日本初の自治体新電力が、さまざまな課題を乗り越え設立11年目を迎えた。
歩みを止めることなく、地産地消や持続可能な経営の在り方を模索している。
群馬県北西部に位置し、新潟・長野との県境にある中之条町は、「花と湯の町」として観光客に親しまれている。豊かな自然あり、歴史的な街並みや文化遺産あり、複数の温泉地あり、バラ園が見事なガーテンありと、さまざまな顔を持つ。そしてエネルギー界隈では日本初の自治体新電力が有名だ。
同町は東日本大震災、そして再生可能エネルギー固定価格買い取りを定めたFIT法施行を機に、再エネ推進条例を制定し、町営で太陽光発電を始めた。さらに電力の地産地消を目指し、2013年に民間のV―Powerと共同で一般財団法人の中之条電力を設立。その後電力小売り全面自由化の議論が進み、また再エネ特措法改正などにより財団で電気事業を営むのが難しくなったため、15年に100%子会社の中之条パワーを設立した。
同社代表取締役・財団法人理事の山本政雄氏は、一連の取り組みを機に設置された町エネルギー対策室の初代室長を務めた。
「自治体がエネルギー関連の部署をつくったのは初めて。当時相談に行った環境省でも『エネルギー政策は国が担うもの』といった反応だった」と、この10数年の変化を振り返る。

さまざまな試練乗り越え 制度変更にも奮闘
当初は電力のノウハウはなくV―Powerが実務を担っていたが、会社設立以降、需給管理以外は中之条パワーが行う。
電源構成は約6000kWの町営太陽光がメインで、FIT電気を小売り買い取りで調達。これに加えて26年度は町内と隣町の小水力2件300kW、県営水力800kWの計7100kWを確保した。さらに県内外の卒・非FITも若干調達。電気を町に寄付してもらい、御礼として地域通貨の感謝券を贈ったり、電気代から差し引いたりする。その上で不足分は市場調達する。
25年度の販売電力量は高圧1251万kW時、低圧電灯242万kW時、低圧動力204万kW時の計1700万kW時程度。件数は980件ほどだ。公共施設が販売量の7割を占め、この他JAや民間の事業所、家庭などに供給する。特に「太陽の恵み」というユニークなメニューが好評だ。太陽光メインのため昼間に使う需要家を増やそうと、昼間だけ営業する事業所などは従量単価自体を安くする。
当初から掲げる目標1000件にはかなり近づいたが、常に順風満帆だったわけではない。全面自由化2~3年後には、大手電力が取り戻し営業で安値攻勢を仕掛け、JA関連の高圧数件が奪われた。しかし転んでもただでは起きず、JA本店に出向き低圧100カ所以上と契約。さらに今春大手電力が値上げしたことで、当時取られた高圧の契約も取り戻した。
4~5年前の卸電力市場高騰時は最大の危機を経験した。それ以降繰り越し損失が続いたものの、25年度で解消し黒字化にこぎつけた。「市場高騰以降、件数をなかなか伸ばせなかったが、危機下では逆に最小限の被害で収まった点はプラス」と捉えている。
また、「さまざまな制度に翻弄されながら、そのたびに学び力をつけてきた10年だった」とも。FIT導入で大資本の企業が再エネ事業に参入し、地域共生を軽視してもうけるケースが多く見受けられ、そのための制度変更の余波を地道に取り組む事業者も受けてきた。小売りでも、今後始まる供給力確保義務など、引き続き新制度への順応に努めていく。

調達コスト低減目指す 広域連携も視野
当面の課題は、再エネ調達コストの低減だ。町営太陽光には買い取り価格が1kW時40円のものが含まれる上、市場連動により足元では徐々に調達価格が上昇。イラン戦争に伴い先行きも不透明だ。後7~8年で町営太陽光のFITが終われば、相対契約に切り替え安価・安定調達を目指せる。
また、同じ敷地面積でも発電量を増やす形でのリプレースなども、将来的な選択肢の一つとして考えられる。さらに大目標の地産地消について、「今後の地域新電力の在り方として、広域的な連携の可能性も検討課題の一つと考えている。自治体間の連携は一朝一夕では進まないが、地域間連携も視野に入れながら持続可能な事業運営の在り方を検討したい」と強調。さらに「地域におけるバイオマス利用など新たなエネルギー分野との連携可能性にも関心を持っている。またガスなど他のエネルギーを取り扱うのは容易ではないが、エネルギー全般を議論する場は必要だ」との思いもある。
こうしたビジョンを実現させるために、地域へのメリットを具体化していくことが今後のミッションだ。「単に社を成長させお金を還元するだけでなく、その先でどう地域活性化に結びつけるかが重要。その点で多くの自治体新電力が苦労している。人口減や経済発展といった地方の課題に対して当社は何ができるのか、一つひとつ積み上げていきたい」―。老舗の次なる展開が引き続き注目される。
【地域の魅力発信】四万温泉
草津、伊香保と並ぶ上毛三名湯(写真は同温泉発祥の地とされる「御夢想の湯」)。「四万の病を癒す湯」として鎌倉時代から評判だ。国民保養温泉地第一号の指定を受けた。泉質はナトリウム・カルシウム―塩化物・硫酸塩泉。全国でも知られる「美人の湯」だ。効能はリューマチ・神経痛・皮膚病の他、胃腸病にも効くという。湯宿の他、町営の湯や共同浴場、飲泉所、足湯もあり、湯巡りが楽しめる。

出典:四万温泉協会HP



















