NEWS 01:日本ガイシがNAS電池撤退 想定崩れ、収益確保が困難化
日本ガイシは10月31日、NAS(ナトリウム硫黄)電池事業からの撤退を発表した。需要の伸び悩みや原材料費の高騰などが主な要因となった。
2025年度連結決算では約180億円の特別損失を計上する。
NAS電池は、大容量・高密度・長寿命を特長とし、数十MW(1MW=1000kW)まで対応できる。1984年に東京電力と日本ガイシが共同で開発に着手し、2002年に日本ガイシが世界で初めて商用化に成功して以来、変電所や大規模工場に導入されるなど、幅広く利用されてきた。
誤算は、太陽光発電の急速な普及だった。当初、NAS電池は需要家のピークカットを主な用途として想定していたが、東日本大震災以降、太陽光をはじめとした再生可能エネルギーの拡大で昼間に電力が余るようになり、昼夜の電気料金の差が縮小。このスキームを使うメリットが縮小した。
アフターサービスは継続するという
さらに、コスト競争力のある中国勢のリチウムイオン電池が大量に蓄電池市場に流入。こうした動きに対し、日本ガイシは原価低減を目的に提携先の確保を進めたが実現せず、撤退に踏み切った。会見で小林茂社長は「潮時だと判断した」と述べた。
同社は今後、AIによる需要増が期待される半導体分野、中長期的には脱炭素分野での開発に注力するという。新たな分野での巻き返しが期待される。
NEWS 02:光通信がシナネン株4割強 経営戦略への関与も可能に
光通信グループが、石油燃料などエネルギー販売大手のシナネンホールディングスの4割以上の株式を保有していることが、明らかになった。同グループはこれまでシナネンHD株を市場で着々と買い増しており、11月10日付で財務省に提出した報告書によると、光通信グループ6社の共同保有比率は37・53%から41・01%に増加した。
市場関係者の話では「単独で普通決議を可決するには過半数の保有が必要だが、40%超の株式保有は、他の株主と連携することで、株主総会の普通決議(取締役の選任や報酬の決定、決算の承認など)で大きな影響力を行使できる水準だ。会社の重要な決定事項に対して大きな発言権と拒否権(合併、会社の解散、定款の変更、取締役の解任など)を持ち、経営戦略に関与できる強力なポジションを意味する」という。
シナネンの業績は好調だ。2025年度上半期の連結中間決算をみると、夏場の気温上昇などの影響で前年同期比2・5%減だったものの、経常利益は収益性改善や非エネ事業の拡大などで同196・4%の大幅増益となった。
シナネン側は光通信の大量株式保有について公式コメントを発表していないが、業界関係者からは「鈴与グループが静岡ガスの株を買い増し、結果3分の1を保有したのと、同じようなやり方。鈴与の場合は、同じ静岡地域のエネルギー会社として、関東や関西方面のエネルギー会社からちょっかいを出されがちな静ガス株を一定程度保有したいといった狙いなのだろうが、光通信とシナネンの関係は今のところ不明だ」との声も。
光通信は、新電力大手のイーレックスの筆頭株主にもなっており、その動向にエネルギー関係者の関心が集まっている。
NEWS 03:夕食会に参加したエネ大手 ガス田権益とアラスカが焦点
10月28日に都内の駐日米国大使公邸で開かれた、トランプ米大統領と日本企業経営者との夕食会に、JERAの可児行夫会長、東京ガスの笹山晋一社長が出席していたことが、関係筋の話で分かった。報道では、経団連の筒井義信会長やトヨタ自動車の豊田章男会長のほか、同日に公表された対米投資「共同ファクトシート」に名を連ねる商社やメーカーなどのトップが紹介されていたが、50人超の参加者に日本の大手エネルギー事業者も含まれていた格好だ。
JERAと東ガスの共通点は、まず米国のシェル―ガス田権益の獲得を積極的に推進していることだ。JERAについては10月23日、ルイジアナ州でGEPヘインズビルⅡ社と米ウィリアムス・アップストリーム子会社が生産しているガス田の権益を15憶ドル(約2300億円)で取得すると発表した。ガス田の生産量はLNG換算で350万tで、2030年をめどに生産量を倍増させる方針だ。
一方、東ガスはテキサス州ヒューストンにある子会社の東京ガスアメリカが、米シェブロンと共同開発契約を結び、同社が保有するシェールガス田権益の取得を進めている。「すでに取得したロッククリフ・エナジー社の権益などを含めれば、総投資額は5000億円以上に達するのでは」(業界関係者)と見る向きもある。
もう一つの共通点は、米グレーンファーングループ子会社との間で、アラスカLNGプロジェクトからのLNG調達に関する関心表明書(LOI)を締結していることだ。同プロジェクトは、日米両政府が合意した対米投資5500億ドル(約81兆円)の対象になるとみられている。日米エネルギー協力の鍵を握る両社だけに、トランプ氏の関心も高そうだ。
NEWS 04:太陽光への規制強化 新政権下で議論加速へ
北海道釧路市などのメガソーラー開発を巡り、環境省と資源エネルギー庁が事務局を務める省庁連絡会議で、規制強化に向けた検討が進む。10月21日に発足した高市政権でもこの方針は揺るがず。自民党と日本維新の会の連立政権合意書にも「2026年通常国会でメガソーラーを法的に規制する施策を実行する」とあり、検討を加速させている。
会見で規制強化の意向を示した赤沢氏
政権発足直後の専門紙記者とのインタビューで、赤沢亮正経産相は「不適切なメガソーラーに対し、地域共生を確保するため16本の関係法令を含む規律強化を図る」と強調した。電気事業法や環境影響評価(アセス)法などさまざまな法制度の改正や運用見直しを俎上に載せる可能性がある。また、環境族の石原宏高環境相も「北海道庁からよく話を聞くように事務方に指示を出した」とし、特に地域との共生に課題のある事例の議論を深める意向だ。
29日の第2回連絡会議では、エネ庁から各省庁に対し、太陽光開発に関して現在の関係法令に基づく対応の実効性を検証し、不十分と考えられる場合はさらなる規律強化に向けた方針を検討するよう依頼した。また出席省庁から、地方自治体による規制条例に関する分析を求める意見も出た。
なお、高市早苗首相はかつて「環境エネルギー省」への再編に言及したことも。本連絡会議がその呼び水となるのか。