【コラム/5月21日】新たな年度を迎えて 電気事業制度・政策動向を検証

2024年5月21日

個別電源でも多くの議論が進められる。火力については、今後の政策の議論が再開した。脱炭素化と安定供給(供給力・調整力・慣性力の維持)を両立するという課題にどう取り組むかが論点となる。特にゼロエミ化では、水素等の新たな燃料への転換や排出されたCO2を分離回収して貯留するCCSを付加することが施策の一つとして挙げられているが、この2つについては、普及促進を後押しし、関連ルールを整備するための水素社会推進法案とCCS事業法案の2つ法案が国会審議中となっており、法が成立・公布されれば、早期に施行に向けた着手が行われることだろう。

再エネについては、改正再エネ特措法が施行され、事業者への規律が強化され、説明会などの実施や委託先の監督、法令遵守といった実務上の対応が求められるようになった。また、規制だけでなく導入や普及を後押しするための施策として、グリーンイノベーション(GI)基金を活用した次世代太陽電池や浮体式洋上風力発電の技術開発と実証が着実に進められており、こちらは早期の実用化に向けた期待がかかる。さらに洋上風力発電については、案件の形成を加速化するために、再エネ海域利用法の促進区域での公募実施環境アセス制度の見直し、セントラル方式の導入に向けた調査、排他的経済水域(EEZ)への領域展開、官民挙げた浮体式洋上風力発電の産業戦略の検討が進められており、引き続き、早期の運転開始と新規区域の指定が急がれるところとなっている。

原子力については足元では東北電力女川2号、中国電力島根2号の再稼働実施、東京電力柏崎刈羽の再稼働に向けた対応を着実に行うことと同時に、脱炭素電源・供給力としてどう位置付けていくか、他の電源や送配電・需要とセットで考えていくことが求められる。


2.送配電分野

託送料金制度については、昨年度から導入されたレベニューキャップ制度が2年目に入り、7月に初年度の期中評価が行われる見通しとなっている。既に効率化に関するモニタリングは定期的に監視等委員会で行われているが、投資や費用等の定量項目や停電対応等の定性項目の評価が行われることとなり、そのフォーマットの案も提示されている。

託送料金で言えば、発電側にも負担を求める「発電側課金」が適用される。従来の需要地近接性割引を廃止し、新たに設置した割引制度により、送配電事業者が望むエリアへの電源立地が進むかも着目される。

系統の増強と運用面での対応も図られている。系統増強では、既に北海道本州間連系設備、東北東京間連系線、東京中部間連系設備の3つの増強案件の工事が概ね計画通りに進んでいるほか、東地域(北海道・本州間の海底直流送電)および中西地域(中部関西間連系線、北陸・関西・中部交流ループ、関門連系線)の増強において、概算の工事費や工期、ルート、仕様等を整理した基本要件が公表され、今後、24年度内の整備計画策定に向けて検討を進める予定である。特に東地域と関門連系線増強については、費用便益評価が低く、定性面を合わせた評価を行っているが、整備計画策定までに詳細な設計を行うだけでなく、効果の深掘りも必要となり、今後の議論が着目される。

運用面においては、需給調整市場で4月よりすべての商品の取引が始まり、いよいよ広域的な調整力調達・確保が本格化する。4月の取引実績では応札量不足や、一部の約定価格高騰による調達コストの増加等、課題も多くみられている。全商品の市場取引はまだ始まったばかりであり、引き続き注視が必要としつつ、応急的に取り組むべき対策と中長期で根本的に解決しなければならない対策の両面に取り組むことも重要として、募集量削減・応札量増加・価格規律の3点を挙げて具体的な議論を今後進めていく予定である。

また、系統の安定化のために行っている、エリア需給バランス維持のための優先給電ルールや系統混雑を解消するための再給電については、それぞれ実務上の対応と必要な対策に取り組んでいるが、今後の供給・需要の変化を踏まえると、さらに最適な施策がないか、模索する必要がある。

災害時対応については、1月の能登半島地震で災害時連携計画に基づき、各送配電事業者が応援・協力対応する等、効果が発揮しつつある。24年度は電力データを活用した防災対策や被災者支援の実証も行う予定であるが、人的・組織的な相互協力とデジタル技術の活用が融合した対応に発展できるとよいだろう。

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