NEWS 01:洋上風力の八峰・能代沖 JREが執念の勝利
政府による洋上風力公募第2弾で発表が延期されていた秋田八峰・能代沖の結果が、3月下旬に公表された。当初から有力視されていたジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)、イベルドローラ・リニューアブルズ・ジャパン、東北電力陣営が落札。代表企業のJREとしては、国内再エネ専業として、また同海域の先行事業者として悲願の勝利を手にした。
八峰沖は順当にJRE陣営が落札した
JRE陣営が差を付けたのは、まず運開予定時期を2029年6月末と最も早く設定したことだ。ただ、「総合点で次点のJERA陣営が仮にJREと同じ迅速性評価だったとしても、僅差で勝てなかっただろう」(再エネ業界関係者)との見方も。JERAは昨年末の男鹿・潟上・秋田沖で勝利し、その勢いに乗るかとも思われたが、事業計画の基盤面や実行面で前回ほどの評価を得られていない。
他方、JREとその親会社のENEOSとしては、「長崎西海沖のリスクを嫌い、八峰にかけたのだろう」(同)。JREは昨年末の西海沖に入札した際のFIP価格が相対的に高く、価格点は低かったが、今回は多数の項目で高評価を得た。特に「洋上風力銀座」となった秋田の港湾バッティング問題では、「他陣営は能代港を利用する見込みだが、JREは秋田港、さらには北海道・室蘭港も併用する計画。JREの執念がうかがえる」(同)結果となった。
NEWS 02:具体化する系統整備計画 希薄な経済効果に疑問符も
国の政策目標である2050年カーボンニュートラル(CN)社会の実現を見据え、洋上風力発電など再生可能エネルギー電気の全国融通強化につながることが期待される「地域間連系線の増強」構想。
電力広域的運営推進機関は3月末、北海道~東北~東京間の日本海側をつなぐ高圧直流送電(HVDC)の敷設と、関門連系線増強の二つの系統整備計画について、整備費用や工期などを盛り込んだ基本要件を取りまとめた。
このうち北海道・本州間の日本海ルートは、800㎞にわたり200万kWの直流海底ケーブルや交直変換所を新設するほか、各エリアの地内系統を増強する
計画。概算工事費は1・5兆~1・8兆円と試算されており、このうち0・9兆~1・1兆円という大半を海底HVDCが占める。
連系線増強は、再エネ大量導入、そして脱炭素社会実現への切り札として既定路線化されてきた。ところがここにきて、この整備計画を実行に移すことへの疑問の声が絶えない。最大の理由が費用対効果の低さだ。
系統整備を決める上での判断材料は、燃料費・CO2対策コストの抑制、アデカシー(広域的に供給力を活用できることによる信頼度)向上効果、送電ロスの抑制―といった便益が整備費用を上回るかどうか。ところが、1を上回れば費用が便益を上回ることを示す費用便益評価(B/C)の結果は、北海道・本州間で0・63~1・72、関門連系線は0・29~1・00と、相当厳しい。
これら系統整備に伴う工事費用は、全国調整スキームに基づき再エネ賦課金や託送料金で回収される。国民に負担を求めるからには、国は金銭的価値を上回るメリットを得られることを明確に説明しなければならない。
NEWS 03:調整力の市場調達が本格開始 「未達」状態続き出足不調
安定供給を維持する上で欠かせない調整力。これまで「三次調整力①②」を除き、一般送配電事業者がエリアごとに公募で調達してきたが、今年度に入って五つ全ての商品区分が市場で取引されることとなった。だが、4月1~19日の取引結果は、全商品区分で募集量に応札量が満たない「未達」状態に。その出足は低調と言わざるを得ない。
需給調整市場を運営する「電力需給調整力取引所(EPRX)」によると、周波数低下を抑制する「一次調整力」は全国平均で80%超の不足で、東京・中部エリアに至っては応札がなかったという。また、先行して取引が始まっていた再生可能エネルギーの予測誤差に対応する「三次調整力②」も、23年度は全国月平均の不足率が4~32%だったが、4月に入ってからの3週間は、週間取引の未達分が募集量に加算されている影響もあり、全国平均の不足率は67%と悪化してしまっている。
市場取引のスタート当初、22社(24取引資格)だった参加事業者は、18日までに63社(69資格)まで増えたが、それが必ずしも入札行動に結び付いているわけではない。「今後も、取引会員数を拡大していくとともに、事業者へのヒアリングを通じてニーズを把握し、市場の魅力を高める必要がある」(市場管理グループ)
不思議なのは、調整力の調達が不調にもかかわらず、電力供給に支障が出ていないことだ。この背景には、容量市場で落札された調整機能を有する電源が、一般送配電事業者の指令に応じてゲートクローズ後の上げ・下げ余力を調整力として提供する「余力活用契約」がうまく機能していることがあるもよう。
市場を介した低廉かつ安定的な需給運用の実現には、長い道のりをたどることになりそうだ。
NEWS 04:再始動する新電力 価格競争再燃の兆し
2022年春以降、国際的な燃料価格や電力市場価格の高騰を受け事業停止していた新電力会社が、再開する動きが出てきた。帝国データバンクが3月に発表した調査によると、前回調査(23年6月)で新規受付停止状態だった87社のうち、16社が今年3月までにサービスを再開した。同社によると、卸電力市場の落ち着きが要因と見られる。
新電力再開で価格競争へとつながるか
また、多くの新電力が撤退や事業停止に追い込まれ、大口分野では、他の大手電力や新電力に切り替えできず、一般送配電事業者と最終保障供給契約を結ぶ需要家が続出したが、経済産業省によると、3月時点でピーク時よりも8割以上減少した。この背景には、大手電力が大口需要家向けの新たな標準メニューによる新規受付を再開したことがある。
業界関係者によると、需要家の大手回帰が一時的に進んだが、ここにきて新電力が存在感を取り戻している。前年までは料金より信頼性を重視する需要家が大半だったが、低位安定化した市場価格を背景に新電力が再び価格重視のプランで攻勢をかけ、新規顧客を獲得しているという。
今年度、容量拠出金の支払いが始まり、新電力の負担が増えると一部で報じられているが、それでも大手より競争力のある料金を提示できるということなのか。直近の新電力動向は、し烈な価格競争再燃の兆しかもしれない。