【今そこにある危機】本間輝彰/日本スマートフォンセキュリティ協会副会長・理事
スマートフォンから遠隔操作が可能となるスマート家電。
便利だが停電や通信障害が発生すれば、日常生活に支障をきたす。
インターネットやワイヤレス通信技術の進化により、IoT(Internet of Things)によるさまざまなサービスが急速に広がっている。
その中でスマート家電は、エアコン、照明、カメラ、電子ロックなどの普及で、音声アシスタントやスマートフォンからの遠隔操作が可能となり、生活様式やビジネスモデルに革命をもたらしている。これらの家電は、使用状況をリアルタイムで収集でき、クラウドで分析して自動で監視・制御を行い、効率的な利用法を提案、異常検知時の自動通知も可能だ。さらにスマートハウスの概念により、これらのスマート家電を一元管理することで利便性は一段と向上する。例えば、居室に入ると自動で照明が点灯し、温度が調整されるなど、ユーザーに合わせた環境が提供されるのだ。
だが、こうした便利さはセキュリティ上の危険と隣り合わせだ。サイバー攻撃者は、インターネットに接続されたスマート家電を攻撃対象にしている。これまでに学校防犯システムや保育所見守りカメラで、十分なセキュリティ対策が行われていないことによりマルウエア(悪意のあるソフトウエア)に感染し、どちらも第三者から映像が閲覧できる状態になっていた事例がある。さらには、保育所ではインターネットが使えない状態にもなっていた。

このようにIoTはセキュリティの脆弱性やプライバシー侵害、データの不正利用が懸念され、特にスマートフォンの場合は攻撃されやすく、気づきにくいという弱点がある。過去にはスマートロックの脆弱性により、Wi―Fiに接続するための暗号化キーが解読されそうになった事例があった。万が一、Wi―Fiに接続されると、接続されているデバイスへの不正アクセスや乗っ取り、プライバシーの侵害のリスクが発生する。被害が拡大する前に適切な対策が必要だ。 こうした背景の中、国内では経済産業省が公表した「IoT製品に対するセキュリティ適合性評価制度構築方針」に基づき、求められるセキュリティ水準に応じて、レベル1~4までの適合基準を定める「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(JC―STAR)」が3月に始まる予定だ。適合が認められた製品には、二次元バーコード付きの適合ラベルを付与することで、製品詳細や適合評価、セキュリティ情報・問い合わせ先などを調達者・消費者が簡単に取得できる。
多要素認証の重要性 利用者への働きかけを強化
リスクを最小限に抑えるには、製品提供者とユーザーが共に対策を行うことが肝要だ。まず製品提供者は何をすべきか。
攻撃の多くは脆弱性を突いた不正アクセスを起点としているため、脆弱性診断や侵入テストを行い、未使用なポート(情報の送受信口)の遮断が求められる。さらには、インターネット上の多くのサービスではパスワード漏えいなどによる不正アクセスも多いのが実態である。その対策として、初回利用時にパスワード変更、多要素認証や生体認証を導入することで、不正アクセスのリスクを大幅に削減可能となる。
また盗聴や漏えい対策として通信時や保存データの暗号化を行うことで、万が一のデータ流出時にも影響を最小限に抑えられる。 スマート家電を提供するアプリについても、脆弱性診断の実施、利用データの透明性を確保するためのプライバシーポリシーの公開など、日本スマートフォンセキュリティ協会が発行している「スマートフォンアプリケーション開発者の実施規範」が推奨する対策などが求められる。
利用者に正しく利用してもらうために、スマートフォンのアプリなどで適切なアドバイスを能動的に行う仕組みも有効となる。また製品やシステムが適切に設計され、正しく実装されていることを評価するための国際標準規格コモンクライテリア認証(CC認証)やJC―STARの取得なども、製品の信頼度向上として推奨される。
スマート家電を提供するアプリについても、脆弱性診断の実施、利用データの透明性を確保するためのプライバシーポリシーの公開など、日本スマートフォンセキュリティ協会が発行している「スマートフォンアプリケーション開発者の実施規範」が推奨する対策などが求められる。利用者に正しく利用してもらうために、スマートフォンのアプリなどで適切なアドバイスを能動的に行う仕組みも有効となる。また製品やシステムが適切に設計され、正しく実装されていることを評価するための国際標準規格コモンクライテリア認証(CC認証)やJC―STARの取得なども、製品の信頼度向上として推奨される。