【技術革新の扉】レーザー式ガス検知技術/東京ガスエンジニアリングソリューションズ
都市ガス保安を一歩進めた画期的な技術「レーザーメタン検知」。
TGESはこの技術を応用し、他のガス検知技術の開発にも注力する。
ガス漏れの可能性がある空間に立ち入らなくても、離れた場所からレーザーを照射するだけで瞬時にガス漏れを検知できる―。
そんな従来になかった技術を実現させたのが、東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)が開発したレーザー式メタン検知器シリーズだ。現在の最新機種は「レーザーメタン・スマート」、「レーザーファルコン2(LF2)」。測定の安定性、信頼性に優れ、ガス配管の点検や定置式モニタリングなど、さまざまな分野で業務効率の改善に貢献している。エネルギー供給設備の保守を新時代に導き、進化し続けている。

困難だった場所も遠隔検知 業界自主基準にも記載
東京ガスは1980年代から遠隔でメタンを検知する技術を研究し、2003年に世界で初めてレーザー式メタン検知器の実用化を果たした。従来のガス検知器は、吸引式や拡散式が一般的だった。いずれも、ガスがセンサーに触れることで検知する。一方、レーザー式は触れずに遠隔で検知する。採気する必要がないため、高所や床下など立ち入り困難な場所や、ガラス越しでもガスを検知できる。
このレーザー式メタン検知器は、22年に日本ガス協会が発行するガス工作物の技術指針に適切な漏えい検査方法の一つとして掲載され、それ以降、TGESのレーザー式メタン検知器は、多くのガス事業者で保守・点検時に利用されている。
全世界に200社以上ある販売チャネルを通じ、海外でも幅広く普及し、ガス会社のほか、米国ニューヨークでは、消防隊員の装備品としても採用され、火災現場でも活用されている。シリーズの累計販売台数は約7000台。国内より海外の方が採用実績は多いという。
技術の要は、メタンが特定の赤外線を吸収する特性の活用だ。メタンには赤外線を吸収する波長がいくつか存在するが、その中から吸収が強く、他のガスの影響を受けない1・6㎛帯の赤外線を利用している。検知器から照射された赤外線は、配管や壁などで乱反射され、その一部が検知器に戻ってくる。戻ってきた赤外線をレンズで集め、メタンによる赤外線の吸収量を解析する。赤外線が通過した空間にメタンが存在していれば、赤外線は吸収されるため、メタンの存在を検知できる。
なお、赤外線は見えないため、緑色のレーザーガイド光を同じ場所に照射し、点検している箇所が分かる工夫が施されている。また、セルフ校正機能を備えており、電源投入ごとに健全に機器が働くか確認されるため安心して使用できる。
メタン以外のガスにも赤外線を吸収する波長は存在し、波長を変えれば、原理的にはメタン以外のガスも検知することができるため、TGESでは、LF2の開発と同時に他のガス開発用のプラットフォームも開発し、メタン以外のガスに対応した検知器の開発工数を大幅に削減できる環境を整えた。





