A 森さんが会長に就任したことで、電事連は一段と〝原子力事業連合会〟としての性格が強まるだろう。原子力事業の正常化は業界全体の悲願で期待は大きい。
B 森さんの実務能力は高く、経営センスも抜群だ。ほかの業界の人と話をしても、彼の悪口は聞いたことがない。ただ森さん個人は良くても、関電という組織に対しては他電力のアレルギーが根強いのも事実。カルテル問題や新電力の顧客情報の不正閲覧問題が尾を引いている。
C かつて東京電力が中心だった時代は、電事連に出向している人間は「全電力のために動く」という意識があった。森さんがトップでどうなるか。原子力はともかく、ほかの分野で周りが付いてこないという事態にならなければいいが。
A 関電はどちらかと言えば、自社の物差しを優先する〝関電ファースト〟の体質がある。最近は資金調達面でも恨みを買った。関電が真っ先に行った大規模増資は市場の評価が低く、他電力も計画していたにもかかわらず増資による資金調達ができなくなってしまった。
B その関電だが、森さん後継の本命は常務の田中徹さんだ。なかなかの剛腕で、次期中期経営計画は彼がまとめた。副社長の小川博志さんなど優秀な対抗馬も多い。
電事連では森望・関電社長が会長に就任した
東電の停滞が原電人事に影響 HD化見据える九電の二枚看板
―不適切事案を抱える中電は第三者委員会の報告書が出たら動きがありそうだ。
B 不正が行われていた時期に社長だった会長の勝野哲さんにつながるラインの人たちは退任する可能性がある。林さんは第三者委の報告を待って判断するだろう。辞任せずに次回の株主総会で会長に就けば、後任の本命は中電ミライズ社長の神谷泰範さんだ。中電副社長の佐々木敏春さんや専務の安井稔さんを推す声もある。ただ、勝野さんと林さんの同時退任となれば、人事・総務畑で地域とのつなぎ役だった佐々木さんが会長、神谷さんが社長という布陣になるのではないか。いずれにしても、報告書待ちだ。
A これまで福島や新潟、バックエンド関連といった地元対応は全て社長の小早川智明さんが先頭に立って進めてきた。関係地域から見れば、東電の「顔」は小早川さんしかあり得ない。今後、社長を退いて「代表取締役」という肩書になるかもしれないが、継続性や信頼性の観点から引き続き担当するはずだ。一方で、いわゆる「グッド東電」の経済事業は後継候補の酒井さんが担う。副社長の永澤昌さんも留任で大きな変化はないと思う。
C 次期社長は永澤さんとの見方もある。酒井さんはアライアンスを担当して、経済事業は永澤さんが見るということだ。そうなれば日本原子力発電の人事にも影響を与える。社長の村松衛さんは11年目に突入するが、後任の本命は永澤さんだと言われてきた。もし永澤さんが東電に残るのであれば、副社長の牧野茂徳さんが最有力だろう。
B 東電のもう一つのポイントは取締役の吉野栄洋さんだ。20年に経済産業省から原子力損害賠償・廃炉等支援機構に出向したが、アライアンス相手が決まれば夏の人事で経産省に戻るのではないか。そのアライアンスが上手く行くとは思えないが……。
─ホールディングス(HD)化が予定されている九州電力はどうか。
A HDの社長は九電産業社長の中野隆さん、事業会社のトップは引き続き西山勝さんが務めるのではないか。九電の場合、過去にもグループ会社から復帰したケースはある。今回の中野さんの転出も、HD社長就任に向けた勉強期間という見方だ。もちろん、会長は池辺和弘さんだ。
C 西山さんを変える理由はないからね。ただ、両者はタイプがまるで違う。西山さんは真面目な実務型だが、中野さんは地元政財界にも顔が利き、深い関係を築いている調整型。バランスが取れている。
B 余談だが、池辺さんと西部ガス会長の道永幸典さんは仲が良い。現場レベルでは激しく競合していても、トップ同士が意思疎通できていることは、九州全体のインフラ戦略や活性化にとってプラス。HD化によって、こうした地域連携が加速する可能性がある。西部ガスは社長の加藤卓二さんが明るく元気で、社員も一段とやる気にあふれているね。
ラピダス対応からカルテル後まで 試される地方電力の突破力
─泊3号機再稼働の地元同意を得た北海道電力や東北電力はどうだろう。
B 北電の経営は安定しているが、最大の課題は供給力の確保だ。国策半導体「ラピダス」の需要は膨大で、データセンターなども考慮すると泊原発の再稼働だけでは全く足りない。LNG火力の増設が必要だが、発注してすぐに建設できるわけではない。これをいかに前倒しできるかが、会長の藤井裕さん、社長の齋藤晋さんの腕の見せどころだ。
A 東北電は石山一弘さんが社長就任1年を迎えるが、ポスト石山の足音が聞こえ始めている。最有力として推したいのは、新たに常務に就任した遠藤雅夫さんだ。これまで経理部長を務めていた。
―北陸電力は社長の松田光司さんが奮闘している。
B 松田さんは明るい性格で、地元の経済界やメディアとの関係構築が抜群だ。地元紙は電力会社に批判的な場合が多いが、北陸は違う。松田さんが膝を突き合わせて説明を尽くしているからだ。
A 実務面では企画出身で副社長の平田亙さんが支える体制が整っている。次世代のホープとしては、常務の福村章さんに注目している。他電力からも一目置かれていて、いつか福村さんの時代が来るだろう。
北電は供給力確保が課題だ
―一方、西日本の中国電力、四国電力はどうか。
B 中国電の中川賢剛さんはスマートな人物。以前の経営の問題点を指摘し、正そうとしている。カルテル問題の係争が終わらせ、経営を正常化させることが最優先だ。その後は強烈なリーダーシップを発揮するだろう。
A ただ、四国電、九電と同じで関電からの営業攻勢がある。関電と組むのか、そのほかと組んで対立するのか、判断を迫られることになる。カルテル問題の流れですぐには動けないが、合理的な中川さんがどんな判断を下すのか注目だ。
C 中川さんと四国電社長の宮本喜弘さんは、まだ独自色を出していないが安定感があるね。宮本さんはエリアにこだわらない柔軟な思考を持っている。中川さんともざっくばらんに議論できる関係性だ。西日本連合だけでなく、PWR(加圧水型原子炉)を採用する北電と原子力部門で連携するという選択肢だってあり得る。
─トップ交代もあった。4月1日付で沖縄電力は横田哲さん、Jパワーは加藤英彰さんが新社長に就任する。
A 沖電は順当だ。間もなく発表になる次期中計をまとめたのが横田さんで、会長になった本永浩之さんが社長に就任したのもタイミングも同じだった。自らが作った中計を実行に移す。
B Jパワーは前社長の菅野等さんの健康上の理由を受けての交代。このタイミングなら常務の加藤さんしかいなかった。ガスなどとアライアンスを組んで全国展開していく路線は変わらないだろう。
東ガス、東邦ガスは現体制続く 藤原社長の後任は……
─ガス業界に目を移そう。東京ガスで気になる点は。
A 社長の笹山晋一さんの人当たりの良さは、東京経済界と協調していく上で間違いなくプラスになる。今回の人事で笹山体制が整ったと言え、長期政権になるだろう。中計をまとめた人が次期社長になるので、このパターンに当てはめると常務の村越正章さんが後継最有力だ。
C 常務だった辻英人さんが専務に昇格し、日本ガス協会専務理事の早川光毅さんの後任となる。辻さんは全国ガス労働組合連合会の委員長を務めた人物で、地方ガス会社とのパイプが太い。ガス協会が昨年「ガスビジョン2050」で打ち出した地方重視の理念とも合致する。大手は電力販売や海外事業などで収益を上げているが、地方はそうはいかないからね。
B 東ガスはネットワーク部門が3年連続赤字だ。東京ネットワークで指揮を取っていた沢田聡さんに代わって、副社長だった棚澤聡さんが4月1日付で社長に就任する。棚澤さんには、赤字体質改善という責任がのしかかることになる。
C 日経新聞が2月1日の1面トップで「電気・ガス、日本の大都市に英企業が販売網 大阪ガスや東京ガスと」と報じて業界を驚かせた。