米国の電気料金は2025年を通して上昇し、メディアはこの問題に注目するようになった。エネルギー問題を超えて政治的論争へと広がり、年央以降は主要メディアによる報道が相次いだ。Reuters(7月9日)、Bloomberg(7月10日)、Fortune(7月10日)、The Daily Mail(7月13日)、NPR(8月20日)、TIME(8月27日)、CBS News(10月27日)、The New York Times(10月30日)、Associated Press(11月8日)、The Wall Street Journal(12月29日)など、多くの媒体が電気料金高騰を取り上げた。
電気料金上昇の主因は、データセンター需要の急増、送電網への大規模投資、天然ガス価格の変動、山火事や冬の嵐といった気候災害などである。EIA(U.S. Energy Information Administration)によると、家庭用電気料金は2026年に5.1%上昇すると見込まれており、2030年に向けても電気料金は確実に上昇する見通しである。その背景には、データセンター需要の継続的な増大、老朽化した送電網の更新や再生可能エネルギー接続に伴う大規模な送電投資、そして再生可能エネルギーの導入ペースと送電網整備のギャップがある。
国際エネルギー機関(International Energy Agency: IEA)は、最新の Electricity 2026 において、2026〜2030 年を「Age of Electricity(電気の時代)」が加速・定着する期間として位置づけている。こうした世界的潮流の中、日本でも生成AIの急速な普及やデータセンター投資の拡大が電力需要を押し上げる新たな要因として顕在化しつつある。企業はクリーン電力の調達、AI向け電力インフラの整備、電化設備への投資を加速させており、2026〜2030 年は、産業構造が、より電力集約型・AI集約型へと転換する節目となるだろう。特に留意すべきは、米国で顕在化している電気料金の高騰である。これは日本にとって“将来の姿”となり得る。電気料金の上昇は国民生活への負担増に直結するだけでなく、社会的関心を高め、場合によっては政治問題化する可能性すらある。したがって、電化とAI需要の拡大を見据えつつ、安定的かつ持続可能な電力供給体制を構築することが、これまで以上に重要な政策課題となる。
もちろん、政府文書から脱炭素という言葉が完全に消えたわけではない。日豪共同声明にもエネルギー移行やエネルギー効率化は残っている。パワー・アジアにもバイオ燃料、省エネ、次世代エネルギーの要素は含まれている。だが、それらはもはや脇役になっている。原油、石油製品、LNG、石炭、備蓄、製油所、重要鉱物、金融支援など、あらゆるエネルギー安定供給の推進(“all of the above”)における一要素に格下げされたのである。