エネ基策定の意義/電力自由化の当初の狙い
Q エネルギー基本計画は、どのような目的で策定されたのでしょうか。
A エネ基は、2002年6月に成立した「エネルギー政策基本法」を根拠法としています。その12条には「政府は、エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るため、エネルギーの需給に関する基本的な計画(以下『エネ基』)を定めなければならない」とあります。つまり、エネ基を知るには、基本法の立法趣旨を理解しなければなりません。それは、2条(安定供給確保)と3条(環境適合)、そして4条(市場原理の活用)であり、5条で国は、2~4条に定めるエネルギー需給に関する施策について、総合的に策定し実施する責務を有する、として国の役割を明示しています。
それ故のエネ基ですが、2条2項と4条には重要な立法趣旨が読み取れます。2条2項とは「他のエネルギーによる代替又は貯蔵が著しく困難であるエネルギーの供給については、特にその信頼性及び安定性が確保されるよう施策が講じられなければならない」。つまり電力は安定供給が第一義という趣旨であり、市場原理の活用をうたう4条でも「2条・3条の政策目的を十分考慮しつつ、事業者の自主性及び創造性が十分に発揮され、エネルギー需要者の利益が十分に確保されることを旨として、規制緩和等の施策が推進されなければならない」として、安定供給と環境適合性が前提であることがうたわれているわけです。
基本法は故加納時男参議院議員が中心となって起草した議員立法でした。その後、福島第一原子力発電所の事故を踏まえて、安全性を大前提としましたが、その立法趣旨は不変です。この趣旨を着実に追求すれば、エネ基の電源比率などの目標は自ずと定まっていくと思います。
回答者:市村 健/エナジープールジャパン代表取締役社長兼CEO
Q 電力自由化は、そもそも何のために実施されたのでしょうか。
A 1983年の臨時行政調査会最終答申には、エネルギーについて、「民間の活力を生かすことを原則とし、公的部門が行う施策は(中略)効率的・整合的なものとする」と書かれています。臨調は、行政改革の文脈で検討されたものであり、高度経済成長期が終焉した日本において、行財政の肥大化への課題意識から、規制産業であるエネルギーにおける公的な規制・施策を縮小すべきとされたことになります。
80年代から90年代にかけては、欧米で新自由主義的な政権が誕生し、エネルギーや通信、運輸などの公益産業の規制緩和が進展しました。日本の電力産業においても、高コスト構造や内外価格差を是正し「国際的にそん色のないコスト水準」を実現するために、競争原理を導入(自由化)することとなりました。
つまり、電力自由化の当初の目的は「日本の電気代を安くすること」であったと言えます。
ただ、電力は国民生活に不可欠な財であるため、自由化の検討は安定供給や環境への適合といった「公益的課題」との両立を前提とすることとなりました。エネルギー政策の基本である3E(供給安定性、経済合理性、環境適合性)について、安定供給と環境適合を制約条件に経済性を最大化することが、95年から数次にわたった電気事業制度改革の目的意識であると言えます。
その後、東日本大震災後の第5次制度改革である電力システム改革においては、事業の環境変化を踏まえて、安定供給の確保、電気料金の抑制、需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大という三点が主な目的とされ、現在もその実現に向けた制度改革が進められています。
回答者:桑原鉄也/KPMGコンサルティングEnergyセクターリードスペシャリスト



