電力システムを巡るさまざまな課題が山積する中、進む同時市場改革議論。
今後の議論の方向性はどうあるべきか。松村敏弘東京大学教授に聞いた。
【インタビュー:松村敏弘/東京大学社会科学研究所教授】
―同時市場改革の意義をどう考えますか。
松村 同時市場改革は狭義には、スポット市場と調整力市場を統合することでkW時と⊿kWの調達の最適化を目指すものです。一方で、ノーダル制への移行やネガティブプライスの導入など、現行の電力システムの弊害を解決するための独立したさまざまな論点があり、これらも含めた総合的な改革が必要です。最短で2028年からと言われている同時市場への移行時に間に合わないとしても、大きな改革を見据え、将来の改革に対応できるシステムを整備すべきです。電力システム全体の抜本改革につながる大きな議論も別途必要です。
―同時市場への移行は既定路線なのでしょうか。
松村 現在、調整力市場の価格高騰や応札不足による調達の未達が深刻な問題となっています。これだけ酷い状態にあるにもかかわらず、解決するための説得力ある対案が出てこない以上、少なくとも狭義の同時市場改革、同時市場への移行は不可避と考えます。調整力に回った電源の収益が下がらないよう、制度設計において合理的な価格決定の仕組みを構築すれば、変動再生可能エネルギーが拡大し、調整力不足が懸念される中でも調整力を備えた電源を効率的に活用できるようになるはずです。全体最適な運用に貢献した電源がそれにふさわしい収益を得る。それを実現する同時市場とするべきです。
交錯する関係者の思惑 全体最適を目指すには
―今後の論点は。
松村 発電事業者が自ら電源の運転パターンを決める「セルフスケジュール」をどこまで認めるかは重要な論点です。これは技術的に不可避な面もありますが、無条件に認め全体最適に貢献しない電源だらけになれば、現行のシステムが複製されるだけで改革の意義が失われます。今の非効率な仕組みを結果的に温存するのか、改革の名にふさわしい志の高い制度設計ができるかは、これからの議論次第です。
自社電源不調時のインバランスリスクを回避するために、同時市場に出さず自社の余力を温存したいと考える事業者がいるとすれば、そんな意識の低い事業者が生き残る現行制度の問題を示しています。余力は、自社電源不調以外の要因での需給ひっ迫時にも効率的に利用されるべきです。結果的にインバランスを出しても⊿kWを供給することで得る収益と相殺できるよう、⊿kW取引をスポット、容量市場と同様にシングルプライス化することは、この観点からも意味があります。
―バランシンググループ(BG)の在り方も変わりますか。
松村 BGが残ることが自然な解とは思いませんが、存続しても効率的な制度設計は可能だと考えます。BGを選択しないと不利になる不自然な制度設計を回避して、インバランス料金体系などを合理的なものとしていけば、BG制の役割はおのずから限定されると思います。












