【業界スクランブル/再エネ】
オーステッド(デンマーク)と言えば業界人は洋上風力が頭に浮かぶと思う。しかし今回の話題はバイオマスだ。
世界で1000万kW超の洋上風力を手掛ける同社だが、実は火力発電も300万kW超を保有し、うち200万kW超がバイオマス燃料を使用する発電所。今年5月、その同社がバイオマス発電所で発生したCO2を除去した価値を米マイクロソフトに販売する契約を締結した。「BECCS」と呼ばれる取り組みで、11年間にわたり276万t分の炭素除去価値を取引する。BECCSはカーボンネガティブ技術の一つで、IEAも2050年ネットゼロ実現には、1・5億kW超のBECCSを導入し、年間13億t超(日本の年間排出量相当)のCO2除去が必要と試算している。
オーステッドの取り組みで扱うCO2は年間約43万tで、5万kW級のバイオマス専焼発電所の排出量に相当する。日本では計300万kW超の大型バイオマス専焼発電所(5万kW超級)が導入される見込みで、BECCSによる削減ポテンシャルは年間2000万tを超える。
バイオマス発電では、木質ガス化発電の残さである「炭」も炭素除去手段となる。「バイオ炭」と呼ばれ、農地などへの施用で炭素の除去・貯留価値を生む。Jクレジットの認証事例や大手商社による関連分野の展開も急進しつつある注目領域だ。
脱炭素化の資源制約がある日本において、バイオマスの炭素除去ポテンシャルは貴重であり、脱炭素手段の多様化にも貢献する。他方、こうした価値に関心を寄せるのは海外企業が中心で、プロジェクトが実現しても生み出された価値は海外に流れてしまう可能性が高い。ビジネスが成立し始めている海外に後れを取らぬよう、制度面を含む積極的な環境整備が望まれる。(C)