黒羽美貴/ガスエネルギー新聞 記者
近年、地域での大規模、あるいは重点事業は多業種が協働する形式で請け負うケースが増えている。
都市ガス会社もその枠組みで重要な役割を担うようになってきた。
現在、日本各地の都市では、人口減少や少子高齢化、経済の縮小などが顕著に進んでいる。その中で自治体に加え、地元企業も、担い手不足などにより従来から行う事業やサービスの継続が難しくなっており、地域自体の存続さえも危ぶまれ始めている。ガス導管を地域に張り巡らし、まさに地域と一体化している都市ガス会社にとっても深刻な事態だ。
総務省は2024年11月、「持続可能な地方行政のあり方に関する研究会」を立ち上げた。昨年6月にまとめた報告書には、自治体間の連携、産業等分野での自治体や企業間の連携の重要性が盛り込まれた。
経済産業省は昨年10月に、地域住民の生活に不可欠な生活維持関連サービス(買い物、交通、ガソリンスタンドなど)の供給持続性などを検討する「地域生活維持政策小委員会」を立ち上げた。第2回会合では、先進事例ヒアリングに、三重県伊賀市で都市ガス事業などを展開する上野都市ガス/上野ガスの中井茂平社長が出席し、新事業の給食センター事業や斎苑(火葬場)事業について説明した。
また都市ガス関連でも、同年8月に立ち上がった経産省の「ガス事業環境整備ワーキンググループ」の第6回会合で、ガス事業持続性確保のために、多様な関係者と協創(共創)できる仕組みを検討していくという方向性が示された。
さまざまな分野に参画 防災やCNの枠超えて
都市ガス業界では、カーボンニュートラル(CN)や防災などエネルギーと親和性の高い分野で自治体や企業と連携協定を結ぶ例が増加している。近年はさらに進んで、都市ガス会社が多分野かつ大きな協働の枠組みに参画するケースが多くなっている。
前出の上野ガスはグループでPFI事業(民間資金等活用事業)に参画し、地域に必須の二つの事業に取り組む。一つは伊賀市の小学校給食センターの整備運営事業で、同社グループ会社が構成企業として参加するコンソーシアムが応募して事業を落札、18年にSPC(特別目的会社)「伊賀学校給食サービス」を設立し、20年から新たに建設した給食センター「いがっこ給食センター元気」を運営している。同施設には上野ガスがLPガスを供給、上野ガス配送センターがLPガス配送の知見を生かし配送を担当している。
もう一つは同市の新斎苑整備運営事業で、上野ガスやグループ会社などで構成されるコンソーシアムが事業を落札、SPC「伊賀芙蓉」を設立、新たに建設した斎苑「伊賀市斎苑」を24年から運営する。火葬場では都市ガスが止まってもLPガスを利用できるようにし、さらに油を利用する非常用発電機を備え、災害時でも稼働を継続できるなどエネルギー企業の視点を生かしている。これらの試みは、地域内での資金循環や雇用拡大につながっている。
またインフラ分野ではサーラコーポレーションが昨年11月に、愛知県の豊橋浄水場再整備事業に参画することを発表した。企業グループ「あいちウォーターイノベーション」(代表企業=インフロニア・ホールディングス)の構成企業として参加。連結子会社の神野建設や都市ガス会社のサーラエナジーとともに地元企業として当該事業や関連事業に携わる。
教育分野でも、地域になくてはならないCN人材の育成に力を入れる。福島県いわき市でガス事業を行う常磐共同ガスは地元の企業や福島工業高等専門学校などと、CNに関する人材育成や共同研究・開発の推進、新産業創出、CN社会の実現を目指す「いわきCN人財育成コンソーシアム」を22年度に組成した。23年度には同社が幹事会社を、25年度には小野寺智勇社長が副会長を務めている。コンソーシアムでは地元自治体の協力を得ながら、「いわきCN社会連携共同講座」を開講。受講対象は、コンソーシアム参加企業の幹部や若手社員、市役所の職員、高専の学生(専攻科1年生は受講すると単位になる)や教員、市内企業社員など。25年度は全13回開催した。講師はCN分野の第一線で活躍する産学官の関係者が務める。受講者のCN社会実現に向けた意識変革はもちろん、常磐共同ガスでは、地元での人材確保や企業間連携の深化につながるとみている。
静岡ガスは、21年に発表した同社グループの「2030年ビジョン」で、30年に地域共創を実現する目標を掲げている。本社がある静岡市とは環境省の脱炭素先行地域事業で協働。同社は、市内の倉庫群で太陽光発電によるPPA(電力販売契約)事業などを行う新会社をフジタとともに立ち上げており、ここで生み出された太陽光発電の余剰電力を有効活用するプロジェクトを進めている。

この余剰電力を可搬型蓄電池に充電し、この充電池を搭載したEVを企業や大学で運送に使う実証を行っている(3月上旬時点)。今後、実証結果を踏まえ、事業化を目指し、協働した企業などとコンソーシアムを組成する予定だという。また、同社は今年2月に静岡市の「アリーナ整備・運用事業」を落札した企業グループ「The Shizuoka Alliance」(代表企業=NTTドコモ)の構成企業に名を連ね、共創の新たな輪を広げている。
コンソ参加の意義大きく さらに拡大の見込み
コンソーシアムといった協働、共創の枠組みに参加することは、地域の課題解決を担い、地域の存続に貢献する「地元企業」として存在感や信頼性を高めるだけでなく、自社の事業継続や新たな分野への事業拡大、人材確保、参加企業との関係性を深化させることにもつながる。また、その枠組みに地元企業として都市ガス会社が関わることで、地域経済の好循環に役立つことができる。協働や共創の流れは、地域と共にある都市ガス会社の間でさらに広がっていくと考えられる。
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