【論考/4月27日】深刻化する石油危機 豪州「軽油外交」が示す市場の機能不全 ※期間限定無料公開
イランによるホルムズ海峡封鎖に、米軍による対イラン海上封鎖が加わり、未曾有の石油供給危機は、より深刻化しつつ進行している。国際エネルギー機関(IEA)によれば、本年3月のペルシャ湾経由の石油輸出量はわずかに日量200万バレル強、その過半はイラン産だった。これは昨年平均水準に比して日量・約1800万バレルの激減。迂回ルート(サウジアラビア紅海岸およびアラブ首長国連邦(UAE)・オマーン湾岸)からの原油輸出が日量・約400万バレル増加したので、これを差し引いて、減少総量は日量約1400万バレルだった。

4月8日にパキスタンを仲介として米・イランは2週間の停戦に合意。しかし11−12日にイスラマバードで行われた両国協議は不調に終わり、米軍は11日にホルムズ海峡で機雷除去を開始。13日にはオマーン湾・アラビア海北部に展開する15隻以上の艦艇を用いて、事実上の対イラン海上封鎖を敷いた。16日、トランプ米大統領による10日間のイスラエル・レバノン停戦発表を受け、17日にはアラグチ・イラン外相が米・イラン停戦期間中の海峡開放を宣言したが、同日イラン革命防衛隊は海峡航行の実効支配をあらためて主張。米国も海上封鎖を解かず、18日にイラン政府はホルムズ海峡の「再封鎖」を発表した。21日トランプ大統領は停戦期限の延長を発表、イランからの再提案を待つ、としている。
イランはレバノンを含む全戦線での戦闘終結、戦争被害賠償、ウラン濃縮の権利確保、対イラン制裁措置の全面解除に加えて、在中東米軍の撤退、イランによるホルムズ海峡実効支配の継続を和平条件としている。いわば中東湾岸地域におけるイランの覇権的地位を実質的に承認するよう求めており、その中核にホルムズ海峡支配がある。外相の海峡開放宣言が即座に打ち消されたことも、イランの対外行動が海峡支配を「生命線」と見なす強硬派・革命防衛隊の主導下にあることを示唆する。
米側は3月21日にトランプ大統領がイラン国内発電施設攻撃の意思を公言し、48時間内の海峡開放を迫ったが果たせず、以来、攻撃期限をいたずらに延期してきた。対イラン海上封鎖は無差別空爆に代わる策だが、これによってイラン産、非イラン産を問わずペルシャ湾からの石油輸出がほぼ全面的に途絶する。迂回ルートのみが機能するとすれば、湾岸全体の輸出量は昨年平均水準から日量約1600万バレル減少となる。
世界原油生産余力は、その大半がサウジ、UAE、クウェート、イラクに集中していたが、これがホルムズ海峡封鎖によって無力化されているので、既に3月時点で実質ゼロとなった。巨大な供給途絶と機動的生産余力の喪失により、一旦在庫が底をつけば、未曾有の石油消費量激減が不可避となる。


