【コラム】「高レベル放射性廃棄物処分を考える~不安と疑問解消は努力以外に解なし」
飯倉 穣/エコノミスト
1、新規調査地点の登場
わが国で原子力発電が本格的に稼働して60年となる(原電東海発電所営業運転開始1966年7月25日)。当時は、「原子の灯」ともるという言葉があった。他方紙面は石炭再建に抜本策(朝日新聞同)と国内炭縮小政策に地域の苦渋が溢れていた。高レベル放射性廃棄物処分問題は、姿が見えなかった(62年検討開始)。それから半世紀を経て、原子力推進の人も反対の人もこの問題に本格的に対処する時期となった。現段階は、高レベル廃棄物ガラス固化・収納容器(キャニスター)・処分施設の技術的対応から、恒久的処分地の選定段階に至っている。処分に適切な立地を求める活動が継続している。
今般、東京都小笠原村渋谷正昭村長は、国申し入れの南鳥島「文献調査」で「国が実施するのであれば、その判断を受け入れる」と表明した(2026年4月13日記者会見)。北海道寿都町、同神恵内村、佐賀県玄海町に続いて東京都小笠原村が4番目の文献調査対象となった。南鳥島は、日本で唯一太平洋プレート上に位置する国土であり、安定した陸地のようである。
毎回新規候補が登場するたびに。交付金の使途、自治体の判断の在り方、地域住民の意向、選定プロセスの在り方、知事の対応、なぜ御地なのか等々、マスコミ・批判派の質問や意見が活発で、原子力政策に協力する当事者に多大な負担を強いているように見受ける。今後の調査展開は、予断を許さないが、地層処分の立地選定と事業遂行についてより合理的な対応はないであろうか。地層処分を考える。
2、地層処分の姿は明快
地層処分とは、原子力発電に伴い発生する高レベル放射性廃棄物を地下の安定した岩盤に閉じ込めることである。地下深くの岩盤が持っている「物質を閉じ込める性質」と「物質を隔離する性質」を利用し、放射性廃棄物の放射能が自然レベルに減衰するまで、人間の生活環境や地上の自然環境から隔離することを目的にしている。(NUMO定義を一部修正)
地層処分の対象は、高レベル放射性廃棄物(核分裂生成物:Cs/Sr/Tc、アクチニド核種:Am/Np、等々の放射性同位体)である。それをガラスと混合融合し、ガラス固化体として固化体容器(キャニスター)に充填する。その容器を、一時貯蔵施設に収納し、一定期間冷却を行う。50年程度冷却後、放射能のレベルと表面温度(当初200度以上)の低下を確認し、地下300m以下の岩盤にガラス固化体をオーバーパック(鉄製)に挿入し、その外側に緩衝材(ベントナイト)を置き、埋設する。
これにより地層処分が終了する。
3、何が心配か
(ガラスは水で溶けるか)
地層処分の留意点は、人工バリアの健全性と処分する地層(岩盤)の安定性といえる。人工バリアは、ステンレス製のキャニスタ(ガラス固化体を内包)、オーバーパック、緩衝材である。人工バリアの安全性は実証・実用化段階にある。関心は、人工バリアの経年劣化(千年経過後)による地下水との接触に伴う放射性物質の移動である。当方の古い知識では、ガラス固化体は、謂わば、厚いガラス灰皿である。それが水と接触したときどの程度溶け出すかという比喩が語られていた。素人感覚では、硬いガラスが溶け出すのかという疑問が浮かんだ。それは埋設環境(地温等)に依存するという。科学の世界は厳密に環境と時間が醸しだす溶解度を検証する。そして溶けた場合、地下水の移動スピードが大事になる。岩盤により異なるが、年数mmか数cm程度とわずかの移動という地点もある。
(地盤は安定的か)
地盤の安定性は、放射能が自然レベルに至る間の断層活動や火山活動の可能性、地震の影響(地下なので影響は少ないが)が話題となる。当方の見方では、火山活動の有無が重要である。日本の国土を見れば、火山が見られず、温泉(地温勾配由来は除く)もない地域がある。可能であれば日本全国の適性地域の調査を幅広く行うことが理想的である。そしてどの地域もこの調査に協力することが大事である。この意味で今回新たな調査地となった南鳥島の地点は興味深い。
(処分後の管理は必要か)
それでも地下でなく地上での管理が話題となる。地上の人工的な構造物で長期に存続しているものにピラミッドや日本の古墳がある。これらの構造物には盗掘があった。この経験から処分物に何かしら人為的介入の恐れを指摘できる。高レベル廃棄物が悪用されないことは大切である。故に地層処分は人為的行為をかなり遮断可能ということで推奨できる。それでも埋設地域の監視を求めたい考えも存する。謂わば墓場の管理である。ただ1万年以上監視できる体制が可能なのか疑問もある。そのような政府・制度は過去に存在しなかった。宗教組織も長期に存続しているものもあるが、万年はない。
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