A 乱開発は今も止まっていない。仙台市では東京ドーム130個分のメガソーラー建設計画があり、議会でも問題になっている。どうやら事業者は登記上沖縄にあるペーパーカンパニーのようで、まだ建設に着手できていないが動向を注視している。他にも北海道釧路市や福島市、千葉県鴨川市などのトラブルが最近報じられ、こうした流れはなかなか止まらないのではないかと危惧している。
B 全国にはさまざまな違法案件があり、一例を紹介したい。まず先ほど出た釧路市の案件は非FITで、森林法違反かつ産廃法(産業廃棄物処理法)違反疑い。数度のFIT法改正で規制が強化された結果、皮肉にも採算が取れるならあえてFIT認定を取らないという事例が増えている。他方、FIT案件のトラブルもやはり多く、京都府八幡市では無届けで住宅近くの急斜面の森林を伐採。結局市が公費で業者から用地を購入した。最近話題の鴨川市は、林地開発許可制度に係る行政指導が58回にも及び、ようやく県知事が動き始めた。そして、岩手県遠野市の建設現場では泥水が大量流出し鮎養殖業が壊滅。市が広報誌で怒りを表明する異例の事態となった。
C その通り。今日本には太陽光発電所が約70万カ所あり、法令順守や地域共生は当たり前という真面目な事業者が大半だが、一部にけしからん案件がある。法令を所管する省庁や、自治体が条例に基づく対応を徹底し排除していくしかない。一方、森林伐採を伴う開発の話が出たが、新規のFIT買い取り価格は1kW時当たり9円以下まで下がり、多額の伐採費や造成費がかかる案件では大規模であっても採算が取れない。PPA(電力販売契約)でも売電価格は10数円程度だし、需要家からすれば住民が反対している発電所からわざわざ買わないだろう。
A 仙台市では、法令を守りゴルフ場に設置されたパネルが火災を起こし、感電するため日没まで放水できず、鎮火に22時間かかった。3・75万㎡の下草とパネルが燃え、森林に隣接しており下手をすれば山火事に至る可能性があった。他にも土砂災害や景観悪化、有害物質の流出などにつながれば、住民にとっては迷惑施設となる。こうしたケースでは地域外から来た事業者と地元とのコミュニケーション不足がよく見受けられる。さらに、途中で倒産した場合に撤去まで責任を持つのか、懸念される。撤去費用の積立制度での義務化は売電期間の10年目以降で、制度そのものへの不信感もある。自治体から国への問題提起をしているが、13年間課題を放置してきた国会議員や官僚、大手メディアの責任は重い。ただ、ようやく各地域の点の動きが線になってきたと感じる。
C その点の認識は異なる。制度的にも業界的にも既に地域共生モードに切り替わっている。国は事業者に対し制度改正で厳しく改善を求め、買い取り価格も引き下げてきた。今、FITの年間認定量は住宅用1GWに対し、それ以外は数百MW程度。むしろこんなに手間暇がかかるなら辞めたいという事業者が多いが、脱炭素は目指さなければならない。
B 資金がなければ開発はできず、悪質な事業者にも貸し付けが行われていることは事実だ。資金提供側からすれば回収が目的であり、発電は二の次なのだろう。
C 銀行も以前より貸し渋るようになり、保険料は高く、ケーブルは盗難され、そして住民からのバッシングがある。これ以上悪質なトラブルの乱発は考えにくい。また70万カ所のうち地域に歓迎されている発電所も多いのに、それがほとんど報道されないのはつらい。
B ではどうするか。政府は長期安定適格事業者制度で望ましい事業者に発電所を集約し、FIT・FIP(市場連動買い取り)によらない事業を促す狙いもある。ただ、認定基準の一つに「地域の信頼を得られる責任ある主体」とあるが、抽象的すぎる。
C 同制度で悪い事業者を退出させ、優良な事業者に引き継ぎ地域主体型に変えていくことが重要だ。そうすれば地方の荒廃などの課題解決に資する可能性が出てくる。安い太陽光は自家消費する方が合理的で、各々身の丈に合った規模で活用し、同時に電化も進めるべきだ。また、運転期間が長期化した設備のリパワリングも重要で、13年前の変換効率は12%程度だったが、今はその倍になった。
A 理想的なビジョンを全否定したくはない。ただ、現実的に今起きている問題に対しては大至急対応を強化すべきだ。
今年の世界経済には、地政学的緊張、技術革新、環境問題、そして金融政策の変化が絡み合い、複雑な影響を及ぼした。何といっても米大統領選で再選したドナルド・トランプ大統領の政策断行は世界中の人々が注目している。同氏が掲げるMAGA(Make America Great Again)をスローガンに挙げた大胆な貿易政策決定は、貿易摩擦を引き起こし一時は未曾有の米景気減退の事態となった。米国一強で世界経済が回っていないことが露呈し、同時に米経済の及ぼす相応の影響力も知らしめた。世界貿易は断片化し、企業はサプライチェーンの再構築や地域の再選定など事業継続するための選択を余儀なくされている。