〈メディア人編〉大手A紙・大手B紙・大手C紙
イランショックという国難に対峙する中、高市政権に不穏な空気が流れている。
―3月以降、日本政府は石油備蓄放出や補助金復活、代替調達の確保など矢継ぎ早に手を打ってきた。これまでの動きをどう見る?
A 総じてうまくやっていると思う。ただ、高市早苗首相の発信の仕方はちぐはぐだ。6月にナフサが供給できなくなる可能性に触れたTBSの報道特集に、高市首相は事実誤認とXで反論。こうしたこともあって首相は国民の不安払しょくに重きを置いているのだろうが、発言が出たとこ勝負で、どこまで言って良いというラインをきちんと共有できているのか疑問だ。
B 燃料油補助金の復活には危機感を覚える。今後石油価格が下がるとは考えられず、「ガソリン補助金2カ月で枯渇か」との毎日の記事は現実的な内容だ。経済を冷え込ませたくないとの政権の考えも分かるが、財政負荷が一層重くなり、脱炭素も遠のき、エネルギー基本計画に沿っているとは言えない。衆議院であれほど議席を得たにも関わらず、場当たり的な姿勢にはがっかりだ。高市首相は予算などでも詳しい説明を嫌がっているように見えてしまい、その見え方が政権の足を引っ張っている。
C でも周辺諸国に比べたら各段によい。某国は一部のスタンドが閉まり、一時レギュラーが1ℓ250円超に。日本ほど備蓄できておらず、不足を懸念する国民に対し政府は「大丈夫」と繰り返すばかり。そして日本より遅れて価格支援に踏み切った。ただ、日本は最近まで平時でも補助金を出していて、また復活というのはどうかとは思う。
A 支援は業界を絞るべきとの意見もあるが、政府と大手広告代理店の癒着が数年前バッシングされた。今は代理店に丸投げできなくなり、面でばらまくしかないといった事情もある。
『選択』記事はさもありなん 揺らぐ高市政権の深刻さ
―そうした中、ホルムズへの自衛隊派遣を巡って高市首相と今井尚哉氏が大げんかしたとの『選択』の記事が話題だ。
A 安倍政権時代も今井氏は他の官僚とともに安倍晋三元首相を恫喝したことがあったと文章に残っている。だから今回も概ね記事のような衝突はあったのだろう。問題は、今それができる人が今井氏だけということ。安倍政権には世耕弘成氏や萩生田光一氏、菅義偉氏がいたが、高市官邸の面々はそうではない。
C 今井氏は前から干されているといううわさもある。高市首相は仲間が少なく、政権発足から半年経つのに信頼関係を築けていない。特にイラン攻撃勃発以降、党、永田町、霞が関との間に隙間風が吹いている。例えば党内で節電要請の話が出た時、首相は言いたくないと反対。再審制度改正議論でももめている。
B 首相自らXで発信する姿勢など、人の意見を聞かない政策オタクの面が如実に出ている。また、赤沢亮正経済産業相を働かせすぎだが、外から見ても誰を信用しているのかはっきり分かってしまうことはよくない。
A 本来、予算成立後はインテリジェンス、皇室典範や憲法改正、夫婦別姓などの議論に着手し、高市ファンを喜ばせたかったはず。それができていないのは誤算で、このままではファンが爆発しかねない。
B 支持率の高さのわりに掲げた政策は後退し、特に消費減税にはかなりネガティブになってきた。これが実現できないと支持率にダイレクトに効いてくる。
―他に注目した記事は?
A ロイターが報じた、ロシアへの経済訪問団の派遣計画は気になる。政権は否定したが、背に腹は代えられない。ロシアへの経済制裁を緩めれば、安倍政権時代に進めてきたロシア産石油・ガスの調達が実現できる。当時この案件を担当していた世耕氏がどう動くのか、注目している。某月刊誌の講演会で日露の話をかなり前向きに発言していたとも聞く。
B それにしても、この局面であれば原子力推進派はリプレースなどを具体的に進めるために動けばいいのに。
C 再生可能エネルギーも気候変動視点でなく、安全保障上の必要性を重視し、現実的なこれからの政策を示すべきだろう。
A 石炭火力もあまり話題になっていないが、近年のバッシング一辺倒を反省すべきだ。
C いずれにせよ、戦争ともなれば現場は日々の取材で手一杯。論説やオピニオンでこうした発信を積極的に行ってほしい。
再処理政策に暗雲 見直しは必要か否か
―ホルムズ関連以外でも重要なエネルギーニュースがいくつかあった。
A 青森県の宮下宗一郎知事が、再処理工場の建設遅れで今年度使用済み燃料の搬入を認めないとしたが、既定路線だ。知事当選直後も似たような出来事があったが、その際も状況をよく理解していた。
C もんじゅの使用済み燃料の再処理先候補だったフランスの施設の新設が撤回されたと、毎日だけが報じた。これは結構深刻ではないか。続報を待ちたい。
B 再処理関連は良いニュースがなく常に足かせになっている。原子力を推進したいなら私はワンスルーしかないと思う。
A ワンスルー論者は原子力嫌いという点が気になるが……。
B でも現実を直視すべきだ。中間貯蔵施設を増やしつつ、いずれどこかで直接処分するといった方針を打ち出さないと、原子力がイデオロギーになる。
―再処理は議論百出だが、ホルムズショックを機に安保の観点から政策を再点検すべきことは確か。そろそろ根本的な議論に入る頃合いだろう。




