【エネルギービジネスのリーダー達】松村宗和/Shizen Connect 代表取締役CEO
自然電力がVPPプラットフォーム事業を分社化させ、Shizen Connectとして新たなスタートを切った。
再生可能エネルギー拡大へ、脱炭素化された調整力としてVPPの社会実装を目指す。

自然電力の100%子会社として、VPP(仮想発電所)プラットフォーム事業を手掛ける新会社Shizen Connectが10月2日に発足した。同社の代表取締役CEOに就任したのは、自然電力の執行役員、デジタル事業部長などを務めてきた松村宗和氏だ。
「Shizen Connect」は、市場価格予測や蓄電池の充放電計画の策定、遠隔制御などを行い、卸市場、需給調整市場、容量市場といった各種市場での取引やバランシンググループ(BG)を運用するための自然電力のエネルギーマネジメントシステムの名称。その名を冠した新会社を立ち上げた理由について、松村氏は、「資本提携の拡大と人材の獲得強化の意図がある」と明かす。
資本参加を呼び込み パートナーシップを強化
資本提携の拡大については、同社はこのエネマネシステムを電力小売事業者やメーカーなど、VPP事業を手掛けようとするさまざまな企業に提供しプラットフォーム化していく方針で、自然電力のみならず、こうした企業の資本参加を呼び込むことでパートナー関係を強める狙いがある。
また、人材獲得については、2011年の創業以来、太陽光や風力、小水力といった再生可能エネルギー事業の開発、運営を手掛けてきた自然電力のイメージと切り離し、AIとIoTを駆使したエネルギーテック企業を前面に打ち出すことで、優秀なエンジニアの採用につなげたいという。
松村氏は、18年6月に自然電力に入社。それ以来、再エネのさらなる有効活用に向け、脱炭素化された調整力としてのVPPのシステム開発や運用ノウハウを培ってきた。先行する欧州では既にVPPの成熟した市場が形成され、スタートアップとして立ち上がった企業が世界的な企業に成長し、石油や電機の大手に買収されている。日本でも1000億円以上の市場が創出されるとの予測もあり、同社としても30年までに100万kW規模のVPPを構築し、売り上げ規模100億円を目指す目標を掲げる。
事業の柱に据えるのは、家庭用VPPや系統用蓄電池の制御、そしてマイクログリッドの運営の三つ。家庭用VPP事業としては今年7月、東京ガスが同社のシステムを採用し、家庭用蓄電池をアグリゲートし、制御する事業をスタートさせている。これにより、東ガスがJEPX(日本卸電力取引所)で電気を調達する際のコスト低減につながるほか、24年度に支払いが始まる容量拠出金の抑制を図る。
同社の蓄電池制御の特徴は、ニチコン、伊藤忠、オムロンといった家庭用蓄電池メーカー5社と提携することにより各社の遠隔制御クラウドを束ね、追加的に制御システムを導入することなく一括して制御できることにある。家庭用蓄電池のシェアで49%のメーカーの機器に対応できるわけだ。
系統用蓄電池の取り組みとしては、西日本鉄道と合弁会社、西鉄自然電力合同会社を設立。福岡県内の西鉄グループの施設に定格容量1920kW/4659kW時の系統用蓄電池を導入し、来年5月に運用を開始するのをはじめ、計3件のプロジェクトが動いているという。
「独立系であるため、他のユーティリティー企業やメーカーとのパートナーシップが組みやすい」と語る松村氏。さらには、自身も経済産業省のEVグリッドワーキングに参加するなど、社員が制度設計議論に参画していることで、常に最新の情報を得るのみならず、場合によっては制度設計に働きかけながらビジネスを展開できることが、今後事業を拡大する上で大きな強みになると自負する。