【今そこにある危機】高市首相が「台湾有事発言」で踏んだ習近平の地雷

近藤大介/ジャーナリスト

中国はなぜ「高市発言」で日本に経済的威圧を仕掛けたのか。

背景には好転する対米・台湾政策と共産党内の権力争いがあった。

2月8日投開票の衆院選期間中も、中国からの経済的威圧が続いている。そんな中、選挙の大義名分に中国が「闖入」した。それはこんな具合だ。

〈首相周辺は「政権が安定すれば中国側の見方も変わる。解散にはその意味もある」と語り、衆院選勝利で強い政権基盤を作ることで、対中関係の局面打開を図る狙いもあったと明かした〉(朝日新聞1月19日付)

なんという甘い考えだろう。たとえ高市自民党が勝利しても、中国側が拳を振り下げることなどないに決まっている。

日中対立は当分続きそうだ


長期不況にあえぐ国内 台湾統一が権力維持の条件

なぜそう言えるか。話は昨年10月にさかのぼる。21日に高市政権が発足したが、その時、北京では「4中全会」(中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議)が開かれていた。

この共産党の重要会議でコンセンサスとなったのは、2027年秋に開かれる第21回中国共産党大会で、習近平総書記の「超異例」の4期目留任を容認するということだった。

ただし、そのためには「正当性」(留任するための理由)が必要だ。実はこのことは、22年10月の第20回共産党大会で習氏が「異例」の総書記3選を果たした時も同様だった。当時、習総書記は「まだ祖国(台湾)統一を果たしていないので、あと5年いただきたい」と述べたとされる。

中国経済は、習政権が発足した13年以降、悪化の一途をたどっている。特に、20年に新型コロナウイルスがまん延し、習主席の「鶴の一声」で「ゼロコロナ政策」(ウイルス封じ込めのため都市をロックダウンする政策)を丸3年も続けたせいでガタガタになった。

現在でも、デフレ下の長期不況にあえいでいる。そのため習主席は、台湾統一問題を何とかしないと自らの4選がおぼつかないと、追い詰められている。

そんな時に、まるで習主席の「地雷」を踏むかのように、昨年11月7日に高市首相が国会で、「台湾有事と存立危機事態」の発言をかましたのである。

この発言が飛び出す前、中国にとって、台湾統一の「障害物」は二つあった。

一つは、独立志向が強い台湾の頼清徳政権である。頼政権は来年11月に統一地方選挙を控えており、これに惨敗すればレームダック(死に体)に陥る。そのため中国としては、頼政権に最大限の圧力をかけて、2300万人の台湾人に、「頼政権が続けば中国軍に侵攻される」と思わせたい。昨年末(12月29~30日)に中国人民解放軍が強行した大規模軍事演習「正義の使命2025」は、そうした典型例だ。中国軍は軍用機207機、艦船31隻、海警船16隻を繰り出して、台湾の周囲5カ所を取り囲んだ。

同時に、台湾最大野党の国民党に肩入れし、昨年10月18日の国民党主席選挙では、候補者6人中、「最も親中的な」鄭麗文候補を陰で支援し、勝利させた。中国は、来年11月の統一地方選挙でも、鄭主席率いる国民党に勝たせ、その先には台湾への「無血入城」を見据えている。だが逆に、選挙で頼総統率いる民進党が勝利したなら、いよいよ武力統一を真剣に考え出すだろう。

図らずも、27年8月1日は中国人民解放軍創建100周年であり、習主席はこの時までに「奮闘目標を達成する」と言い続けている。「奮闘目標」の中身は明かしていないが、普通に考えれば台湾統一だ。

そんな時、統一の「第二の障害物」となるのが、日本をはじめ東アジア各地に軍を駐留させ、台湾に武器輸出するアメリカだ。

バイデン前米大統領は、中国が台湾に侵攻すればアメリカが武力介入すると、4度発言した。だが現在のトランプ大統領は一度も発言していない。

それどころか、昨年10月30日に習主席との6年ぶりの対面での首脳会談を終えた後、台湾問題について記者に聞かれ、「それは議題に上がらなかった」と平然と答えた。おそらく、1972年にニクソン大統領が訪中して先鞭をつけて以降、米中首脳会談で台湾問題が議題に上がらなかったことは、一度もないだろう。だがトランプ大統領にとっては、台湾問題よりも米中貿易問題の方が、はるかに重要なのである。

【オピニオン】エネ安保と積極財政が国家存続の要諦

藤井 聡/京都大学大学院工学研究科教授

政府とは本来、国家の存続、すなわち安全保障を第一の目標とする組織体である。その前提の下で、国家の繁栄と国民の幸福を可能な限り増進する存在である。国家が存続しなければ、繁栄すべき国家も幸福を追求すべき国民も存在しない以上、国家存続と国民生活が衝突する局面では、何より国家存続を優先することこそ政府の最大責務である。

国家存続のためには軍事防衛のみならず、食料・エネルギーを中心とする経済安全保障が不可欠である。しかも安全保障にはトレードオフは存在しない。防衛を重視するために食料やエネルギー安保を犠牲にすることは許されない。人間の生命が代替不能な臓器全ての機能によって維持されるのと同様である。ゆえにエネルギー安保は、政府にとって文字通り最重要課題の一つである。

果たしてわが国政府は、そういう認識を真剣に所持し続けているのか。恐らくは読者各位がその問いに対して即座に否と答えるであろう程に、エネルギー安保は政府によって蔑ろにされ続けている。あらゆるエネルギーの自給率は先進国の中でも極端に低いにもかかわらず、エネルギー事業に対する国費投入量が激しく制限されている。その結果、エネルギー自給率はわが国を取り巻く環境的条件を適切に有効利用することができず、驚くべき低水準が続いている。わが国は石油や天然ガスが豊富に得られるわけではなく、エネルギーとして活用可能な資源は限られている。

しかし、地熱や洋上風力、水力の潜在力は高く、十分な国費投入があれば自給率を大きく引き上げることは可能である。原子力発電にしても民間企業にその対策を丸投げするのではなく、国費投入を基本とした中央政府対策が拡充されれば、稼働台数がさらに拡大していくことは間違いない。また、主要都市の発電所が沿岸部に集中する現状は、巨大地震や有事の際、広域ブラックアウトを招きかねない重大な脆弱性である。

このままでは地政学的なリスクが生じて石油やガスの輸入が滞ったり、巨大災害やテロ、軍事的攻撃などで沿岸域の発電所が軒並み破壊されたりすれば、わが国の経済や社会が継続することができなくなり、国家の存続そのものが困難となる事態に追い込まれる。

つまり、わが国は緊縮財政ではエネルギー安全は全く保障され得ないのである。かくして高市政権が掲げる「責任ある積極財政」は、エネルギー安保の確保を通した国家の存続にとってもまた、絶対的に必要不可欠な財政方針なのである。

政府内外の緊縮派の抵抗を乗り越え、エネルギー安保の確保を含めたあらゆる「危機管理」の投資が責任ある積極財政の下、速やかに実現されることを切に望みたい。

ふじい・さとし 1991年京都大学工学部卒業、93年京大大学院工学研究科修了。2009年から現職。12~18年に内閣官房参与を務め国土強靭化政策の一翼を担った。

【経済論評】中電の不祥事で遠のく原子力への信頼

【脱炭素時代の経済評論 Vol.23】関口博之 /経済ジャーナリスト

柏崎刈羽原発の再稼働に新潟県の花角英世知事が同意し、6号機の起動が近づいている。福島第一原発事故の当事者である東京電力の原発再稼働で一つの節目を迎え、国内原発を巡る情勢も前進するはずだった。その矢先、中部電力が浜岡原発の安全審査でデータを不正操作していたことが発覚。2026年、原子力問題にわれわれはどう向き合うべきか俯瞰してみたい。

避難路整備を全額国費で負担、東電は1000億円の基金拠出。〝新潟スペシャル〟と称される関係者の注力によって柏崎刈羽原発の再稼働はなった。この夏の首都圏の電力安定供給にもつながる。まずは安全操業が最大の課題、その積み上げが原発の安全性構築の土台だ。細心万全の体制で臨んでもらいたい。

年末には前向きな話題があったが……

地元にとっては「首都圏のための電力」というねじれは残る。東電は柏崎刈羽原発周辺でデータセンター(DC)を誘致・開発することも構想する。地元活性化への貢献になり、旺盛な需要の確保にもなる。

福島第一原発事故の賠償、廃炉などで東電が負担する額は16兆円超、年5000億円を捻出し続けなければならない。原発1基の再稼働で1000億円の収益改善になるとされるが、到底足りない。再建計画である次期総合特別事業計画(総特)は1月中にも確定する。鍵とされるのが成長に向けた「アライアンス」。他企業との協業によって、DCや半導体事業などを成長分野として取り込む戦略を描けるか、注目される。

「AIによる電力需要増に原発が必要」というのは短絡的だとする有識者もいるが、脱炭素との両立を考えれば原発再稼働が現実解であることは確かだ。世論にも訴えるべきだろう。

第7次エネルギー基本計画が盛り込んだ原発の新増設・リプレースも次なる課題。昨年7月、関西電力は美浜原発での原発新設に向けた調査再開を発表した。

より安全性を高めた「革新軽水炉」を想定しているが、その安全審査には当局による規制基準の策定が不可欠。資金調達面からの環境整備も必要だ。建設へのリードタイムの長さを考えれば待ったなしの課題だ。

核燃料サイクルの要となる六ケ所再処理工場は26年度中のしゅん工を目指す。度重なる延期を経て日本原燃には正念場だ。バックエンドでいえば高レベル放射性廃棄物の最終処分場問題もある。北海道寿都町、神恵内村では文献調査から概要調査に進むのかどうかという段階にある。幅広く国民が関心を持たない限り事態は進まない。

原子力の問題は「レーダーチャート」的に捉えなければならない。各項目を放射状に示した多角形のグラフ、食品の成分分析に使われるあれだ。たとえば再稼働一つが前進しただけでは情勢は変わらない。あらゆる方位で少しずつでも「レーダーチャートの面積」を広げていく努力が要る。その広がりが国民の理解と信頼につながる。しかしここで起きた中部電力による浜岡原発のデータ不正。耐震設計の元になる「基準地震動」の数値を操作していたという。原子力規制委員会は審査を白紙に戻すと決めた。地元はもとより国民の信頼も遠のく。チャートはまた縮小してしまった。

【フォーラムアイ】澤昭裕氏没後10年 電力政策の現状と展望を多角的に議論

【公益事業学会】

公益事業学会、日本原子力学会、電気学会共催のシンポジウム「次世代電力システムへの道と原子力基盤再構築へ向けて~澤昭裕氏没後10年に考える」(運営協力エネルギーフォーラムなど)が1月16日に開催された。

開会のあいさつで竹内純子・国際環境経済研究所理事は、澤氏が残した講演資料などを示しながら、電力システム基盤再構築に向け求められる議論の観点を整理。環境政策や原子力政策、自由化などについて将来を的確に捉えた同氏の慧眼に触れた上で、「澤氏が一人でチャレンジし続けた俯瞰的で現実的な議論を実践するために、立場や所属を超えた議論の場を広げていただきたい」と訴えた。

電力・原子力政策を巡り活発な議論が行われた


真のシステム改革へ 澤氏が主張した3要件

その後は、「電力・エネルギー政策のあゆみ・現状と展望 多角的に考える」をテーマに資源エネルギー庁の村瀬佳史長官ら産官学の4人が講演。その中で村瀬氏は、「自由競争市場の中で、電力ネットワークの次世代化のための巨額投資にインセンティブが生まれるような制度改革を急がなければならない」と今後の方向性を語った。

電気学会元会長で中部電力会長の勝野哲氏は、澤氏が生前、国の電力システムが確保すべき要件として「安定供給に必要十分な一定の冗長性を持った供給力の確保」「国際エネルギー市場で伍していける購買力の形成」「電源の多様化によるリスク分散」の三つを挙げていたとし、「この要件をいま一度認識し、これらを満たす真の改革を果たすことがわれわれの責務だ」と述べた。

後半のパネルディスカッションは西村陽・大阪大学招聘教授をモデレーターに、5人のパネリストが登壇し「次世代電力システムへの道と原子力」をテーマにディスカッションした。竹内氏は、「発送電を分離する形で進められてきたシステム改革を、垂直連携できる制度設計によりどこまでリカバーできるかがこれからの肝だ」と明言。

小笠原潤一・日本エネルギー経済研究所研究理事は、「米国では、容量市場を含めた電力市場のボラティリティによって相対契約が促進され、電源投資や燃料確保につなげている。日本はその真逆で、多少は変動性を持たせた方がよいのではないか」と持論を展開した。

これを受け、エネ庁電力基盤整備課の添田隆秀課長は、「供給力を確保するという観点で、今の容量市場の仕組みが適切に機能しているか包括検証しているところ。次回のオークションに向け、直すところは直していくべく、その検討を1月中に本格化させたい」と応じた。

【ビジネスリーダー】販売量9位のU-POWER“異業界社長”の突破力と戦略眼

高橋 信太郎/U-POWER代表取締役社長

新電力のU-POWERが販売量ランキングでトップ10入りを果たした。

時代の最前線を渡り歩いてきた異色の社長が見据えるビジョンとは─。

たかはし・しんたろう 1989年関西大学文学部卒業、リクルート入社。2006年まぐクリック(現GMOインターネット)代表取締役社長、16年インディード・ジャパン代表取締役営業本部長などを経て、20年USEN-NEXT HD(現U-NEXT HD)入社。21年から現職。

電力小売りなどを手掛けるU―POWERは、店舗・施設のDX支援や動画配信サービスを展開するU―NEXTホールディングス(HD)傘下だ。同HDの源流は、店舗向けBGMなどを展開するUSENと500万人の会員を持つU―NEXT。新電力としては後発ながら、昨年6月の電力販売量のランキング(新電力)で総合9位にランクインするなど勢いが止まらない。躍進をけん引するのは、エネルギー業界としては異色の経歴を持つ高橋信太郎社長だ。


ゲームからネット業界へ エネルギーをやらないか

大学時代から学生ベンチャーで活動していた高橋氏は、1989年にリクルートへ入社する。求人広告事業に7年ほど携わった後、自ら提案し、ゲーム雑誌『じゅげむ』を創刊。社会現象となったカードゲームの販売などにも奔走した。

2001年には普及初期だったインターネット業界に転身する。まぐクリック(現GMOインターネット)の役員や関連企業の社長として、メールマガジン広告の専属販売やグループ再編などを担った。

16年には求人検索エンジン最大手のインディード・ジャパンに代表取締役兼営業本部長として転職する。「仕事探しはインディード」のメロディでお馴染みのテレビCMを手掛けるなど、常に市場をゼロから大きくする役割を担ってきた。

そんな高橋氏がエネルギー業界に飛び込むきっかけになったのは、世界が新型コロナウイルス禍に揺れていた20年のことだ。総合人材サービス大手インテリジェンス(現パーソルキャリア)の創業者で、現在はU―NEXT HDの代表取締役CEO(最高経営責任者)を務める宇野康秀氏から「うちでやってみないか」と誘われた。CMO(最高マーケティング責任者)として入社したが、1年ほど経過した頃、「電力事業をやってみないか」と打診を受けた。

高橋氏は当時について、「自分にできるのかという不安が大きかった」と振り返る。知見を得るためにTEPCO i―フロンティアズの菊地英俊氏、経済産業大臣政務官を務めていた吉川有美氏など3人に相談すると、皆から「やってみなよ」と背中を押された。

そこで確信したのは、電力業界がかつてのインターネットの普及拡大期に似ていることだった。当時はエネルギー価格高騰によって多くの新電力が倒産し、政策的には脱炭素へのシフトが進みつつあった。「やり方次第で、新参者でも市場を伸ばせるのではないか」という直感が働いた。


とんちを利かせろ 小売りの枠を超えて

21年にU―POWERの本格的な挑戦が始まった。設立当初は自前のサイトもなく、社名しか決まっていない状態だった。「プロフェッショナルの採用が一番苦労した。応募が来ない状況からのスタートだった」というが、インディードでの経験が生きた。再生可能エネルギーの推進とこれまでグループが築き上げてきた顧客資産をベースに、意欲のある人材を一人ひとり口説き落とした。

U―POWERの強みは地道な営業活動だ。グループ全体で全国約150拠点を構え、U―POWERは全国の主要都市を中心に営業担当者を配置している。フェース・トゥ・フェースの営業で順調に顧客数を伸ばした。新型コロナ禍後に新電力の倒産が相次いだ時には、価格高騰局面ながら高圧に市場連動型メニューを導入した。

社員に口酸っぱく言っているのは「とんちを利かせた取り組みを考えろ」ということだ。そこで、低圧の契約を増やすべく、昨年末には東京ガールズコレクション(TGC)を企画・制作するW TOKYOと家庭向けの実質再エネ電力「TGCでんき」の供給を開始した。

高橋氏が見据える先は、小売事業の枠にとどまらない。狙うのは総合電力会社への進化だ。設立1年目に立ち上げた企業向けの脱炭素コンサルティング事業は、ようやく軌道に乗ってきた。「最初は鳴かず飛ばずの状態だったが、最近は知名度の高い大手・中堅企業から依頼を受けるようになった」

昨年6月には九州の太陽光発電所に向けた大型蓄電池事業を開始。出力制御の回避と市場連動価格買い取り(FIP)制度へのスムーズな移行と運用を支援する。

「AI化の進展で電力調達能力が国力や企業競争力に直結する時代が来る。総合的な電力事業を進めるために、これくらいの広い視野を持っていたい」

「素人」だからこその独創性と、USEN&U―NEXTグループが誇る現場力─。両輪を武器に、U―POWERはエネルギービジネスを塗り替える存在へと進化を続けている。

【コラム/2月13日】東日本大震災から15年を考える~福島復興と国有東電・第五次総特の不如意とは

飯倉 穣/エコノミスト

1、あれから15年~政府の措置は適切だったのか

東日本大震災・福島第一原発事故から15年である。復興は、物理的なインフラ整備を終了し、産業・生業も震災前水準に戻った。今後の課題は、福島浜通りの廃炉立地5町の経済社会再構築、福島原発の事故処理の行く末となった。

新年に入り東京電力の運営で、柏崎刈羽原子力発電所6号機の再稼働(2026年1月21日)に続き、原子力損害賠償・廃炉等支援機構・東京電力ホールデイングス株式会社の第五次総合特別事業計画の認定があった(1月26日)。

「東電再建計画 他社提携が柱 実現性は不透明」(朝日1月27日)。「東電再建 外部から資本 月内にも募集「非公開化 排除せず」」「東電再建重い6兆円投資 原発・再エネ、成長の柱に 収支改善計画は薄氷」(日経同)と報道もあった。

震災・事故ショックによる当時の政治指導者の狼狽・動揺が脳裏に浮かぶ。政治的思惑は、事故を自然災害とせず、人災とした。そして全日本の使用中原発停止と無理なエネルギー政策の転換で、事後のエネ供給と経済の不安定を招来した

東電は、2011年原賠機構設立・国の経営権取得で国有東電となった。東電経営は国主導、会社組織は総合特別事業計画(以下総特)の執行機関となった。今回の総特は、東電の福島責任貫徹、公的管理継続を再確認し、賠償・廃炉資金捻出で資金獲得のアライアンスを提示した。

現在震災後の政府措置がもたらしたエネルギー供給体制(電力システム改革等)の行き詰まり、再エネ主体のエネルギー供給確保政策の混乱、原子力エネルギー利用の迷走と試行錯誤が継続している。この視点も踏まえ浜通り復興の現状と国有東電の今後の運営(総特)を考える。


2、復興状況の再確認~廃炉関連5町の苦悩

東日本大震災(マグニチュード9.0)の被害は、死者19、782名、行方不明2、550名、住家被害122千棟(全壊)、鉄道・道路等のインフラ被害、避難者数47万人、災害救助法適用10都県241市町村、そして福島第一原発事故(避難指示区域1、150㎢)だった。

復興現状を見ると、避難者数減(現在2.7万人、内福島2.4万人)。復興道路整備(570km)・公営災害住宅建設(2.9万戸)、高台移転宅地造成(1.8万戸)は既に終了し(20~21年)、産業面でも3県(岩手・宮城・福島)の製造品出荷額は震災前を超えた(20年)。営農再開農地面積(25年震災前比96%)もほぼ回復し、更に避難指示区域面積(309㎢)も震災時比26%に縮小した(復興庁資料)。

福島県浜通り(相双地区12市町村)はどうか。人口は15.5万人(25年、震災前比78%)に落ちたが、生産額は、震災前9992億円(10年)から震災で4290億円(11年)に低下後、8440億円(21年)に回復している。これは相馬、南相馬、広野の火力発電再稼働等が大きい。

廃炉関連5町(楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町)の人口(住民基本台帳)は、25年4.7万人(10年6.4万人)だが、実際の居住者は、1万人程度にとどまる。生産額は、廃炉作業等があるものの、現在2000億円程度(10年4670億円)と半減している。福島感情を尊重した福島原発の廃炉決定(2014年福島第一5・6号機、2019年福島第二1~4号機)で、原発再稼働・S&Bによる経済復興を見込めないことが大きい。同時に東電、即ち日本の電力供給基盤を弱体化した。 

代わって政府・福島県は、福島イノベーションコースト構想(17年策定)が描く6分野(廃炉、ロボット・ドローン、エネルギー・環境・リサイクル、農林水産業、医療関連、航空宇宙)の開発・起業支援や福島国際研究教育機構(F-REI)等の施設作りで産業集積を目論んでいる。現在は「浪江 ロボット・創薬研究拠点に 国主導「エフレイ」計画 住民の関心高まらず」(朝日25年11月11日)の段階にある。国・県という官の努力で、地元に戻る雇用がどの程度か定かでない。また「再エネ推進 福島のいま、理想 原発事故受け先駆けの地、現実 メガソーラー住民困惑も」(同12月19日)である。国の落下傘プロジェクトや再エネ推進で、国・県・地域の意向がかみ合っているか懸念もある。 

15年経た今日、現実直視も必要である。この地区の今後の展開を図るには、福島原発立地町の長期的な経済復興に、「原子力発電が地場産業だった」ことを再確認することを勧めたい。メガソーラー等の状況も踏まえれば、国・地方は選択肢として原子力を再考すべきである。


3、震災の余波は~エネルギー供給体制は弱体化

震災後、政治・マスコミ的思惑が錯綜した。脱化石エネ、原子力開発忌避・撤退、再エネ活用期待の大風呂敷の政策主導が罷り通った。吟味不十分・勢いだけの再生可能エネルギーの固定価格買取制度が許容された。そして年3兆円を超える国民負担となった。

メガソーラーは、救国のエネルギーとされたが、狭い国土を忘却し、国土利用・土地利用計画構想がなかった。再エネ推進者・担当官庁の視野狭窄である。自然エネの特性(単位面積当たりの発電量)無視だった。現在の発電量(1兆kwh)の3割程度を太陽光発電で賄うには、6,600平方キロ(パネル3,300平方キロ×2倍程度)の土地面積が必要と試算できる。立地は、国土をにらんで確保する必要がある。新全総(1969年)の手法を思い出す。因みに同量確保に原子力発電所の必要面積は、30~60平方キロ程度だが、原子力立地も容易でない。

現在、経済・社会的に太陽エネの行き詰まりに直面している。立地制約の顕在化である。立地地域の雇用は増えず、土地乱開発と将来の廃棄物懸念で、地域の紛争が絶えない。さらに地球環境保全は地域環境保全を軽視した。適切な事業者選択の視点も欠如している。そして再エネ価格の妥当性と国民負担の限界が露わになった。15年経て自由競争の再エネ需給市場は、成立しなかった。また自然環境に左右される発電形態の対応で火力を軽視したことも反省点である。  

この15年間のエネルギー政策は、海外情勢に脆弱なエネルギー需給構造を形成し、貿易収支や物価面で経済の安定・成長どころか、不安定を招く事態に至っている。また国内の電力業等の産業体制も脆弱になった。電源投資が進まず将来の供給面の不安だけでなく、電力価格の高止まりを招いている。いずれにしても国土利用・産業政策的に、原子力・再エネの再構築が必要である。福島県の認識はなお従前の通りだろうか。国・福島県は、改めて明確なビジョンを提示すべきであろう。経営方向が定まらない東京電力の姿が、エネルギー供給混迷の象徴といえる。

【永田町便り】2月の衆院選は政界再編への第二幕

福島伸享/衆議院議員

読売新聞が1月9日午後11時きっかりにネットで配信した「高市首相が衆院解散を検討」記事によって、政局は大きく動き始めた。

野党第一党の立憲民主党と与党から離脱した公明党は、同月15日に新党を結成することを表明し、党名は「中道改革連合」となった。同党の綱領を見ると、公明のこれまでの主張に極めて近いもので、議席の激減が予想されていた立憲民主が公明の組織力を頼ったように見えてしまう。立憲民主の結党の原点である「原発ゼロ社会」は一体どこにいってしまったのか。

本稿を書いている1月17日現在、結果がどうなるのかは全く予想できない。一つ言えることは、衆議院選挙は政権や政党や国会議員のためにあるのではなく、国民の意思を示す機会であるということだ。前回の衆院選からまだ1年3カ月。果たして、高市政権に国民に判断を仰ぐべき何かはあるのか、予算案の年度内成立を犠牲にしてまで行う価値があるのか。「中道改革連合」は、単なる目先の選挙での議席維持のための手段なのか。多くの国民が疑問に思うところであろう。

こんな選挙になってしまうのは、小選挙区比例代表並立制という選挙制度の影響が大きいと考える。「人物より党」で選ばれ、ちょっとしたことで結果の振れ幅が大きくなる選挙制度では、政党はその時々の風に頼ったり、それを起こしたりする行動に出やすい。しかし、そこに本質的な政策の選択を国民にしてもらうという動機は少なく、目先の人気取りのための政策を掲げ、選挙のたびごとに国会議員たちが生き残るために右往左往するという歴史を繰り返してきた。やはり、選挙制度の抜本改革は待ったなしだ。


負ければ党内分裂も 政界再編のチャンス到来

高市内閣の誕生が第一幕であるとするなら、今回の衆院選による各党の動きは第二幕である。自民、中道連合のいずれか負けた方は、党内で分裂も含む大きな政局に発展するだろう。選挙制度の抜本改革の議論と並行して第二幕は政界再編に向けた大きな動きが起きるチャンスだ。日本国内の「コップの中の選挙」の外では、トランプ大統領によるベネズエラ大統領拘束、イランの政権転覆の可能性など新年から目まぐるしく動いている。直近の長期金利の動きや円安の進展を見ても、日本経済のファンダメンタルズも根本から変わりつつある。政治家の劣化と政治の堕落を招いた小選挙区比例代表制から選挙制度を抜本的に見直し、中長期的視点に立った大胆な政治判断を可能とする政治構造への変革が必要だ。国会に戻ることができれば、そうした「令和の政治改革」の先頭に立ってまいる決意だ。

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ふくしま・のぶゆき 1995年東京大学農学部卒、通産省(現経産省)入省。電力・ガス・原子力政策などに携わり、2009年衆院選で初当選。21年秋の衆院選で無所属当選し「有志の会」を発足、現在に至る。

【フラッシュニュース】注目の「政策・ビジネス」情報(2026年2月号)

NEWS 01:太陽光規制でFIT見直し 27年度から事業用対象外に

昨年末、メガソーラーに関する関係閣僚会議(議長:木原稔・内閣官房長官)が対策パッケージを決定し、2027年度以降の事業用太陽光(地上設置)でFIT(固定価格買い取り)・FIP(市場連動買い取り)制度による支援廃止の方針を打ち出した。地域共生型など望ましい事業はさらに促進する一方、不適切案件には厳格に対応する。

FITでの扱いは年明けの調達価格等算定委員会で議論。認定・導入量が大幅に拡大し、着実なコスト低減の実現や、PPA(電力購入契約)などFIT・FIPによらない案件形成の登場などを踏まえ、27年度以降支援の対象外とする方針を改めて示した。

再エネの地域共生・自立化をさらに促す

パッケージではこの他、法的規制の強化も提示。自然環境保護や安全性確保、景観保護のため、環境影響評価法や電気事業法をはじめ、種の保存法や文化財保護法、自然公園法、森林法、景観法などで規制・運用を強化する。さらに「再エネ地域共生連絡会議」の設置、「関係法令違反通報システム」や「再エネGメン」による通報・調査対象の拡大なども盛り込んだ。

こうした動きについて業界関係者は粛々と受け止めている。「元々政府はFITからの自立に向けた対応を強化してきた。今回の措置もその流れに乗るものだ」とし、地域との共生を重視した適切な太陽光の導入拡大に改めて意欲を示している。


NEWS 02:東電の第5次総特まとまる グッド・バッド分離に注目

東京電力ホールディングス(HD)が、新たな経営再建計画をまとめた。最重要課題だった柏崎刈羽原子力発電所6号機の再稼動に道筋が付けられたことを踏まえ、1月9日に「第5次総合特別事業計画」を政府に申請したと発表したのだ。

本稿締め切りの1月23日現在、内容は公表されていないが、複数の関係筋によると、①福島の責任の貫徹、②安定供給のまっとう、③再編・統合を含めたアライアンスの推進、④国による福島事業への長期関与と経済事業の早期自立、⑤国やステークホルダーなどによる東電改革の支援―という五つの原則を柱に、新たな成長戦略の下で企業価値の向上を加速させる。

特筆されるのは、福島第一原発の廃炉や賠償といった「福島事業」と、送配電や電力販売、再生可能エネルギーなどの「経済事業」を切り分けることだ。「いわば、3・11後の東電再建議論の中で浮上した『バッド東電』と『グッド東電』の分離論が、ここにきて形を変えて復活してきた格好だ」(電力業界関係者)

経済事業については、東電パワーグリッド、東電エナジーパートナー、東電リニューアブルパワーなどを対象に、他企業とのアライアンスを推進する。まずは提案などを精査・評価する体制を構築し、期限を切った具体的な提案募集を行う方向だ。東電HD代表執行役副社長で経営企画担当の酒井大輔氏が統括する。

成功事例となったJERAに続く、第二、第三のアライアンスは実現できるのか。相手先としてエネルギー会社や商社、ファンドなどが取りざたされるが、先行きは不透明だ。柏崎刈羽6号機の再稼動で1千億円の収支改善が見込まれる東電。周辺でささやかれる上場廃止も視野に、経営再建の行方が注目される。


NEWS 03:高市政権の補助金見直し 脱炭素先行地域も予算削減

環境省の脱炭素先行地域が今年度、目標の100カ所の採択が完了する見込みとなり、次年度以降の新規採択を停止することとなった。先行地域への支援は5年程度にわたり、大量採用で負担が増額する中、今回の採択停止で次年度の予算額は圧縮される。高市政権は「責任ある積極財政」の実現に向け、次年度予算編成に当たり各種補助金の点検を行っており、その影響の一端を受けた格好だ。

地域脱炭素推進交付金は26年度当初予算案で270億円となり、前年度当初から115億円減。補正も合わせて比較すると、前回の24年度補正と25年度当初の計750億円に対し、今回は25年度補正と26年度当初で計605億円となり、145億円目減りする。同省としても100カ所以上を目指す意図はなく、後継事業を提案していたがそれが通らず。27年度以降の地域脱炭素の支援の在り方を検討することとなる。

先行地域は、民生部門の電力消費に伴うCO2排出の実質ゼロを、国の目標より前倒しして30年度までに達成することを目指すもの。地域課題の解決や地方創生を重視した提案をより高く評価し、「脱炭素ドミノ」のモデルとして期待されている。これまで6回で40道府県119市町村の90提案を選定(うち辞退が3件)。昨年10月6~15日に第7回の募集を行い、これが最後に。結果は今年度中に発表する予定だ。

第1回は22年度に選定され、次年度が最終年度となる案件が出始める中、スタート時期の差があるとはいえ、選定案件の間では進ちょくや目標達成率などにばらつきがみられる。さらに物価高の影響を懸念する声もあり、同省は自治体と引き続き連携し、全体のレベル引き上げを図る方針だ。


NEWS 04:戸建ての無償配管問題に一石 解約で請求「無効」と最高裁

消費者がLPガス契約を中途解約した場合、ガス事業者は負担した配管工事費用を請求することができるか―。最高裁は昨年12月23日、事業者がこうした費用請求の根拠とする契約条項を「無効」とする判決を下した。

争点となったのは、「供給開始から10年がたつ前に解約した場合、顧客が設備費を払う」とする条項。いわゆる「無償配管」に関する近年の係争では、司法は消費者保護を重視しガス事業者側が敗訴する事例が多い。切り替え営業をする側の事業者も消費者に対し、「裁判したら勝てるので払わなくてよい」と説明しているという。改めて最高裁が、初めてこのような判断を示したインパクトは大きい。

最高裁判断は業界に変化をもたらすか

今回の判決で注目すべきは、①供給契約に減価償却後のガス料金減額の定めがないこと、②中途解約された消費者の設備費用も回収可能であり、事業者の損害は認められない―ことを論拠としている点だ。つまり、設備費用を含めたガス料金体系の不透明さそのものを指摘している。

無償配管の慣行は長らく問題視され、資源エネルギー庁も設備費用を外出しする三部料金制を徹底するなどの是正を促してきた。業界の商慣行是正に向けたエネ庁の施策は、今のところ集合住宅の対策にとどまっているが、事業者側に無償配管のうまみがないとなれば、自ずと問題は解決するかもしれない。

【コラム/2月12日】2020年代後半のスタートをどう切っていくか

加藤真一/エネルギーアンドシステムプランニング副社長

早いもので、2026年もあっという間に1カ月が経ったが、国のエネルギーや環境に関する審議会の開催は、昨年12月に詰込み的に行った状況から一変して緩やかなスタートを切っている。もちろん、どれも重要な政策や制度であり濃度の高い議論となっている。

この4月から2026年度が始まるが、エネルギーや環境政策にとって激動のスタートとなった2020年代もいよいよ後半戦に突入する。これまで議論・整理されてきた施策がどのように展開されるのか、短期的には2030年までの目標に向かい、仕込みから実行へのフェーズに移すとともに、並行して2040年あるいは2050年という中長期に向かった新たな仕込みを始めなければならない。


仕込みから実行へ、そして成果へと繋げられるか

1年前の今頃は、GX2040ビジョン、第7次エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画及び次期NDC、電力システム改革検証の取りまとめと、今後の日本のエネルギー・環境政策にとって重要な議論の整理が行われたが、この中ではエネルギー安全保障、電力安定供給、カーボンニュートラル、そして産業発展を同時に実現するというグリーン・トランスフォーメーション(GX)の考えが前面に押し出されている。かつての高度経済成長を彷彿とさせるような政策にまで発展させることができるか、国際情勢もしっかりと見ながら、“実”のある政策に育て上げていくことが求められる。

日本のエネルギー政策は外生的要因に影響を受けて、政策や制度設計が行われ、それを機に新しい事業が生まれては消えるといった歴史を繰り返してきた。電気事業やガス事業が興されてから140年あまり、戦後の9電力体制ができてから75年、第一次石油危機から50年超、第一次規制改革(発電部門の自由化)から30年超、東日本大震災から15年、電力小売全面自由化から10年、送配電の法的分離から5年超、と規制が緩和または強化されることもあれば、新たな事業が創出されては消えていくあるいは変わっていくという局面を経験してきた日本にとって、次の10年、20年、30年をどうしていくのか(どうしたいのか)、GXが一つ、「きっかけ」になるかもしれない。

一方、足元を見れば、既に仕込みをしている政策や制度があるわけで、それらをいつまでも計画(夢)のまま留めていてはいけない。

第6次エネルギー基本計画までは2030年という中間ゴールを設定していたわけだが、2050年までの長距離走の序盤から中盤に差し掛かるタイミングまでに一定程度の成果を出しておかなければ、中盤以降の流れにつなげることができなくなる。そのためには、「スピード」と「柔軟性」という視点を持った対応が必要だろう。「スピード」という点では、グリーンイノベーション基金を活用した技術開発の実証・実装段階への早期移行や、安全性が確認された原子力発電所の再稼働の推進、次世代革新炉の技術ロードマップの策定・公表、再エネ主力電源化(自立化)に向けた規制と支援の強化、脱炭素先行地域での各施策の実行開始等が挙げられる。「柔軟性」という点では、各制度の定期的なフォローアップによる点検と最適な方向への見直し、GXや脱炭素で計画した施策の見極め(必要に応じて取り止め)といったことが挙げられる。

中長期的な視点で言えば、昨年、閣議決定されたGX2040ビジョンや第7次エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画では、新たに2040年というターゲットが提示された。日本にとって1つのゴールは2050年カーボンニュートラル実現であり、そこは不変と捉える必要があるだろう。一方で、国内外の情勢が常に変わるという不確実な世の中を前提に動く必要がある。そのため、ゴールは変えず、そこにいくまでの道筋は柔軟に見直して歩を進めるといった“one goal,various pathways”の考えを具現化していくことが重要となるため、国も自治体も企業も、そうした柔軟性をもちながら計画を策定し、準備をしていかなければならない。

【フォーラムアイ】JERAがアンモニア転換で初の商用化にまい進

【JERA】

JERAは国内最大の石炭火力である碧南火力発電所(愛知県碧南市・計410万kW)でアンモニア発電の商用化を目指し、燃料タンク建設などの工事を進めている。1月中旬、報道陣にその模様を公開した。4号機で2029年度に20%転換で商用運転開始を目指し、その後5号機での実施や、さらに50%転換への挑戦も視野に入れる。世界的にグリーン燃料系プロジェクトに逆風が吹く中、ビジョン実現に変わらずまい進する構えだ。

タンク建設現場を紹介する坂所長

24年4~6月、世界初となる大型商用石炭火力でのアンモニア20%転換試験を4号機で行った。NOX(窒素酸化物)は転換前と同等以下で、最大転換率28%達成といった良好な結果を受け、次のステップに入った。燃料アンモニア受け入れ桟橋やタンク、気化設備、BOG(タンクで自然発生するアンモニアガス)処理設備、除害設備などを増強する。発電設備は一部改造するが、ボイラーやタービン、排ガス処理装置などの主要機器は改造しない。

アンモニア取り扱い規模は実証では3万t程度に対し、20%転換商用運転では年50万tとなる見込み。スケールアップに向け、例えばタンクは実証用では2000㎥だったが、商用では約5・9万㎥を4基建設する。LNGタンクに似た構造で、高さ40m、直径60mほど。1~4号タンクで半年ずつ工期をずらし、最も早い1号タンクは屋根上げが完了し内装や外装工事に入った。また、実証時より安全対策を一段高める方針だ。


プロジェクト完遂に意欲 競争力ある電源目指す

バリューチェーン構築のめどもついた。米国ルイジアナ州の「ブルーポイント」で、天然ガスを原料にCCS(CO2回収・貯留)を行って製造する低炭素アンモニアを調達。年間生産能力は約140万tを見込む。

そして、政府による補助が後押しとなった。4・5号機が23年度の長期脱炭素電源オークションを落札。加えて昨年末には、水素社会推進法に基づく価格差支援の認定事業者となった。

坂充貴所長は、「水素・アンモニアや再生可能エネルギーの投資環境が停滞気味なことは否めない。だが、脱炭素の取り組みを続けていくことが将来への備えとなる」とし、碧南のプロジェクト完遂に意欲を見せた。将来的には政府の支援なしに、他の脱炭素電源と比べアンモニアの電気が競争力を持つ形を目指すことも強調した。

【論説室の窓】メガソーラーに対する支援停止は現実的な再エネ政策への第一歩

井伊重之/産経新聞 客員論説委員

高市政権がメガソーラー支援の停止と規制強化に踏み切った。

再エネ偏重の課題が顕在化する中で、政策の現実性を問い直す動きだ。

政府が大規模太陽光発電所(メガソーラー)に対する支援の停止を正式決定した。環境影響評価(環境アセスメント)の対象となる基準も厳格化する。政府や自治体は法令に違反した事業者からの電力調達を避け、民間企業にも同様の対応を求めるという。政府は2011年の東京電力の福島第一原発事故後、太陽光や風力など再生可能エネルギーの普及を積極的に進めてきたが、今回の規制方針は、優良な再エネ事業者を育成し、現実的な再エネ政策に転換する一歩としたい。

新たなメガソーラーへの補助が停止となる

政府は昨年12月に発足した「大規模太陽光発電事業に関する関係閣僚会議」(議長・木原稔官房長官)で、メガソーラーに対する規制強化を決めた。規制の柱は27年度以降、新たなメガソーラーに対する補助を停止することだ。出力規模が1000万kW以上の地上設置型の事業用太陽光発電施設は、市場価格に一定額を上乗せする補助の対象外とする。また、工事前に環境アセスを義務づける発電施設の出力基準を引き下げるほか、出力10‌kW以上の事業用発電施設は第三者が設計内容をチェックする制度なども導入する。

福島第一原発事故を受け、当時の旧民主党政権は脱原発に向けた新たな電源として再エネに注目した。その普及を後押しするため、太陽光や風力などの再エネ事業者が発電した電力を電力会社が固定価格で買い取る「固定価格買い取り(FIT)制度」を導入。22年度には市場価格に連動し、一定の補助を支給する「フィードインプレミアム(FIP)制度」を採用した。FITに伴う賦課金額は年々増え、25年度には初めて3兆円に達する。これは電気料金の1割以上を占めている。

国土が狭い日本には、メガソーラーの建設に適した新たな用地は残り少ない。すでに国土面積当たりの太陽光発電の導入量はドイツに次ぐ世界2位の水準で、1k㎡当たり200kW近くに上っている。最近では山林や山裾などを切り開いて建設されるメガソーラーが増え、景観や自然環境の破壊のほか、樹木の伐採に伴う土砂崩れなど災害リスクに対する懸念が強まっている。これに伴い、全国各地のメガソーラー建設計画を巡って自治体や周辺住民との摩擦が激化している。


政策を歪めた割高買い取り 遅きに失した規制強化

特に北海道の釧路湿原国立公園周辺や千葉県鴨川市に計画されているメガソーラーに対しては、地元住民だけでなく、全国的に反対運動が広がるなど、社会問題化している。こうした中で高市早苗首相は、昨年秋の自民党総裁選で「メガソーラーに対する補助停止」を掲げ、高市政権の発足で具体的な規制強化に乗り出した。

それでも日本国内には約9000カ所のメガソーラーがすでに稼働しており、今回のメガソーラー規制は遅きに失した印象が拭えない。なかでも13年度から15年度にかけて大量に建設されたメガソーラーには割高なFITの買い取り価格が設定されていた。このため、国民が負担するFIT賦課金の過半は、この3年間に稼働を始めた発電施設による買い取りとされている。脱原発を急いだ末のずさんな制度設計が、健全な太陽光発電市場の育成を阻んできたのは間違いない。

その後、政府も割高な買い取り価格の引き下げを進め、太陽光で発電した電力の現在の買い取り価格は、1kW時当たり9円前後に低下している。これはFIT導入当初の買い取り価格に比べて4分の1以下の安値水準だ。これに伴い、再エネ事業者もFITに依存せず、需要家に直接電気を販売する「非FIT」の開発が広がっている。なかでもIT企業は再エネ由来のグリーン電力を求める傾向が強く、価格が割高でも太陽光による電力を購入する流れが広がっている。もはやメガソーラーは補助に頼らないビジネスモデルを確立したと言える。


実現見込めぬ電源構成目標 当面は火力が中心に

何より問題なのは、今回のメガソーラー規制は、太陽光など再エネの普及を目指す政府のエネルギー政策と矛盾する恐れがあることだ。

政府が昨年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画によると、40年度の電源構成目標として再エネ比率を4~5割、原発比率を2割、そして火力比率を3~4割とした。再エネと原発を合わせた脱炭素電源で全体の過半を占め、石炭やLNGなどの火力比率を大幅に引き下げる方針だ。再エネのうち、太陽光は23~29%に高めるとしており、現行の1割程度に比べて2~3倍も大幅に増やす。政府は折り曲げられる「ペロブスカイト型」の国産太陽光パネルを屋根などに大量導入して太陽光比率を高める考えだが、その価格を含めて将来像はまだ不透明である。

実際、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が昨年4月にまとめた向こう10年間の電力供給計画によると、34年度における電源構成の見通しは再エネ比率が33%、原発比率も約1割にとどまり、火力比率が依然として56%と主力電源の地位を占めていると見ている。これは再エネの弱点とされる系統や送電網の整備遅れも響いているが、再エネ比率が過半を占めるとする政府の40年度における電源構成目標とはほど遠い姿だ。原発比率を現行の2倍に相当する2割に引き上げる計画も、現状の原発政策を継続していては達成が難しいだろう。

エネルギー基本計画に盛り込まれた再エネ比率を高める目標は、温室効果ガスの排出目標を達成するために人為的に設定されたものだ。再エネを導入すればするほど、発電量の変動を抑えるために火力による出力調整も不可欠となる。暮らしと産業を支えるエネルギー政策は、脱炭素に向けた理想論を掲げながらも、厳しい現実にも正面から向き合う必要がある。政府は火力に対する安定投資を促すため、現実的な電源構成目標を示すべきである。

【フォーラムアイ】製油所のDXを推進 データ統合と予兆保全高度化を実現

【コスモ石油】

コスモ石油は製油所のデジタルプラント化を進めプラットフォーム上でのデータ一元管理に取り組む。

製油所のリアルタイムデータを確認できるモニタリングルームを設置し、予兆保全に役立てている。

現在稼働している国内製油所の多くは戦後の高度成長期に建設され、設備の高経年化に伴う維持管理費増大と稼働率低下が経営上の課題となっている。千葉、堺、四日市の3製油所を運営するコスモ石油では、その課題解決のために製油所のデジタルプラント化を進めている。

堺製油所

具体的な取り組みの一つが、デジタルツイン技術の活用だ。現実世界のモノを仮想空間上でツイン(双子)のように正確に再現するこの技術を用いることで、さまざまな条件下でシミュレーションし、その結果を実際の装置の保全管理などに生かすことができる。

身近なデジタルツインの一例には、グーグルマップがある。例えばレストランを探す時には、営業時間やメニュー、経路や所要時間、利用者による評価などがマップ上で一目で分かり、意思決定がスムーズだ。一方製油所では、データがさまざまな形でさまざまな場所にサイロ状に格納されているため、意思決定に必要なデータの収集に時間がかかってしまう。

そこで同社は、データ統合基盤「Cognite Data Fusion」を導入し、偏在するデータの一元管理を進めた。このプラットフォーム上で連携したデータは、機器・計装スペック、図面、運転データ、過去の不具合データ、検査履歴など多岐にわたる。データ統合基盤の整備が進んできた段階で社内に開放し、ビッグデータの組織横断的な活用が始まった。現在もデータは順次連携し、活用範囲が広がっている。


兆候を察知し未然に防止 全社的DXで変革を継続

もう一つの取り組みは、予兆保全の高度化だ。予兆保全とは機械や設備の故障が発生する前に、センサーなどからの情報で異常の兆候を検知し、最適なタイミングでメンテナンスを行うこと。2024年11月、千葉製油所に統合モニタリングルームを設け、予兆保全業務への活用を本格的に開始した。

モニタリングルームで使用するデータ基盤には、機械や設備に取り付けたIoTセンサーからのリアルタイムな情報に加え、VR(仮想現実)で再現した現場の3D画像も搭載。このモニタリングルームは昨年7月に移転した本社オフィスにも設置した。9台のモニターが壁一面を覆うように配置され、千葉、堺、四日市の3製油所の状況をリアルタイムに把握できる。機械学習やAIを活用することで、精度の高い予兆保全を実現する環境が整った。

本社のモニタリングルーム


モニターで異常兆候を検知 18件の不具合を未然に防止

モニターでは、設定閾値の超過を検出すると赤いアラートが表示される。モニターを監視するエンジニアがアラートをクリックすると、詳細なデータが表れる。エンジニアは内容を確認し、対応方針を入力。現場ではエンジニアからの指示を実行し、対応済になったことを入力するとアラートは緑色に変わる。このように事前に異常兆候を検知し、適切なアクションにより不具合を未然に防止することを同社ではファインセーブと呼んでおり、運用開始から約10カ月がたった昨年10月時点で18件のファインセーブが積み上がっている。

同社では他にも、現場の課題を先端技術で解決する取り組みが進んでいる。製油所には多くのアナログ計器が存在し、巡回による目視点検が不可欠だった。これに対し、アナログ計器の針の角度を読み取りデジタル情報に置き換えるSalta IoTセンサーを導入し、巡回の負荷が大幅に減少した。

また、夏季の製油所内では、酷暑の中での現場作業を余儀なくされ、特に製油所の定期的な修理期間中は協力会社からも多くの作業者が出入りするため、熱中症対策も欠かせない。そこで、バイタルセンサーという腕時計型の機器を導入し、作業者が装着することで、心拍数や体温などを現場で一元管理できるようになった。その結果、現場監督者の負荷も軽減し、熱中症の大幅な低減につながった。

製油所のDXについて語る工務部吉井氏

製油所運営の事業戦略を統括するコスモエネルギーホールディングスIT推進部の八谷鉄正氏は、このような先進技術を活用した取り組みを進める目的を「製油所のDX化を支える基盤として、現場の安全性向上と業務効率化を同時に実現すること」と言い、製油所DXを担うコスモ石油工務部の吉井清英氏は「現場の変革に必要なのは、現場の努力やITの活用だけではなく、経営者や外部パートナーとの一体化だ」と語る。今後は統合モニタリングルームを全製油所に展開することや運用の標準化など、現場に寄り添った全社的DXのさらなる展開を進めていく。

【実名ホンネ座談会】欧州「EV絶対主義」の崩壊で「環境より経済」の流れが鮮明に

テーマ:国内外のEV情勢

【出席者】
岡崎五朗(モータージャーナリスト)
轟木 光(KPMGコンサルティングプリンシパル)
大場紀章(ポスト石油戦略研究所代表)

左から順に、岡崎氏、驫木氏、大場氏

EU(欧州連合)が2035年のガソリン車禁止目標を撤回した。EVシフトの勢いに陰りが見える中、政治の思惑、産業界の反発、そして日本メーカーの立ち位置はどう変わるのか。

─EUではCO2排出量を21年比90%減とすれば35年以降もガソリン車を販売できる。

岡崎 二つの見方がある。一つは「EVはもうダメ、エンジン車万歳」という見方。もう一つは「90%削減目標は残っているのだから、EVシフトに変わりはない」という見方だ。

私はどちらでもない。重要なのは「100%削減」というゴールポストが動いた事実だ。自動車政策に限らず、ゴールポストを動かしてきたのが欧州政治の歴史で、このまま進むと考える方が不自然だろう。

轟木 政府主導のEVシフトが進んだ中で見えたのは「ユーザーが欲していない」という現実で、自動車産業界からは「EVではもうからない」と厳しい声が上がった。環境だけでなく経済も重視する流れが強まり、24年に脱炭素政策が産業コストを押し上げていることを指摘した「ドラギレポート」が発表され、今回の目標撤回につながっている。

岡崎 35年目標には「26年に市場の状況や技術の進展を見て見直しを行う」という条項(レビュー・クローズ)が入っていた。最初から見直しを予定していたのではないか。

大場 合成燃料の活用を検討する条項もあった。ドイツのちゃぶ台返しだと言う人もいるが、こうした条項がなければ、フォルクスワーゲン(VW)以外のドイツ産業界は目標への合意にもっと慎重だったはずだ。

岡崎 日本のメディアは良くないね。35年目標が決まった時、EUはガソリン車もハイブリッド車(HV)も禁止になると断定的に報じたが、メルセデス・ベンツの30年EV目標にしても、「マーケットが許すならば」という留保が付いていた。センセーショナルに報じたいのか分からないが、重要な点を無視している。現在のVWブランドCEO(最高経営責任者)・トーマス・シェーファー氏にインタビューをしたら、「未来はEVだが、いつなのかは分からない」と言っていた。

EUは「ガソリン車禁止」のゴールポストを動かした


グリーンスチールで車体価格は上昇 EUの脱炭素政策を絶対視するな

大場 ただ、日本としてはぬか喜びする状況ではない。今回の10%の猶予枠のうち、7%は製造時のグリーンスチール活用、残り3%は合成燃料とバイオ燃料による削減となっている。おそらく、グリーンスチールはEU域内生産限定になるので、日本メーカーにとってはハードルが高い。

そもそも、グリーンスチールによる削減分を走行時の排出量にのせてカウントするなんてめちゃくちゃだ。生涯走行距離を事前に想定し、それで削減分を割って、距離当たりいくら削減できるかを割り出す。この考え方自体が、GHG(温室効果ガス)プロトコルなどの国際基準を無視している。

岡崎 欧州のグリーンスチールは相当高いだろう。となると、自動車価格は下がらないので、やはり猶予枠は拡大されるはずだ。

大場 合成燃料の実用化への期待がしぼみ、グリーンスチールという別の手段をひねり出したのだろう。もともと、欧州の自動車業界の温暖化戦略はディーゼルシフトだったが、15年のVW排ガス不正(ディーゼルゲート)で崩壊してしまった。そこで起死回生を狙ってEVと言い出した。その背後には、EU内の内輪もめもあったと思う。メルケル時代の「ドイツ一強」に対する不満がディーゼルゲートを機に爆発して、ドイツの自動車産業に対する締め付けが強まった。カーボンニュートラルを目指すという物語自体が、ドイツに対するEUの恨みが生んだものではないか。

岡崎 フランスに勝算はあったのか?

大場 ドイツをいじめたかっただけだろう。結果的にウクライナ戦争もあり、フランスも無傷ではない。恨みは晴らしたから、いったん落ち着こうという局面なのかもしれない。

岡崎 マリオカートで言えば、後ろの車(ドイツ)をスピンさせようとバナナの皮を落としたが、1周回って自分がスリップしている状況か(笑)。

轟木 EVの要望に対して真面目に対応しようとしたのが日本だが、彼らの動向は冷静に判断した方がいい。EUはCO2削減やエネルギー安全保障のためにディーゼルを推進していた時代も、軽油の精製がEU域内で足りずアメリカから輸入していた。理路整然としたロジックがあるように見えても、全てがそうなっているとは限らない。

注目しているのが「過剰規制(オーバーレギュレーション)」という言葉だ。EUの目標撤回と同じ日に、規制を簡素化するオムニバス法案が出てきた。規制が強過ぎるとコストがかさみ、自動車の価格が上がる。アメリカも燃費規制を満たさなかった場合の罰則を廃止した。これからは規制と緩和のバランスが重要になってくる。

岡崎 アメリカでは新車の平均価格が5万ドル(約800万円)にまで上がっている。確かに車は安全で、なるべくCO2を出さない方がいい。でも、頑丈にしすぎて車体が巨大化すれば、街を歩く人がアメリカンフットボールの防具とヘルメットを着けて歩くことになるかもしれない。日米首脳会談でトランプ氏が来日した時、「日本で走っているような小さい車を作れ」と言ったが、過剰規制に対するカウンターだろう。

轟木 EUでは車両全長4・2m以下の新規格「M1Eカテゴリー」の導入が提案された。手ごろな価格でEV普及にもつなげる試みだが、何と言っても軽自動車が世界的に認められつつあることの証左だ。これは過剰規制の反対で、日本の軽規格という規制が生み出した商品力だ。

【イニシャルニュース】参政党はメディア嫌い? 風通しの悪さ影響か

参政党はメディア嫌い? 風通しの悪さ影響か

衆議院選挙が2月8日に行われる。参政党は2024年10月の参議院選挙で躍進した。しかし情報発信は限定的で、メディアに登場するのは主に神谷宗弊代表の記者会見という状況。目立つのはスローガンばかりだ。なぜだろうか。

「神谷党首独裁で議員が自由に発言できない。中身のなさを隠し、追及を避けるためメディアと距離を置いているように思える」。ある記者が説明した。この人は1月、ある問題で以前から知り合いの参政党の国会議員に取材を申し込んだところ、待たされた後に党本部から「選挙前で対応できない。党の意向」という返事が返ってきたという。

24年には他党から転じたU参議院議員が「勝手に取材に答えたとして、ボード」と呼ばれる執行部の役員を、解任された。かつて自民党にいて、職員を罵倒、それが明らかになって離党に追い込まれたT参議院議員が参政党でも奇行をした。その取材に応じたら、首を切られた。「外部に情報が漏れない一方で、自由な議論がなく風通しも悪そう」とこの記者は指摘する。

かつて参政党に参加していたが今は距離を置く保守系の評論家によると、「神谷氏は、政策づくりは不得意」という。党幹部のA議員は自民党出身だが「財務省批判ばかりやっている人物」(同)。エネルギー問題についても「一般ウケするメガソーラ批判以外、実効性のある政策は作れないのではないか」(同)と厳しい批判を向ける。

とはいえ、同党はエネルギー政策の柱として〈脱・脱炭素政策で、電気料金高騰・環境破壊・資本流出を助長する再エネ推進を止める〉〈日本の急峻な地形を生かした既存水力発電の最大活用でエネルギー自給率を引き上げる〉〈中長期的なエネルギー資源と世界での主導権獲得のため新技術開発へ積極的に投資〉などを打ち出している。一連の政策が国民の審判を受け、形になるのか。正念場はこれからだ。


規制庁職員のスマホ紛失 諜報活動への悪用リスク

中部電力が浜岡原発の基準地震動を巡る不適切事案を公表した翌日、原子力規制庁でも重大な不祥事が明らかになった。同庁の職員が昨年11月、プライベートで訪れた中国・上海で業務用のスマートフォンを紛失したというのだ。規制庁は国の個人情報保護委員会に報告したというが、問題は「個人情報保護」という次元にとどまらない。

規制庁は危機管理意識の強化を

職員がスマホを失くしたのは街中ではなく空港で、中国共産党が端末を回収し、解析した可能性は否定できない。非公開情報である核セキュリティ担当者の連絡先などが登録されていたといい、漏えいすれば担当者への接触工作など中国によるヒュミント(人的情報収集)の標的になり得る。国家安全保障上の脅威だ。

原子力の専門家はどう見るのか。T大学のO教授は「規制庁の事案にも第三者委員会が必要なのではないか」と指摘した上で、「私は仕事で中国に行く際、普段使っているパソコンやスマホを一切持っていかない。〝中国用〟のパソコンには学会で使う資料だけを入れて、ほかのデータは何一つない」とリスク管理術を語る。これが危機管理の常識だろう。規制庁の職員は、原子力安全と核物質防護の中核を担う責任を改めて胸に刻むべきだ。

【フォーラムアイ】東北電力が地域課題解決へ専任チームを発足

【東北電力】

東北電力は昨年4月、地域課題解決に挑む専任チームを設置した。

CN、DX、人財を切り口に、地域との価値共創に向けた取り組みを進める。

東北6県・新潟県では人口減少や少子高齢化、地域産業の衰退など、さまざまな課題が他の地域よりも速いスピードで顕在化している。こうした状況を踏まえ、東北電力は昨年4月、総務・地域共創部門内に地域課題解決に挑む専任チームを設置した。同チームは、課題を抱える自治体などに対して、「CN(カーボンニュートラル)」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「人財」の切り口から、地域課題の解決策を立案・展開し、「地域との価値共創」に取り組んでいくことをミッションに活動している。

今回は、同チームが発足以降進めてきた取り組みについて詳しく紹介する。

地域課題解決に取り組む専任チームのメンバー


経済的・社会的価値の創出 生産者に新たな収益源を

地域のサステナブル(持続可能)な農業の実現を目指し、昨年9月に農業由来カーボン・クレジットの活用を開始した。

農業は地域経済の根幹を担う重要な産業である一方、近年は収益性の低下や就農者の高齢化・後継者不足などさまざまな課題が深刻化している。

本取り組みでは、東北6県・新潟県の米の生産者が、フェイガー社のプロジェクトに参加し、J―クレジット制度の「水稲栽培における中干し期間の延長」という方法論に基づき、温室効果ガスの排出削減量としてフェイガー社が認証を受けたクレジットを東北電力が購入する。これにより生産者は新たな収益源が確保できる。加えて、水稲栽培において出穂前に一度、水田の水を抜き、稲の成長をコントロールする「中干し」の期間を延長することで、温室効果ガスの排出量が削減され、地域のカーボンニュートラル推進にも寄与し、経済的価値と社会的価値の両方を創出できる。

購入したクレジットは東北電力が主催・協賛するイベントなどのオフセットに活用するほか、事業所のオフセットや、希望する企業への販売も検討している。今後は、プロジェクトに参加する生産者を増やすとともに、本取り組みの社会的意義の発信を通じて、クレジット創出の輪を広げ、地域全体でのサステナブルな農業の実現を促進していく。