【需要家】若者の環境意識に変化の兆し 行動促す体験を


【業界スクランブル/需要家】

消費者を対象とした環境意識調査では、若年層ほど環境への関心が低いという結果がしばしば見受けられる。これは、若年層が中高年層に比べて社会問題への関心が低いことが一因と考えられる。一方で、近年は環境教育の充実により若者の意識にも変化が生じている可能性も考えられるが、実際のところはどうなのだろうか。

筆者は昨年、大学生数名と環境意識について意見交換を行う機会があった。その中では、気温上昇など気候変動の影響を実感し、不安を抱く声が多く聞かれた。また、身近な範囲で省エネ行動を実践している学生もおり、若者が気候変動に無関心というわけではないことが把握できた。

一方で、「自分一人の行動では何も変わらない」との声もあり、環境・エネルギーといったグローバルな課題が自分事として捉えられていない実態も浮かび上がった。

博報堂生活総研のコラム〈「若者論」座談会~大学生篇~〉では、大学生へのインタビューを通じて、環境問題は「自分が少し気を付けた程度では解決しない」といった意見が紹介されている。また、30年前の若者と比べて、現在の若者の方が環境配慮行動への意識が低下している傾向が示されており、大きな社会課題に対する無力感が以前より強まっている印象を受ける。

ただし、大学生との意見交換の場では、サークル活動などを通じて気候変動への関心や知識を深めている学生もいた。これは自身の体験が環境意識の変化につながる好例であり、今後は若者が気候変動をより身近に感じ、自らの行動と結びつけられる体験の場の提供が重要になると考えている。(K)

【コラム/7月24日】“壊国”日本、今どきの政策を考える~参院選物価対策を振り返る


飯倉 穣/エコノミスト

1、テーマ選択の不思議

猛暑が続く。参院選があった。公約は、憲法・外交安保、経済財政、社会保障、多様性等で、各党各様である。その中で耳目に届く主張は、「物価問題、給付か減税か」という争論だった。

報道もあった。「参院選公示20日投票 石破政権を問う 物価高対策 現金給付か減税か」(朝日25年7月4日)。「与野党「分配」鮮明に インフレ対策現金給付や減税訴え 社会保障改革保険料減や年金底上げ 規制改革や貿易成長戦略乏しく」(日経同)。選挙中報道は、主として物価を追いかけた。物価問題の基本を考えた場合、この話題の選択と各党主張は、如何だろうか。金融政策不全、国債残高、財政赤字で困窮する国が、借金で散在する。賢明な大人の候補者の主張なのか。この風景を見て国が壊れると嘆息する著名ジャーナリストもいた。

改めて、選挙を巡る経済論議の低調さ、現在も継続する物価問題の扱いとあるべき政策を考える。


2、物価・賃金・成長率の状況

近年の物価の動きをどう捉えるか。それが政策立案の前提である。輸入物価、企業物価、消費者物価、賃上げの動きの再確認が必要だ。今次の状況は、コロナ中のロシア侵略・エネ資源価格上昇に始まる。

輸入物価指数前年比(2020年=100、円ベース)は、20年△10.3%下落後、ロシア侵略ウクライナ戦争で21年21.6%、22年39.1%と高騰した。その後エネ価格の落ち着きで23年△4.7%、24年円安で2.7%だった。25年に入り第1四半期△0.5%、第2四半期△10.0%と低下した(契約通貨第1四半期△0.6%、第2四半期△4.6%)。つまり21年、22年のエネ・資源価格に起因する上昇が一段落し、為替の影響も小幅で、安定化している。

この効果で企業物価指数前年比(同)は、コロナで落ち込んだ後(20年△1.2%)、21年4.6%、22年エネ価格の影響で9.8%と上昇、23年4.4%、24年2.3%と沈静化した。ただ本年に入り25年第1四半期4.2%、第2四半期3.4%と水準が高い。要因は円安の他に有りそうだ。

消費者物価はどうか。総合指数前年比は、20年0.0%、21年△0.2%の後、エネ価格等上昇で22年2.5%、23年3.2%、24年2.7%だった。その後25年第1四半期3.7%、第2四半期3.4%と高めで動いている(生鮮・エネ除く総合25年第1四半期2.5%、第2四半期3.0%)。つまり22年以降エネルギー・食料関係で上昇し、その後、加えて工業製品等の値上げの影響が続いている。

賃金はどうか。民間主要企業の賃上げは、20年2.0%、21年1.86%、22年2.20%の後、23年3.60%、24年5.33%、25年は5.25%(連合7月3日集計結果)と直近3年間高率だった。政経労の合言葉「物価見合いの賃上げ」の影響が大きい。

そして経済成長率は、依然低迷している。実質GDP前年比は、20年コロナで落ち込み(△4.2%)、その後21年2.7%、22年0.9%、23年1.4%、24年0.2%、25年度政府見込1.2%である(名目20年△3.3%、21年2.5%、22年1.3%、23年5.5%、24年3.1%、25年度政府見込2.7%)。

物価対策の基本は、この指標の関係をどう見るかで方向が決まる。

事業承継を軸に業界再編加速 長期戦略見据えた課題とは


【論点】LPガス業界のM&A〈前編〉/中原駿男・スピカコンサルティング代表取締役

LPガス業界では昨年、大型のM&A案件が相次ぎ、この流れは今後も続くと予想されている。

円滑な事業承継に何が必要か。M&Aコンサルのスペシャリストが3回にわたって解説する。

2024年、LPガス業界は顧客件数が1万件を超える企業の譲渡が相次いで行われた。過去10年を見た時に、顧客件数1万件超え企業の譲渡は1年に1社、もしくは2年に3社程度のペースであった。しかし、昨年は6社がM&Aを選択。事業承継だけの理由ではない、長期戦略のためのM&AがLPガス業界にも到来したと言えるだろう。こうした業界進化の兆しはありつつも、未だ後継者不在による事業承継型M&Aが件数の大多数を占めていることに変わりはない。そして、今後も水面下でM&Aの件数は増え、業界再編は加速していくであろう。

LPガス事業の経営者がM&Aを検討する上で、取引先卸との関係を懸念することは想像に難くない。しかし、これ以外にもこの業界のM&Aには他業界とは異なる特徴がいくつかある。今回はLPガス業界のM&Aの特徴と難しさについて解説していく。

LPガス業界のM&Aが活況だ


空前の売り手市場 他業種上回る営業権相場

まずM&Aの手続きや進め方は、業界によって大きく異なることはない。しかしながら、M&Aは案件ごとにぞれぞれの事情や目的があり、一つとして同じものはないという認識を持つべきだ。

業界の特徴や担当する会社・経営者の特性を踏まえて、円滑に交渉が進むようあらかじめ議論となりうる論点を整理してまとめていくのが実績のあるM&Aコンサルタントである。M&Aの目的を達成するための最善の判断をしていくには、やはり経験と業界の知識が不可欠だ。LPガス業界のM&Aは他業種と比べていくつか特徴的な点がある。

現状のLPガス業界のM&Aは空前の「売り手市場」であり、買い手である譲渡先候補は実に多い。また、LPガス事業はもともと粗利率が取れて安定性も期待できることから、常に新規顧客獲得コストが高騰していた。だからこそ営業権の相場は他業種の常識をはるかに超えるものとなっている。

こうした事情を知らずに一般的な営業権査定を行うと、業界内の「相場」を大きく下回ることになるだろう。M&Aスキームについては「営業権譲渡」や「事業譲渡」が耳馴染みある言葉かもしれない。この二つは売り手の事業の一部または全部を売却するという意味で、実質的には同じだ。事業承継の方法には、商権譲渡を含む事業譲渡のほか、会社分割や株式移転・株式交換などがある。

LPガス販売店、とりわけ小規模店では、従来型の「顧客1件当たりいくら」の商権譲渡や事業譲渡が大半だ。新規獲得時の単価が営業権相場に影響するのである。さらに、顧客数を前提とした譲渡契約であるため、譲渡後に顧客減が生じると譲渡対価の返金スキームが発生する点も業界特有のアクションだ。また、営業権に対するLPガス事業以外の収益の影響が小さいのも特徴だ。

こうしたことは、業界を知らなければ分からないことであり、売り手と買い手双方に理解を得る営業権査定が難航する要因となる。他にも、LPガス販売業は販売登録や業務に各種の資格が必要であることから、同業者、とりわけ取引先卸会社に譲渡することが他業種に比べて極めて多く、反対に、他業種とのマッチングの事例はほとんど見られない。 いずれにしても、こうしたLPガス業界のM&Aで特有とされる事柄の多くは、過去から長く続いた「顧客1軒いくら」という卸会社による商権買収が事業承継の主流であることに起因している。とはいえ、時代は変化しており、こうした価格設定や習慣は見直すべきタイミングが来ていると考えている。


中立的な条件の調整 欠かせない仲介者の存在

卸会社と小売販売店とが密接な関係にあれば、事業承継についてまず取引先の卸会社に相談することが浮かぶかもしれない。しかし、現実はそう簡単ではない。もちろん、長年取引をしてきた卸会社にそのまま進むことは、卸と小売りの関係性的にも、円滑な引継ぎという点でも優先すべき相手である。

ただ、売主の希望と卸の希望は必ずしも一致するものではない。例を言うと、売主は法人そのものを残したい要望が一定ある。従業員の雇用はそのまま守られ、かつ株式譲渡スキームであれば金融所得課税の優遇を受け取れる。

一方で、卸先は近隣に拠点を持っているが故に、顧客のみを受ける商圏買収を希望することが多い。卸会社側はコストを抑えることができ、かつ営業権を償却することによって将来的な節税にもつながる。さらに言うと、売主がLPガス事業以外の事業を営んでいたり、会社とオーナーが資産の持ち合いをしていたりする場合は、必ずしも卸先がその事業や資産を受けられるとは限らない。こうした場合は、複雑な会社分割スキームを要し、卸先以外の候補先の条件を見た方が結果的に満足のいくM&Aにつながる。

ほかにも、中小企業では、経営者やその一族など関連当事者との取引が多くあり、中立的な視点から条件をまとめる仲介者=アドバイザーがいなければM&A話を進めることが困難を極める。特に中小規模の会社では、経営者が会社の課題に対して全て一人で対応しているというケースも少なくない。 いざM&Aを進めるとなれば、煩雑で膨大な事務処理も発生する。それを経営者とともに判断し、処理していくアドバイザーの存在は、小規模企業であれば不可欠と言えるだろう。

なかはら・としお 慶應義塾大学経済学部卒。2010年みずほ銀行に入行。14年から日本M&Aセンターで事業承継問題に取り組む。中堅M&A仲介企業の取締役を経て22年8月にスピカコンサルティング設立。23年7月にGA technologiesと資本提携。

【再エネ】法案成立も課題山積 EEZでの洋上風力推進


【業界スクランブル/再エネ】

今国会でいわゆる「EEZ法案」が可決成立したことを受け、次の段階はJOGMECがEEZの中から特定海域を選定し、セントラル調査を行うことになる。その海域は国による入札海域になり、どの海域が選ばれるのか注目されている。EEZに大型発電所を設置するのは日本人にとって未体験の領域であるため高いハードルを乗り越えながら進むことになる。

第一のハードルはコストだ。浮体、電力ケーブル、洋上変電所、施工、メンテなど着床式に比べればかなり高価になると予想され、コスト低減のための技術開発や制度の仕組みなど知恵を絞らないといけない。第二に、EEZは領海と違って国際法が支配する公海である。経済的利益が沿岸国に帰属するに過ぎない。日本ができることは国際法に根拠があることだけである。

EEZの境界は、日本の国内法で中間線理論に基づき決めているが、中間線理論は海洋法に記述がなく判例である。中間線理論を認めない国もあり、またEEZの境界は国同士の条約で決めよと国際法にあるが日本はどの国とも条約を結んでいない。尖閣、竹島、沖ノ鳥島など領土の所有に関して日本とは異なる主張をする国があり、その領土が形成するEEZはとても危険だろう。

また国際法上対等な権利を持つ者、例えば科学的調査を行う中国公船などとは外務省を通じて政府間で調整しなければならない。国際法上対等な権利を持たない者は、最終的には海上保安庁に出動してもらい実力で排除する。共同漁業区域がないので、遠くから魚を取りに来る漁業者1人ひとりと個別に補償交渉しなければならない。などなど、解決すべき課題は多い(Ⅰ)

【火力】予備電源制度の迷走 委員らは本質無理解


【業界スクランブル/火力】

国が検討を進めている「予備電源制度」が迷走している。資源エネルギー庁は、応札上限価格を従来の2倍に引き上げる案を示し、清水の舞台から飛び降りるような覚悟を見せているが、制度設計の根幹にある本質的な課題には手が付けられていない。このままでは、発電事業者の理解は得られないだろう。

制度設計に携わるエネ庁や有識者の中には、「非常時にしか使われない予備電源が、常時稼働を前提とする容量市場の電源より高値で落札されるのはおかしい」との認識があるようだ。しかし、これは予備電源の本質を理解していない証左である。

予備電源とは、災害などによる電力需給のひっ迫に備え、平時には停めている設備を短期間で再稼働できるよう維持しておくものだ。稼働しないことでコストを抑える一方、実際に稼働することになれば、通常の設備より発電コストが高いので停めてあるのだ。さらに、長期間の休止に伴う不測の不具合による追加コストの発生リスクも不可避だ。

つまり予備電源は「いざという時の保険」であり、平時には費用を支払って待機させ、必要時には割高のコストでも稼働させるという〝二重構造〟を理解しない限り、妥当な制度設計は望めない。

ところが現行案では、制度の複雑化を避けるあまり事後清算を認めず、発電事業者にも需要家にもリスクばかりが目につく設計となっている。 上限価格を2倍にしても応札がなければ、「応札を強制する規制が必要」との声が上がる。実運用への無理解を棚に上げ、制度の不備を是正することなく強権的手段に頼ろうとする姿勢には、強い懸念を抱かざるを得ない。(N)

日本での最終処分地選定は難航 幻の候補地に見る技術的課題とは


【原子力の世紀】晴山 望/国際政治ジャーナリスト

フィンランド、スウェーデン、カナダ、米国、そして日本―。

〝核のごみ〟の最終処分場を巡る世界の動向を3回に分けて紹介する。

核のごみは、高い放射線を持つため、放射線量が安全なレベルに下がるまで10万年以上の長期間にわたり人間が居住する環境から隔離することが好ましい。プルトニウムなど原爆の材料となる物質も含まれているため、テロリストの襲撃や強奪から防ぐ防護策も必要となる。

これまで、さまざまな処分法が考案されてきた。だが、海洋投棄や南極への投棄などが禁じられ、宇宙空間への投入も安全面やコスト面がネックとなる。現在は、地下への深層処分が最善と位置付けられている。

核のごみの処分法と問題点

日本は1976年に地層処分研究を開始。旧動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構=JAEA)が北海道幌延町や、岩手県釜石市などで地層処分の手法を探った。

政府は2000年に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(最終処分法)」を制定、最終処分地の選定を担当する原子力発電環境整備機構(NUMO)を設立した。17年には、処分場としての適否を示す「科学的特性マップ」を公表、自治体に応募を呼びかけている。

北海道西部の積丹半島に近い神恵内村と寿都町の2町村が20年に、佐賀県玄海町が24年に手を挙げた。NUMOは10前後の自治体が立候補することを期待している。


北海道は足踏み状態 幻の最終処分地構想も

調査は3段階ある。最初の文献調査は2年間で、論文などで候補地周辺の火山の状況や、断層などを調査する。20億円の補助金が自治体に交付される。次の段階に進むには地元自治体の長だけでなく、都道府県知事の同意が必要となる。2段階目は概要調査。4年間かけボーリングや地質・地下水の状況を調査する。70億円が交付される。最終段階は14年かけて実施する精密検査で、地下に調査用施設を整備し岩盤や地下水の動きをチェックする。

NUMOは24年11月、文献調査の報告書を初めてまとめた。寿都町全域と神恵内村南端の一部、両町村の沿岸海底で第2段階の概要調査に進めるとする内容だった。だが北海道の鈴木直道知事は、処分場を受け入れない条例があることを理由に「現時点で反対」と表明。足踏み状態が続いている。この3町村以外でも、長崎県対馬市や島根県益田市が、文献調査への応募を検討したが、市長や知事の反対表明を受けて断念している。

日本最東端の南鳥島
出典:小笠原村ウェブサイトより

選考作業が進まない状況を受けて、選考手法の見直を求める声も上がる。4月25日に開かれた経済産業省(経産相の諮問機関)総合資源エネルギー調査会の特定放射性廃棄物小委員会では、委員が「国が新たな方向性を示すべき」と提案した。ただNUMOには、国が主導する形での候補地選定は「世界各国での失敗の歴史を繰り返すだけ」(幹部)との思いが強い。フィンランドやカナダなどが選定に成功したのは、手を挙げた自治体との粘り強い交渉を重ねた経緯があり、NUMOはこうした手法が「最善」と考えている。

「10年ごとに浮かんでは消える」。そう原子力関係者が呼ぶ幻の最終処分地構想がある。東京都小笠原村の南鳥島だ。太平洋上に浮かぶ島で、日本最東端に位置する。一辺2㎞ほどのほぼ正三角形状の島だ。無人島だが、現在、海上自衛隊、国土交通省、気象庁の職員が交代で勤務。戦前に整備した滑走路や港湾があり、輸送機なら東京から片道約4時間、船舶なら横須賀から片道4~5日の距離にある。

処分地になり得るのか。NUMOは、陸地面積が島全体でも1・51㎢という点が難点と見る。ガラス固化体を船で持ち込み、島の地上施設で、金属製容器に納める作業を実施することになるが、安全面に配慮すれば1~2㎢ほどの敷地が必要とされる。また、島の外側はすぐに深さ約1000mの断崖絶壁に。地下300mに設置する地下施設は、約6~10㎢の敷地が必要となるが、これを確保できない。


シェール技術を活用 安全面などで課題山積

ただ、解決策がないわけではない。石油や天然ガスを掘削する手法を援用して地上から2~5㎞の深層部にまで縦穴を掘り、そこに埋める手法だ。深層ボアホール処分と呼ばれる。米国ではシェールガス・石油掘削と同様の手法を使い、2㎞ほどの深さに掘った上で水平に横穴を掘る手法も提案されている。

メリットは、坑口の面積が1㎢程度と小さくてすむこと。深層処分地の建造には数十年単位の時間がかかるが、5年以内で済む。デメリットもある。深くなるほど、大口径でのボーリングが難しい。石油・ガス掘削は直径22㎝の管を使うが、放射性廃棄物を詰めたキャニスターは直径30㎝以上ある。穴の口径は40㎝以上が望ましい。そうしないと、キャニスターの口径を小さくする必要が生じ、1基当たりの容量が減る。キャニスターの数が増えればコストが上がる。

安全面でも課題がある。廃棄物から出るガンマ線は、薄いキャニスターだと透過し、作業員が被爆する。狭い穴を通すために肉厚を減らすことはできない。また、地表から2㎞以下が最善とされる処分深度に達しない時点で、キャニスターが引っかかって動けなくなる懸念もある。破損して、放射性物質が漏れれば大事となる。

南鳥島でこの方式による処分を採用した場合、「数百本の縦穴を500m間隔で掘る必要がある」と専門家は見ている。ただ、日本には、まだ大口径掘削技術はまだ確立されていない。

【コラム/7月22日】2025年度第1四半期の制度設計の振り返りと今後の展望


加藤真一/エネルギーアンドシステムプランニング副社長

今年も、毎年の恒例行事のごとく夏の電力需給を気にする季節に突入した。猛暑かと思えば、線状降水帯が発生するような天候悪化や台風の発生など不安定な状況にあるが、現時点(7月18日)で電力需給ひっ迫や大きな災害、長時間停電に至ってはいない状況にある。

一方で、エネルギーに関する制度設計については、GX2040ビジョン、第7次エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画が閣議決定されてから4ヵ月ほど経ち、少しずつ具体的な検討が始まりつつある段階だ。  天気同様に不安定・不確実性が増す中で、まずは第1四半期(4月~6月)の動向を振り返り、その後で今後の展望について触れていきたい。


四半期での動きは相変わらず多い状況

毎年、四半期の区切りにおいて、顧客向けのレポートで国内の四半期制度動向を整理・配信しているが、改めて4月から6月の3ヵ月で検討・審議、実行された政策や制度は非常に多く、複雑怪奇さがより一層増していると感じる。

特に今年度については2月にGX2040ビジョン、第7次エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画が閣議決定された関係で、その内容を意識した議論が追加されている。昨年度は、ちょうどこの時期に各政策の議論に着手されたが、政策を作っても具現化されなければ意味がない。実現のためには、切れ目なく検討を続けなければいけない。

また、6月には通常国会が閉会された。当初予定していた法案のうち、太陽光パネルのリサイクルについては内閣法制局との法案調整がつかずに見送りとなったが、その他の施策については全て可決し、法律が公布された。具体的な制度設計は後述するが、足元・将来双方に関わる議論や審議や決定が順次、行われている。

入札や公募関連では、長期脱炭素電源オークションの第2回入札や非化石価値取引市場の24年度第4回入札の結果が公表された。前者では、容量ベースで新たに追加された既設原子力発電の安全対策投資が、件数ベースで活況している系統蓄電池が大宗を占めた。後者では、高度化法の義務達成に向けた年度最終入札であったことから、非FIT非化石証書の買い入札が多かったこと、さらに例外措置としてのFIT非化石証書による代替措置が行われた。また、公募では脱炭素先行地域の第6回募集の結果が公表され、7件が選定された。これで計88件となり、目標の100件まで残りわずかとなったことから、おそらく次回10月の公募で一旦、募集が終わるのではないかとの声もある。

【原子力】ベトナムが原発輸入計画 日本は優位性を失うな


【業界スクランブル/原子力】

南シナ海を巡り中国と対立するベトナムは、日本に対して好意的な感情を持っている。2002年に原発導入の検討を始め、09年に南部のニントゥアン省に第1原発としてロシアから2基、第2原発に日本から2基を導入すると表明した。16年に両計画とも中断したが、その理由は財政難、対外債務などとされる。

そのベトナムで昨年、実質トップに就任したトー・ラム共産党書記長の経済成長政策の下、再び原発建設計画が動き出した。今年4月に国家電力開発計画を改定し、原発建設の再開方針を示した。ニントゥアン第2原発2基の輸入先が日本なのは変わらないと考えるが、既に第3国による売り込み攻勢は始まっている。訪越のため到着した飛行機内での様子が話題となったフランスのマクロン大統領は5月、90億ユーロの協力協定を結び、その中には原子力協力が含まれると報道されている。これに先立つ2月には、小型モジュール炉(SMR)を提案する韓国が原子力を含む経済協力の協定に署名したという。一方、4月に訪越した石破茂首相の共同記者発表の中に原子力への言及はない。

日本は過去に原発輸出案件がいくつかあったが一度も成功していない。ベトナム政府は先進的で安全性の高い原子炉の提供とファイナンスへの協力、燃料の安定的な供給、放射性廃棄物の処理・処分方策への支援などを求めているようだ。巨大津波の経験から外部事象対策を強化した日本の設計は、同じく海岸に立地するベトナムの原発建設に役立つに違いない。ニントゥアン原発の優先権を失うことのないよう、官民が協力した取り組みを期待する。(T)

トランプ政権で鉱業活性化の動き 米国が秘める「底力」に注目


【リレーコラム】河口光康/Cosmo E&P USA Inc.Chief Executive Officer

ドナルド・トランプ氏が再び米大統領に就任してから100日が過ぎた。「一貫性がないことで一貫している」との批判を浴びつつ、外交・通商・移民、さらには気候変動対策に関する諸政策は、協調的な国際秩序とは相容れない方向へと急速に傾きつつある。

こうした変化は、国際企業の投資戦略にも徐々に影響を及ぼし始めている。とりわけ、自由貿易を基盤にしてきた多国籍企業にとって、米国市場の「信頼性」が揺らいでいることは看過できない。私自身も現在、3度目の米国駐在として、EV(電気自動車)用電池の正極材であるリチウム資源の探鉱・開発に携わっており、この事態は決して他人事ではない。

一方で、こうした混乱の中にこそ中長期的な投資機会が潜んでいる、との見方も少なくない。とりわけ、重要鉱物(クリティカルミネラル)やレアアース(希土類)といった戦略物資は、脱炭素と地政学の交差点に位置付けられ、いまや国家安全保障の対象でもある。例えばリチウムの処理においては、中国が世界の70%以上のシェアを占めている。トランプ政権は、精錬工程を含めた供給網の国内回帰を掲げており、規制緩和や資金支援を打ち出している。

もっとも、米国の鉱業は1950年代の全盛期を過ぎて以降、長く衰退の道をたどってきた。新規鉱山の開発許認可には平均10年以上を要し、環境規制や先住民族との協議も不可欠である。

加えて、同政権による連邦政府の人員削減が、現場での開発許認可にさらなる遅れをもたらすとの懸念も強い。こうした不安定さがあるにもかかわらず、国内鉱業の活性化に向けた議会・官民の関心と支援の規模は、過去に例を見ないレベルに達している。資本と技術の両面で、長期的な協業の機会が着実に芽吹きつつある。


戦略眼が問われる時

政権の性質や社会の分断を理由に米国への関与を控える動きもあるが、私はむしろ、同国が持つ資源と制度の底力にこそ、今あらためて目を向けるべきだと感じている。

トランプ氏の任期は残り3年半。次世代の交通動力源が内燃機関から何へと移り変わるのかを判断するには、10~15年というスパンが必要だ。私たちが取り組むリチウム探鉱開発も同様である。

目先の混乱に惑わされず、10年単位の大局でこの国の政策動向と自社の立ち位置を見定めること―。経営者の戦略眼が、まさに試される時だろう。

かわぐち・みつやす 1993年筑波大学卒、コスモ石油入社。石油貿易事業に従事し、米国は2000年ニューヨーク、05年ロサンジェルス、24年ヒューストンと、通算10年間駐在。

※次回はINPEXの高橋功さんです。

【石油】堅調な原油価格 直前の水準が参院選に影響か


【業界スクランブル/石油】

5月22日の燃料油補助金の制度変更後、同月26日の1週目ガソリン小売価格調査では4・5円の値下げ、6月2日の2週目調査では3・3円の値下げと、政府の意図通り順調なスタートを見せた。

ところが、たまたま5月22日の改定時、14日の米中関税協議の合意により世界経済の後退は限定的だとして、原油価格が前週比2・4円上昇。政府の5円値下げ分と合わせて、1週目で補助額が7・4円となり、補助上限10円まであと2・6円になってしまった。小売りの値下がり効果もあって、2週目の補助金は1円増、おそらく4週目で限度額10円の上限に達する。その後は、ガソリン・軽油の場合、旧暫定税率廃止の実施まで10円支給が続くが、小売価格は原油価格と為替次第で上下することになる。問題は、7月の参院選前のガソリン小売価格だ。原油価格水準が選挙結果に影響するかもしれない。

さて、その原油価格はというと、WTI先物が60ドル台前半で上下している。世界中の関係者が原油需給の緩和・値下がり予想をしている割に、原油価格は堅調だ。石油を敵視するIEAも5月の月報では、今年の世界需要の増加予想をわずかに上方修正したが、意外にも需要は底堅いのかもしれない。

OPECプラス全体としては従来の協調減産を維持したが、有志8カ国が予定の3倍以上の自主減産緩和(増産)を3カ月連続で打ち出したのも、その自信の表れか。サウジがイランなどの合意違反の増産にいら立ち、長期の原油低価格にも対応可能・原油価格下支えの意思はないとしたのも気になるところ。

国内価格の点でも、原油価格から目が離せない。(H)

【シン・メディア放談】備蓄米放出で小泉劇場開幕 参院選に向け永田町は混迷状態


〈メディア人編〉大手A紙・大手B紙・大手C紙

小泉農相のコメ対応が連日報じられ政権支持率にも変化が。気になる参院選への影響は!?

―5月21日に小泉進次郎氏が農林水産相に就任。備蓄米放出の手法を大転換し、連日大きく報じられている。

A紙 初めに打診されたのは斎藤健氏だというし、入札から随意契約への変更は、小泉農相就任前から小野寺五典・自民政調会長が主張していた。小泉氏ありきではなく、江藤拓前農相が続投でも随契に変更したはずだ。とはいえ、小泉氏は悪魔的な能力で自らの手柄のように見せた。各紙・各局も視聴率やプレビュー数が稼げるのであえて乗っている。共犯だ。

B紙 進次郎劇場を取り上げすぎだ。本質論ではなく、視察などに記者を引き連れていくパフォーマンスは環境相時代と全く同じ。成長が感じられない。また農相就任翌日、長野でコメの価格が5㎏2000円台に下がったことを自らの手腕のようにアピールしたが、JA関係者が怒っていた。メディアは、ここまで短期間で急騰した原因の究明こそ主眼に置くべきだ。

C紙 新聞はそれほどでもないが、テレビ的には絵が取れ不快感もないから、あれだけ取り上げたくなるのだろう。また、昨年の総裁選の時より発言が慎重なようにも見える。ポスト石破とまではいかないが、首相候補としてたびたび注目を集める星の下に生まれたとは言える。

A紙 総裁選後に心を入れ替えたと評価する声も一瞬出たが、本質は変わらず。一方、野村哲郎元農相の苦言は正論だけど、小泉氏を上げるだけだった。

また、コメの安定供給に向けた閣僚会議を設置。ここではコメだけ議論するようだが、一次・二次産業全体を見て議論しないと政策がゆがむ。でも役所で絵を描ける人や、この分野の大家も見当たらない。いずれにせよ自民の農水族が仕事をしてこなかったことは明白だ。

―緊急的対応とはいえ価格誘導するような手法は燃料油補助金に通じるように思える。

A紙 食糧管理法を廃止し、市場原理を導入した結果、米価高騰に機動的な対応ができなくなったという点では、むしろ電力・ガス自由化を思い起こさせる。

B紙 今回、「緊急時は随契やむなし」という前例をつくってしまった。そしてコメの転売規制はやりすぎだ。緊急措置なら何でもありなのか。経済活動の自由を阻害しており、今が戦時中かと錯覚するよ。

―統制経済の世界に入りつつあり、気持ちの悪い展開だ。

米関税政策巡るLPガス市場の変動


【ワールドワイド/コラム】海外メディアを読む

ロイターは4月25日、「世界のLPG市場、米高関税で激変 勝ち組はアジア勢か」という記事を掲載した。発端はトランプ米大統領の関税問題。中国では米国産LPガスの輸入に高い関税がかかることから、米国産を中東産に切り替えるなどの動きが進む一方、米国産は輸出先を欧州やアジア諸国に転換するなど、LPガスのサプライチェーンや需給関係が激動していると、記述している。

中国は米国シェールガスの副産物であるNGL(天然ガス液)から作られるエタンとLPガスを石化原料用として大量に輸入している。ここ数年、中国は石油化学プラントとPDH(プロパン脱水素装置)を大増設。そこから生産される石油化学製品を大量に販売している。一方で、米国のシェールガス・石油生産者はNGL、LPガス、エタンを中国に大量に購入してもらう必要性がある。米国内でNGLの供給が需要を上回っているためで、当該在庫が増えると、米国のシェールガス・石油生産者は採算が悪化してしまう。現状のシェールガスサプライチェーンではトランプ氏が掲げる「drill, baby, drill」というわけにはいかない。

そのためか、中国はエタンに関しては5月14日、輸入課税免除を行った。LPガスも10%の輸入関税にしている。

米国産LPガスは特定の輸出先に縛られておらず、他国との入れ替えが比較的容易だ。このため中国企業が保有する米国産LPガス契約を、日本、韓国、東南アジア諸国、インドが保有する中東、カナダ、オーストラリア産LPガス契約と交換する動きが加速化する可能性がある。

いずれにしても今年は中国の米国産LPガス購入動向により大きく供給が変動し、そのあおりが中東産LPガスにも波及していくものと見られる。

(花井和夫/エネルギーコラムニスト)

【ガス】rDME混合ガスに注目 2030年社会実装へ


【業界スクランブル/ガス】

2050年カーボンニュートラル実現に資するグリーンLPガスの社会実装に向け、国内でいくつものプロジェクトが進行する中、日本LPガス協会が低炭素燃料の一つとして検討している再エネ由来の燃料「rDME(リニューアブル・ジメチルエーテル)混合LPガス」に注目が集まっている。rDME混合LPガスは、30~50年までのトランジション期を対象に低炭素化を進める技術という位置付けだ。

グリーンLPガス推進官民検討会では、「rDME混合LPガスの実用化検討WG(座長・赤松史光大阪大学教授)」を組織し、4月に初会合を開き具体的な検討作業をスタートさせた。rDME混合ガスの選択理由は、沸点がLPガスに近く(マイナス25℃)、シリンダー内で容易に気化することに加え、体積当たりの熱量も比較的高い(約7割)など。メタノールやアンモニアなど他のCN燃料と比べ、LPガスへの混合燃料としては最適だという。

同WGが示すロードマップでは、28年ごろの実証試験、30年の社会実装を目指すとしている。よりスピード感を持たせるため、WGの下に品質検討、出荷設備、環境評価部、渉外の各部会を組織する。例えば品質検討部会では、燃料電池などの燃焼機器やオートガス車などでの実証試験による混合割合の上限値や安全対策の確認、LPガス供給設備においてrDMEを混入する場合のゴム配管に関する膨潤対策基準などを策定する。

赤松座長は、「LPガスへのrDME混合は、低炭素社会に向け大きなインパクトがある」とコメントしており、LPガス業界も注目し期待を寄せている。(F)

EUが露ガス禁輸制裁措置 米ロ間でNS復活の協議進む


【ワールドワイド/コラム】国際政治とエネルギー問題

4月24、25日、IEA(国際エネルギー機関)主催のエネルギーサミットがロンドンで開催され、EUのフォンデアライエン欧州委員長は、「欧州は決してロシアからのエネルギーに依存することにはならない」と語った。EUはウクライナ戦争以降、ロシア産の石炭と石油に対して禁輸制裁措置を2022年4月と12月に科している。一方、ガスだけは禁輸制裁措置を講じていなかった。欧州委はたびたび27年に禁輸する意向を発表しており、これが具体化されようとしている。

欧州委は5月6日、27年度末でEUにおけるロシア産ガスの禁輸措置を決定した。関連法案を6月にEU加盟国へ提示し、加盟国の過半の同意が得られるように、禁輸措置の具体化を計画している。EUが禁輸措置を決定したのは、ウクライナ侵攻以降、多額の資金をロシア産エネルギーに振り込んだからだ。欧州委はロシアから欧州へのエネルギー輸出は大きなロシアの収入源になっていると発表した。

一方、米ロ間ではノルドストリーム(NS)復活に向けた協議が進み、この間にスイスの裁判所が介在する構図になっている。スイス・ツーク州の裁判所は5月9日、NS2運用会社のノルドストリーム2会社が引き続き業務活動を継続することを許可し、破産するものではないとする仮判決を出した。これにより、同社は破産が回避され、投資家を探すことができる。

米政府はこれまで欧州のロシア産ガス依存に対し警告してきた。しかし、昨年末からスイスにおいて、米元駐独大使や米投資家(トランプ氏支持者)などがロシア関係者などとNSについて協議していると欧米メディアで報道されている。米投資家は、NSがウクライナ戦争終結への和平条件になるとの考えを米WSJで語った。5月9日付のロイター通信では、米政府関係者がロシア産ガスの輸出再開に向け協議していると報じている。

NSを巡っては、ドイツのシュレーダー元政権が00年に入り、ドイツ経済発展の観点から、安いロシアのパイプラインガスに注目し、積極的に輸入を推進。この方針は次のメルケル元政権に引き継がれ、ロシア産ガスの拡充のために、バルト海経由でNS 1・2の建設が始まった。NS2に関しては完成したが、ショルツ前政権は22年4月に運開の中止を発表した。同年9月末には、NS1・2の区間で何者かによる爆破があり、損傷する事件が発生。現在、NSによるロシア産ガスの供給はストップしたままだ。

ロシア産ガスは現在、黒海経由のパイプラインガス、バルト海経由のLNGがEUに送られている。これらはEUにおけるガス消費量の約20%と言われる。5月20日のEU外相会合では、第17次対ロ制裁の決議、そして第18次制裁ではNSが準備されていると言われる。これには損傷を受けた箇所の修理と運用の禁止が盛り込まれるはずだ。初めてNSが登場することになる。ウクライナ和平との関係で今後の展開が注目される。

(弘山雅夫/エネルギー政策ウォッチャー)

【新電力】長期的な非化石価値確保 市場取引では困難


【業界スクランブル/新電力】

非化石価値取引市場は、2024年度の4回のオークションを終え、同年度が振り替えられるような状況となった。21年度に最低価格が30銭に押し下げられて以降、これまで約定平均価格が最低価格~最低価格+数銭のレベルで推移していた再エネ価値取引市場(FIT証書の売買市場)は、平均約定価格が67銭となり、初めて最低価格を10銭以上上回る約定結果となった。

買い札の総量を見ても、21~24年度まで21億kW時、44億kW時、84億kW時、191億kW時と、毎年2倍かそれ以上に増えている状況である。まだ売り札が900億kW時程度と潤沢で価格が大きくつり上がる状態にはなく、数年ほどかけて売買の量がバランスしてくる可能性が示唆される状況となっている。

非FIT非化石証書については、より顕著な状況だ。第4回のオークション結果では、再エネ指定ありの市場が売り入札量4億kW時に対して買い入札量が58億kW時。再エネ指定なしの市場が売り入札量2・5億kW時に対して買い入札量が62億kW時。当然価格は上限値である1・3円を付け、非FIT非化石証書については市場での確保が難しい様相が示されている。

需要家サイドから見れば、長期的な非化石価値の確保が懸念される状況が強まっていると思われる。長期的に価格が高くなってくることを見越して、足元、長期契約で価格を固定化するなどの行動をとってくるような需要家が現れてくるものと思われる。コーポレートPPAをはじめとした再生可能エネルギー由来の電力の確保に向けて、需要家や市場の動きから目が離せない状況になってきた。(K)