A 主な変更点としては国内製造の拡大とグローバルプレゼンスの向上、そして次世代蓄電池市場の獲得の3点がある。太陽光発電の反省を生かし、蓄電池はある程度国がイニシアチブをとっていくことを示した点は評価できる。ただ、中国が巨額の設備投資を行い量産化で低価格化が進む中、日本がグローバルプレゼンスをどうやって高めていくかは課題だ。米国もEU(欧州連合)諸国も、蓄電池や関連部品の規制を強化しており、脱中国を進めているから、そこをどう取り込むかは国の役割になるだろう。
B 太陽光などの再エネが増えたことにより、既存の火力発電所の稼働率が落ちて採算が取れず市場退出が起きている。それを無理に残そうとすれば、結果として国民負担が増えていく。だからこそ、ピークを含めた電力の調整役として一定量の蓄電池をきちんと入れていくという方針の下、戦略が見直されたことは非常に意義深い。今後は具体的に、蓄電池産業のどういったところに重点的に補助していくのかといったことを各方面の関係者の意見も踏まえた上で決定し、効率的で費用対効果の高い投資をしていくべきだ。
C 中を見ていくと、2030年度の目標価格として、業務・産業用蓄電システムは工事費込みで1kW時当たり6万円としているが、今すでに4万円を切っている状況だ。定置用で一時的にリチウム価格やリブが上がったりしたとしても、さすがに6万円という目標値はピンとこない。グローバルで戦うというのに、海外の低価格帯と比べ3倍のコスト。純国産であることやこの価格水準に固執してしまうと、買う人はいないだろうし勝負にならない。製造側だけでなく、サービスを利用する側からどれぐらいの価格水準が妥当かという観点も、戦略の実現に向けては必要だ。
電力インフラとしても役割が増す蓄電池
圧倒的ボリューム占めるEV向け イラン危機の教訓踏まえ促進政策を
―日本ではEVが低調で、これも蓄電池導入を足踏みさせそうだ。
B 世界的に電池の利用先の圧倒的なボリュームはEVで、その残りの部分が定置用に回っているという構造だ。そのため、やはりEVがどこまで伸びるかが肝心だ。中東危機による燃料高騰でアジアや欧州ではEVが売れている。ところが日本はIEA(国際エネルギー機関)も批判するガソリン補助金によって、産油国でもないのに先進国でガソリン代が最も安いというおかしな状況になってしまった。EV100万台で蓄電池の設備規模は約80~90GW時に達する。ロシア侵攻や今回の教訓を踏まえ、日本もやはり化石燃料を使わないEV化を促進する政策を進めるべきだ。
―電力系統への影響や電力システムから見た蓄電池はどうか。
C 今は太陽光の余剰を出力制御で捨ててしまっている。昨今の中東情勢を踏まえた自給率向上という意味では、より多くの蓄電デバイスが必要だ。それに、再エネを入れていこうというのであれば昼間の電気が今以上に余ってしまうことになるし、原子力が稼働すればなおさら夜間にスライドするために蓄電池が必要になる。
B 系統用蓄電池については、国としてもここまで急激に導入が進むことは想定していなかったのだろう。どう活用していくか、送配電会社も含めて関係者とじっくり検討しようとしていた矢先だったのだと思う。ところが複数の大手エネルギー会社が巨大な系統用蓄電池プロジェクトを立ち上げたことで、「これは(ビジネスとして)いける」という流れができた。そこに事業用FIT(固定価格買い取り)制度による太陽光の買い取りが終了したことで、投資家らの資金が一気に流れ込んでくることになってしまった。その結果として、技術的な運用の議論をする間もないほど急激に蓄電池の系統接続申請が増えてしまい、不幸な状況になっていると言える。
C 出資者が仮に同じ企業だったとしても、SPC(特別目的会社)名義で接続申請が出されてしまうと座組ごとに名前が変わるため、一見するとそれぞれが全く別の事業者による申請に見えてしまい、同一事業者による系統接続申し込みの集中を防ぐ術がない。送配電会社から見て「ここに置いた方が系統安定化の蓋然性が高い」という場所を明確にする必要もあるだろう。特に今は接続検討が長引いていて、接続が受け付けされるまでに3カ月から半年もかかってしまっている。再エネ併設型の蓄電池は本来もっと早く進めるべきなのに同じ行列に並んで順番待ちをしている始末だ。蓄電池で再エネの出力抑制を抑える方向にリソースを振るべきなのに、完全に目詰まりを起こしている。