【業界スクランブル】
六ヶ所再処理工場の原子力規制委員会による安全審査は正式合格が近づいている。だが、その後の設工認や使用前事業者検査は事実上、原子力規制庁との共同作業であり、ガラス固化など過去の作業のやり直しなど膨大な作業発生も予想される。梶山弘志経済産業相はその六ヶ所工場を7月1日視察し、幹部・社員約100人に行った訓示で、「政府としては核燃料サイクルの方針を堅持していく。そのためにも再処理工場やMOX燃料工場の関係は極めて重要」と述べ、万全の態勢で完工を目指すよう求めた。
翌2日、梶山大臣は経産省内で大手電力10社と日本原電、日本原燃、電源開発の各社長と会い、関電問題に対応してコンプライアンス徹底に向けた電力業界全体の取り組みについて意見交換するとともに、プルトニウムの具体的な利用計画を可能な限り速やかに策定するよう要請した。特に、六ヶ所工場については完工が業界全体の重要な課題と述べた上で、「回収されるプルトニウムがしっかりと利用されていくことを国内外に示すことが重要」と指摘。日本が約45.7t(2018年末)保有するプルトニウムの利用計画の早期策定を求めた。
しかし、具体的アクションとして現実の課題は少なくない。電源立地地域の地元事情や国の原子力政策、国会運営に精通するある有力代議士は、「ガラス固化などでさんざん苦労した六ヶ所村での再処理が労苦を重ねた上でいよいよ許可を見通せる状況となり、竣工のゴールが見えてきた今日、軽水炉の再稼働を本気になって強力に進めないといかんなあ」と語っている。
既存の原発は9基が再稼働したが、訴訟リスクやいわゆる特重問題などのため、そのうち4基が停止中で足踏みをしている。現状はプルトニウム利用の実を挙げておらず、いわば魂が入っていないことの証拠ではないか。立場やスタンスの違いを超えて再稼働に強力に取り組むことが、資源小国わが国の進む道であり、エネルギーの安定供給、地球環境保全のためにますます重要になっている。(Q)