【技術革新の扉】分散型電源システム/関電工
千葉県いすみ市で先進的な「地域マイクログリッド」が動き出した。
再エネと蓄電池にLPガスを組み合わせて電力供給を支える仕組みだ。
太陽光発電、蓄電池、LPガス発電機という三つの電源を高度に制御―。関電工はそうした独自開発の電源システムを千葉県いすみ市に構築し、特定エリア内でエネルギーを自給自足する「地域マイクログリッド(小規模電力網)」の運用で存在感を発揮している。災害に備えて電力インフラのレジリエンス(回復力)強化を目指す地域のニーズに応える事例で、全国に広がる可能性を秘める。分散型エネルギー社会づくりを後押しする同社の最前線に迫った。

市庁舎や中学校に設備設置 域内でエネルギー地産地消
太平洋に面した房総半島南部に位置する人口約3万5000人のいすみ市。同市が取り組む「いすみ市国土強靭化地域計画」の実現に向けて全国に先駆けて取り組んできたのが、「いすみ市地域マイクログリッド構築事業」だ。
この事実は2021年6月、経済産業省による補助事業「地域共生型再生可能エネルギー等普及促進事業費補助金(地域マイクログリッド構築支援事業のうち、地域マイクログリッド構築事業)」に採択された。これを受けて関電工は、同市と一般送配電事業者の東京電力パワーグリッド(PG)と組み、マイクログリッドの構築事業を始動。23年2月にマイクログリッド設備の運用を始めた。
送配電網は、電力を発電所から変電所に送るための「送電線」と、変電所から企業や家庭に送るための「配電線」から構成されている。
今回構築した地域マイクログリッドでは、大規模災害などの影響で長時間の停電が見込まれる場合、既設の配電線からマイクログリッド対象エリアを切り離し、そのエリア内の電力システムを独立運用させる。
地域マイクログリッドの構築範囲は、防災拠点を担ういすみ市庁舎と避難場所に指定された大原中学校を取り囲むエリアで、約30軒の電力需要家が存在する。平時には、発電された電力を自家消費に充てるため、購入電力量を削減できる。
設備面では、太陽光発電設備を市庁舎と中学校に設置。中学校には、同設備に加えて蓄電池とLPガス発電機も配置した。それぞれの出力規模は、太陽光パネルが合計279kWで、蓄電池が238kW時。LPガス発電機は2台導入し、合わせて100kWとなる。
地域マイクログリッドに電力を供給する電源は、太陽光をはじめとする再エネ発電設備を使用するのが一般的。再エネの発電電力は天候などに左右されるため、電力需給の調整役として蓄電池をセットにするケースも多い。ただ、蓄電池の放電が完了すると停電するリスクがあるため、長期間にわたり域内で電力の安定供給できる仕組みづくりが望まれていた。
多様な場面想定し実証試験 大規模停電の経験生かす
そこで関電工は、「全国で簡単に入手できる」「長期保存しても劣化がほとんどない」「持ち運びが容易」といった利点を兼ね備えるLPガスに注目。災害に強いLPガスを燃料とする発電機を採用し、太陽光発電設備と蓄電池に組み合わせた。
さらに関電工は、三つの電源を統合制御するという前例のない管理システムの有効性を確かめるため、産業技術総合研究所や電力中央研究所(電中研)で実証試験を積み重ねた。
電中研赤城試験センター(群馬県前橋市)では、停電発生時に外部電源に頼らず電源供給を再開する「ブラックスタート」や系統事故などを想定して新開発の電源システムを実際に動かし、実践的なデータを蓄積した。関電工グリーンイノベーション本部事業開発ユニット事業開発部部長の宮本裕介氏は「いろいろなケースを想定して、電力の域内供給を維持できるよう試験や工夫を重ねた」と振り返る。

地域マイクログリッドへの期待感が高まる背景には、自然災害に伴う大規模停電が多発する背景がある。18年の北海道胆振東部地震では、道内全域が停電するブラックアウトに陥った。台風15号が上陸した19年には、千葉県を中心とした東電エリアで約93万軒の停電が発生し、全復旧までに多くの時間を要したことが、いまだ人々の記憶に残っている。
さらに関電工は、再エネを生かしながら電力を自給自足する機運が各地で高まる傾向にも目を向け、域内で自立的に運用可能なマイクログリッドを追求することにした。今後は、送配電会社でなくても新規参入を認める国の「配電事業ライセンス制度」も追い風にしながら、いすみ市のようなマイクログリッド構築の動きが広がりそうだ。
「停電の復旧が見通せない場合には、長期間にわたり電力を送る必要がある。そんな役割を担う地域マイクログリッドの技術をさらに磨いていきたい」と宮本氏。災害に強いまちづくりを支援する同社の挑戦から、今後とも目が離せない。






