり、創設以来初の女性としてこの役職に就任しました。

WECでは20年前、エネルギートリレンマという新しい枠組みを導入しました。エネルギーをうまく管理していくためには、安全保障、手頃な価格へのアクセス、環境の持続可能性の視点が必要です。これに対し、われわれは、解決策を提示するのではなく、支援する立場を貫いてきました。

現在、世界は政治的な緊張の中にあり、われわれは、ソフト面での支援を維持・発展させることに力を注いでいます。そして、多様でつながりを重視した現代のエネルギー社会の実現に向けた「新しいエネルギーコンパス」を構築していきます。


次の危機を見据えた議論を 包括的な視点が不可欠

―ロシア・ウクライナや中東での紛争が続き、エネルギー資源価格がそれぞれ値動きを見せました。ボラティリティや不確実性がここ数年のキーワードかと思いますが、今後の見通しや注目点をお聞かせください。

ウィルキンソン 世界各国のエネルギー業界のリーダーたちの声を聞く中で、懸念点に関していくつかの共通認識があります。第一に、現在のマーケットは極端なボラティリティの中にあり、コモディティ価格の不安定さが大きな課題となっています。第二に、エネルギー安全保障への関心が再び高まっていること。そして第三に、世界的なインフレや気候変動の影響を受けながら、エネルギーが「手頃な価格」であるかどうかという点が重要視されています。

エネルギートリレンマは常に存在していますが、今改めて見直す動きが拡大しています。ただ、国によっては政治的理由で、一つか二つの要素しか見ていない場合もあります。ここで見逃している要素が、次の危機につながることになります。安全保障か脱炭素か、手頃な価格か気候変動か―といったどちらかを選ぶのでなく、全ての要素を包括し「オア」でなく「アンド」でつなげる考え方が重要です。

―データセンターなどによる電力需要の急増が見込まれています。このトレンドについての課題認識や、今後の対応方針を考える上で必要な視点は。

ウィルキンソン 「需要の津波」は昨年から登場した話題であり、背景にはさまざまな要素があります。中でもAIの電力ニーズが急増している点は重要です。また、人材開発・発展の動きも大きく関わります。この組み合わせで需要が生まれており、発展途上国で顕著です。そしてデジタルのチャレンジには二つの側面があります。AI向けの電力需要増と、エネルギーをより効率的に管理するためにAIを活用するという面です。

ただ、今後こうしたスマートインテグレーションが進むと、サイバーセキュリティも重要となります。デジタル化はある意味で諸刃の剣と言えるのです。

―需要トレンドもあり、原子力ニーズが再び高まっています。

ウィルキンソン 原子力ルネサンスは世界で今話題の議論です。ただ、ある特定の技術についてではなく、さまざまな技術のルネサンスが起きているという認識です。例えば、再生可能エネルギーをある程度の規模に増やし維持するには、安定した調整力が必要で、それは原子力やガス火力から生み出されます。そして、多様でクリーンなエネルギー源の規模拡大が必要です。

日本では、既存の原子力を今後も継続して使い、同時に洋上風力の開発にも力を入れていますね。他にバイオガスやeメタンなどのクリーン燃料の開発も進み、そこにCCS(CO2分離・貯蔵)の実装も視野に入れています。どの技術も良い・悪いと一概に言うことはできず、あらゆる技術の可能性を検討する必要があるはずです。ただ、原子力に対する見方は政治的な影響を受けており、だからこそ、各国で見方が異なります。最善の結果を得るためには、パーフェクトを求めないことが重要だと思います。


高市新政権に期待感 エネ安保に新たな視点を

―日本の第7次エネルギー基本計画についてどう評価していますか。

ウィルキンソン 日本のエネルギー政策が高い成熟度に達していることを示していると感じています。安全保障、手頃な価格へのアクセス、持続可能性といった多様なニーズに対して、エネルギーシステムをいかに適切に管理していくかという視点が反映されています。また、他国の政策と共通する要素も見受けられ、エネルギートリレンマのバランスをどう取るか、そして急速に変化する国際情勢の中で、柔軟かつ迅速に対応していく姿勢が計画に盛り込まれている点は非常に重要です。

―日本初の女性総理が誕生しました。高市早苗新首相は、安全保障を特に重視しています。新政権に果たして欲しい役割は。

ウィルキンソン 高市新政権には、既存のエネルギー安全保障の枠組みにとらわれることなく、新たな視点を持ち込んでもらいたいです。これから、エネルギー供給の多角化を図るだけではなくレジリエンスの強化もさらに重要になってくるでしょう。新たな価値を生み出し、エネルギー安全保障という言葉を書き換えて欲しいと思います。

【需要家】非化石価値の転換期 国内外で制度見直しへ

【業界スクランブル/需要家】

再エネ価値評価の適正化の観点から、非化石価値取引市場の見直し議論が動き始めた。短期的な対応策として、FIT証書の市場取引に関わる下限価格の引き上げと上限価格の撤廃、非FIT証書の需給バランス引き下げが提案され、審議会ではこの方針が全面的に賛同された。また、2030年度以降を視野に市場の在り方を抜本的に見直す方針も合意された。

時を同じくして、30年頃の本格運用開始が見込まれるGHGプロトコル改定版の検討作業も進展をみせており、スコープ2の算定基準が大きく見直される方向だ。パブコメで示された改定案では、GHG排出量削減に用いる証書に①時間的、②空間的な同時性―を求めている。①はいわゆるアワリーマッチング、②はTSOエリア内や広域同期系統エリア内での需給マッチを求めるもので、証書の活用要件が厳格化される方向だ。

またFIT制度について、改定案では「標準供給サービス(公的支援や規制によるコスト回収などを伴う供給)」に該当するとし、FIT証書の価値を一定の比率を超えて特定の需要家に帰属させることはできないと整理されている。適用除外や経過措置も検討されているが、改定案に沿えば、非化石証書活用の前提は大きく変容する。

従来、FIT制度により供給主導で進んできた日本の再エネ導入だが、脱・卒FITの下では需要が導入を律速することになる。その上で前述のような変化を見据えれば、国内の再エネ電力の取引環境はさらに複雑性が増すとみられる。需要家は、電源確保へのコミット強化や、環境価値に対する対価の考え方を再考する必要があろう。(P)

仏主導で対米自立に向かう欧州 核シェアリングの実現へ課題山積

【原子力の世紀】晴山 望/国際政治ジャーナリスト

米国の「核の傘」が揺らぎ、欧州は自衛の道を本格的に模索し始めた。

「欧州の核」構想は希望か幻想か。米国頼みの安全保障体制が転機を迎えている。

欧州がロシアとの戦争に巻き込まれても、米国は助けてくれないのではないか─。米国第一主義を掲げるトランプ氏が1月に米大統領に復帰して以後、欧州諸国は疑心暗鬼に陥っている。トランプ氏は時に、欧州と敵対するロシアのプーチン大統領に接近を図ろうとまでするからだ。欧州諸国は真剣に「自立」を探り始めている。

欧州は安全保障で自立できるのか


核兵器の数と種類が不足 ロシアとの圧倒的な戦力差

最初に動いたのはフランスだ。マクロン大統領は3月5日のテレビ演説で「フランスが保持する核兵器による抑止力を、欧州全体で使うための議論を始める」と表明した。これまで欧州の安全保障を支えてきた米国の「核の傘」が破れ傘となっても、フランスがその代役を果たそうという宣言と言える。

マクロン氏は2020年2月にも、フランスが欧州の集団安全保障で中心的な役割を果たすと提案し、欧州諸国に戦略的対話を呼びかけた経緯がある。今回はさらに踏み込み、フランスを中心とする「欧州の核」構想を打ち出した。

この発言をドイツが強く支持した。2月の総選挙で勝利を収めた中道右派「キリスト教民主同盟(CDU)」のメルツ党首は「欧州を自力で守るために、あらゆる努力をしなければならない」と発言、マクロン氏が持つ危機感を共有した。さらに、ロシアと国境を接する東欧諸国もマクロン氏の提案に賛同する。

ポーランドのトゥスク首相は「米国は信用できない」と不信感をあらわにしたほどだ。

マクロン氏はその後、核兵器を搭載するフランス戦闘機を欧州各国に派遣する考えを含め、欧州の核抑止力を向上させる考えを示した。米国は現在、ドイツ、オランダ、イタリア、ベルギー、トルコの5カ国に核爆弾約100発を配備し、有事の際は各国の戦闘機に載せる「核共有(シェアリング)」を実施している。フランスもそれと似たようなことをする準備があるという提案と言える。

ただ、「欧州の核」構想には課題も多い。最大の問題は、核兵器の数と種類が絶対的に足りない点だ。

ロシアは5580発と世界最多の核兵器を保有する。大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)など威力の大きな戦略核兵器だけでなく、戦場で使う戦術核兵器を約2000発持つなど種類も豊富だ。

一方、フランスの核兵器数は290発とロシアの約20分の1に過ぎない。仮に、英国が「欧州の核」に加わっても、合計で500発足らずだ。保有する核兵器の種類も少なく戦術の幅も狭い。英仏両国の主力はSLBMで、両国はこれを4隻ずつの原子力潜水艦に載せる。だが、戦闘機搭載用の核兵器はフランスしかなく、それも54発にとどまる。ありていに言えば、仏英両国の核戦力は米国の「核の傘」を補完する力はあるが、代替する力は備えていない。米国がソ連(ロシア)に対抗するため長年かけて築いてきた「核の傘」は、「欧州の核」にそうやすやすと置き換えられるほど柔なものではない。

【再エネ】簡単ではない国産化 新政権の出方に注目

【業界スクランブル/再エネ】

高市早苗首相が「私たちの美しい国土を外国製の太陽光パネルで埋め尽くすことは猛反対」と明言した通り、メガソーラー開発の規制強化がなされる見込みだ。筆者も国費の流出につながる再エネ支援には否定的だが、再エネの急速な普及拡大に安価な中国製太陽光パネルが貢献してきたことは事実である。

再エネ産業の国産化は容易ではなく、意欲的な導入目標を掲げながらも外国製品を規制する施策は、国民や企業の経済的負担を増やすことに他ならない。競争力のあるクリーンなエネルギーが求められるが、国産の新技術として期待されるペロブスカイト太陽光や核融合の早期実用化には、技術開発や価格競争力に課題があると言わざるを得ない。恐らく短期的にはLNG調達や原子力の活用が現実解になると思う。

最近、北海道の釧路湿原のメガソーラーを巡る反対運動が活発化しているが、この問題の本質は規制種調査範囲や開発面積の境界線の認識のずれといった手続き上の不備にある。こうした事例をもってメガソーラーが無秩序に開発されてきたと総称するのは言い過ぎだろう。釧路市は国に規制強化を申し入れたが、既に国定公園など開発禁止エリアは整理されており、地域ごとの上乗せ規制は各自治体に委ねてきた。この方向性は悪くない。

2030年以降には太陽光パネルの大量廃棄時代が到来する。海外製品との価格競争に陥らないよう、国内のリサイクル技術開発や体制の構築、運用維持など、再エネ設備から運用面に補助金を振り向けるべきではないか。高市政権でエネルギー政策がどう変わるか注目したい。(K)