【技術革新の扉】次世代型地熱発電技術/GeoDreams
特定地域への依存や環境負荷の高さなどの課題を抱える次世代地熱発電。
GeoDreamsはこれらの課題に対処し、地熱の可能性を開こうとしている。
豊富な地熱資源を保有するも、そのポテンシャルを生かしきれていないわが国の地熱業界にブレイクスルーを起こせないか―。そんな思いから、最先端の地下資源開発技術を駆使して地熱業界に新風を巻き起こしているのが、2022年に創業したスタートアップ企業のGeoDreamsだ。同社は、「次世代型地熱発電」として注目をされる「クローズドループシステム(AGS)」の実用化に向け、技術の導入・開発を着々と進めている。

従来型導入拡大に限界 注目の熱抽出技術とは
従来の地熱発電は、マグマの熱により発生した熱水や蒸気のたまり場である地下貯留層の存在を前提としているため、導入可能なエリアは一部の火山地帯などに限定されている。また、貯留層の蒸気を利用することから、温泉設備などへの影響を懸念する地域関係者の理解を得にくく、豊富な資源量に見合った発電設備容量を確保できていないのが実情だ。
こうした問題の解決には、地下貯留層の蒸気を必要としない熱抽出技術の確立が求められる。その中で、次世代型地熱発電として関心が高まっているのがAGSと強化地熱システム(EGS)。どちらも、地下貯留槽の蒸気を使わずに熱抽出を可能とする技術だ。
ただ、AGSは地下深部に熱交換器のように穴を掘り、その中で流体を循環させて熱を抽出するのに対し、EGSは地下深部に人工貯留層を作り、その中で注水による熱抽出を行う。このため、AGSは地下深部に影響を及ぼさないが、EGSは人工貯留層の形成時に岩盤を水圧で粉砕するため、誘致地震のリスクを抱える―という点で両者には決定的な違いがある。
実際に17年11月に韓国のポハンで行われたEGSの実証実験ではマグニチュード5・4の誘発地震が発生し、80人もの負傷者を出す惨事となった。同社がAGSの実用化に焦点を絞った背景には、そのようなリスクを回避する狙いがある。 AGSにも課題はある。地下深部に長距離の掘削が必要となるため、膨大なコストがネックとなり実用化が進んでいない。このような状況を打破すべく、同社が導入を計画しているのが「G―Pulse(ジーパルス)」だ。
高出力掘削でコスト抑制 独自の着眼点で新たな価値
ジーパルスは、既存のダイヤモンド掘削ピット(PDC)と高出力パルスを組み合わせたハイブリッド掘削装置だ。高パルスによる放電を行い、掘削前に岩を破砕することで掘削速度を上げるとともに、PDC消耗の抑制および掘削作業自体の効率化を実現する。ジーパルスは、ハイパルスパワー技術を有する米I―Pulse(アイパルス)とグループ企業が共同出資して設立したG―Pulse社が開発している技術で、同社の試算では、ジーパルスの活用で1㎞当たりの掘削コストが3分の1以下に抑えられる。

加えて、アイパルスから高性能探査機「Typhoon」を導入。地下深部への放電と停止を繰り返すことで、電気抵抗値を算出する。従来の探査機では、この放電・停止の切り替えに誤差が生じるため、探査結果の精度に課題があった。同探査機は高出力・高品質下で電流信号の調整を行うことで、この課題に対処。探査深度は従来の5倍、誤差は従来型の30分の1以下となる。
同社取締副社長兼COO(最高執行責任者)の服部浩久氏は「埋蔵鉱床の探査用に開発された同技術を、地熱に活用できたことが大きい。このTyphoonに、ジーパルスが加わることで、次世代地熱のゲームチェンジャーになる可能性が見えてきた。世界の地熱革命を日本がリードして進めていけるはず」と語る。
同社はこれまで、AGSの早期実用化に向け、ジーパルスとTyphoon双方の導入・改良を着々と進めてきた。現在は、ジーパルスの27年の商用化に向けてG―Pulse社は開発を進めており、日本では26年に実証実験を行う予定だ。地熱業界に技術イノベーションを起こし、日本をエネルギー大国にする―という壮大なビジョンを掲げる同社は、その実現に着実に歩を進めていく。





