【業界紙の目】伊地知英明/化学工業日報編集局記者
宣言が各国で相次ぐが、脱炭素化本質的に問われているのは地球の炭素循環の正常化だ。環境と経済の両立を図る上で化学産業の役割が期待されるが、日本がリードすることはできるのか。
人類が抱える課題を世界が一丸となってどのように解決していくのか―。この問題は、大きくは地球上の「誰一人取り残さない」ことを目的とする国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)と、「パリ協定」に集約されるだろう。ようやく米国の国際社会への復帰が期待される中、各国の施策だけでなく民間の経営も含めて、押し戻すことができないムーブメントとなる現実味を帯びる。さらに新型コロナウイルスのパンデミックは、モノづくりを含めたデジタル・トランスフォーメーション(DX)を加速し、「社会全体のデジタル化」というパラダイムシフトを引き起こそうとしている。
ただ、IoT社会の浸透は使用電力を増大させ、化石燃料、太陽光、風力、水力、地熱、排熱や、安全性を担保した原子力といったあらゆるエネルギーの「電気への変換」と、さらなる省エネが大前提となる。このためにもセンサー、集積回路、電力変換素子、蓄電池などのデバイスの高機能化に欠かせない革新的な素材・材料が必須だ。学術としての化学、産業としての化学技術は日本のお家芸とされ、ゲームチェンジャーとしての真価が問われる。
人類が目指す「持続的発展」 CO2の滞留をどう改善するか
地球はこれまで、さまざまな生き物のための「場」を提供してきた。この営みは「資源の循環」が基本であり、「有限な元素の使い回し」で成り立っている。物質を構成する分子は複数の原子の組み合わせであり、原子の種類は元素と呼ばれる。元素を性質ごとに整理したのが周期表だが、記載された元素は118種類ある。
この中で地殻に存在する元素は限られる。全体の5割近くは酸素で、あとは2~8%のケイ素、アルミニウム、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムの8元素でほぼ地表はできている。ちなみに炭素は0・1%以下だ。さらに化学反応に用いる触媒や、半導体といったデバイス、リチウム二次電池(蓄電池)、燃料電池などに用いる金や白金といった貴金属や希土類は、極めて希少な元素で、産地も偏在している。
一方、石油(原油)は化石資源であり、産業革命以降の人類の豊かな暮らしを支えてきた。熱エネルギー源(動力)としての役割だけでなく、プラスチックをはじめとした炭化水素系製品などの原料となっている。この地球の恵を「無駄なく使いこなす」のが石油化学である。つまり、生き物から化石に引き継がれた炭素を活用して、有用な物質となる素材・材料に変換する役目を果たしている。
また、「現代の大気」は窒素が約8割、酸素が約2割と大半を占め、炭素は100ppmオーダー(1%は1万ppm)だ。「人類最大の敵」と名指しされている温室効果ガスのCO2は、数百ppmレベルとなる。このCO2は地球の資源循環の視点からすれば、基本的に植物の光合成(森林への吸収)や海洋への吸収などによって再び地球表面に戻る。地表と大気の間の循環を繰り返し、生き物などを形づくっている。
人類が今、突きつけられていることは「環境保全と経済的格差を生じさせない持続的発展の両立」である。現在の共通認識では産業革命以降、人為的に大気へ排出されたCO2が大気温度の上昇を招いている。CO2も人類が出し続けている廃棄物の一つであり、そろそろプラスチックなどとともに、この滞留を是正しなければならない時期に入っている。つまり、循環する元素にどのように向き合うかである。地球の営みからすれば、「脱炭素」には違和感があり、「循環する炭素」として扱うべきではないだろうか。















