田中信也/物流ニッポン新聞社 東京支局記者
昨年末のガソリン税(揮発油税)に続き、軽油引取税の旧暫定税率が4月に廃止される。
トラック事業者には恩恵がある一方、暫定税率を財源とする交付金制度の動向が注目される。
旧暫定税率は、自民党、立憲民主党など与野党6党の合意に基づき、廃止することが決まった。昨年の臨時国会で廃止法案が成立し、ガソリン税では12月31日をもって廃止された。一方、軽油引取税は地方財政への影響を考慮し、今年4月1日で廃止することが確定している。
ガソリン税の暫定税率は、1974年に田中角栄内閣の下、道路整備の財源(道路特定財源)とするための臨時措置としてスタート。「暫定」の名の通り、当初は2年間の臨時措置だったが、その後2年ごとに繰り返し延長してきた。
だが、暫定のまま放置してきたことへの不満は強かった。2008年には衆参両院で多数派勢力が異なる「ねじれ国会」の中、参院で多数を占める野党の反対を押し切れず関連法案の審議が時間切れとなり、一時的に失効。ガソリンと軽油の価格が大幅に下がった。
翌09年4月には課税の根拠だった道路特定財源が廃止されても継続され、同年に廃止を公約に掲げた民主党政権が誕生しても「当分の間税率」と看板を掛け替えただけにとどまり、逆に恒久化してしまった。まるで「ゾンビ」のような暫定税率は、このまま未来永劫続くかと思われたが、少数与党下での難しい政治局面から、自民など与党が野党側の要求を受け入れ、実務者による協議を経て、ついに半世紀の歴史の幕を下ろすこととなった。

公益事業に交付金不可欠 トラック・バスで共闘
当初、ガソリン税のみが対象とみられてきたが、軽油引取税も3カ月遅れの廃止で決着した。暫定税率分1ℓ当たり17円10銭に対し、同額の補助金が11月末までに充当されている。
軽油の大口ユーザーであるトラック運送業界にとって、暫定税率の廃止は悲願だったが、その成就を喜んでばかりいられない問題も抱える。それは、暫定税率分を原資とする運輸事業振興助成交付金制度の行方だ。
軽油引取税の暫定税率は、1976年から導入された。その際、営業用トラック・バスが対象の還付措置として創設されたのが交付金制度で、都道府県から各地方トラック・バス協会に対して一定の額(年約200億円)を交付する。このうち、トラック協会に対しては約180億円が交付される。輸送の安全確保や事業の適正化、災害時の対応など公益的な事業の財源として欠かせない制度と言える。
こうした局面で、全日本トラック協会(全ト協、寺岡洋一会長)の前会長で、現在は最高顧問を務める坂本克己氏は「暫定税率廃止と交付金制度継続の両方を勝ち取る」として、暫定税率の廃止が議論されている段階で、日本バス協会(日バス協、清水一郎会長)などと共闘し、与野党各党や政府関係者へのロビー活動を展開。中でも、自民党総裁選の候補者で唯一「軽油の暫定税率廃止」を公約に掲げた高市早苗氏が首相に就任したことは大きな追い風となった。なお、高市氏は、昨年12月に行われた全国のトラック協会の首脳が顔をそろえる懇親会に出席し、「皆さんの応援団として頑張っていく」とエールを送った。トラック業界のパーティーに現役の首相が参加したのは初めてのことだった。
さらに、暫定税率廃止に向けた与野党協議で当初、合意事項に盛り込む予定がなかった交付金の取り扱いについて、合意文書で「軽油引取税に特有の実務上の課題に適切に対応」と明記されたことは、全ト協などが交付金制度の重要性を熱心に説いて回ったことが功を奏したと言っても過言ではない。その結果、廃止法案には、交付金の取り扱いについて適切に対応することが付則に盛り込まれたほか、参院で交付金の維持に向けた法改正が付帯決議された。
この流れを受け、全ト協、日バス協は、交付金の根拠法である運輸事業振興助成法の改正に動く。同法は議員立法で成立した経緯から、改正法も議員立法で提出することが求められるが、暫定税率廃止に署名した自民、立民、日本維新の会、国民民主党、公明党、共産党の6党に加え、参政党、れいわ新選組など主だった党・会派が賛同。昨年12月15日、衆院の国土交通委員会(冨樫博之委員長)に所属する全党会派の議員が共同で提出した。今年の通常国会で審議が行われる見通しだ。
法改正で課された宿題 物流の安定化どう図る?
同法案は、軽油の暫定税率が廃止される4月1日に施行。その上で「2031年3月31日限りで効力を失う」と規定している。5年間の期限は、昨年6月に成立した改正貨物自動車運送事業法と、同法の措置を担保するプログラム法(貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法)からなる「トラック適正化2法」の施行を踏まえたためだ。
なお、液化石油ガス(LPG)が主な燃料のため交付金の対象ではないタクシー業界は、東京、神奈川、大阪の3エリア(交通圏)にタクシーセンターが設置され、1台当たり年3万~3万5千円を事業者が負担し、事業適正化のための業務に充当している。これに比べると、トラック業界は恵まれた環境にあるのかもしれないが、議員立法の提出に当たって複数の野党議員から「トラック、バス事業を合わせて(現在の交付額の)200億円では少ない。法改正に増額を盛り込むことを検討してはどうか」といった意見もあったようだ。
トラック業界は交付金を原資に、輸送の安全確保、サービス向上、環境保全などに関する公益事業を行っている。これが無くなれば、物流を安定的に維持し、国民生活や産業活動を支えることができなくなる。しかし、議員立法が成立したとしても、交付金が確実に支出される期間は5年と短い。適正化2法施行による改善の効果を見据えつつ、新たな公益事業の在り方を検討することが、トラック業界と国土交通省など関係省庁に課せられた「宿題」と言える。
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