【省エネ】需要家の義務 合理的な政策を

【業界スクランブル/省エネ】

米国の一部の州や欧州などの一部の国では、エネルギー供給事業者に「需要家の省エネ義務」を課す制度がある。1994年に英国が初めて実施した制度だが、電力・ガス料金に加算して、需要家から「エネルギー事業者が実施する需要家省エネ対策費用」を徴収する制度である。各エネルギー事業者は規制当局が定めた目標省エネ量を達成するために、高効率機器購入時や建物断熱改修時の補助金、省エネアドバイスプログラムなどを実施する。国内の再エネ電力固定価格買い取り制度(FIT)も再エネ電力購入時の追加買い取り費用を全需要家から徴収しており、その省エネ対策版と考えるとイメージしやすい。また、他事業者の需要側省エネ量を「ホワイト証書(再エネにより削減される削減量証明書がグリーン証書で、省エネにより削減される削減量証明書がホワイト証書)」として取引する制度を導入しているケースもある。

国内導入是非の論点としては、国民に対する省エネの推進実務を誰(例えば経産省・環境省、省エネルギーセンターのような団体、エネルギー小売り事業者など)が担うのか。また、「短期で投資回収可能な自立的普及状態の省エネ対策」や「規制により導入義務がある省エネ対策」以外は補助金などによる経済的な支援措置が必要となるが、この追加的な費用をどう徴収(例えば、石油石炭税などを値上げしてエネルギー対策特別会計から捻出、電力・ガス購入時の賦課金としてエネルギー事業者が追加徴収)するか。国の温暖化対策目標でも省エネは重要な位置付けを占めており、省エネの実質的な目的は温暖化対策であることから、「再エネ100%のグリーン電力メニューを購入している電化住宅+EV所有」と「燃焼式熱源を使うCO2排出量の多い住宅+ガソリン車所有」などのモデルケースを比較して負担金額がどう変わるか。当該負担の差は政策的に妥当・公平と言えるかを検討しながら、海外制度の導入是非を検討し、日本にとって、合理的で政策費用対効果の高い省エネ促進方策を実現する必要がある。(Y)

【住宅】RE100に加盟 事業内容との相性

【業界スクランブル/住宅】

環境貢献を社会にアピールできる国際環境イニシアチブ「RE100」の加盟企業は世界で250社を超え、うち日本企業は38社 (2020年9月時点)あるようだ。このうち少なくとも7社は大手企業を含む住宅企業であり、その比率は高いように見受けられる。この要因について2点を述べる。

住宅に関してはZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)という明確な環境政策があり、新築住宅における太陽光発電の搭載比率は拡大している。FIT法での10年買い取りを超えたユーザーの余剰電力を市場より高く自社で買い取ることでユーザーへの経済的なサービスを提供するとともに、再生可能エネルギーを自社の活動に利用してRE100も実現するという「一石二鳥」が当てはまる好例であろう。

製造の観点では、住宅企業は、部品を関係企業より調達し、これを現地で組み立てるのが事業の基本である。躯体(木造、鉄骨)、外装・屋根材、内装材、設備(キッチン、バス)、電設資材など、一部例外を除いて自社では製造せず外部から調達している。RE100では調達する部品の製造時エネルギーは評価の対象外となるので、住宅企業にとっては有利になると考える。RE100企業には製造業が少ないと思われるが、エネルギーを多く使って素材を製造するような企業にとってはRE100のルール自体が偏ったものに見えるのではないだろうか。

RE100に関しては、ややひねくれた私見であるが、RE100の住宅企業がもし調達コスト優先で、海外のエネルギー効率の悪い工場で製造され、長距離輸送された部品を利用したとしても、その会社はRE100を達成できる。

国の政策では、国内産業活性化のために製造業の国内回帰を促している。それであればRE100に偏重することなく、国内の製造業を正当に評価できるような制度も加えていき、ライフサイクルでの総合的な環境評価ができるようなシステムへと進化していくことを望む。(Z)

【太陽光】環境ガイドライン 地域への周知に重点

【業界スクランブル/太陽光】

2020年から太陽光発電所が環境影響評価の対象事業となった。これに伴い、地方公共団体による環境影響評価の条例化も広がっているとされる。また、法や条例の対象にならない規模の事業における環境配慮への取り組みに向け、環境省から「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」が公表されている。

このガイドラインは自主的な環境配慮の取り組みを促すものであり、その手順として、地域とのコミュニケーションの必要性、設計段階の環境配慮として事業の内容、立地場所や周辺環境について、チェックリスト形式でポイントが示されている。

特に、初めに地域とのコミュニケーションに関して多くの解説がなされている。市町村や都道府県などへの事前相談、地域住民などへの周知・説明についてなどだ。地域の自然環境に対する配慮内容を示すものと思い読み始めたが、まず地域の理解が必要であるという構成に納得した。

地域とのコミュニケーションが十分でない場合が多く散見されるのだろう。地域の文化や特有の動植物などの状況を知るには時間もかかるが、事業の立地検討段階での取り組みが重要であることがガイドラインから理解できる。一方、環境といえば、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた検討も具体的になってきており、FIP(フィードインプレミアム)制度の詳細な設計についても議論が進んでいる。その中には非化石電源で発電された電気に付随する価値である環境価値の取り扱いがある。

環境配慮ガイドラインの環境と、環境価値の環境を無理に関係付けるわけではないが、環境に配慮した取り組みがあっての環境価値ではないだろうか。辞書を引くと、「環境」とは「周りの世界」とある。周りの世界を広く捉えられるか、狭く捉えられるかによって、意識する「環境」は大きく異なる。地域への環境配慮が環境価値の創出を推し進め、地球全体への環境配慮とつながる貢献とはどういったものか、考えるきっかけとなった。(T)

【再エネ】帯水層蓄熱の活用 都心利用に可能性

【業界スクランブル/再エネ】

昨年から始まった国土交通省のスマートシティモデル事業は、先日追加公募の採択テーマが公表され、先行モデルプロジェクトと重点事業化推進プロジェクトが出そろった。交通の利便性、自然との共生、省エネ、資源循環などを目標に、新技術とデータを活用して都市・地域の課題を解決するプロジェクトである。

よく似た名前のコンセプトにスマートコミュニティがある。こちらは電気の有効利用に加え、熱や未利用エネルギーも含めたエネルギーの面的利用や地域の交通システムなどを複合的に組み合わせたエリア単位での次世代のエネルギー・社会システムである。

スマートシティでは、ほとんどのプロジェクトで交通・モビリティーが取り上げられているが、エネルギーを取り上げているのは全体の3分の1にすぎない。ここが資源エネルギー庁主導のスマコミと大きく違うところである。もちろん共通点はある。スマートシティはデータ活用を重視しているので、スマコミでのエネルギーマネジメントとは同じ方向性をもつ。この流れの中にあるのが「柏の葉スマートシティ」である。

それでは、再エネはどうだろう。残念ながら指で数えるほどしかない。その事例を見ていくと、宇都宮市でLRT(次世代型路面電車システム)やバイオマス発電、埼玉県毛呂山町で下水熱利用――と、どことなく国土交通省色が感じられる。

さて、大阪市がスマートシティで取り上げている再エネの中に、帯水層蓄熱という見慣れない言葉がある。調べてみると、大阪駅北側の再開発「うめきた2期」で取り上げられている。環境省プロジェクトで、地盤沈下を起こさないで地下水の熱を利用するために開発された技術である。CO2排出量の大幅な削減ができるが、東京・大阪の区域はビル用水法により規制されているため地下水利用ができない。そこで大阪市は国家戦略特別区域事業を申請し、2019年に国に認められた。大阪の国家戦略特区で成功すると、東京でも可能性が広がる。帯水層蓄熱はまだあまり知られていない再エネ技術だが、大化けするかもしれない。(S)

【コラム/10月26日】急速な電子化社会へ弱者はどうする

新井光雄/ジャーナリスト

いつごろだったろうか。デジタルデバイドなる言葉がはやった。直訳的には「情報格差」といったところで、分かり易くは、パソコンを使える人、使えない人の格差といったところだったかもしれない。さすがに、もうそんな記者は1人もいないと断言できるのだろうが、1990年代は職場にそんな記者がまだ残っていて、そんな記者のためにパンチャー、打つ担当の社員がまだいた。今や、パソコン哀史か。

このデジタルデバイドが目下、「二次デジタルデバイド時代」ではないかと思えてきた。やや大げさに言うと空前の急速な電子化社会。到底、追いついていけない人。駆使して余裕しゃくしゃくの人。その差が歴然という感じになってきている。正直、どこまで付いて行けばいいのか。この世のなかの関係を結ぶ電子、それに依存する社会はその過渡期にどんな現象を呼び起こすのか。不安が高まる。むろん、社会のデジタル化は世界の必然。なかで日本の遅れは一応、承知なのだが、この遅れている日本で、追いつけていない人が多いのも事実。

あるレストランに予約を入れた。ところがそのレストラン曰く、「ネットで予約すればドリンクのサービスがある」という。

確かにネット予約なら人件費が多少軽減できるのかもしれないが、ネット弱者はそれが面倒、出来ない場合も。そのうえに「ゴートイート」があるの、ないのと悔しいがどうしてよいのかり分からない。象徴的なのは銀行。いよいよ通帳の有料化が始まるらしい。近い将来の個人口座の電子化を促すものだという。コロナがらみの給付金などは大部分が電子化らしいが、また、それに対応できないためのトラブルやら犯罪も発生して、混乱の度は深まっている。ややこしい時代になってきた。

 一次デバイド時代はパソコンが出来る出来ない程度のことで損得、犯罪などに余り関連しなかった気がするが、二次デバイドは個人口座が簡単に絡んでくるような事件すら出てきている。悠長なことを言っていられない。電子化に伴う痛みなのだろうが、被害者的な立場に何時たつかもしれないという社会は生きにくい。多分、あと十年程度で日本全体が電子社会となって、一種の落ち着きを取り戻すのかもしれないが、その間、デジタル弱者は注意深い暮らしを迫られる。  心配なのはやはり犯罪だ。電子犯罪はアナログではないから、電子的な巨額の犯罪が成立する恐れが高いという。銀行口座がもう安心の場でなくなりつつある。しかし、電子化は避けられない。新政権の目玉政策が「デジタル庁」の新設。結構なことではあるが、出来れば、いや、是非、デジタル弱者への配慮を忘れないでほしい。 スマフォをつかえない知人が周囲にまだ いる。皮肉なことに安全なのかもしれないが。

 【プロフィール】 元読売新聞・編集委員。 エネルギー問題を専門的に担当。 現在、地球産業文化研究所・理事 日本エネルギー経済研究所・特別研究員、総合資源エネルギー調査会・臨時委員、原子力委員会・専門委員などを務めた。 著書に 「エネルギーが危ない」(中央公論新社)など。 東大文卒。栃木県日光市生まれ。

  

【マーケット情報/10月23日原油下落、需給緩和の観測強まる】

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み下落。新型ウイルスの感染再拡大と、生産増加の予測で需給緩和観が強まり、売りが優勢となった。

世界各地で新型コロナウイルス感染の第二波が到来し、欧州やイランではロックダウンが再開。経済活動がさらに低迷し、石油需要が減少するとの見方が広がった。

一方、OPECプラスは、来年1月から減産幅を縮小予定。また、リビアの生産量は、19日時点で日量52万5,000バレルまで回復しており、来月下旬頃には日量100万バレルを超える見通し。加えて、カナダ・アルバータ州は12月から、2019年1月以降課されていた減産措置を撤廃。産油量増加の見通しが強まった。

【10月23日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=39.85ドル(前週比1.03ドル安)、ブレント先物(ICE)=41.77ドル(前週比1.16ドル安)、オマーン先物(DME)=42.33ドル(前週比0.08ドル高)、ドバイ現物(Argus)=41.62ドル(前週比0.31ドル安)

【火力】フェードアウト 穴だらけの議論

【業界スクランブル/火力】

非効率石炭火力のフェードアウトに関し、国の委員会での検討が始まった。

国からの説明によると、全部で140基ある石炭火力のうち114基が非効率石炭火力とされ、そのフェードアウトについてはエネルギー基本計画に明記されているという。確かにエネ基には「非効率な石炭火力発電(超臨界以下)のフェードアウトに向けて取り組んでいく」という記載がある。

2000年以降に建設されている大型設備は、ほぼ高効率の超々臨界圧発電(USC)となっており、「超臨界圧(SC)以下は非効率」という定義は、新設の規制としては分かりやすく、エネ基の「新設の制限」という文言にも合致している。しかし今回の検討で、この定義をいきなり既設にも当てはめようとしたことが大きな混乱の元となっている。

USCは、SCの中で蒸気温度が593℃以上のものを指すとJISで決められているが、両者にそれ以外の差異はない。実際、事業者からのヒアリングでも設備構成の違いや改造により熱効率が逆転する場合があると報告されており、国からも「非効率」石炭火力の定義を型式から熱効率ベースに見直すという方針が示された。この方針転換は、極めて妥当なものであるが、ではなぜ最初からそうしなかったのだろうか? 性能差はほとんどないにせよ、型式として区別されるSC20基余りを非効率とすることで「100基超フェードアウト」というインパクトを優先させたのではと邪推してしまう。

さて、指標を熱効率にしたとしても、バイオマスや副生ガスの混焼、熱の利用などをどのように補正するか、また再エネ拡大のための出力抑制による熱効率低下を正当に評価できるのかなどについて、以前から省エネ法の議論で指摘されていたにもかかわらず結論を出すに至っていない。

立ち止まらず前に進んで行けと言われても、過去の議論を蒸し返すばかりでルールすら決まらないのでは、事業者として対応のしようがない。 (M)

【石油】迫る米大統領選 水圧破砕とEV

【業界スクランブル/石油】

共和党現職トランプ対民主党前副大統領バイデンの米国大統領選挙も残り1カ月となった。各種世論調査ではバイデンのリードが伝えられているが、トランプの追い上げもあり、専門家の予想は慎重である。隠れトランプ支持者の存在やテレビ討論、さらに、各州選挙人総取りという制度的バイアスもあることから、この段階で勝者を判断するのは早計であろう。

ただ、民主党が政権を奪回する場合、石油業界から見ると、パリ協定やイラン核合意への復帰の問題だけでなく、多くの懸念事項が出てくる。

まず気になるのは、水圧破砕技術の使用制限である。シェールオイル生産技術の中核である水圧破砕法は、地下水汚染の懸念があるとして民主党は一貫して反対している。カリフォルニア州やニューヨーク州では禁止、前回の大統領選の候補となったヒラリークリントンも禁止を公約としていた。

しかし、バイデン候補は、オバマ政権の副大統領時代も、今回の選挙戦でも、水圧破砕には何ら言及していない。シェール生産は米国の国際競争力の根源であり、外交上の武器でもある。バイデン候補のこうした現実的な姿勢、バランス感覚に期待する声は多いといわれている。

電気自動車(EV)の導入政策も懸念される問題である。EUでは、コロナ禍からの経済再建策として、「グリーンリカバリー」が提唱され、再生可能エネルギーや水素エネルギーの拡大がうたわれている。ドイツでは既存SS(サービスステーション)への充電設備の設置が義務付けられた。今後、米国でEVの普及政策がどのように展開されるか気になる。

EVの導入政策は、石油消費のピーク時期にも関わる大問題だ。また、どちらが勝利しても、対中政策は大きく変わらないといわれているが、中国が力を入れている蓄電池技術や次世代自動車技術は、情報通信と並ぶ世界の技術覇権に関わる問題であろう。こうした地球温暖化対策と対中政策が交錯する問題からも目が離せない。(H)

【石炭】SDGsでの役割 五つの視点

【業界スクランブル/石炭】

「クリーン・コール」の語呂合わせから毎年9月5日は石炭の日だ。石炭をクリーンなエネルギーとするために努力していることをPRしている。この日を中心に、全国の火力発電所や石炭関連博物館の一般公開、国際会議などが行われてきた。本年はコロナ禍のため8~10日にオンラインで開催し、主要産炭国と消費国の関係者が一堂に会した。

エネルギー移行期におけるクリーンコールテクノロジー(CCT)の位置付けについて活発に議論し、会議後のステートは興味深かった。列記する。

一つ目は「石炭は世界のエネルギーミックスの重要な一翼を担う資源」だということ。国連が目標としているSDGs達成に向け、日本や世界のエネルギーセキュリティーの確保に欠かせない石炭の重要性は変わらないという点。二つ目はコロナ禍での指摘だ。世界全体のエネルギー需要は落ち込んだが、石炭の生産・需要は堅調に推移しており、社会の緊急時におけるレジリエンスとしての重要性が再認識された。

三つ目は「再生可能エネルギーとの共存」だ。再エネが主力電源の一翼を担う2050年ごろに向けて、負荷変動調整などで支える石炭火力発電の果たす役割は大きい。また鉄鋼、セメント、化学などの社会インフラの原料となる石炭の役割も忘れてはならない。四つ目が、今後も石炭利用が見込まれるアジアでCO2のローエミッション化に貢献するCCTの関連投資を積極的に推進する必要があるという点。その際、先進国から途上国へファイナンス面の政策支援が重要だという視点だ。

そして五つ目が「世界のエネルギーアクセス改善問題と気候変動問題の同時解決」だ。SDGsの「誰も置き去りにしない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のためには、途上国を含め全ての人々に「affordable」「reliable」「sustainable」「modern」なエネルギーへのアクセスを確保することが必要だと強調。CO2削減を進めることで、社会に対して成果を示すことが重要だとまとめている。(T)

【原子力】特措法期限切れ 問われる本気度

【業界スクランブル/原子力】

来年、エネルギー基本計画の改定の年を迎えるが、最も行き詰まっているのが原子力政策である。2030年20~22%という原発ウエートも非現実化し、稼働率も低下傾向にあり、5兆円以上もの膨大な安全対策費をかけて将来的に原子力は成り立つのか、40年超運転問題も立法化をどうするか、など課題は多い。

原子力の一番安い利用方法は既設原発の長期運転であり、米国は既に80年超運転にかじを切っている。日本の原発低迷は、自由化の導入が原因といえる。自由化は原子力には決定的にマイナス要因であり、自由化市場の中では、原子力の長期投資は進まないのが世界の潮流だ。米英はその点をカバーするためにさまざまな補完策を設けているが、日本はまだ何もやっていない。

そうした中、原子力発電施設等立地地域の振興に関する特措法が、来年3月に期限切れになる。都道府県が原子力施設立地地域の避難道路の予算をきちんと付けておらず、その点をカバーするべく立法化されたものだ。

期限切れを前に今春から自民党が検討を重ね、地元への資金援助のかさ上げという案をまとめた。国庫負担率を50~55%に引き上げ、年8億円程度のかさ上げを目指す。既に、美浜・高浜・大飯の各町が特措法延長の要請を行った。原発立地の地元支援の象徴的なものであり、絶対に終わらせてはいけない。

しかし、その実現化が暗礁に乗り上げている。議員立法には野党の理解・協力が不可欠だ。しかし、野党は原発ゼロ基本法案という課題も持っており、むしろそちらの優先度の方が高く、同じ国会(恐らく通常国会)で、両法案を議論するのは論理的矛盾ともいえる。そこで、「閣法」で特措法を成立するという方法も考えられるが、これまでの政府反応ははかばかしくない。

次期自民党総裁に菅義偉氏が就任したが、どう対応するかは全くの未知数だ。来年3月までに立法が必須だが、もしそれが実現しないと、与党・政府の原子力に対する本気度が大きく問われることになる。(Q)

【LPガス】持続可能性確保へ 官民一体で議論を

【業界スクランブル/LPガス】

人口減少、過疎化が進み、さらには人手不足に伴う物流配送の困難化など、これからの家庭用LPガス販売事業を支えていく供給インフラの維持が徐々に困難になりつつある。2年前に開かれた経済産業省の「次世代燃料供給インフラ研究会」において、ガソリン・灯油を中心とした燃料供給のインフラの在り方が検討され、目指すべき将来像を記載した報告書がまとめられている。

さらにSS(サービスステーション)過疎化問題に関して、総務省消防庁が「過疎地域等における燃料供給インフラの維持に向けた安全対策の在り方に関する検討会」を開催し、SS維持に向けた規制緩和策の検討が行われている。

電力や都市ガスも次世代のインフラ事業の在り方に関する検討が始まっている。しかし、ほかのインフラ事業と比較してLPガス事業は労働集約的要素が最も強く、人手不足、厳しい労働環境(約90kgの充てん容器を運ぶ重労働であり、保安関係資格と知見・経験が必要)により、安定した供給インフラ維持が困難になる可能性が高いといえる。上記の「次世代燃料供給インフラ研究会」では、3回目の会合に全国LPガス協会が提出した「LPガス供給継続の課題と対応、地域への供給継続のための対応策」が課題まとめとして参考になる。

下流の物流供給議論と併せて、LPガスの長期視点に立った上流側の分野である日本LPガス協会がまとめた「LPガスが果たす環境・レジリエンス等への長期貢献について」に記述されている事柄の具現化の可能性とその実行プロセスなど、上流・下流の諸問題を論じ合える場を官民一体となって、学識者、事業者(元売り、卸売り、小売り)、消費者代表を交えて議論する研究会をつくったらどうだろうか。

今までそのような論議の場所がなかった。業界がインテグレーテッド・ユーティリティーとして存在意義を保てるか重要な岐路に立っている中、そのような場であるべき姿を語り合ってほしい。(D)

【新電力】緩やかに進む統廃合 経営環境への影響は

【業界スクランブル/新電力】

小売り電気事業者を買収したい。何か良い案件はないか―。最近、新電力からこのような声が多く聞こえるようになった。背景には、価格下落により法人需要の獲得が進んでいないこと、全面自由化から4年経ち、低圧需要の獲得ペースが鈍化していることもあるようだが、最も大きな要因として、低位で推移した5~7月のスポット価格の影響で新電力各社の収益が好調だったことにあるようだ。

経済産業省の有識者会議(7月28日)の資料では、小売り電気事業者の登録件数は2020年7月時点で662件だが、事業継承72件、事業廃止・解散件数25件と撤退する事業者が目立ち始めている。筆者はコロナ禍のロックダウン期間中に二つの事象に注目し、データ・情報を整理した。一つは戦前の日本における一般供給事業者数の推移、もう一つは現代の英国における小売り電気事業者数の推移である。

まず、戦前日本の一般供給事業者数について。戦前の日本では一般供給事業者数は関東大震災の翌年1924年に618社とピークを記録したが、その後は大正電力戦、昭和金融恐慌、昭和恐慌の影響で徐々に統合が進み、34年には527社まで減少するが、その減少スピードは緩やかであった。本格的な統廃合が進むのは二・二六事件後に成立した広田弘毅・挙国一致内閣で逓信大臣に電力国家統制を唱える頼母木桂吉が就任した後であり、37年470社、38年407社、39年には352社まで減少した。

一方で、現代の英国。2014年に開始された卸取引活性化策を背景に小売り電気事業者数は順調に増加。18年9月には70社を記録するが、その後プライスキャップ制度の導入により小売り電気事業者の収益性が悪化し、徐々に撤退事業者が目立ち、20年3月には58社まで減少した。

これら事例から鑑みるに、小売り電気事業者の統廃合は急激には進まない。緩やかな減少が続くのみであり、市場環境は急に好転しないものとして収益源を探る努力を続ける必要があると考えられる。(M)

画像からひび割れを自動検知 インフラ点検をAIがアシスト

【東設土木コンサルタント】

道路や橋梁など、社会インフラの老朽化は深刻だ。国土交通省の調べによると、建設後50年経過する道路橋の割合は、73万箇所のうちまだ約25%(2018年時点)にとどまる。しかし23年には約39%、33年には約63%まで急増。トンネル、水門などの河川管理施設も、それぞれ33年には約42%、約62%となるなど、老朽インフラ急増が社会問題化している。

東京電力グループ・東電設計の子会社である東設土木コンサルタントと映像機器メーカーのキヤノンは、これらの問題の解となり得るインフラ点検業務を効率化させる専用AIを共同研究した。

AIによる自動判読で業務効率化を実現する

作業時間を大幅改善 トンネルや発電所にも

東設土木コンサルタントは、橋梁の保守点検時に必要な、微細なひび割れ(クラック)などの変状部位を示した展開図を作成するシステム「CrackDraw21」を販売している。本システムはカメラで撮影した橋梁の床版画像からゆがみなどを補正し、変状部位を見つけ出す作業をアシストする便利な機能を搭載しているが、さらにこれまで人の手で判読していたクラックをAIが自動解析する結果も読み込める機能が追加された。

これは、同社が蓄積するクラック画像をキヤノンに提供し、キヤノンが変状を判読する専用のAIを開発。従来は12時間掛かっていた判読作業を、AIによる作業の自動化により、専門技術者による確認作業を含めて90分まで短縮することに成功。「作業の省力化だけではなく、点検者の技量に左右されない高度な点検を行える」と、同社の島田保之社長はAIのメリットについて説明する。

また国交省は、18年11月に民間企業が持つ道路橋の点検記録の作成支援技術の精度を調査すべく、実際の道路橋を用いた技術試験を実施した。試験には7社が参加しており、同社のクラック判読可能率は7社の中で最も高い「99%」との高い数値を記録。高い精度が評価され、国交省が同月に発表した「点検支援技術の性能カタログ(案)」に同社とキヤノンマーケティングジャパンが共同提供するサービスが掲載された。

他社製品との違いについて事業推進部の野澤英二部長は「クラックなどの変状箇所を判読する技術は多いが、当社のように画像解析から解析後の調書作りまでの一連の業務を含むシステムはほかにない」とアピールする。

既に道路会社などで採用実績もある本システムだが、今後は漏水や剥離も解析できるよう、研究を進めていく。また活用場所もトンネルから火力・水力発電施設など、多くの場所で利用できないかと全国から相談が寄せられているという。点検作業の省力化を果たせる新技術は、今後ますます注目されそうだ。

【電力】原子力の前進 新政権への期待

【業界スクランブル/電力】

8月28日、安倍晋三首相が、健康上の理由から辞任の意向を表明した。7年8カ月に及ぶ憲政史上最長政権の功罪については、さまざま語られているが、政権終了に当たって、世界各国からこれだけ感謝のメッセージが寄せられた政権は筆者の記憶にない。最長政権になったのにはそれなりの理由がある。

9月2日、3日に行われた朝日新聞による世論調査結果が筆者には興味深いものであった。それによると、第2次安倍政権の実績評価について、「大いに」17%、「ある程度」54%を合わせて、71%が「評価する」と答えた。また、評価する政策を選んでもらうと、「外交・安全保障」が30%で最も多かった。

安倍政権の外交・安全保障政策といえば、日米豪印による安全保障ダイヤモンド構想や、特定秘密保護法・安保関連法などの一連の法整備が浮かぶ。前者は画期的な中国包囲網だが、マスコミがまともに報じたのを見たことがない。

後者は、逆に「治安維持法の再来」だの「戦争法」だのとマスコミが散々たたいたもので、法が成立した時点での世論はおそらく反対が上回っていただろう。こうした偏った報道に足を引っ張られながらも、国を守るために必要なことをやってくれたと相当数の国民は評価していて、それが、政権総括の世論調査での高評価となったのだろう。

他方、最長政権でも原子力政策にはほとんど進展がなく、率直に言って失望感がある。後を継いだ菅義偉政権で一歩でも二歩でも前に進めばと願っている。具体的には、北海道寿都町が勇気を持って名乗りを上げてくれた高レベル放射性廃棄物最終処分場の文献調査であり、福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出であり、現在停止している原子力発電所の再稼働であり、より大きくは今世紀後半に脱炭素社会を実現する上で、原子力技術をどう位置付けるかだ。少なくとも選択肢としてすら維持されないようでは、国の将来は暗い。安倍政権の間に、マスコミのプロパガンダに気付いた国民が少なからずいそうなところが希望だが。(T)

CO2フリーの水素ステーション FCバスの供給拠点として高稼働

【東京ガス】

一台、また一台と、燃料電池バス(FCバス)がひっきりなしにやって来る。東京ガスが日本水素ステーションネットワーク合同会社(JHyM)と共同で今年1月に開設した豊洲水素ステーションの稼働が順調だ。

ディスペンサーを2基備え2台同時の充填が可能だ

通常時で1日約20台への供給を見込んでいたが、「多い日には30台以上を受け入れています」と、東京ガス産業エネルギー事業部水素ソリューショングループの石倉威文マネージャーは稼働状況を説明する。

バスがディスペンサーに横付けされると、係員が慣れた手付きで充塡作業を行う。82MPaで毎時300N㎥の充塡能力を持ち、1時間でFCバス3台程度の充塡が可能だ。充塡を終えたバスは、再び市街地へと走っていく。

FCバスの導入台数は都営バス60台のほか、日立自動車交通や東急バスなど民間企業からの参入も進み、街中で目にする機会も増えてきた。同ステーションのFCバスへの充塡実績は8月中旬時点で累計1764台に上っている。

主要設備を2系統設置 不具合時の運用可能に

この高稼働を支えるのが〝フラッグシップ〟仕様設備の数々だ。商用化初となるダイアフラム式の圧縮機や高耐久かつ軽量化を図った82MPa蓄圧器を採用した。中でも水素の圧縮・蓄圧・充塡に関わる主要設備を2系統で構成した。ディスペンサー(トキコシステムソリューションズ製)も2基設置されており、2台同時の充塡が可能だ。仮に1系統で不具合が発生しても運用を継続できる。また、年1回の法定点検では、通常のステーションで2~3週間となる休業を数日程度に短縮することを想定している。

もう一つの特長が「CO2フリー化」を図っている点だ。同ステーションはオンサイト方式で、都市ガスから水素を製造して供給する。東京ガスは、調達先のシェルグループが保有するCO2クレジットで天然ガスの採掘から燃焼までに発生するCO2を相殺した「カーボンニュートラル都市ガス」を調達し、水素の原料に使用している。さらに、エネットが同ステーションに100%再生可能エネルギーによる電力を供給している。これにより、同ステーションで供給する水素の「CO2フリー」を実現している。

東京ガスは、同社グループの事業活動全体で「CO2ネット・ゼロ」を目標に掲げる。水素への取り組みもその一環として、積極的に進めていく方針だ。