〈業界人編〉電力・石油・ガス
イランの戦火、石油備蓄放出、柏崎刈羽の営業運転……。エネルギーが話題になった1カ月だった。
─アメリカとイスラエルがイランを攻撃した。ホルムズ海峡が事実上封鎖される事態に……。
ガス 石油の国家備蓄を初めて単独放出した。LNGは備蓄が3週間分しかないが、ホルムズ海峡を経由するのは輸入量全体の6%ほどだ。日本にとっては直接的な影響は小さいものの、原油価格が上がれば2022年のウクライナ侵攻時のように、電気・ガスが高騰しかねない。3月使用分で終了した電気ガス料金補助は夏を待たずに復活するかもしれない。
電力 大手電力で燃料調達を担当していた知人も、市場価格を気にしていた。高市早苗首相は3月3日の衆院予算委で料金補助について「延長を判断するという段階にはない」と答えたが、9日には「遅すぎることなく対策を打つ」と明言。19日にはガソリン価格が170円を超えないようにする激変緩和策が復活した。
石油 昨年の核施設への攻撃時もそうだったが、日本と海外メディアの差は歴然だね。日本メディアは周辺国から情報を伝えているが、海外勢は現地に入っている記者もいる。日本の論説委員が社説で国際法違反だと論を垂れても、説得力はない。
電力 海外メディアはイラン人が最高指導者ハメネイ氏の死を喜んでいる様子を伝えていた。一方、日本では平和を望む様子や「アメリカに報復してやる」と怒っている姿が多く報じられた。海外メディアの方が実態に近い気がする。
ガス イランに勝算はないが、革命防衛隊を無力化するのも困難だろう。9・11のような報復テロが起きないことを祈るよ。
迷走するトランプ関税 脱炭素より経済安保に
─日本が対米投資第1弾を発表した矢先に、米最高裁が相互関税に違憲判断を下した。
ガス 日本企業は関税を下げてもらうために背伸びしているというのに……。アラスカLNGに関心表明する必要もなかったという話になりかねない。これまでは中国が「ビジネスの予見性がない」と言われてきたが、アメリカもそうなってきた。
石油 2月には米エネルギー長官が、気候変動対策の重視を続けるならIEA(国際エネルギー機関)を脱退すると言い出した。今のビロル事務局長体制が再生可能エネルギー偏重なのは確かだ。田中伸男事務局長の時代とは変わってしまった。
電力 2月27日の日経に掲載されていたフィイナンシャル・タイムズのコラムニスト、ラナ・フォルーハー氏の「米、化石燃料へ傾斜の愚」というオピニオンは良かった。トランプ政権の気候変動対策の軽視は、国民の命と次世代産業の競争力を犠牲にして、アメリカを衰退させているという論旨だ。日本の新聞でこういった重厚な記事を見る機会は少ない。
─国内では政治風景がガラッと変わった。
ガス 食料品の2年間消費税ゼロに向けた議論が始まった。かつて軽減税率を導入する時、食料品だけでなく新聞も生活必需品だという理屈で対象になった。新聞よりはエネルギーの方が必需だが、国民は消費税10%や石油石炭税、再エネ賦課金などを負担している。
電力 総選挙で原子力政策に明るい議員が増えたが、浜岡原発の不適切事案や原子力規制庁職員の社用スマホ紛失、九州電力社員に対するどう喝など締まりがない。それでも、最終処分場の文献調査地の拡大など、政策が前進するのは間違いない。
気になるのは再エネ政策の行方だ。例えば、経済安全保障に重きを置く高市政権が、中国製の安価な太陽光パネルやパワーコンディショナー、蓄電池をどう扱うのか。中国製品を排除すればビジネスが成立しない事業者もいる。日本や同志国の製品の使用を義務付けるなら、新たな補助金が必要かもしれない。
ガス 経済安保に力を入れれば、多くの民間企業が影響を受ける。これまで企業は「高くても脱炭素電源」だったが、これからは「高くても中国以外の製品」になるかもしれない。
エネルギー基本計画も変わる。次期エネ基は、現行の第7次のように複数ケースで「ぼかす」のだろうが、第9次では経済安保や安定供給を前面に打ち出し、50年カーボンニュートラル(CN)というゴールが動くのでは。新興国のように60年、70年CN目標に変わっていく。
気になる東電の連携相手 情に訴える朝日
―柏崎刈羽原発が約14年ぶりの営業運転を迎えそうだ。
ガス 本当に長かった。テロ対策の不備など東京電力の不手際はあったが、一度ルールを変えると、もう一度動かすのがどれだけ大変か痛感した。東電はアライアンスを組むようだが、外資ファンドなどに資産だけを売却させられ、一時的なキャッシュを生むだけで終わらないか。福島事業がある限り、真のアライアンス先は国しかないだろう。
石油 朝日は3月に長崎大学の鈴木達治郎客員教授や規制委の更田豊志前委員長のインタビューを掲載。柏崎刈羽の再稼働にお灸を据える記事が目立った。
3・11が過ぎた12日の社説は「思い出してほしい。東京電力の過酷事故で恐ろしい思いをした日々を」という社説らしからぬ書き出しで驚いた。「原発より
再エネを」という持論を情に訴えかけているように読めたね。翌日の社説でも、六ヶ所再処理工場の稼働は「看過できない」と核燃料サイクルの撤回を叫んでいた。
─計画停電を思い出して安定供給の重要性も論じてほしい。