【エネルギービジネスのリーダー達】小西哲之/京都フュージョニアリング 代表取締役CEO
核融合の商業化に向け、京都大学発のスタートアップを2019年に起業した。
日本発の革新的なソリューションで世界に究極のエネルギーを届けることがミッションだ。

「世界で最初のフュージョンプラント(核融合)を実現する」
こう語るのは、核融合スタートアップである京都フュージョニアリングの小西哲之CEO(兼Chief Fusioneer)だ。京都大学の長年にわたる核融合研究の成果を商業化につなげようと、2019年に長尾昂氏(現取締役会長)とともに創業した。
核融合は、水素などの軽い原子核同士が結合し、より重い原子核に変化する反応。この際放出される大量のエネルギーを、CO2を出さないクリーンな電気として供給することが期待されている。まさに脱炭素の切り札。近年、国際的な研究開発競争が激化しており、日本でも23年4月に「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」が策定され、国を挙げた取り組みが始まった。
サプライチェーン構築へ 企業・研究機関と協力
国内外のスタートアップが群雄割拠の様相を呈する中、核融合産業のリーディングカンパニーを目指す同社の強みは、核融合反応を起こすために必要なプラズマを加熱するジャイロトロンシステムに加え、エネルギーの取り出しや燃料の循環に必要なプロセスなどで世界有数の技術力を持つことにある。現在は、国内のみならず海外の企業・研究機関とも協力し、核融合炉を構成する機器の開発とプラント全体の設計を手掛けている。
小西氏は、約40年にわたり京大などで核融合工学や核融合炉設計の研究に携わってきた研究者だ。その当時から「核融合が、化石燃料が担ってきた役割を代替する時代が到来し、世界を大きく変えることになる」との確信はあった。とはいえ、素材から加工、プラント、エンジニアリングと、産業の裾野が広く、社会実装するためには技術の確立だけでは不十分。資金調達やリスク管理など、さまざまな業種の企業とネットワークを築き産業構造を作り上げていくことが欠かせない。
「21世紀型の新事業は、技術者集団がスタートアップを起こし新しい発想で資金や人材を集め、難題に挑みイノベーションを起こすことで生まれる。複合的な能力を持つチームを組織し自ら成し遂げるしかない」と一念発起し、起業を決意した。
世界の核融合に対する民間投資は既に1兆円に上り、早くもマーケットの主導権を握る競争は始まっている。同社は、そこに参入し勝っていこうとしているのだ。かつて、技術力で優位にありながら、産業競争力では海外勢に劣勢を強いられることになった半導体の二の舞を演じるわけにはいかない。
年内には、同社の研究施設がある京都で世界初となる発電試験プラントが稼働する予定。日本の「ものづくり力」を結集してサプライチェーンを構築し、先進国のみならず、世界のエネルギー消費の主体となっていく途上国に対しても、究極のクリーンエネルギーを供給していきたい考えだ。
国内外の知見つなぐ 変わらぬ研究マインド
ビジネスに携わるようになり、目まぐるしく変化する日々を楽しいと感じる一方、「経営は難しい」とも実感している。とにもかくにも「フュージョン」をキーワードに、国の内外、そして世代を超えた技術や知識をつないでいてくことこそが自らの役目だと、本社を置く東京、京都、そして海外を忙しく飛び回る毎日だ。さらに、フュージョンエネルギー産業協議会(J―Fusion)会長として、政治や行政と業界の橋渡し役も務めている。
事業の目的は、今も人類の持続可能性の問題にある。むしろ、京都フュージョニアリングのビジネスは、その具体的取り組みだとも言える。
フュージョンが生み出す高熱を、CO2の固定化技術に応用することも目指しており、22年には、京都府内の竹林で育った竹の一部を炭化する取り組みを始めた。「これまで人類がエネルギーを使うために排出してきた7兆tものCO2を回収し、地面に埋め戻すことができれば、過去に使ってしまった分の借りを地球に返すことができる」(小西氏)。そんな壮大なビジョンを掲げる。
ともすると会社経営は、足元の収益を上げやすいビジネスに特化しがち。だが、同社の使命はあくまでもフュージョンエネルギーを実現し、日本発の産業を構築することにある。「長期的視点に立って新たな産業を構築することが、会社にもわが国にも人類にも利益になる」と小西氏。
新しい技術、サプライチェーンを作ることが創業の理念であり、これからもそれが変わることはない。社員全員がエネルギーや環境、そして人類の持続可能性の視点を見失うことなく、研究開発を軸に今後もまい進していく。



