【論考/4月27日】深刻化する石油危機 豪州「軽油外交」が示す市場の機能不全 ※期間限定無料公開

2026年4月27日

市場の自律的調整から政府による制御へ

豪州の「軽油外交」は、石油貿易が基本的に政府間合意の下に置かれ始めたことを示している。ホルムズ海峡封鎖がもたらす巨大な石油供給逼迫は、いずれ市場による自律的調整能力を圧倒し、需給を整合させる最終的な担い手は各国政府による制御・統制となろう。必然的に石油貿易も政府間合意によって大枠が定まるようになる。豊富な天然資源という経済的実力を背景に、首脳外交により石油製品輸入確保を急ぐ豪州の動きは、石油貿易において政府による制御、政府間合意が一義的に重要となる事態の到来を告げている。

無論、この豪州の試みにも限界がある。当然ながら、シンガポールによる石油製品輸出の保証も「原油供給が続く限り」という条件付きであり、マレーシアも国内需要向けの供給が最優先と明言している。また豪州は韓国に対しても石油製品輸出を削減しないう求め、韓国側もナフサを除けば昨年並み水準を上限とするにとどめているが、それも当座の措置に過ぎない。ホルムズ海峡封鎖が続けば、他国向けと比べて多少遅れたとしても、豪州向け石油製品輸出の削減はいずれ不可避となる。

4月22日豪州政府の発表によれば、政府と国内精製2社との協働によって1週間で3億ℓ(190万バレル)の追加的な軽油輸入が確保された。しかしこれは昨年の軽油輸入量の4日分にも満たない。また15日のビバ・エナジー社・ジーロング製油所で起きた火災事故に伴う生産減の総量は、この追加輸入量の3分の1以上を相殺する可能性が十分ある。一方、豪州の保有在庫は、そもそも義務量が低いこともあり、4月21日時点で平年消費量に対してガソリン44日分、ジェット燃料・軽油は30~33日分しかない。海上輸送中の数量は4月17日時点で原油23日分、石油製品16日分とされる。合わせて、せいぜい1ヶ月半程度先までしか見通せないので、消費者に不安が広がるのも当然だろう。

政府は3月30日に発表した「燃料安全保障計画」の中で4段階の対応措置を定め、現状は第2段階―局地的な供給不足―としている。第3段階では政府の指針に沿った「自主的・実際的な消費抑制」に進むが、この移行を躊躇していると、一気に第4段階―優先順位に基づく配分―に追い込まれる危険がある。

国内・国際的な石油緊急時体制の構築が急務

石油の優先的な配分先を決める必要性は、国内のみならず国際的にもあり、それは食料生産と燃料供給を結び付けた「軽油外交」にも既に現れている。石油供給途絶の衝撃を最も強く受けるからこそ、アジア太平洋の自由主義・親米諸国が、共に整合的な消費抑制と供給配分策を立て、石油緊急時体制への段階的移行を進めていかねばならない。

「軽油外交」は、市場の調整力が効かぬ供給危機の中で現れた、政府主導による石油貿易制御の一つの試みだ。この問題提起に応える上でも、日本はまず、現実的な輸入量と在庫残量の見通しの上に段階的な消費抑制に着手し、併せて豪州を含めた域内の自由主義・親米諸国と協働し、相互に整合的な緊急時体制の構築を急ぐべきだ。

これは各国の存亡がかかる重大事と言って過言ではない。現在の「大国」―米国、中国、ロシア―は、破壊力は抜群だが秩序建設の指導力は極めて乏しい。新たな秩序を築く創造力を、危機の渦中に投げ込まれていく諸国こそが発揮すべき時だ。

国際石油アナリスト 小山正篤

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