【マーケット情報/9月24日】原油上昇、需給逼迫感が台頭

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み上昇。需給逼迫感が強まり、買いが優勢となった。北海原油を代表するブレント先物は、24日時点で78.09ドルとなり、2018年10月下旬以来の高値を付けた。また、米国原油のWTI先物と、中東原油の指標となるドバイ現物は、それぞれ73.98ドルと74.97ドルで、今年7月以来の最高となった。

米国の週間在庫は、製油所の高稼働を要因に、7週連続で減少。また、2018年10月初頭以来の最低を記録した。加えて、マレーシア・サバ州の洋上生産設備で不具合が発生。11月の出荷が一部遅延する見通しで、品薄感が台頭した。

また、米国は、国際便に対する規制を緩和。それにともない、英国の航空会社ヴァージン・アトランティック、およびドイツ航空会社ルフトハンザの、米国向け航空便予約が急伸。英国も、国際便の規制を大幅に緩和し、ジェット燃料需要が増加するとの見込みが広がった。加えて、OECDは、2021~2022年の経済成長予測を上方修正。アジア開発銀行も、来年のアジア太平洋地域内における経済成長予想を小幅に上方修正。経済および石油需要回復への期待感が高まり、買い意欲を強めた。

ただ、アジア開発銀行は、今年の経済成長予測には下方修正を加えている。新型コロナウイルス変異株の感染拡大が収まらないことが背景にある。さらに、米国メキシコ湾での生産は、ハリケーンからの復旧が続いており、23日時点で84%が稼働再開。価格の上昇を幾分か抑制した。

【9月24日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=73.98ドル(前週比2.01ドル高)、ブレント先物(ICE)=78.09ドル(前週比2.75ドル)、オマーン先物(DME)=74.89ドル(前週比1.46ドル高)、ドバイ現物(Argus)=74.97ドル(前週比2.02ドル高)

【コラム/9月27日】脱炭素社会実現に求められる「人材の流動化」と「若手育成」

渡邊開也/リニューアブル・ジャパン株式会社 執行役員 管理本部副本部長兼社長室長

 第六次エネルギー基本計画の素案が今年の7月に公表され、2030年度の総発電量のうち再生可能エネルギーで36~38%賄うことが示された。資源エネルギー庁から9月に公表されている「エネルギー基本計画(案)の概要」には、全体像として(スライドp.4)

・2050年カーボンニュートラル(2020年10月表明)、2030年度の46%削減、更に50%の高みを目指して挑戦を続ける新たな削減目標(2021年4月表明)の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すことが重要テーマ

・同時に、日本のエネルギー需給構造が抱える課題の克服が、もう一つの重要なテーマ。安全性の確保を大前提に、気候変動対策を進める中でも、安定供給の確保やエネルギーコストの低減(S+3E)に向けた取組を進める

・エネ基全体は、主として、

①東電福島第一の事故後10年の歩み

②2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応

③2050年を見据えた2030年に向けた政策対応のパートから構成

と記されている。

 さらに、③2050年を見据えた2030年に向けた政策対応のパートから構成には、2030年に向けた政策対応のポイント【再生可能エネルギー】というスライドがあり、「S+3Eを大前提に、再エネの主力電源化を徹底し、再エネに最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を促す」とある。

 その具体的な取組として、地域と共生する形での適地確保、事業規律の強化、コスト低減・市場への統合、系統制約の克服、規制の合理化、技術開発の推進と記されている。

 どれも至極当然のことだと思うが、そこにもう1つそれらを実現するために必要なこととして、「人材の流動化」と「若手の育成」を加えてみてはどうだろうか。

 これまでの電力システムは、大規模な発電所で大量の電気を発電し、遠距離送電により首都圏などの消費地に届けるという、いわゆるBER(大規模系統電源)ある。従い、発電所の維持管理する電気主任技術者等の人材もおのずとその発電所を所有する会社に集まっていることになる。

 それが今後は、再エネをはじめとしていわゆるDER(分散型電源)になっていくならば、設備というハード面の分散化だけでなく、そこに関わる人材というソフト面も分散化していく必要があるのではないだろうか?

 加えて、それらの人材の担い手は高齢化しているという現状の中、将来を担う若手にそのノウハウを移転していく必要があると思う。具体的にはいわゆる電力会社などで定年間近の現場経験豊富な技術者の方々が、セカンドキャリアとして太陽光発電所などの再エネ発電事業者で活躍するという人材の流動化や、地方の大学・高等専門学校等を卒業した人材、特に女性の活躍する場として、また新卒採用の方々が就職先の選択肢として再エネ業界で働くということを考えてもらうようになることが大切になってくると考えている。

 それらを通じて現場技術者を育成し、地元で長期間、安定的に働くことで、再エネ主導の脱炭素社会の実現を目指すことを考えていくのが良いのではと思う。

 特にこのコロナ禍で先行き不透明な中、電気というエネルギーは誰もが利用するもので、その業界を支える人材というのは、若手や学生にとって魅力的に思えるものではないだろうか?

※出典:エネルギー基本計画(案)の概要」

https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/opinion/data/02.pdf

【プロフィール】1996年一橋大学経済学部卒、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2017年リニューアブル・ジャパン入社。2019年一般社団法人 再生可能エネルギー長期安定電源推進協会設立、同事務局長を務めた。

【太陽光】休止する揚水発電 調整力として活用

【業界スクランブル/太陽光】

指定電気事業者制度が廃止され、4月1日以降申し込みされる太陽光と風力は全国全て無制限・無補償での出力制御の対象となった。再生可能エネルギーFIT(固定価格買い取り制度)価格も安くなり、発電事業者にとって事業性を確保することが難しくなってきている。出力制御による年間発電量の抑制率を低減するために、既に九州では火力発電所の出力を最低限に絞り込み、連系線を活用して余剰分をほかの地域に流し、揚水発電所を活用して昼間の需要を上げることなどが取り組まれている。このように九州では揚水発電が出力抑制率の低減のため積極的に活用されている。ただ、国内における揚水発電所の設備容量は2750万kWあり、全電源設備の10%の容量を占めているが、利用率は3%程度と諸外国の10%より低い。

揚水発電所の当初の導入目的は原子力発電所の夜間の余剰電力を蓄積し、昼間のピーク需要に向けて発電することであった。だが、東日本大震災以降、多くの原発が停止している状況にあり、中三社の揚水発電所では休止するものが出始めている。長時間、エネルギーが貯蔵できるほかのシステムのコストを十分低減するためには時間が必要であり、せっかく設備としてあるものをこのまま廃止へ移行させることがないようにしていただきたい。そのためには、揚水発電の付加価値を需給調整市場にてマネタイズすること、揚水する際の電気のグリーン度にもよるが、再エネ価値について評価するようにしていくことが必要と思われる。

揚水発電は出力規模および動作時間を十分に取ることができ、経済性の点でも安い電力での充電が可能であれば有望であることが証明されている。今後も太陽光発電の導入量が増加し、FIT期間を終了した電源が増えていくと昼間の電力卸市場価格はさらに下がる可能性が高く、揚水発電が有用となる可能性が高い。2050年のカーボンニュートラルを実現していくためには、調整力として上部調整池を新設し、既設の発電所を揚水発電所に変えたり、海水揚水発電の新規開発をすることなどが一つの策として考えられる。(T)

【再エネ】太陽光偏重に疑問 再エネ熱も活用を

【業界スクランブル/再エネ】

内閣府の再エネ総点検タスクフォースからたびたび厳しい指摘がなされていた、新築住宅での太陽光発電設備の設置義務化は、国土交通省の住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会での大きな論点の一つであった。脱炭素社会に太陽光は必要だが、ここでの議論はあまりにも太陽光偏重に見える。住宅への太陽光発電設備の設置には実現困難なケースがあることにも目を向けるべきではないだろうか。

政府は2030年新築平均ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を目指し、8年前から助成制度を導入している。補助金を交付した物件データを地域別に見ると、東京、神奈川、大阪、京都など狭小住宅の多い都市部と、北海道、東北、北陸、信越、山陰などの低日射・多雪地域でのZEH普及率が低い。これらの地域では住宅に太陽光発電設備が搭載できない場合が多く、それが補助金交付件数と、一戸建て新築住宅着工件数の比率に如実に表れている。狭小住宅での太陽光、太陽熱の利用可能性について、東京都内の全建築物を対象とした都の調査によると、太陽光、太陽熱ともに設置可能な20㎡以上の屋根面積を持つ建物は50%であり、太陽熱のみ設置可能な建物が40%、いずれにも適さない建物が10%となっている。このように太陽光は、利用に当たって自然的・社会的条件の制約を受ける。脱炭素社会の実現には、太陽光以外も動員して、再エネの最大限導入を図るべきではないだろうか。

小さな住宅でパネルは搭載できないが、太陽熱なら積載できる住宅は多数ある。太陽熱のエネルギー利用効率が太陽光に比べ5倍あることなど、昨今では忘れられているようにも思う。また、太陽光や太陽熱が使えない積雪地の住宅では、木質バイオマスを使ったペレットストーブや、地中熱ヒートポンプなどの再エネ熱が活用できる。住宅は再エネ熱が有効に使える分野である。今後新築住宅への再エネ導入の義務化の検討が進むと予想されるが、その際に太陽光だけでなく、再エネ熱を含めて、自然的社会的条件を考慮した計画を作ってほしいものである。(S)

政策決定への国民参加とは コロナ禍のいま改めて考える

【リレーコラム】渡邊裕美子/Looop電力事業本部 エネルギー戦略部部長

第六次エネルギー基本計画の素案が7月21日に示された。本誌8月号の特集でもあり、皆さまの周囲で既に話題になったことだろう。

ただ世の中の話題はそれではなく、新型コロナウイルス禍だ。緊急事態宣言を延長するか否か、オリンピックを開催するか否か(結局開催されたが)、飲食店はアルコールを提供してよいか否か、と議論百出である。

10年前を思い出す。福島第一原子力発電所事故を受け、当時はエネルギー政策をどうするかで議論百出だった。内閣官房下のエネルギー・環境会議が「エネルギー・環境の選択肢」を示し、国民的議論と称して意見聴取や討論型世論調査が行われた。筆者もエネルギー需給のモデル分析を手掛けていた身として、エネルギー政策における国民的議論とは何かと考えさせられたものだった。

そもそも政策の選択肢が与えられたとき、人々は適切に答えられるのだろうか? 筆者は視点を変えるために、自分の不得手な分野に置き換えて考えてみる。年金制度改革の選択肢に対して、自分は適切な意見が言えるだろうか? 残念ながら否である。とすると、一般の人々にとってのエネルギー政策の選択肢も、似たようなものだったのではないか。

しかしこれは、専門家が政策を決定すればよいということでは決してない。対象がエネルギーでも年金でも新型コロナウイルスでも、政策は専門家あるいは経済のためでなく、人々のために存在するものだ。

それでは国民から聴取すべき意見、調査すべき世論とは何なのだろうか。

価値観を表明すること

それは人々の価値観であると思う。個人の生きざまとしての価値観ではなく、社会の在り方についての価値観である。私たちの社会は、環境性・経済性・安全保障のどれをどれだけ重視すべきか、将来世代にどれだけ重きを置くべきか。これはエネルギーミックス決定を最適化問題として定式化したときの、多目的関数の重みづけに相当する。それは人々の選好基準を基に決めるほかない。

政策決定への国民参加とは、人々が価値観を表明することだ。エネルギー源を何%ずつにすべきかと問われ、再エネは変動性が、原子力は廃棄物が等々と議論することではない。エネルギーミックスは手段にすぎず、どの手段を選ぶかは、人々の価値観と物理的制約を考慮して専門家が考えるべき事項だ。

新型コロナウイルス対策についても同じだと思う。手段についての賛否を叫びたくなる。しかし重要なのは、私たちの社会はどうあるべきかについて、私たちが持つ価値観だ。

わたなべ・ゆみこ 東京大学大学院修了、博士(工学)。三菱総合研究所を経て、2018年にLooop入社、21年から現職。電力小売り事業におけるデータ分析・調査業務に携わる。

※次回は三菱総合研究所主席研究員の井上裕史さんです 。

【石炭】東京にもあった炭鉱 生活支えた石炭

【業界スクランブル/石炭】

世界遺産である群馬県の富岡製糸場内で使われていたエネルギー源の一つが石炭であったことは意外と知られていない。現地のガイドさんに聞いていただければきっと適切な説明をしてもらえるだろうが、高崎周辺では、石炭といえばまず、亜炭を思い浮かべるほど、戦前戦後を通して工業用・家庭用の燃料として、石炭の一種である亜炭の利用が一般的だった。

1872年(明治5年)に操業開始した官営富岡製糸場では、フランス近代技術を多用しているのだが、当初から蒸気機関の燃料として亜炭が使用されていた。1932年(昭和7年)商工省鉱山局が行った調査によると、わが国における主な亜炭鉱は21カ所、埋蔵量の合計は4億7300万tの推定鉱量が報告されている。うち高崎炭田は全国第9位で、埋蔵量は1090万tであった。

亜炭は石炭のように硬くない上、採掘に当たり、切削機やダイナマイトを使うことも少なく、坑内に爆発性のガスが出ず吸水性なので炭じんを生じず作業効率が高いため、個人での採掘や農閑期を利用した採掘が行われた。高崎のものは昭和30年代に全て閉山になったが、現在でもドイツなど外国では地産地消の資源として多くが発電用に多用されている。これがいま、地球温暖化の問題として、世界中から目の敵にされているわけだ。

わが国には地層の新しい千葉県以外の全ての都道府県には炭鉱があった。もちろん東京都内にも、だ。「東京炭鉱」は、現在はバス停名に名が残るだけだが青梅市内にある。最盛期であった1940年(昭和15年)ごろには50人ほどの人夫がいたが、戦争の激化により、人手不足となって休鉱となった。戦後復活し、1949年(昭和24年)までは暖房燃料向けに生産していたが1960年(昭和35年)に廃鉱となっている。

松尾芭蕉の句「夏草や 兵どもが 夢の跡」ではないが、かつての日本(東京)の生活の一端を支えた東京炭鉱の跡地周辺を、読者の皆さんは、訪問されてみてはいかがであろうか。(C)

【石油】OPECプラスの変質 脱炭素対応が主眼に

【業界スクランブル/石油】

原油価格は7月、減産緩和を巡るOPECプラスの内紛と感染再拡大の懸念でやや弱含んだものの、月末には70ドル台を回復、高止まりを続けている。その主な要因は、石油需要回復に対応したOPECプラスの慎重な段階的減産緩和(増産)であろう。

OPECプラスでは、2010年代の半ばの原油価格低迷を回復させるため、サウジアラビアとロシアが中心となって、17年から協調減産を開始した。シェールオイル増産に対応した生産調整がその目的だった。その後、昨年3月6日に減産を巡るサウジとロシアの対立で決裂、無協定状態となり、サウジによる増産とコロナ禍の深刻化による原油価格の暴落を招いた。

しかし、4月1日には、コロナ禍による需要激減に対応して、史上最大の協調減産、日量970万バレルで合意した。その結果、WTI先物価格がマイナスを記録した4月20日を底に、経済活動回復とともに、原油価格は回復、20年秋に弱含んだもののおおむね堅調に推移している。

また、21年初からの順調な価格回復を支えた要因としては、サウジの協調減産協定外の自主減産、日量100万バレルが挙げられる。これは、1985年以来のサウジのシェア優先・スイングプロデューサー拒否の石油政策の転換であり、原油価格の高め誘導を目指したものだ。

明らかに、OPECプラスの減産緩和は慎重であり、21年6月には先進国石油商業在庫も適正化された。従来の協調減産より現行の減産はタイト気味に運用されているように見える。加えて、通常ならば、価格回復とともに、OPECでは違反増産が横行するが、今回は各国とも減産協定を厳守している。一連の動きは価格維持を目指している。世界的なカーボンニュートラルの動きへの産油国の対応かもしれない。

タンカー攻撃などイランの動きも気になる。原油禁輸を含む経済制裁は続くだろう。新型コロナウイルスの感染再拡大による経済停滞がない限り、原油価格の高止まりは続くだろう。(H)

【河野義博 公明党 参議院議員】日本をもう一度輝く国に

かわの・よしひろ 福岡県出身。2002年慶応大学経済学部卒、06年丸紅入社。13年7月参議院選挙比例代表初当選。19年二期目当選。農林水産大臣政務官などを歴任。参院資源エネルギー調査会理事。

丸紅に勤務し、ロンドン駐在時代には洋上風力発電のプロジェクト・マネジメントを担当。

海外のエネルギー畑を歩んできただけに、日本が進むべき方向に確信を持っている。

 福岡県立修猷館高校から慶応大学に進学。経済学部を選び、世界を股にかけて活躍するビジネスマンに憧れた。卒業後、「国際的な金融の知識が身につく」と、東京三菱銀行(当時)に入行した。海外の支店長になることが目標だったが、UFJとの合併で海外人事が凍結になった。夢を現実にする方法を模索するうちに、大手商社丸紅の中途採用募集を知る。海外で発電所をつくるプロジェクトに魅力を感じ、入社。そこからが、エネルギー畑での仕事の始まりになる。

丸紅では7年間勤務。一貫して電力部門、独立系発電事業者(IPP)の一員として汗をかいた。プロジェクトに主に携わったのは風力発電所。日本列島各地に赴き、電力会社との交渉に奔走した。当時はまだ固定価格買い取り制度(FIT)が始まっていない時代で、メーカーとのやり取りや地元調整など、風力発電を社会に受け入れてもらう苦労は大きかった。だが、その苦労が「再エネの普及には地域共生が最も大切だ」との思いを強くさせた。地域に「寄り添う」だけでは不十分。具体的に利益を還元するなど、地域社会に対して「責任」を最後まで持つことが、電源開発に取り組む者の使命だと悟った。

丸紅での勤務生活後半には、念願かなって英国・ロンドンに駐在した。デンマークの大手総合エネルギー会社であるDONG社(当時)の権益を取得して17万2000kWの発電容量を有するガンフリート・サンズ洋上風力発電のプロジェクト・マネジメントに挑んだ。当時、日本企業が商業運転中の洋上風力発電事業へ出資するのは初めてだった。日本にはまだなじみがなかった同事業だが、周囲を海に囲まれた日本には大きな開発余地があると思っていた。実際、欧州という風力事業の先進市場で一プレイヤーとして関わったことは、後の議員生活においても非常に有意義な経験だった。このまま、事業会社で日本経済の成長に貢献する人生もよいかもしれない―。そう思っていたこともあったが、脳裏に焼き付いて離れない出来事があった。

ロンドンで大震災を「体験」 日本の将来に強い不安感

それが東日本大震災である。当時、DONG社との最終交渉のため、出張でロンドンにいた。朝起きると、家族からの電話が何十件も入っていた。

2011年3月11日は、日本のエネルギー政策にとって転換点と言うべき日になった。ロンドンから、二転三転する母国の様子を見ていて、居ても立っても居られなくなった。また、震災と歩を合わせるように、日本の海外でのプレゼンスがどんどん小さくなっていったことを実感していた。ロンドンのピカデリーサーカスのメインの看板は、トヨタやパナソニックからサムソンやLGに替わっていった。この国はどうなってしまうんだ―。日本の将来に対する不安だけが募っていた。

「誰かほかの人にかじ取りを任せて、この国が沈没してしまうくらいなら、自分でやってみよう」。政治家になることを決意した。丸紅時代、ロンドンにいて痛感したのが、ルールメイキングの重要性だ。事業会社は、利益のために発電事業に参入する。それも大切なことだが、政治家になって仕組みを作る方が、大きな意味での国益につながると感じていた。

13年7月、参議院議員選挙比例代表に初当選する。選挙の時には、風力発電所の地元交渉を行っていた際に出会った地域の人たちにも応援をしてもらった。誠実な仕事ぶりが報われた瞬間だった。

所属する公明党では、総合エネルギー対策本部事務局長を務める。商人ではなくなったが、風力発電に対する思い入れは強い。特に浮体式風力発電所は日本が最先端技術を有しているため、政治がビジョンを示すことの大切さを説いている。いつまでに何基造るか、海域調査をいつまでに行うのか。方向性を示さない限り、産業は付いてこない。

50年カーボンニュートラル目標については「日本にとって大きなチャンス」だと捉えている。単に再エネの比率を高めるだけでなく、国力を高める、という発想が何よりも求められる。現在、日本は毎年約20兆円分の化石燃料を輸入している。これを最終的にゼロにし、エネルギー自給率を高めることができれば、コストの削減だけにとどまらず、最終的にはエネルギー「輸出国」になることだってできる。当然、国力も高まる。イノベーションを起こし続けることができれば、国の形は変えられる。そのための政策的努力は惜しまない。日本をもう一度輝く国にしたい。

特技は剣道。剣道六段で、全日本剣道連盟の顧問も務める。剣道は精神性を高めることができる武道だという。コロナ禍で道場が閉まっていた時にも、七段昇段を目指し、素振りや筋力トレーニングで技量を高めた。ストイックな性格は公私とも健在だ。

1600tの上蓋が空中に 史上最悪のチェルノブイリ事故

【福島廃炉への提言〈事故炉が語る〉Vol.6】石川迪夫/原子力デコミッショニング研究会 最高顧問

1986年、チェルノブイリ原発4号機が爆発事故を起こした。
そのすさまじさは、巨大な原子炉上蓋が高く浮き上がるほどだった。

原子炉火災に放射線被ばく、水蒸気爆発に水素爆発、燃料棒の建屋外への飛び出しに炉心の溶融――。原子力災害なら何でもござれがチェルノブイリ事故だ。それも当然で、事故は反応度事故に始まり冷却材喪失事故を併発している。事故の経緯も災害の様相も複雑多岐で、全ての紹介は無理だ。今回は爆発のすさまじさについて述べる。

圧巻は何と言っても、直径17m、重量1600tの巨大な原子炉上蓋が空中高く浮き上がり、爆発で空中回転(4分の3回転)して炉心上面に落下し、グラファイトブロックに突き刺さったことだ。これもTMI(スリーマイルアイランド)事故を起こしたジルカロイ・水反応の仕業で、水素ガス発生そのものの勢いが言語に絶する力を発揮した結果だ。

1600tもある上蓋が空中に浮き上がるとは考え難いが、1気圧の圧力が下面に掛かれば蓋は簡単に持ち上がる。問題は持ち上がった高さだ。直径17ⅿの円盤を空中で回転させるには最低8.5mの高さに持ち上げる必要があるが、蓋が持ち上がるにつれてガスは横に逃げ出す。この逃げ出しに打ち勝って、蓋の下面圧力を1気圧に保つ水素ガスが、チ事故では発生していたことになる。これは大変な水素ガスの大量発生だ。当時のソ連の論文は、遮蔽盤を持ち上げるには、冷却菅を引きちぎる必要があるので10気圧が必要と書いてある。その通りだろう。

再度書く。水素ガスの発生で、直径17m、重量1600tの原子炉上蓋が空中高く浮き上がった。すさまじいの一言に尽きるが、この主役が福島事故を起こしたジルコニウム・水の反応が作る水素ガスの力だ。なお、水素の発生時間は約1分そこそこであった。

飛び散った燃料棒 上蓋が冷却管を引きちぎる

遮蔽盤が一回転したことで、冷却管内に入っていた燃料棒は飛び散った。この説明には炉の構造を簡単に知る必要がある。

チ発電所は出力約100万kW、原子炉容器は直径12ⅿ、高さ8ⅿの鉄筋コンクリート造りの円筒形構造物で、底の厚さは3ⅿある。

原子炉の中は、一辺25㎝の四角な黒鉛ブロックを積み重ねた構造で、ブロックの中はジルコニウムニオブ製の冷却管1本が通っている。冷却管は燃料棒18本を内蔵し、下は原子炉底を通って給水ヘッダーにつながり、上は上蓋を貫通して汽水分離機に接続している。このような冷却管が約1700本でチ炉はできている。

原子炉上蓋が浮き上がるには、上下を結ぶ冷却管を全て引きちぎる必要がある。その幾割かは、燃料棒を内蔵した状態でちぎれたであろうから、蓋の回転による遠心力で中の燃料棒はほうぼうに放り出されることになる。

タービン建屋に落ちた燃料棒は、屋根に塗布された雨水よけのタールに着火して火災を起こした。火災は早期に消し止められたが、この消火による放射線被ばくで後日死亡した消防士は多い。

火は消えても、放射線を出す燃料棒は放っておけない。燃料棒を屋根から地面に突き落とす作業は、軍隊による人海戦術だった。作業は長いT字棒を使っての突き落としで、一人50レムが目安の、被ばく必至の突撃だった。号令一下、原子炉建屋から屋根に飛び出して、突き落として戻る仕事は秒刻みという。従事者数は延べ50万人との報道もあるが、実体は不明だ。

地上に落ちた燃料棒も突撃の繰り返しで穴を掘り、コンクリートを流し込んで埋め殺しにしたという。突撃の基点となる橋頭堡は遮蔽を施した貨車で、構内にレールを敷設して建設したという。原子炉建屋内部に落下した燃料は、今もそのままの放置状態にある。

消防士の中には原子炉に近づいて消火を試みた強者もいたが、放射線が高く放水できなかったという。その男が上から見た炉内は、赤と青の炎が黒鉛の隙間からちょろちょろと出ていたという。

見学に同行してくれた副所長は、自分も数回突撃に参加したという。被ばく線量は1回当たりほぼ50レムだったと語った。

原子炉の直上にある運転フロアの南北側の壁は簡易な造りで壊れたが、東西側は鉄筋コンクリート造りの汽水分離機室の仕切り壁であり爆発に耐えた。壁を補強して、東西にパイプを渡して梁とし、その上に鉄板を敷いて天井とした。南北の壁は壊れを補修し鉄板を当てて雨風を防ぐ壁とした。この応急手当が有名な石棺である。造る目的が放射性物質の飛散防止にあり、雨露をしのぐのが精一杯の粗末な仮設工事であったという。

なお2019年、EUの援助によって石棺を覆う新しい建造物が出来上がり、チェルノブイリの安全隔離が完成した。新建屋内での将来計画は未定という。

事故発生から3日後のチェルノブイリ原発

破壊された建屋内部 流れ出した水素ガスが爆発

原子炉の横手にある建屋内部の破壊もすさまじい。原子炉からの冷却水循環配管が破壊し、流れ出した水素ガスが建屋の各場所に拡散して爆発を起こす原因を作った。破損したのは炉心下の再循環水の配分ヘッダーの辺りで、最も強度の弱い配管部分が水素ガス圧力で内圧破裂したという。

発電所の造りはロシア特有の頑健な造りだ。しかし大きな爆発が建屋の内部で幾回か起きたのであろう。太い梁が真ん中で割れて、割れた梁と頑丈な柱とがL字状になって、斜めに傾斜して倒れかけているのを見た。その奥はがれきと残骸の山でよく見えなかった。

爆発も派手だが、汚染もひどい。丸2時間ほどの見学で僕の浴びた放射線量は約1ミリシーベルトほどだったが、ほかの同行見学者はその3分の2程度であった。この差は僕の単独行動にある。炉上面とおぼしき方向に掛けられたはしごに了承を得てよじ登らせてもらったのだが、天罰覿面、結果は手の汚染となって表れた。二重手袋にもかかわらず、手の甲の汚染が出口で判明した。せっけんで洗っても汚染は取れない。業を煮やした案内人が軽石でゴシゴシとこすって汚染を取ってくれたので退出できたが、その痛かったこと、今も覚えている。

僕が昇ったのは高さにして5mばかりで、時間でいえば20秒足らずだ。だが、被ばく線量は画然と差が出た。はしごも汚れていたのだろうが、溶融炉心の汚染は非常に微細で、かつ高いと考えて間違いない。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: EF-20210601-102-103a.jpg
いしかわ・みちお  東京大学工学部卒。1957年日本原子力研究所入所。北海道大学教授、日本原子力技術協会(当時)理事長・最高顧問などを歴任。

・福島廃炉への提言〈事故炉が語る〉Vol.1 https://energy-forum.co.jp/online-content/4693/

・福島廃炉への提言〈事故炉が語る〉Vol.2 https://energy-forum.co.jp/online-content/4999/

・福島廃炉への提言〈事故炉が語る〉Vol.3 https://energy-forum.co.jp/online-content/5381/

・福島廃炉への提言〈事故炉が語る〉Vol.4 https://energy-forum.co.jp/online-content/5693/

・福島廃炉への提言〈事故炉が語る〉Vol.5 https://energy-forum.co.jp/online-content/6102/

【火力】電源別の発電コスト 定量的提示を評価

【業界スクランブル/火力】

第六次エネルギー基本計画の策定に向けた検討が、いよいよ最終盤を迎えている。2030年度の温室効果ガス削減目標46%という縛りのある中で、整合の取れた計画とするべく懸命の検討が続いているが、そこで盛んに使われている“野心的”という表現に問題の困難さがにじみ出ている。エネ基の素案発表に先立ち電源別発電コストの試算結果が公表された。「数字が独り歩きしないように」という各委員の願いむなしく、報道では太陽光の発電コストが原子力を下回った点ばかりが強調されている。そもそも資源エネルギー庁が試算する発電原価は、一定の前提の下に想定したモデルプラントに対して計算された仮想のものもあり、地点ごとに条件が異なる実際の電源建設の判断に、この試算結果が影響することは全くない。

今回の発電コスト検証で注目すべきは、「統合コスト」という新しいコスト概念を採り入れようとしている点だ。統合コストは、変動する再生可能エネルギーの大量導入に伴い電力システム全体で必要となるコスト全体を指している。従来、再エネ大量導入のために送配電設備の整備にばかり関心が集まっていたが、変動性を補うのに必要な諸々のコストを網羅しようとするものであり、電源側や需要側の対策費用を定量的に示そうとしている点は大いに評価できる。

統合コストは、発電量が変動する電源や需給バランス調整に寄与しない電源の発電コストには大きくプラスに働き、調整力を供給する電源にはわずかにプラスもしくはマイナスの効果がある。数値の絶対値については、燃料費などその時々で変化する諸元に左右されてしまうが、調整力の寄与度に応じて増分が抑えられる傾向に変わりはない。つまり統合コストを加味することにより、電力系統全体への影響も含めた電源価値が定量的に表されることになる。統合コストは比較的新しい概念であり、定量化に向けてはさらなる検討が必要とのことだ。しかし、今後火力の運用形態の最適化を検討する上で、調整力向上分も加味した定量的な指標となることを期待したい。(S)

【原子力】原発産業は安楽死? エネ基案に反発噴出

【業界スクランブル/原子力】

エネルギー基本計画の素案が公表された。再生可能エネルギーへの大幅シフトを強力に打ち出す一方、梶山弘志経済産業相の「新増設を打ち出すのは10年早い」という「原発再稼働一本足打法」に沿い、事実上の国内原発産業の「安楽死」容認の内容となっている。この素案を資源エネルギー庁は自民党の各議連や本部政務調査会などへ説明したが、さまざまな反響が生じている。茨城県選出の有力代議士から筆者に、「素案については、私たちの要望通りにならないようですが、これではカーボンニュートラルの達成どころか、国民生活や日本経済を毀損するのではないかと危惧しています」というメールが寄せられた。

また、ある元閣僚からも電話が寄せられた。「素案の内容についてエネ庁の高官が来て分厚い資料を使って説明した。再エネを大幅に増やすことが特徴だが、数字合わせの内容が多いだけでなく、肝心の原子力についての内容が乏しく、耐用年数や再稼働の動向などによっては目標実現のめども立たない。こんなものを閣議決定するそうだが、何の意味があるのか」と語っていた。

実際、エネルギー基本計画には、懸念すべき点が少なくない。基本計画の根拠法であるエネルギー基本法は、国会で国会議員が真剣に議論を重ねることを想定している。しかし、今は国会で真剣な議論を重ねることを意図的に避けようとする傾向が目立つ。また、エネルギー政策の基本はS(安全性)+3E(経済性、環境性、供給安定性)とされているが、Sについて、最近は漠然とした大都市の安全性議論に終始しているように思えてならない。中央紙の厳しい抽象論調に引きずられるのではなく、立地地域のマスコミ・市民の現実的・具体的な議論こそ重視すべきだ。

エネ基の検討段階で、再エネを一定以上にするとコストが4倍にも膨れ上がり、わが国の産業競争力や雇用が失われるという議論があった。これらの諸点をいま一度掘り起こし、地に足が着いたエネルギー基本計画がまとめられることを切望する。(S)

46%減で必要論高まる炭素価格付け 論争続く政策課題の潮目変わるか

【多事争論】話題:46%減目標とカーボンプライシング

カーボンプライシングに関する経済産業省、環境省の審議会の検討結果が出そろった。

2030年度46%減目標を受けてどう考えるべきか、両審議会委員の見解を紹介する。

<目まぐるしく変化した温暖化目標 導入目的化でなく効果の精査に重点を>

視点A:工藤拓毅(日本エネルギー経済研究所理事)

日本がパリ協定に基づくNDC(国別目標)として、2030年度までに13年度比で26%削減を目指す内容の文書を気候変動枠組み条約事務局に提出したのは15年末であり、50年までに80%の削減を行うという長期戦略は19年6月に提出された。

その後、50年目標達成を目指す革新的環境イノベーション戦略が20年1月に策定され、地球温暖化対策計画の見直しと関連する第六次エネルギー基本計画の策定が始まった。ところが、同年10月の菅義偉首相によるゼロエミッション宣言により長期目標が強化され、21年4月には30年度の目標も46%まで引き上げられた。ゼロエミッション宣言を受け、政府は50年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を20年12月に策定したが、その後強化された30年度排出削減目標への対応も視野に入れた成長戦略実行計画を21年6月に閣議決定した。このように、日本のGHG(温暖化ガス)目標を巡る政治的・政策的な取り組みは、短期間で目まぐるしく変化した。

そうした動きの中で、20年末策定のグリーン成長戦略では、カーボンプライシング(CP)などの市場メカニズムを「成長に資するものについて躊躇なく取り組む」と明記された。菅首相の指示を受けて、環境省と経済産業省はその取り組みの在り方の検討を開始し、7月末~8月初旬にそれぞれの中間報告が取りまとめられた。それぞれの検討が進む過程で、閣議決定された成長戦略実行計画では、両省におけるそれまでの検討結果を踏まえながら、①わが国における炭素削減価値が取引できる市場(クレジット市場)を活性化する措置を講じる、②まずは、J―クレジットや非化石証書などの炭素削減価値を有するクレジットに係る既存制度を見直し、自主的かつ市場ベースでのCPを促進するとともに、③炭素税や排出量取引については、負担の在り方にも考慮しつつ、プライシングと財源効果両面で投資の促進につながり、成長に資する制度設計ができるかどうかの専門的・技術的な議論を進める―という方向性が示された。今後は①②のクレジット活用促進に向けた具体的な制度設計と並行して、③で示された制度活用の可否に関してより踏み込んだ議論が行われることになる。

実行計画の原則に照らし合わせて 制度設計の検証は客観的に

今後のCPの活用の在り方は、どういった視点で考えるべきであろうか。短期間の間に中長期的な目標の強化が行われた状況では、制度の導入を目的化するのではなく、CPによる効果を精査し判断する姿勢がより一層重要になる。CPの議論は長く行われてきたが、今後は前述の実行計画に記された「成長に資すること」と「目指す目標がカーボンニュートラルであること」を原則として共有し、この原則に適合する制度設計であるか検証されなければならない。

例えば、30年目標達成に向けて高額の炭素税を課すことは、企業の国際競争力や家計への影響が懸念され、成長に資する原則にそぐわない可能性が高い。また、カーボンニュートラル達成原則に則して考えれば、多くの将来シナリオ分析が示すように、カーボンニュートラル達成には、全ての主体がゼロエミッションに到達するのではなく、ネガティブエミッション技術の開発・普及を促進するとともに、企業などのGHG排出主体がそれらの成果を活用してゼロエミッション化を目指す枠組みが必要になる。実行計画では、自主的かつ市場ベースでのCPを促進することを目指すとしているが、こうした取り組みを通じた制度的基盤整備は、将来的なネガティブエミッション技術の成果活用に不可欠であり、有効な取り組みであると考える。

このように考えると、CPを巡る主要な論点の一つは、ネガティブエミッション技術(今後の移行期を考慮すれば、水素やCO2回収・貯留のようなゼロエミッション技術を含む)の開発と普及を促進するCP制度の在り方であるが、技術開発とCPとの相互関係については多様な見方があり、単純に評価することが難しい命題である。実際には、技術開発促進への政府の関与の在り方(開発資金支援、共同開発体制の構築、将来炭素価格の明示化など)が、結果的にCPの活用の是非や制度設計の判断に結び付くと思われ、総合的な政策評価の視点が求められる。

最後に、電力市場をはじめとしてエネルギー関連市場の制度や(参加者を含めた)構造がより複雑化する中で、CP導入による効果や影響の波及経路を詳細に分析することは容易ではない。制度導入を目的化せず、制度検討の原則に則した客観的な検証・評価が、今後の専門的・技術的検討プロセスに求められる要件であろう。

くどう・ひろき 1991年筑波大学大学院環境科学研究科修了(学術修士)後、日本エネルギー経済研究所入所。2018年7月から現職。

【マーケット情報/9月20日】原油混迷、方向感を欠く値動き

【アーガスメディア=週刊原油概況】

9月20日までの一週間における原油価格は依然、強弱材料が混在し、各地で方向性を欠く値動き。また、価格の変化は引き続き、小幅に留まった。北海原油の指標となるブレント先物と、中東原油を代表するドバイ現物は、前週から若干上昇。一方で、米国原油の指標となるWTI先物は、小幅下落となった。

米国メキシコ湾ではハリケーン「ニコラス」が発生し、14日以降、生産が一時停止。また、9月10日までの一週間における米国の原油在庫は、ハリケーン「アイダ」による生産停止を受け、大幅に減少した。加えて、マレーシア・サバ州の洋上生産設備の一部に不具合が発生し、11月の出荷に遅延が見込まれている。

需要面では、OPECが、2022年の石油需要予測を、日量100万バレルほど上方修正。新型コロナウイルスのワクチン普及と、経済回復を根拠としている。需給逼迫感が一段と強まり、ブレント先物とドバイ現物を支えた。

ただ、米国メキシコ湾での生産は徐々に復旧し、20日時点で82%の設備が稼働再開。また、米国の石油サービス会社ベーカー・ヒューズが発表した、17日までの一週間における国内の石油掘削リグ稼働数は10基増加し、411基となった。さらに、リビアでは、東部の輸出港におけるデモが16日に終了。出荷再開が可能となった。

加えて、中国の8月原油処理量は、過去6カ月で最低を記録。新型ウイルス変異株の感染拡大が背景にあり、WTI先物の重荷となった。

【9月20日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=70.29ドル(前週比0.16ドル安)、ブレント先物(ICE)=73.92ドル(前週比0.14ドル)、オマーン先物(DME)=72.54ドル(前週比0.72ドル高)、ドバイ現物(Argus)=71.95ドル(前週比0.37ドル高)

【コラム/9月21日】「地球エコロジーから当り前のエネ選択を考える~化石エネの代替エネは、原子力拡大・再エネ推進の複線思考で」

飯倉 穣/エコノミスト

1,菅義偉政権決断のカーボンニュートラルに取り組む総合資源エネルギー調査会基本政策分科会第(21年8月4日)が開かれた。報告案取り纏めで化石エネ扱いへの危惧や原子力推進のコメントがあった。現在パブリックコメント(9月3日開始)中である。

報道もあった。「国2030年試算 発電コスト原発11.7円以上、太陽光が下回る見通し」(朝日8月4日)、「エネ基本計画案 原発 将来像の判断先送り 小型炉研究は推進」(同5日)。

今回の素案を見ると、政治目標ありきで実現性検証は困難な下、再エネは精一杯努力する漸進主義。原子力は発電所新増設が明確でなく及び腰である。これで経済成長かつカーボンニュートラル達成のエネルギー手当てが可能だろうか。気候変動対策のエネルギー選択の基本を改めて確認し、原子力の扱いを考える。

2,気候変動対策の要諦は、生物の環境形成作用で作られた現地球生態系(地球エコロジー)の保持である。生物は、無機的環境と相互作用で原始大気(気圧30気圧、CO2濃度95%)を約40億年かけ現在の大気(1気圧、CO2濃度0.04%以下)とした。この大気の下で、人間は地球生態系の一部である局所生態系を破壊・改質し都市・経済活動を行っている。意識すべきは「人類は、農業と工業の恩恵で自然の局所生態系の制約を脱しながら、依然地球生態系に依存している」ことである。

活動に必要なエネルギーの85%は化石エネで、現経済水準を維持している。排出CO2は、温暖化を加速し気候変動に伴う災害等で人類の生存基盤を危うくする。

3,地球エコロジーの視点から見れば、エネルギーの選択肢は、明解である。化石エネを不使用とし、核反応(核融合・分裂)か自然エネ(太陽光由来か地殻内の放射性物質の崩壊熱由来:地熱)利用である。その高度利用(エネ変換)に一定の技術水準を要する。核分裂の一部は現在技術、再エネ利用技術は発展段階技術、核融合は22世紀技術である。選択肢は少ない。

4,この事実にもかかわらず、再エネ一辺倒論者がいる。恰も月光仮面(正義の味方)である。ジェレミー・レゲット(グリーンピース)は、物質利用で予防原則を掲げ、温暖化対応で化石燃料使用中止、省エネ・再エネ推進、結果的に再エネ軽視となる原子力利用を否定する(1991年)。その流れか、グリーン派は、原子力利用を拒絶する。例えば気候ネットワーク関係者等は、石炭火力と原子力発電は全廃し、過渡的に「自然再生エネルギー50%、天然ガス火力50%」と述べる(日本記者クラブ会見8月2日)。気候変動対策の本丸として大幅な省エネと「再エネ100%」を力説する。エコロジスト(生態保護論者)なら、世代間倫理から化石エネゼロである。緑大事の人の暫定的天然ガス利用容認は不可思議である。

5,ジェームズ・ラブロック(英国 生物・物理学博士)は、自己調節する地球をガイアと名付けた。地球温暖化対策は手遅れ状態であり、化石エネをやめ、核融合と再エネが有効利用できるまで、核分裂エネが安定した電力源として必要と述べた。そしてガイアが養える人口は5億人か10億人と考えた。(「ガイアの復讐」2006年)。

人類が経済水準維持の欲望を追求するなら、地球エコロジー的には、再エネだけでなく原子力技術を利用し、同時に人口規模と経済水準の検討が必要である。

6,今回のエネ基本計画策定は、第一次オイルショック後のエネルギー需給見通し作成に類似する。技術的・経済的に積上げ可能な供給量不足に直面している。当時は、石油供給制約(量と価格)の下で、経済成長・エネルギー確保を目指し、需要抑制と石油代替エネルギーの確保がテーマだった。発電部門は、石炭、LNG、原子力、地熱、新エネ・再生可能エネルギー(研究開発対象)の選択だった。不足分の皺寄せは、再エネ等新エネ(技術開発期待)で賄う姿となった。結果は、成長率低下による需要停滞、省エネ、LNG・石炭という化石エネの活用、原子力の拡大、わずかな地熱活用となった。経済的に実用段階だったLNG・石炭・原子力が大きな役割を担った。

7,今回の基本計画は、エネルギー需給で、需要縮小と化石エネ代替エネルギーの確保がテーマである。選択肢は少ない。非化石は、核融合(研究開発中)・核分裂(原子力発電、実用段階)、太陽電池・風力発電(補助金付き実用化)、地熱他の再エネ(多くは研究開発段階)のみである。

発電コスト検証では、太陽・風力も10円/kwh前後でいずれも実用段階の印象を受ける。故にその拡大は如何様にも可能なようだが、量的拡大に伴う立地制約が顕在化している(国土利用計画不在)。またコスト検証も2030年の話である。つまり介護保険付き再エネ(現在3兆円弱の国民負担)では、経済水準維持は困難である。経済性でも原子力の着実な利用拡大が必要である。

8,勿論原子力活用には、技術者・経営者の意識覚醒・対応努力・想像力・説明力向上が求められる。また原子力規制委員会にも課題がある。福島事故は、津波への対応問題である。津波対策に特化すれば、10年放置することなく再稼働可能であった。

地球エコロジーの基本を考えれば、再生エネ一本足打法でなく、原子力発電等使えるものをフルに活用する複線思考こそ大切である。また化石エネは、限定的ノーブル・ユースとなろう。日本人の陥りがちな単線思考だけは回避したい。

【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。

【LPガス】船舶への新環境規制 変動フレートで対応

【業界スクランブル/LPガス】

カーボンニュートラルに向けた動きが加速する中、港湾・海事分野においても環境規制がさらに厳格化される。国際海事機関(IMO)は、世界の大型外航船への新たなCO2排出規制として「既存船燃費規制(EEXI)・燃費実績(CII)格付け制度」に関する条約を採択し、2023年1月からの運用開始を決定した。新たな規制がLPG業界へもたらす影響は必至だ。

新国際規制は、燃費性能を事前に検査・認証し、毎年の実績を事後チェックするもので、性能に劣る既存船にペナルティー(出力制限や改造による燃費改善)を与え、新造代替を促進することが狙い。EEXI規制(エンジン出力制限などにより、新造船と同レベルの燃費性能を義務化)とCII規制(1年間の燃費実績を5段階評価。低評価時は改造計画を提出)の補完により40%以上のCO2削減を目指す。

対応策は、エンジンの出力制限、機器改造の2通りが考えられる。主に出力制限での対応となり、航海日数の増加が懸念されている。出力制限幅は個船ごとに異なるが、一般に船齢の高い船ほど影響は大きくなる傾向にあるという。LPG輸入船は、建造から廃船まで25年程度運航する前提で建造されており、急速に進展する環境変化、規制強化への対応に迫られている。

LPG元売りのアストモスエネルギーは、これらを受け来年1月出荷分の価格フォーミュラの一部に変動フレートを採用することを決定した。同社はこれまで安定供給を第一に自社船(3隻)、定期契約船(18隻)を保有し、固定フレートで運用してきた。しかし、今後も厳格な環境規制が予測されるため、安定供給、リスク回避の面からも変動フレートに切り換えるもの。また、世界初の定期用船(VLGC)規模でのカーボンニュートラルLPGの調達や、8月末には国内初となるLPG燃料エンジンを搭載した大型LPGタンカーの運航開始を予定するなど、環境負荷の低減、低炭素・脱炭素化への取り組みを加速させている。LPG燃料は重油に代わるクリーンな船舶燃料として関心が高まっており、他元売りの対応なども注目される。(F)