【フォーラムアイ】顧客と事業者の双方にメリット ペーパーレス化で請求コスト削減

【ビリングシステム】

ビリングシステムは画期的な料金請求・収納サービス「Billing BOX」の提供を開始した。

スマートフォンに電子メールやSMSで請求通知を送り、Pay決済などが利用できる。

ビリングシステムは決済支援サービスを中心に手掛けるフィンテック企業として2000年に設立。事業者と顧客、銀行や信用金庫、クレジットカード会社など金融機関をITによってつなぐハブ的な役割を担い事業展開する。国内ほぼ全ての金融機関・決済機関と提携しており、これをベースに全国レベルでサービス提供できる点が同社の大きな強みだ。

担当の古賀氏(左)と土手氏

そんなビリングシステムが手掛けるコンビニ払込票支払いアプリ「PayB(ペイビー)」はエネルギー業界において存在感を示している。大手電力や大手ガスをはじめ、地方ガスやLPガスなど多くの事業者が採用しており、スタンダードなアプリになりつつある。

顧客は同アプリに預貯金口座やクレジットカードを登録し、バーコードやQRコード付きの請求書・コンビニ払込票をスマホカメラで読み取るだけ。自宅にいながらにして簡単に支払いを行うことができ、金融機関やコンビニに行く必要がない。

事業者側にとっても、既存のコンビニ払込票を活用できるため、新たな費用や運用負荷が発生することなく支払いチャネルを拡充できる。また、顧客の利便性を高めたことで、料金収納率の向上が見込める。顧客と事業者の双方がメリットを享受できると好評とのことだ。

「PayB」は全国に普及している

電子メールやSMSを活用 スマメ導入でガス業界が注目

同社は、ペイビーを一段階進化させた新サービスとして、「Billing BOX(ビリングボックス)ペーパーレス収納」の提供を開始した。同サービスを導入することによって、顧客の支払いにおける利便性がさらに向上する。従来、郵送で受け取っていたコンビニ払込票に代えて電子メールやSMS(ショートメッセージサービス)で請求通知を受け取り、ペイビーやPay決済(スマホを使ったQR・コード決済サービス)などを利用することで全て手元で決済作業が完了する。もちろん、従来通りコンビニ決済もできるなど、支払いの選択肢は多い。

コンビニ払込票をメールやSMSなどに置き替える

事業者側では、電子メールやSMSに切り替えることで、印刷費や郵送費などのコスト削減を図ることが可能だ。新商品企画・開発室の古賀浩明室長は「特にガス業界では、スマートメーターの導入が進み、顧客宅を回る検針業務を廃止した代わりに、コンビニ払込票などの発送業務が新たに発生している。これをいかに減らすかが課題。その解決に、本サービスの導入を検討する事業者が増えている」と説明する。

スマホを利用することで顧客への請求通知から、受領、決済、消込までをシームレスに実現できる。ペイビーの契約がある事業者は、既存の収納結果の伝送ルートを活用することができるため収納結果の授受に関して、新たに基幹システムを改修することなく利用可能だ。

多くの決済サービスでは、Pay決済の際、支払う金額に対し料率課金で収納手数料がかかる。これに対し、ビリングボックスはコンビニ払込票による収納手数料の単価を適用できるため、取引金額に関わらず手数料を低水準に抑えられる点が大きな訴求ポイントとなっている。

ただ、こうした決済に関するシステムを切り替えて、いきなり定常請求に利用するのは「ハードルが高い」という事業者もいる。「そうした場合、督促や紛失、期限切れの請求書の再発行など、部分的な導入を提案している。顧客から連絡を受けてすぐに請求ができるため、収納率の向上に貢献できる」。同室の土手優太主任はこう強調する。

「Billing BOX」のサービス概要図

都市ガス事業者が採用 電力・水道などにも普及へ

新サービス採用第1号は都市ガス事業者。他の事業者の関心も高いだけに、今後、本格的に導入が進んでいくことになりそうだ。都市ガス業界に限らず、料金回収の課題に直面しているのは電力会社やLPガス会社、水道局も同様。同社としては、利用者が簡単に扱えるスマホを基軸としたサービスがさらに普及拡大していくと見ている。

【実名ホンネ座談会】原子力規制委は変わったか 求められる不断の改革

Theme 原子力規制委改革

【出席者】

鈴木淳司(自民党衆議院議員)
関村直人(東京大学名誉教授)
加藤顕彦(原子力エネルギー協議会「ATENA」理事長

左から加藤氏、関村氏、鈴木氏

原子力規制委員会の発足から13年以上が経過したが、再稼働を果たしたのは15基にとどまる。審査の効率化や合理化が叫ばれて久しいが、規制委改革は進んでいるのか。

─原子力規制委員会は4月1日、特定重大事故等対処施設(特重施設)の設置期限を改める方針を決めた。これまでは工事計画の認可から5年以内の設置が求められていたが、起算点を「運転開始日」に変更する。


加藤 事業者にとって大きな意味を持つ。工事計画の認可から再稼働までには、防潮堤工事などで数年を要するケースがあり、特重施設の工事との輻輳もあった。今回の見直しで期限が延び、特重施設の工事に専念できる期間が確保できるだろう。
ただ、事業者の責務は期限が延びたからといって甘んじることなく、期限内かつ、できる限り早いタイミングで特重施設を完成させることだ。


鈴木 現実的で理にかなった判断だが、これが規制側と事業者側の対話を経て、規制側の判断として出されたことが大きい。ただ、特重施設の必要性については、なお議論が分かれるところがある。


関村 本質的な部分に立ち戻れば、「なぜ特重施設が要求されるのか」という大きな課題への議論が足りていない。「深層防護」は重要な安全哲学だが、「層の数」を増やすことが必要なのか、それぞれの層の「厚み」を増やすことが求められるのか。グローバルな要請であるグレーデッド・アプローチ(重要度に応じて要求の厳しさを変える比例原則)やALARP(As low as reasonably practicable:合理的に実現可能な限り、リスクをできるだけ低くする)と併せて、深層防護をどのように生かすべきか。本来、規制委員はこういった議論を行うべきだ。審査の個別テーマに焦点が当たりすぎて、全体を俯瞰した〝規制哲学〟が語られていない。

発足から13年が経過した原子力規制委員会

埋まりつつある規制・事業者間の溝 審査の孤立を避ける対話を

─鈴木氏が会長を務めた自民党の原子力規制に関する特別委員会は2023年、原子力規制の充実などに関する提言を政府に提出した。提言は生かされているか。


鈴木 十分ではないものの審査の効率化は着実に進んだ部分があるし、それについては率直に評価したい。ただ、規制委の発足からすでに13年を経て、規制は当初の非常時対応を過ぎて、もはや〝巡航速度〟に入っていないといけない段階だ。規制委はNRC(米国原子力規制委員会)の規制原則の一つ「効率化原則」を明確に取り入れるべきかと思う。効率化原則と安全性の担保は、必ずしも相反するものではない。


加藤 大きかったのは、審査会合の進め方が変わったことだ。以前は事前の論点整理が不十分なまま会合に臨み、議論がかみ合わないことがあった。現在は「泊方式」と呼ばれる、重要な論点をあらかじめ書面で出し合い、ポイントを絞って議論する手法が定着した。論点が明確になり、審査の予見性が高まった。


鈴木 泊方式の導入により、議論の手戻りが抑制された意味は大きい。それまでは、例えば質問通告のない国会質問のごとく、ポイントの絞られない非効率な質疑の繰り返しによる審査の長期化が指摘されていた。


加藤 かつては規制側と事業者側の間に溝を感じることもあったが、近年は両者のコミュニケーションが改善傾向にある。2月のATENAフォーラムで長﨑晋也委員は「ATENA(原子力エネルギー協議会)と規制委は規制される側と規制する側という一見対立する関係に見えても、原子力利用における安全の確保について、より高みを目指していくという意味で、両者は同じ志を共有する者同士である」とおっしゃった。こうした認識が共有され始めたことで、私たちの考えを規制側にくみ取ってもらえる環境は整いつつある。


関村 重要な論点だ。長﨑委員や山中伸介委員長など、各委員は規制哲学を語るポテンシャルを持っている。ステークホルダーに向けての積極的な発信と委員の個性を生かした議論に期待したい。


加藤 昨年度には将来の建て替えを見据えて、規制庁との間で「革新軽水炉」の規制を巡る技術的な意見交換を行っている。7回実施し、3月25日には規制委として一定の見解が示された。私たちの考えが反映された部分もあれば、難しい課題として残った部分もある。こうして解釈の余地がある部分をあらかじめ整理しておくことで、本格審査における予見性が高まり、スムーズな移行が可能になるのではないか。


鈴木 良い傾向だが、現場に精通する事業者側から、もっと具体的な改善提案があっていいかと思う。規制側の言う要求をただ満たすだけではなく、規制側と事業者側がともに安全性を高め合う規制文化を作ることが大切だ。


関村 両者は対等な関係であり、原子力安全の目的を共有し、互いにスパイラルアップしていくべきだ。規制側が「上」だという意識が前提となると、事業者は全て「できます」と言ってしまう雰囲気が生まれかねない。福島第一原子力発電所の事故後15年を経て、こうした安全文化に関する課題が顕在化する傾向が強まった気がしてならない。原子力に限らず、日本では規制者と被規制者の間に強い権威勾配が生まれやすい。文化的特性や国民性を踏まえて対話を進め、規制の孤立を避けるべきだ。


加藤 原子力発電所の安全性を高めるための基本は「良い対策が見つかれば、なるべく早く実機に適用する」ということ。審査に膨大な時間を費やして停滞させることなく、優れた安全対策を速やかにプラントに反映させる。この姿勢こそ、両者が共有すべきだ。

【イニシャルニュース】太陽光の産地偽装⁉ BP磐梯猪苗代の実情

FIT・FIP認定が取り消され、経産省から交付金の返還命令を受けた「ブルーパワー磐梯猪苗代発電所(総出力2万5286kW)」。関係者によれば、もともとはメガソーラー事業などを手掛けるB社が2013年にFIT認定(買い取り価格1kW当たり38円)を受けたものの、土地の買収交渉がうまくいかず、福島県猪苗代町の認定場所に設定されたのは2枚の太陽光パネルのみだった。

B社では、そこから3㎞ほど離れた会津若松市内のゴルフ場の土地を19年に取得しパネル7万5千枚ほどの大規模メガソーラーを建設、双方を自営線で接続する計画だったが、実際には自営線が敷設されていなかった。B社はその後、都内にあるC社に発電所を売却したもよう。

ちなみにウェブ上でC社を検索したところ、24年4月に「ホームページを開設しました」という項目が出てくるものの、クリックしても表示されず、現在は閉鎖されているようだ。

経産省では、こうした手法が「電力の産地偽装」に当たるとして、認定取り消し・交付金返還命令に踏み切った格好だ。返還額は約6億円に上るという。

「B社のホームページを見るとでたらめな内容ばかりで、悪質さは度を越している。例えば静岡県函南町のメガソーラーは、すでにFITのIDや林地開発許可が取り消されているにもかかわらず、ウェブサイト上では『準備中』と虚偽の内容になっている。しぶとく生き残っていることに改めて驚く」(関係者X氏)

ホルムズ海峡の実質封鎖の影響で、化石燃料に依存しない再生可能エネルギーが改めて脚光を浴びているさなかだけに、悪質業者の一掃が求められる。

悪質メガソーラーに逆風強まる

日本に日帰り出張 豪防衛相の狙いとは

イラン情勢が混沌としている4月8日、オーストラリアのマールズ副首相兼国防相が突如来日した。豪州側は小泉進次郎防衛相との会談のためと公式発表し、実際に日豪両国の防衛戦略の強化を確認したという。だが日豪両国の事情に詳しいX氏はマールズ国防相の本当の目的は「豪州でひっ迫している石油を日本から調達することが狙いだったはずだ」と語る。

それもそのはず、小泉防衛相とマールズ国防相はわずか10日後に、当初の予定通り豪州で会談したからだ。

マールズ国防相の来日は7日夕方突如発表された。日本での滞在時間は約17時間で、早朝に来日して夕方には帰国するという「日帰り出張」だった。防衛省内でも「一体何のために来るのか」と訝る声が相次いだ。 

会談は北朝鮮がミサイルを発射したことで大幅に遅れ、時間も短く、会談後の会見の内容も連携強化を確認しただけとあって防衛担当の記者らも「?」だったという。

前出のX氏は「小泉防衛相との会談はカモフラージュと見ていいでしょう」と解説する。本命は木原稔官房長官との会談だという。

豪州側は木原氏とは防衛相時代のパートナーであいさつに行ったという程度の説明しかしていないが、「アルバニージー首相はほぼ同時期にシンガポールを訪問し、LNGとバーターで石油調達を約束した。とにかく石油が足りない豪州では、首脳級自らが各国を巡って調達に躍起になっている。日本ともLNGの供出の代わりに石油をという話になったと見ていいでしょう」(X氏)。

豪州政府は、国民向けには「石油燃料の供給は安全だ」ということを繰り返している。しかし国家備蓄は1カ月強で、法律で定められている90日を大幅に下回る。イラン情勢は長期化の様相で「いよいよ安全だと言い切れない状況になってきた」(豪州のエネルギー企業関係者)という。

豪州内の混乱を避けるためにカモフラージュしたというところなのだろうが、日本も潤沢ではない状況なだけに、マールズ防衛相の「日帰り出張」がどれほど実のあるものだったのかは疑問だ。

【事業者探訪】廃棄物発電が柱の地産地消 横展開も視野に事業者探訪

川崎未来エナジー

地域脱炭素のために自治体系新電力を設立する動きが、最近再びトレンドとなりつつある。

そうした中、廃棄物発電を軸に企業間連携も進める川崎市の例が順調なスタートを切った。

2年前、自治体主導では最大規模となる地域エネルギー会社が川崎市に誕生した。市と、エネルギー系や金融系の民間7社が共同出資する川崎未来エナジーだ。地域のエネルギーのプラットフォーマーとしての活躍が期待されている。

公から民に転じた井田社長

市内のごみ処理施設は三つで、発電出力は合計2・86万kWになる。最大規模の橘処理センター(1・41万kW)の本格稼働時期に合わせ2024年4月に同社は始動した。廃棄物発電の電気はこれまで市が入札により全量域外に売電していたが、同社が相対調達し地産地消にかじを切った。市脱炭素戦略推進室長から同社社長に転じた井田淳氏は「大需要地で可能な限り地産地消すべく、域内再エネの最大化が主なミッション。廃棄物発電に加え、ボリュームは小さいが非FIT電源の余剰買い取りを開始し、地域の行動変容にもつなげたい」と説明する。環境省の脱炭素先行地域に選定された市の取り組みを進める上でも、中心的な役割を果たしている。

民間からの引き合いが増加 非FIT買い取りに意欲

25年度の年間供給量は6400万kW時。電源構成(同年度計画値)は再エネと廃棄物由来が8割超で、市場調達は15%弱に抑えた。公共施設だけでなく、最近は民間からの引き合いが増えている点が特徴的だ。一定の経済合理性を担保しつつ、全量非化石証書付きで販売する。設立10年目で今の3倍の需要家獲得を目標に掲げる。大規模なベースロード再エネを有する点が強みとなり、1年目の24年度から純利益1億円を確保し、経営は順調に推移している。

料金メニューはシンプルな構成で、廃棄物発電が主力なため、現時点では燃料費調整額を設定していない。足元で電力価格の高騰が懸念される中、同社の強みが生きてくる局面だ。ただし「価格勝負は避けている。地域のプラットフォーマーとして、脱炭素化に協力する意向の企業への供給を優先するのが当社のスタンス。需要家と共にどんなチャレンジが出来るかを重視している」と強調する。

さらに電源の拡大に向け、昨年11月には家庭用の非FIT太陽光の余剰買い取りを始めた。非FITに着目した背景としては、まず、市が昨春に新築建築物への太陽光設置を条例で義務化し、非FITの普及を推進していることがある。また、卒FITは買い取り競争が過熱しているのに対し、非FITは系統運用者との手続きの煩雑さなどで買い取り事業者が少ない。

そこで同社では、買い取り価格を1kW時当たり10円と高めに設定するとともに、出資者であるJAセレサ川崎の農産物プレゼントも企画し、ハウスメーカーやリフォーム事業者などを通じて周知を図っている。「今年度100件の目標に向けた下地が出来てきた」と手ごたえをつかむ。

同社の出資者は公募で選定し、電力小売り事業のノウハウを持つNTTアノードエナジーと東急パワーサプライは、前者が需給管理を、後者が営業・顧客対応をそれぞれ担う。金融機関に期待するのは資金面というより、むしろネットワークだ。地元企業の間で地産地消の機運が高まることを目指す。

最大出力・高効率を誇る橘処理センター

多様なモデルを創出 経済合理性ある形目指す

「営業範囲は域内だが、川崎モデルの横展開も強く意識している」と井田氏。例えば、24年10月からヤマト運輸・高津千年営業所に電力を供給し、EV25台分などの電力を実質再エネ100%で賄っている。ヤマト運輸はこのモデルを他地域でも地元企業と連携し、今後広げていきたい考えだ。

また今春には、エネットを介して、クレハ環境の廃棄物発電由来再エネを川崎臨海倉庫埠頭に供給するスキームを発表。カーボンニュートラルポートの一環となる取り組みで、川崎未来エナジーは媒介業者として3社の間を取り持った。「こうした他社との連携は、まさに当社に期待される役割を具現化できたもの」と振り返る。

他方、廃棄物発電ならではの課題はある。ごみ処理センターは基本、24時間365日定格で稼働する。インバランスが発生しないよう、処理センター側が計画変更に協力しているが、土日祝日に余剰が発生しないよう需要をいかに確保できるかが当面の課題となる。その意味でも、先述のようなさまざまな業態の企業との連携が重要になると考えている。

「地域脱炭素のハブ」としての役割発揮に向けて順調な滑り出しを見せている同社。市の取り組みとしては脱炭素先行地域の交付金を活用するなど支援制度を整備しているが、井田氏は「民間の立場として、交付金がなくても経済合理性のある形で地産地消がまわるような基盤づくりを進める必要がある。その意味で、他社との連携第一号であるヤマト運輸の取り組みなどは好事例となる」と強調。今後も同社発の多様なモデルを生み出し、政府が目指す「脱炭素ドミノ」を体現していく構えだ。

【地域の魅力発信】souveniraroma(スーベニアアロマ)

「ノンバーバル」が製造・販売する地元の柑橘を使ったアロマオイルが密かに人気だ。4年前、当時高校生の息子の発案で父子が協力し販売開始。

「原産地指定をしたアロマスプレー」は川崎と横浜のユズやミカンの皮から作った精油を使い、値段は高めだが品質にこだわり顔が見える点が売り。蒸留体験や農業振興などの活動も積極的に展開する。珍しい地産地消アロマが新名物になりつつある。

souveniraroma(スーベニアアロマ)
提供:ノンバーバル

【業界紙の目】カーボンニュートラルに向け環境整備進むセメント業界

佐藤大蔵/セメント新聞社 編集部記者

いわゆる「多排出産業」のセメント産業では、排出量取引制度への対応が課題となっている。

他にもCNに関する制度や規定の整備など動きがあり、業界はその対応に注力している。

国においては、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行を推進するため、GX経済移行債を活用した先行投資支援と、先行投資を促すカーボンプライシングを組み合わせた「成長志向型カーボンプライシング構想」を実行している。柱の一つとなるカーボンプライシングの具体的な施策として、排出量取引制度(GX―ETS)を今年度から本格稼働する。これは、昨年の脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)などの改正を受け、排出量取引が法定化されたことを受けてのものだ。

同制度は、CO2の直接排出量が前年度までの3カ年平均で10万t以上の法人が対象となる。このため、クリンカ製造を行っている全てのセメント会社が対象となる。排出可能な量である「排出枠」が政府から割り当てられ、排出枠が余剰の場合は売却することができ、排出量が超過された場合は不足分を調達しなければならないとされている。政府が一定の基準の下、対象事業者に排出枠を割り当て、毎年度排出実績量と同量の排出枠を法令に定める期限までに保有することを義務付ける。

セメント産業のベンチマークについては、セメント製造および同一工場内におけるセメント製造に関連する製品全体が対象となる。活動量指標はクリンカ生産量となる。これはセメント品種構成の影響を受けず、クリンカ焼成工程のCO2排出量がセメント製造工程全体の9割以上を占めるためだ。セメント各社においては、将来にわたり研究開発や設備投資を伴うカーボンニュートラル(CN)対策を実施する方針だ。

セメントでは規格類についても大きな動きがあった。3月23日にセメント関連の日本産業規格(JIS)改正が公示された。

JIS改正の動きも 最大100万t削減へ

今回改正されたセメント関連JISは、品質規格4規格、試験方法規格2規格であり、このうち標準的なセメントである普通ポルトランドセメントについては、旧規格で少量混合成分として高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ質混合材、石灰石を合計5%まで混合することが認められていた。

新規格では、このうち石灰石についてのみ混合量をさらに5%増やし、最大10%まで使用できるようになった。加えて、石灰石と同等の品質を持つ人工炭酸カルシウムも、同様に最大10%まで使用可能となった。今回の改正により、普通ポルトランドセメントにおけるクリンカ使用量を最大5%低減することが可能となり、業界全体で最大約100万t規模のCO2削減効果が見込まれる。

業界団体であるセメント協会が2022年に策定した「カーボンニュートラルを目指すセメント産業の長期ビジョン」では、目指すべき対策の方向と克服すべき課題の一つとして、クリンカ/セメント比の低減を示している。目指す対策としてプロセス起源のCO2については、普通ポルトランドセメントの少量混合成分の増量によりクリンカ/セメント比を低減させることを挙げている。

エネルギー起源CO2については、省エネとエネルギー代替廃棄物の利用拡大を進め、またクリンカ/セメント比の低減分のエネルギー使用量削減が可能とした。クリンカ/セメント比低減を具体化する第一歩として、セメント関連のJIS改正に至った。

セメント協会では今回の改正を受けて、ホームページにJIS改正情報メニュー「CN実現に向けたセメントのJIS改正」を新設し、改正概要資料をはじめ、セメントJIS改正に伴う社内規格におけるセメント受入基準値の変更申請に関する技術資料、大臣認定コンクリートにおけるセメントの品質基準の対応などを掲載する。新JISセメント受け入れに向けたユーザー支援やフォローアップを行っている。

建築物のLCA対策強化 業界でルール策定

さらに、50年CNの実現に向けては、建築物におけるCO2削減を図るため、使用段階のみならず建設から解体に至るまでのライフサイクル全体を通じたCO2削減が重要となる。また建築物のライフサイクルアセスメント(LCA)の実施に当たっては、建築物に用いる建材や設備の数量と、建材や設備に係る原単位をかけ合わせることが必要であり、建築物のLCAの環境を整備するためにはCO2原単位の整備が不可欠となる。

国土交通省では、50年CNの実現に向け、建築物のライフサイクルカーボンの算定や評価を義務付けることを検討している。これを受けて生コンクリートの全国団体である全国生コンクリート工業組合連合会、全国生コンクリート協同組合連合会は、今年1月にカーボンフットプリント算定ルールを策定した。

これは国交省支援事業の「2025年度建築GX・DX推進事業(うち調査、普及に関する事業に係るCO2原単位等の策定)」を活用し、生コンを対象としたCO2排出量の算定ルールを定めたものだ。コンクリート構造物に対する生涯CO2排出量算定が義務付けられることにより、製造者である生コン工場に対して1㎥当たりの排出量の問い合わせが増えることが予想される。このため、連合会として会員が統一した基準で算定できるルールを整えた。

建築物のLCAでカーボン算定が義務化される

今回策定された算定ルールでは、対象製品の定義を生コン(レディーミクストコンクリート)とし、算定単位は1㎥としている。排出量の公表の組織単位は、各生コン協同組合単位とする。算定条件として、全工場の50%以上、生産量50%以上のデータを活用することを支援している。公表条件は同一製品とする場合、最大値と最小値がプラスマイナス10%以上の場合とする。少なくとも5年ごとに算定結果の見直しを実施する。

今年度は業界にとって、CNに関する政策、制度がさまざま変わる重要な1年となる。

〈セメント新聞〉〇1949年2月創刊〇発行部数:週刊2万部〇読者層:セメント業界、生コンクリート業界、コンクリート製品業界、建設業界など

【フォーラムアイ】火災の煙の怖さをおばけで表現 新コスモス電機が横浜市施設の体験展示刷新に協力

新コスモス電機

新コスモス電機は4月、横浜市民防災センターの防災パートナー企業に認定され、同センターの「煙体験コーナー」のリニューアルの実施に協力した。防災パートナー企業は、同センターの理念に賛同し、技術や経験を生かして体験コンテンツの全部または一部を制作し、完成物を無償提供する。

防災パートナーに認定された

横浜市消防局の松﨑賢二予防部長は「同施設は消防隊の活動拠点であるとともに、市民の自助・共助意識を育む体験型施設だ。小学生を対象に見学会などを定期的に開催してきた。より来場者に関心を持ってもらう体験コンテンツに刷新するため、防災パートナーを募った」と説明する。

今回、新コスモス電機が手掛けた煙体験コーナーでは、目に見えず、臭いもしない一酸化炭素(CO)をおばけのキャラクターに例えたアニメーションで、有毒ガスの危険性を伝える。

火災を想定した煙体験では、煙が充満したブースの中に入り、「煙を吸わないように口を押さえて中腰で進むように」と説明を受けながら避難する。

「COオバケというキャラクターが、姿が見えず臭いもしないCOの特徴や、煙避難訓練で正しい避難方法を子どもたちに伝えることで理解してもらいやすくなるのではないか。家庭の火災による死亡事故を1件でも減らしていきたい」と、東日本支社長の小栁章氏は語る。

COオバケを使った展示ブース

防災意識向上に民間の力 全国の自治体などが注目

この他、コーナーには一酸化炭素検知機能付き火災警報器「PLUSCO(プラシオ) 」を展示している。従来の火災警報器は煙が充満してから火災を知らせるのに対し、プラシオは煙が出ていなくても、一酸化炭素濃度100ppmという人体に影響が出る前の段階でアラームが鳴るのが特徴だ。

体験コーナーの充実を図ったことで、小学生をはじめ、あらゆる世代にアピールできる展示となった。この民間の力を取り入れる試みに全国の自治体や消防局が注目しており、見学の申し込みが絶えないという。防災意識を高める先駆けとなる取り組みとして、全国規模で影響を与えていきそうだ。

【論点】送配電事業の安定運営へ、事業報酬率の適正化待ったなし

託送料金の事業報酬率〈上〉村田千春(電力中央研究所常務理事)

託送料金制度を巡る課題の中でも事業報酬率の水準は特に重要である。

資金調達・投資判断の観点から具体的に何が課題なのか、専門家が解説する。

本稿では、一般送配電事業者の託送料金における事業報酬率について今月と来月の2回に分けて考察する。報酬率は託送料金を決定する要素であると同時に、一送の資金創出・調達、投資判断、ひいては安定供給に影響する重要な要素でもある。本稿はこれらの観点から、第2規制期間(2028~32年度)に向けた適正な報酬率設定に資することを目的としている。

事業報酬は一送の資本コストの総額を表す、託送料金の原価項目である。

日本の託送料金規制では、5年を規制期間とするレベニューキャップ制度が導入され、現在は23~27年度に至る第1規制期間に当たる。本制度では「一般送配電事業者による託送供給等に係る収入の見通しに関する省令」にのっとり、収入見通しを算定することとされている。

事業報酬は、電気事業固定資産・建設中の資産などの総額(レートベース)に、資本コストに相当する報酬率を乗じて算定される。報酬率は、全産業の自己資本利益率などを反映した自己資本報酬率と、直近の一定期間(5年間)の公社債利回りに、電力の有利子負債利子率に上乗せされるリスクプレミアムを加えた他人資本報酬率とを加重平均(3対7)した値となる。現在、第1規制期間の報酬率は1・5%と歴史的な低水準である。

22年に制定された前記省令では、託送料金算定時の報酬率と現実の資本コストに乖離が生じた際に、当期または翌期の料金にその乖離を算入することは原則として認められていない。しかし26年度以降、金利上昇に伴う一送の資金調達の支障を考慮し、公社債利回りの上昇を報酬率に反映し、託送料金を変更することを認める措置が講じられる予定である(本稿執筆時点)。

資金創出力と事業報酬

報酬率と資金調達等を巡るサイクル

一送の資金創出の源泉 電力格付も左右

事業報酬は一送が託送料金を通じて資金を創出する主要な源泉の一つでもある。企業の資金創出力を表す指標は多様だが、代表的指標であるEBITDAは営業利益と減価償却費で構成される。事業報酬は財務諸表上、税引き後当期利益と支払利息を合計したものに相当し(図1)、資金創出力を決定付ける重要な要素である。

このことから報酬率の設定に当たっては、託送料金の低廉化と一送の資金創出力の確保という、短期的には対立する、しかしいずれも重要な目的を両立させる適正な水準設定が求められることが分かる。

企業の資金創出力は債務償還能力の源泉であり、格付機関が信用格付を行う際の重要な要素となる。電力会社に対する格付は現在、一送を含めた旧一般電気事業者全体に対して設定される傾向にある。その際、個社ごとの事業リスク・財務リスクに加え、送配電事業を含む電力全社に共通する制度枠組みの安定性が考慮される。託送料金の報酬率は、資金創出力を左右するのみならず、国の送配電事業規制の基本スタンスの象徴的表れでもあり、格付評価に一定の影響を与えると考えられる。

低廉化実現の好循環を 第2規制期間の是正が鍵

従って適正な報酬率の設定は、安定的な格付評価につながり、資金調達コストの安定に貢献することとなる。このことが公社債利回りに対する一送の資金調達時のリスクプレミアムを抑制し、報酬率の適正化に寄与すると考えられる(図2)。やや逆説的な表現となるが、適正な報酬率は、中長期的には報酬率それ自身の安定化を経て、託送料金の低廉化を実現する好循環を生み出し得るのである。昨今はリスクフリーとされる長期金利(2・4%台、10年物国債利回り、本稿執筆時点)でさえ現在の報酬率(1・5%)と比較してかなり高位に達しており、一送の収支を圧迫するのみならず、前記のプロセスとは逆の悪循環をもたらす懸念が高い。

このような実態を踏まえ、第1規制期間の26年度以降の報酬率の是正を可能とする仕組みが今般、導入されることとなった。この判断自体は正しいものと受け止めているが、第2規制期間の報酬率検討に際しては、初期段階から資金調達などに対する十分な配慮が望まれる。

次回は、現在のレベニューキャップ制度下で求められる投資計画の実現と報酬率水準との相互関係を考察する。

むらた・ちはる 1985年東京電力入社。企画部、電力契約部、営業部などを経て2013年同社執行役員。18年電力中央研究所へ入所。21年6月から
現職。

【フォーラムアイ】コモディティ市場の重要性を啓蒙 TOCOM石崎社長ら第一線の実務家による講座始まる

【TOCOM/東京大学】

エネルギービジネスの最前線で活躍する実務家が、東京大学経済学部生らにエネルギーやコモディティ市場について講義する社会連携講座が始まった。

同講座は、2023、24両年度に開講された「産業事情」の後継。24年度は329人の学生が受講登録した。エネルギー市場・コモディティ市場の産業インフラとしての役割を広く伝えるとともに、将来を担う人材育成を図るのが狙い。4~7月の13回にわたり、電力やガス、GX(グリーントランスフォーメーション)など幅広いテーマで講義する予定だ。

4月8日の第1回講義では、東京商品取引所(TOCOM)の石崎隆社長が登壇し、「コモディティ価格がどのようなプロセスで決まるのか、商社や電力会社の経営者・経産省の政策責任者など、複数の視点の話を聞いて考えていただきたい」と、講座の目的を述べた。

初回は東商取の石崎隆社長が講師を務めた

初回のテーマは「コモディティ市場と先物取引」。石崎氏は、イラン紛争によるエネルギーの先物価格上昇に触れ、実際の原油・電力価格の変動をグラフで示しながら、「先物市場では、多様な参加者による将来の予測を反映し価格が形成される」と説明した。

また、価格高騰対策として政府が実施している補助金政策により、省エネのインセンティブが希薄化することで供給制約が悪化するとした上で、「本来は、産業インフラとしての先物市場をリスクヘッジの場として利用すべきだ」と強調した。

震災踏まえた電力政策 改革の是非問う質問も

15日に実施された第2回では、佐藤悦緒・前経産省電力・ガス取引監視等委員会事務局長が登壇し、「電力政策と市場」をテーマに講義した。

同氏は2011年3月の東日本大震災発生後、資源エネルギー庁電力基盤整備課長として計画停電を担当した。その経験を踏まえ、「九電力による硬直的な体制が、電力の広域融通を妨げた結果として実施されることになった。その後の電力広域的運営推進機関の設立や広域連系系統のマスタープランの研究は、必然的帰結だった」と、現在の電力政策に至った問題意識を語った。

また、福島第一原発事故による国、電力会社に対する信頼性の低下が、原子力に限らず、電力システム全体の政策立案・実行をむしばむ構造的問題となっていることを訴えた。

学生らは講義に熱心に耳を傾け、終盤にはメリット・デメリットを踏まえた電力システム改革実施の是非を鋭く問う質問が飛び出るなど、関心の高さがうかがえた。

【フォーカス】不適切再エネに初の交付金返還命令

経済産業省が再エネ特措法に基づく処分の厳格化を加速させている。2025年度にFIT(固定価格買い取り)/FIP(市場連動買い取り)交付金の返還命令を太陽光1件、バイオマス4件の計5件に対して初めて実施した。この5件を含め、認定取り消しは55件に上った。また交付金の一時停止は57件となった。

交付金返還命令が出た猪苗代と会津若松にまたがる飛び地案件の本体(提供:鈎氏)

返還命令を受けたメガソーラー「Blue Power 磐梯猪苗代発電所」(事業者・Blue Power猪苗代)の取り消し理由は、認定計画上の送電線路を敷設せず、実質的に移設規制を潜脱したこと。当初予定地の福島県猪苗代町内にはパネル2枚のみを設置し、本体が会津若松市内のゴルフ場にあるという「飛び地」タイプだ。長距離送電にも関わらず電圧降下がほぼ見られず、本当に自営線を敷設したのかとの疑惑が持たれていた。

バイオマスの4件は「D-POWER津発電所」(D―POWER)、「茨城県常総市バイオマス発電所」(JPX総研)、「瑞浪市水上バイオマス発電所」(大阪製鋲)、「兵庫グリーンバイオマスファーム」(べナート)で、理由はいずれも非バイオマス燃料の使用だった。

各地の不適切事例に詳しい電気技術者の鈎裕之氏は「国はFIT開始当初は法令違反の設備にも優遇措置を与えた。こうした方針は千丈の堤の『蟻の一穴』となる。今回55件の認定が取り消されたが、今なお蟻の一穴となり得る発電所は各地に散在している」と指摘する。FITの負の遺産を解消すべく、政府には一層大規模かつスピーディーな取り締まりが求められる。

【フォーラムレポート】2030年に向け「老朽火力は死なず」? 退出阻止を巡るジレンマの実態

電力安定供給確保に向け、当面は非効率な老朽火力に頼らざるを得ない状況が続く。

資源エネルギー庁は退出阻止に動くが、高コスト・補修量の増加など課題は多い。

供給力の急激な低下が懸念されるようになって久しい。新設電源への投資を促すと同時に、いかに既設電源の退出を阻止するかが喫緊の課題だが、現状、発電事業者が設備を維持するインセンティブは低く、運転開始から40〜50年が経過した高経年の石油・石炭・ガス火力の休廃止は進むばかりだ。

この背景には、政府が掲げるカーボンニュートラルへの対応に加え、再生可能エネルギーの普及拡大に伴う稼働率の低下や維持管理コストの増大が、発電事業者に撤退の判断を促していることがある。2024年度には容量市場の拠出金支払いが始まり、発電事業者は収入を得られるようになったが、退出機運にブレーキがかかっている様子はない。

電力広域的運営推進機関が3月30日に公表した26年度の供給計画でも、その動向が見て取れる。同年度中に廃止となる火力電源は371万kW。従来から計画されていた244万kWに、石油など103万kW、LNG23万kWの計126万kWが新規に計上された。

容量市場メインオークションの「Net CONE」推移
※仮試算

新陳代謝が進まず 信頼度の確保に課題

本来であれば、高コスト・非効率な火力の退出は、経済合理性、そしてカーボンニュートラルの観点からも望ましいはずだ。だがそれも、新設投資が順調に進んだ場合に限ってのこと。実際、他エリアに先駆けて火力の休廃止が進んできた東京エリアでは、25年度に実施された29年度向けの容量市場メインオークションで、追加約定した上でも供給信頼度を満たすことができず、厳しい需給状況が顕在化した形だ。

「東京の信頼度確保のために割りを食っているのが、北海道・東北エリアの高経年火力だ」と指摘するのは、学識者の一人。「原子力が再稼働、または再稼働を見通せたことで、北海道・東北ともに維持していた老朽火力の休廃止に向け地元と交渉に入りたかったはずだ。それが、東京のために維持せざるを得なくなっているのではないか」と分析する。

こうした電源は、ただでさえ老朽化が進んでいる上に、稼働当初は想定していなかった再エネ出力に合わせた頻回な起動・停止の繰り返しにより負担がかかり、トラブルを起こしやすくなっている。広域機関によると、実需給に近づくほど補修量が増える傾向が顕著。しかも、以前は需要が比較的少ない春(4~5月)と秋(10~11月)に補修が計画されていたが、昨今の厳しい残暑の影響で、「作業はほぼ春に集中させている」(発電事業者)状況が、端境期の需給ひっ迫リスクを高めている。

少なくとも、長期脱炭素電源オークションで落札された新規のLNG火力などが稼働し始める29年度以降までは、電源の休廃止が新設を上回り、トータルの設備容量の減少は続く。夏冬に厳しい電力需給となる可能性があるため、資源エネルギー庁は、容量市場や予備電源制度といった既存の仕組みを活用しながら対策を講じていく構えだ。足元では、こうした発電事業者の撤退マインドを解消しようと、今年度実施される30年度向けの次回メインオークションに向けた見直し議論に着手している。

指標価格を大幅に引き上げ 負担とのバランスは?

見直しの主なポイントは、募集量(目標調達量)の拡大と指標価格となる「Net CONE(ネットコーン)」の引き上げだ。広域機関の仮の試算では、目標調達量は25年度比で584万kW増の1万9581万kW。ネットコーンは25年度が1kW当たり1万75円(上限は1万5112円)だったのに対し、26年度は2万500円(同3万750円)とほぼ倍増する。

29年度向けオークションでは、指標価格を超えた応札などにより非落札となった容量は623万kWに上った。エネ庁電力供給室の佐久秀弥室長は、「電源の採算性が確保できるようになるため、少なくとも廃止する積極的な理由はなくなるのではないか」と期待する。

それでも、火力発電業界から聞こえてくるのは、「単年度で高い収入が確保できたとしても、キャッシュフローの予見性がないことに変わりない。電源の休廃止に歯止めはかけられないのではないか」という声だ。大手電力関係者は、「電源の廃止を食い止めたいのであれば、単年度ではなく10、20年と長期で抱えてもらえなければとても難しい」と本音を漏らす。

また、高い価格が全ての電源に適用されてしまうと、小売り事業者に大きな負担を強いることになるため、影響緩和措置としてシングルプライス約定の二段階化の適用が検討されている。これについて、あるコンサルタントは「価格を抑制するために一物多価にせざるを得ないのだろうが、恣意的な誘導を排除しなければ健全な指標価格とはならない」と断じる。

とはいえ、29年度向けのメインオークションでは、約定総額が2兆2094億円と2年連続で過去最高を更新した。27年度からは、脱炭素オークションの拠出金の支払いも始まり、小売り事業者の拠出金負担は増大する一方であることも事実で、不満が噴出することは避けられそうにない。

31年度向けのオークションを見据え、佐久室長は「実態を踏まえて発電、小売り事業者の双方が納得できるような仕組みを構築していかなければならないと」と強調する。

中東情勢の緊迫化を受けエネ庁は、26年度に限り非効率石炭の稼働率を引き上げる措置を打ち出した。だが、あくまでも30年度までのフェードアウトの旗は降ろさないまま。稼働率、そして燃料調達の不確実性がつきまとう中でどこまで活用しきれるのか。脱炭素と安定供給のジレンマを解かない限り、抜本的な打ち手は見えてこない。

【フォーカス】小笠原村が文献調査受け入れ 国主導の南鳥島モデルは広がるか

赤沢亮正経済産業相は4月21日、東京都小笠原村の渋谷正昭村長と面会し、同村南鳥島で高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定に向けた文献調査を実施する方針を伝えた。渋谷氏は風評被害を生まない努力などを求め、他の自治体への調査申し入れがなければ、次のステップに進むかどうかの意見表明は行わないと強調した。実施となれば、北海道寿都町、神恵内村、佐賀県玄海町に続く4地点目となる。

赤沢経産相(右)と面会した小笠原村の渋谷村長

同案件は、国が調査の依頼から実施判断までを担った初めてのケースだ。国は3月、調査実施を申し入れ、その後、原子力発電環境整備機構(NUMO)が住民説明会を開催。渋谷氏は4月13日の会見で、「国が実施するか否か判断すべきだ」との見解を示していた。

調査の受け入れを巡っては、これまで住民の意見集約や町村内外での反対運動など、首長に過大な負担がかかっていた。役場には抗議電話が相次ぎ、通常業務に支障が生じることもあった。「村民には賛成・反対だけではない幅広い意見がある。村長に就任して1番大変だった」(渋谷氏)。ただ、国が前面に立ったことで、先行する自治体と比べれば、多少なりとも負担が軽減した可能性はある。

国は他の市町村にも働きかけを強めるが、現時点で申し入れに至ったのは小笠原村だけだ。「できれば南鳥島だけではなく、他の地域も一緒に申し入れてほしかった」(同)

原子力発電を活用する以上、最終処分場の建設は不可欠だ。小笠原村をモデルとして、調査地は拡大するのか。

【フォーラムレポート】注目のワット・ビット連携 日本版モデル成功の鍵は?

電力需要の大幅増を見越し、米国ではビジネスベースでDC隣接型「ワット・ビット連携」が拡大中だ。

翻って日本は制度面などの障壁が高いが、GX戦略で日本版モデル確立を目指す動きが増えつつある。

 AIの急速な普及に伴い、膨大な情報処理のためデータセンター(DC)の建設需要が伸びている。データ処理量が多すぎるため、DC内のサーバーやGPU(画像処理半導体)といった装置類が大量の電力を消費。DC由来の電力需要増を解決する策の一つとして、電力供給とデータ処理を隣接地で取り組む「ワット・ビット連携」に注目が集まっている。日本国内では構想段階だが、海外では現実のビジネスとして動き始めた。

例えば米国では、既存の原発からDCに大電力を直接供給する契約が成立した。象徴的な事例がアマゾンとタレン・エナジー(テキサス州)が昨年6月に結んだ長期契約だ。タレンが保有するペンシルベニア州のサスケハナ原発から、アマゾンが最大192万kWの電力を購入するという内容だ。さらに両社は小型モジュール炉(SMR)の建設も検討し、既存原発の発電容量を拡大する計画だという。工場や家庭など特定多数に安定供給する、従来の電力供給モデルを大きく変革した事例だと言える。ただ、規制当局との調整が難航した経緯があり、制度設計の課題も浮き彫りになった。

米国で契約続々 DC隣接型に熱視線

そもそもなぜワット・ビット連携と呼ぶのか。電力(ワット)とデータ(ビット)を連携させてエネルギー利用を最適化するとの構想がその由来だ。

従来は遠隔地にある発電所から送電線を使い、需要地である都市部へ送電している。電圧と距離によるが、ざっくりと送電量の4~5%が失われるといわれている。また、現状はDCでデジタル信号を処理する際は電気信号でやりとりし、その際に大量の電力を消費する。送電時の電力損失をなるべく抑えた方がコスト面でも得になるため、原発などに隣接させる形でDCを建設して発電した電力を直接送れば送電時の損失を抑えられる。この発想からワット・ビット連携が注目を集めるようになったわけだ。

実用化が進む米国の事例に話を戻そう。同国の電力大手コンステレーション・エナジーが進めるスリーマイル島原発1号機(ペンシルバニア州)の再稼働計画がある。再稼働後に生み出される約83万kWの電力について、コンステレーション社はマイクロソフトとの間で20年間の売買契約を締結。マイクロソフトは全電力を同社のDCで使用する方針だ。この事例はDCと発電所が隣接するわけではないが、原発が生み出す大電力をDC専用に用いる点でワット・ビット連携の一つといえよう。

原発関連だけではない。再生可能エネルギー分野ではグーグルが主導するエネルギーパーク構想が注目を集めている。太陽光発電と蓄電池、DCを同一敷地に集約するもので、総投資額は約200億ドル(約3兆300億円)規模に上る見込みだ。

グーグルやアマゾンに加え、大手IT企業の一角を占めるメタ社も同様の計画を公表している。今年1月には米電力大手ビストラ社やSMR開発企業のテラ・パワー社、同じくSMRスタートアップのオクロ社との間で電力調達や開発支援を含む契約を相次いで締結した。

メタ社はオハイオ州で「プロメテウス」計画を進めている。生成AIなどによるデータ処理需要に対応するための次世代DC構想の通称で、AI専用に最適化した巨大な電力消費型施設を指す。1拠点で原発1基分に匹敵する100万kWの電力を消費する巨大施設となる。

メタ社はビストラ社の原発から210万kW超の電力を20年間にわたって購入し、DCの電力需要を賄う計画だ。他社のように単一発電所から調達するのではなく、複数の電源から広域的に需要を支える形を取るのが特徴だ。点在する原発が巨大なDCの〝基盤インフラ〟を支える仕組みとなる。

メタ社は次世代型原発の支援に力を入れる方針も打ち出している。テラ・パワー社が開発するナトリウム冷却高速炉とオクロ社の最新原発からも電力を調達し、合計で最大500万kW超の電源を確保。DC用の膨大な電力を安定調達する考えだ。

従来の電力供給の概念を覆す構想が進む

【ビジネスリーダー】CN実現へ「水素菌」をソリューションに

湯川英明/CO2資源化研究所代表取締役CEO/CSO

水素を吸収し炭素固定する「水素菌」ベンチャーが注目されている。

気候変動、そして安全保障リスクの高まりが追い風となっている。

ゆかわ・ひであき 1971年東京大学農学部卒。農学博士(東大)。同年三菱油化入社。兼務でRITE バイオ研究機能立上げに参画。同社退職後、RITE 理事、Green Earth Institute創業者など。15 年RITE 理事退任後、8 月から現職。

「水素菌」という耳慣れない微生物を利用し、脱石油などを目指すベンチャーの取り組みが存在感を増している。日本唯一の水素菌専業ベンチャーであるCO2資源化研究所だ。かつて三菱化学(当時)や地球環境産業技術研究機構(RITE)などに在籍した湯川英明代表が2015年に立ち上げた。「設立当時には想像できなかったほど企業が気候変動対策に本腰を入れており、世界的に水素菌への注目が高まっている」と強調する。

脱石油への挑戦 化学・エネ分野牽引へ

湯川氏は同社設立以前もバイオマス由来の化学品・エネルギーを生産するベンチャーを経営していた。リーマンショック後、11年ごろから油価が1バレル100ドル超の局面が増え、米国連邦政府がこれらの分野への事業支援に注力したが、14年に油価が急落し40ドル台に。米国が一転して支援を停止したことを踏まえ、湯川氏は新分野へチャレンジすべきと主張したが、出資理由の途中変更は許されないとベンチャーキャピタル(VC)が反発。最終的に経営から離れる道を選ばざるを得なかった。

将来を見据えた新たな研究への思いを持ち続ける中、師事した兒玉徹・東京大学名誉教授(故人)の水素菌研究が頭に浮かんだ。水素菌は学術的には水素酸化細菌の総称で、1960年代にドイツの研究者が発見した。植物の光合成のようにCO2を固定する。太陽光の代わりに水素をエネルギー源として炭素を補足し、自らに必要な有機成分を合成するのだ。炭素を固定する菌の中では工業的ポテンシャルが高いとみている。

中でも兒玉氏が静岡県伊豆市の温泉で発見した「UCDI水素菌」は、1時間で分裂して倍になり、他種より増殖スピードが速いという特徴がある。こうした水素菌への科学的興味と、若い世代の研究の場を提供したいとの思いが相まって、新たなベンチャーの誕生につながった。かつての経験から、研究者の純粋な思いが経営に反映されるよう、VCの資金は入れず、自己資金や篤志家、さらには事業会社からの出資によって運営されている。 

当面のターゲットは、化学・エネルギー分野と食料分野だ。前者では生分解性プラスチックやエタノールを、後者はヒト用や飼料用タンパク質の生産を目指す。いずれも安全保障に直結する分野での活用が期待されるだけに、欧米では日本以上に水素菌への関心が高く、関連ベンチャーが世界に十数社ある。ただ、その多くが技術的ハードルの低い食料向けだという。

そうした中、同社が力を入れるのがバイオコンビナート構想だ。石油化学コンビナートの設備休止が進む中、ナフサでなく水素菌由来のプラスチックやジェット燃料生産に向け、既設設備を再利用し、コスト削減と早期工業化を目指す。

既にエネルギー企業との連携が始まっている。昨年3月には、コスモエネルギーホールディングスと次世代エタノール製造に向けた基礎検討に着手した。この他にも海外を含め進行中の案件があり、また企業の要望に応じた試作品作りをここ1~2年で加速させる予定だ。

最終目標は、まだ誰も成し得ていない化学・エネルギー分野での水素菌利用を成功させることだ。この約10年間でノウハウを蓄積し、手応えをつかみつつある。「水素菌は微生物の中でも原始的で、自らに必要な成分を産出する独立栄養細菌であるため自立性が高く、人間がコントロールしにくい。しかしようやく扱いになれてきたところ。特許も50件ほど取得した」(湯川氏)

水素価格がハードル 安保戦略の深掘りを

課題はやはり水素の価格だ。世界的に製造コストの高さがネックとなり、足元では多くの関連プロジェクトが頓挫・低迷しているわけだが、ここへきてイラン有事というファクターが加わったことで、空気が変化しつつある。

「今回の件がなければ水素菌の工業化も経済性のみで判断されたはず。だが現実に石油の調達リスクが高まり、各国が改めてCO2由来の物質生産に注目し、水素製造、あるいは地中の水素探索に力を入れるのではないか。ただ、それで世界の研究開発競争が加速すれば、プラスだけでなくマイナス面も出てくるかもしれない」とみている。

他方、日本は研究開発の支援規模もスピードも米国には遠く及ばない。「日本も改めて安全保障のために何に投資すべきか議論するとともに、もっと自由に研究できる環境をつくり上げるべきではないか。併せてCO2由来の化学・エネルギー生産に関するLCA(ライフサイクルアセスメント)の基準作りなどでもリーダーシップを発揮してほしい」と切望する。

【多事争論】巨大与党のエネルギー政策「自民圧勝」は何をもたらすのか

話題:衆院選の総括

衆院選で国民の信任を得た高市政権は、早速イラン問題で真価を問われることに。

メディア関係者は選挙と今後のエネルギー政策の行方をどう見るのか。

〈小選挙区特有の「振り子現象」 首相人気頼みでは足元危うく〉

視点A:高橋直子/「新潟日報」論説編集委員長

「高市旋風」が吹き荒れ、自民党が単独で衆院全体の3分の2の議席を得る歴史的圧勝を収めた2月の衆院選で、新潟県では五つの小選挙区全てを自民が独占した。

改選前は県内の全小選挙区を立憲民主党が占めており、その変化に目を見張る。世論の風次第で一方に大勝をもたらす小選挙区制度特有の「振り子現象」が起きたと言え、その振れ幅の大きさが際立つ結果となった。

新潟での自民の小選挙区全勝は、自民が政権復帰を果たした2012年以来となる。全国的に自民が勝利した17年衆院選、21年衆院選でも、新潟では野党共闘を前に自民が苦戦し、6あった小選挙区は自民2、野党4と負け越してきた。派閥の政治資金パーティー裏金事件で逆風下にあった24年衆院選での自民系全敗は想定の範囲内だった。

それが今回、どん底に沈んだ前回選挙から1年3カ月で急浮上できたのは、ひとえに高市早苗首相が吹かせた強烈な追い風による。

投票日の出口調査によると、自民候補は総じて前回選挙の倍程度に当たる4~5割の無党派層の支持を集め、得票を伸ばした。

選挙戦終盤で、特定の政党支持はないという有権者が「高市さんになって自民のイメージが変わった。今回は自民に入れないといけない」と話していたのは象徴的だ。

新人候補が立ったのは5選挙区のうち一つだけで刷新感はほぼなかった自民が、首相が持つ「改革する女性政治家」のイメージを前面に出し、無党派層を引き寄せたと言える。

ただ、次回も追い風が吹くとは限らず、その時の情勢いかんでは、オセロのように全ての議席をひっくり返される可能性はある。

開票翌日、7期目の強力な現職を倒した自民新人は、喜びも半分に「強烈な危機感がある」と語った。実態を伴わない勝利を印象付ける発言と言えよう。それぞれが次の選挙までに地盤を固め直し、国会での活動を有権者に見せていけるかが議席維持の鍵を握る。

広いリベラル層吸収していた野党 原発再稼働容認で離れた支持も

新潟といえば田中角栄元首相のイメージが強く、保守優位の「自民党王国」と思われることが多い。県議会で自民党会派が全53議席のうち32議席と過半数を押さえていることも、保守系の強さを実証している。

一方でコメ王国でもある新潟は、かつて農民運動が盛んで、中選挙区時代は旧社会党の勢力が強い「社会党王国」でもあった。

長い間に政党は変遷したものの、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題といった国政に直結する地域課題があり続け、野党勢力が根を張ってきた現実は無視できない。

立憲民主に所属していた県内の国会議員はこれまで、原発再稼働には自民に比べて慎重な姿勢を示し、原発反対派だけでなく、自民のリベラル層の支持も集めていた。

だが今回、連立政権を離脱した公明党との新党・中道改革連合の結成に伴い、立憲民主勢力は安全性の確認などを条件に、原発再稼働を容認する姿勢に転じた。新潟では、福島事故の当事者である東電が約14年ぶりに柏崎刈羽原発を再稼働させ、不安を感じる県民が少なくない中での急な方針転換となった。

野党の転換に違和感を覚えた有権者はいたはずで、新党結成は、新潟では特に、自民にとって有利な形に働いたと思われる。

衆院選を終え、県内政治の焦点は知事選に移った。告示は5月の大型連休明けに迫り、自民は3期目に挑む花角英世知事を推す。

昨年末、花角氏が再稼働の地元同意を巡り「県民の信を問う」としてきた判断を、県民ではなく、県民の代表である「県議会」に委ねた際には、県民から不満が聞かれた。

知事選は本来なら、野党が対抗馬を立て、花角氏の再稼働判断の是非を問う機会にもなるのだが、衆院選の惨敗ぶりを見れば、野党に力が残っているかは疑わしい。自民県議は「原発は争点にならない」と公言する。

知事選は県政全般が問われ、ワンイシューで判断されるものではないことは確かだ。

とはいえ順調と言えない再稼働の現状や、東電が再稼働することへの県民の不安を軽視すれば、知事や自民勢力の足元が揺らぐ恐れは常にあると考えておくべきではないか。

たかはし・なおこ
新潟県生まれ。1990年新潟日報社入社、本社報道部、東京支社報道部、長岡支社報道部で、政治・行政、災害報道などを担当。上越支社報道部長を経て、2024年から現職。

【LPガス大変革時代に挑む】業界再編を視野に積極的に活動 情勢変化に対応する伊藤忠エネクスホームライフの戦略

若松京介社長(伊藤忠エネクスホームライフ)

わかまつ・きょうすけ
1985年伊藤忠燃料(現伊藤忠エネクス)入社。伊藤忠エネクスホームライフ東北社長、ホームライフ部門長、取締役兼専務執行役員などを経て、2024年10月から現職。

エネクス時代からLPガスの業界課題に取り組んできた。

まだ歴史の浅い新体制の展望について若松社長に話を聞いた。

 ―社長に就任し1年以上が経過しました。

若松 人口減少やLPガス市場の縮小といった情勢変化に迅速に対応するため、2024年10月にLPガス販売事業を主体とする伊藤忠エネクスグループ会社4社を経営統合し、新生「伊藤忠エネクスホームライフ」として事業を開始しました。伊藤忠エネクスで行っていたホームライフ事業のグループ会社に対する経営管理や共通施策の推進などについても、当社が継続しています。新体制となり統合の効果を実感しています。

人材の確保に苦慮 評価制度の見直し実施

―業界の課題をどのように認識していますか。

若松 昨今の物流問題は大きな課題です。LPガス事業は、充填された容器を消費者先の軒先まで届け、交換設置、保安点検といった、まさに労働集約型の配送を行っています。配送・保安分野における平均年齢も上昇傾向で、労働力不足が懸念されています。また、物流効率化法が改正され、一定規模以上の事業者には中長期計画の作成や定期報告などが義務化されました。 当社は以前から容器の共同利用、容器の大型化、共同配送(センター化)、システムによる配送予測、LPWA(省電力広域通信)などを活用した予測精度の向上、複数社による物流統合などを行い、コスト低減を進めてきました。今後も適切に対策していき、物流業界の課題解決に努めたいと思っています。

―人材確保についてはどのように対策していますか。

若松 この業界は保安業務資格の取得が求められる特殊性もあり、人材確保には苦慮しています。社員のエンゲージメント向上を目的として、26年度から段階的な定年延長を導入しました。手前味噌ですが、当社にはガス工事の技術力を持つシニア社員が多くいます。シニア社員には、技術を若手社員に伝承していく役割を担ってほしいと考えています。

またベースアップを実施したりキャリア形成の道筋を可視化し公平で透明性の高い運用に向け評価制度の見直しも実施しました。

一方、新しい人材は給与や待遇だけではなく、社風やキャリア形成機会、業界の安定性、企業の社会的責任など、多角的な視点で企業を選んでいます。そこにしっかりと応えられるよう、魅力ある会社にしていければと思っています。

―他社とのアライアンスに積極的な印象があります。

若松 24年12月に住宅設備機器のEC事業を展開する「株式会社交換できるくん」と業務・資本提携しました。ハウスメーカーや管理会社が住宅設備のECサイトを運用するプラットフォーム「Replaform」を共同で開発しました。25年7月にはその1号店として、当社ECサイト「eコトもーる」をリリースしました。商品検索、見積作成、販売決済までをワンストップでオンライン完結し、利用者はコンロなどの住宅設備機器を簡単に交換できます。今まで顧客接点は対面が中心でしたが、こうした技術で新たな顧客接点を創出したいと思っています。

当社は九州での新出光とのJVでエコアを、東名阪エリアで大阪ガスとエネアークを設立するなど、率先して業界再編を牽引してきました。今後も業界再編を視野に活動を継続したいと思っています。

企業プロフィール
伊藤忠エネクスグループ。2024年10月にエネクスのLPガス販社を集約し、ホームライフグループを統合する形で設立。現在、事業継続が困難な販売店を中心に継続的にM&Aを実施したり、高効率給湯器などの販売で需要の維持・拡大を進めている。

法令順守で業界貢献 宣言をウェブに公表

―液化石油ガス法の対応は。

若松 当社グループは省令改正の公布後、取引適正化・料金透明化に向けた取り組み宣言をウェブサイトに公表しました。ガイドラインの曖昧な部分に現場が混乱しないよう方針を統一しました。全社員向けのeラーニング、社内監査や研修会を通じて、継続して方針を周知徹底しています。省令改正で一定の効果があったと認識しています。

しかし資源エネルギー庁のウェブサイトに設置された料金適正化に関する通報フォームには、累計で3000件もの通報が寄せられているとのことです。内容の分析と判断、立入検査基準への反映などを目的として、アドバイザリーボードによる検討が進められていると聞いていますが、当社も引き続き法令を順守し、支持される業界づくりに貢献したいと考えています。