【特集1】同時市場への移行は不可避 改革の実効性を高める議論を

電力システムを巡るさまざまな課題が山積する中、進む同時市場改革議論。

今後の議論の方向性はどうあるべきか。松村敏弘東京大学教授に聞いた。

【インタビュー:松村敏弘/東京大学社会科学研究所教授】

―同時市場改革の意義をどう考えますか。

松村 同時市場改革は狭義には、スポット市場と調整力市場を統合することでkW時と⊿kWの調達の最適化を目指すものです。一方で、ノーダル制への移行やネガティブプライスの導入など、現行の電力システムの弊害を解決するための独立したさまざまな論点があり、これらも含めた総合的な改革が必要です。最短で2028年からと言われている同時市場への移行時に間に合わないとしても、大きな改革を見据え、将来の改革に対応できるシステムを整備すべきです。電力システム全体の抜本改革につながる大きな議論も別途必要です。

―同時市場への移行は既定路線なのでしょうか。

松村 現在、調整力市場の価格高騰や応札不足による調達の未達が深刻な問題となっています。これだけ酷い状態にあるにもかかわらず、解決するための説得力ある対案が出てこない以上、少なくとも狭義の同時市場改革、同時市場への移行は不可避と考えます。調整力に回った電源の収益が下がらないよう、制度設計において合理的な価格決定の仕組みを構築すれば、変動再生可能エネルギーが拡大し、調整力不足が懸念される中でも調整力を備えた電源を効率的に活用できるようになるはずです。全体最適な運用に貢献した電源がそれにふさわしい収益を得る。それを実現する同時市場とするべきです。


交錯する関係者の思惑 全体最適を目指すには

―今後の論点は。

松村 発電事業者が自ら電源の運転パターンを決める「セルフスケジュール」をどこまで認めるかは重要な論点です。これは技術的に不可避な面もありますが、無条件に認め全体最適に貢献しない電源だらけになれば、現行のシステムが複製されるだけで改革の意義が失われます。今の非効率な仕組みを結果的に温存するのか、改革の名にふさわしい志の高い制度設計ができるかは、これからの議論次第です。

自社電源不調時のインバランスリスクを回避するために、同時市場に出さず自社の余力を温存したいと考える事業者がいるとすれば、そんな意識の低い事業者が生き残る現行制度の問題を示しています。余力は、自社電源不調以外の要因での需給ひっ迫時にも効率的に利用されるべきです。結果的にインバランスを出しても⊿kWを供給することで得る収益と相殺できるよう、⊿kW取引をスポット、容量市場と同様にシングルプライス化することは、この観点からも意味があります。

―バランシンググループ(BG)の在り方も変わりますか。

松村 BGが残ることが自然な解とは思いませんが、存続しても効率的な制度設計は可能だと考えます。BGを選択しないと不利になる不自然な制度設計を回避して、インバランス料金体系などを合理的なものとしていけば、BG制の役割はおのずから限定されると思います。

まつむら・としひろ 1988年東京大学経済学部卒。東京工業大学社会理工学研究科助教授などを経て2008年から現職。専門は産業組織、公共経済学など。

【特集1】改革によって何を目指すのか 関係者のコンセンサス必要

【インタビュー:筑紫正宏/資源エネルギー庁 電力産業・市場室長】

―同時市場改革が電力業界の大きな関心事となっています。

筑紫 昨年8月に立ち上げた「同時市場の在り方等に関する検討会」では、今夏をめどに方向性を示すこととしています。主に調整力をはじめとした需給調整の課題解決を目的としているため、一般送配電事業者(TSO)と発電・小売・DRといった他の事業者との間には温度差があります。参加するプレーヤーがいなければ市場の意味がありませんから、改革によって何を目指すのか、全関係者のコンセンサスを得られるような取りまとめを目指しています。

―TSOへの電源運用の権限集約と考える人もいます。

筑紫 同時市場では、市場に登録された情報はTSOの次期中給システムを経由して各TSOに届くわけですが、TSOへの情報集約は、調整力確保のための費用を抑制するためにも重要です。

とはいえ、需給管理の全てをTSO任せにし、発電・小売がそれぞれの計画の範囲内で責任を持つ義務をなくすのかというと、それは相当慎重に議論する必要があると考えています。

―市場内外で取り引きされるということですか。

筑紫 市場での取引もあれば、情報のみを登録し市場外で取り引きされることもあり得ます。システムを作る上で、誰がどのように参加することが前提となるのか、整理しなければなりません。決して小さな制度議論ではありませんから、関係者の目線を合わせていくためにも息の長い議論をしていくことになるでしょう。

【特集1】kW時と⊿kWの効率的な確保へ 検討進む同時市場の仕組みと課題

脱炭素時代の電力システムの在るべき姿を追求する中で、浮上した同時市場改革。

同時市場の仕組みとは。そして、現行システムを抜本的に変革させなければならない理由とは何か。

電力システム改革に伴い、電気の価値は「電力量(kW時)」「供給力(kW)」「調整力(⊿kW)」に細分化され、それぞれ「卸電力市場」「容量市場」「需給調整市場」という、異なる時間軸、市場で取り引きされることとなった。

2024年度には、需給調整市場で新たに三つの商品の取引が始まり、応動・継続時間に応じて区分された一次調整力から三次調整力②までの五つの商品全てが出そろう。これによって、予定されていたkW時、kW、⊿kWの3つの価値を取り引きする市場が一応の完成形を見るわけだが、そうした中で、資源エネルギー庁が模索しているのが、kW時と⊿kWを同時約定する仕組みへの移行だ。

同時市場の仕組みのイメージ

この議論は、22年6月の「卸電力市場、需給調整市場及び需給運用の在り方に関する勉強会」の取りまとめで、中長期的に目指す電力システムの仕組みのイメージとして、週間断面での電源起動の仕組みと合わせ、「同時市場」を設けることが提案されことに端を発する。

続く同年7月から昨年4月に開かれた「あるべき卸電力市場、需給調整市場及び需給運用の実現に向けた実務検討作業部会」では、実需給の1週間程度前から実需給までの一連の仕組みを議論し、この全体を「同時市場」と呼ぶことと整理。これらを踏まえ、現在、昨年8月に立ち上げた「同時市場の在り方等に関する検討会」で、制度化に向けた具体的な検討が進んでいる。

同検討会では、同時市場を導入した際の費用便益の分析に加え、電力広域的運営推進機関を中心に約定ロジック(電源起動、出力配分、価格算定)の設計や、その実現性・妥当性を検証することになっており、1年程度で取りまとめを行う方針。つまり、今夏にも、新たな制度改革に向けた大きな方向性が示される公算が大きい。

用語解説


システム全体の最適化へ 発電側の情報を集約

これまでに提案されている同時市場の仕組みは、発電事業者は電源諸元として「起動費」「最低出力費用」「限界費用カーブ」の三つの情報を入札時に登録(これをスリーパートオファー方式と呼ぶ)し、小売電気事業者はこれまで通り、買い入札価格と量(kW時)を入札。電源のスリーパート情報を元に、需要予測に従ってkW時と⊿kWを過不足なく確保できるよう、電源の起動・停止と出力計画を策定するもの。

発電にかかるさまざまな費用を全て考慮した上で、メリットオーダーで電源の起動・運用・停止を判断しkW時と⊿kWに合理的に割り付けることができれば、電力システム全体の最適化が図られ、安定供給と経済性の両立が実現するという考え方だ。

これに対し現行制度は、計画値同時同量制度の下、小売電気事業者がバランシンググループ(BG)を形成し、自社の小売りに必要なkW時を卸電力市場や相対取引で調達することで供給能力確保義務を果たし、一般送配電事業者が周波数制御・需給バランス調整のための⊿kWを需給調整市場で調達することで、安定供給とコスト最適化を目指す仕組みとなっている。

だが、kW時と⊿kWの取引が異なる市場で運営されることで、①過剰な台数の起動など、電源の運転が非効率になる、②卸電力市場と需給調整市場のオークション方式および価格規律の関連が薄く、電源のメリットオーダーが成立しにくい、③調整力として確保された電源がスポット市場や時間前市場に売り入札されず、市場の売り切れに伴う価格高騰が発生する、④BGが需給調整市場に入札せず、調整力の調達が確実に行えない―など、安定供給やメリットオーダーの観点での課題は多い。

【大阪ガス 藤原社長】LNGの安定調達とe―メタンの社会実装へ 両利きの経営に挑戦する

LNG調達の地政学リスクが高まる一方、脱炭素化という長期的な課題に直面する。

エネルギー安定供給の使命を果たしつつ、e―メタンの早期社会実装を目指し、脱炭素社会構築に貢献していく。

【インタビュー:藤原 正隆/大阪ガス社長】

ふじわら・まさたか 1982年京都大学工学部卒、大阪ガス入社。大阪ガスケミカル社長、常務執行役員、副社長執行役員などを経て2021年1月から現職。

志賀 2023年度上半期決算は、経常利益が1238億円と前期の378億円の赤字から黒字転換しました。その要因をどのように分析していますか。

藤原 前期は、22年6月8日に米テキサス州のフリーポートLNG基地がトラブルで出荷を停止して以降、当社の供給力の4分の1が停止した状態が8カ月間続きました。ロシアによるウクライナ侵攻に伴い世界の天然ガス需要がひっ迫する中、安定供給確保のために高騰していたスポット市場から調達せざるを得ず、また、当社はフリーポートLNG基地のオーナーでもありますので、その収入が入ってこないことも収益に影響を及ぼし、合計で1477億円の損失を余儀なくされました。23年2月にバース2基のうち1基が稼働を再開し、11月には2基目も復帰したことで、今期は安定的にLNGが供給されています。そこに原料費調整の期ずれ差益が重なり、黒字化を果たすことができました。

志賀 パナマ運河の渇水で船舶の滞留も発生しています。改めてLNG調達の多様化の重要性が認識されたのではないでしょうか。

藤原 都市ガス業界は1970年代から調達先の多様化に取り組み、ブルネイ、豪州、マレーシア、オマーンに加え、2000年代後半のシェール革命で北米からの調達も可能になりました。このように、産ガス国が分散しセキュリティ性に優れていることは天然ガスの大きな利点だと言えます。考え方が大きく変わったといえば、22年までは余剰をあまり持たずに不足すればスポットで補う方針を取っていましたが、現在は少し余裕を持つようになったことです。

パナマ運河のみならず、ウクライナ戦争、中東情勢の悪化、そして現在はしっかりと稼働しているサハリンも、経験豊かな欧米のオペレーターが引き上げている中で今後の供給継続に不安があることは間違いなく、調達の多様化とともに余裕を持った調達を行うことで引き続き安定供給を確保する必要があります。

志賀 新規に長期契約するような検討はされていますか。

藤原 当社は現在、年間約1000万tのLNGを調達しそのうち600万tを国内の都市ガス事業で供給、残りで需給の最適化を目指したトレーディングなどを行っています。この1000万tについては、他の電力会社やガス会社とコンソーシアムを組み長期でしっかりと確保できていますので、新たな大型契約を結ぶような環境にはありません。

東洋紡岩国事業所の天然ガス転換で新設された自家火力発電所

ただ30年代半ばには多くの契約が満期を迎えますので、その際に将来の需要を見極めた上でどう判断するかが焦点になります。石炭焚きボイラーを利用している化学業界などに天然ガス転換を展開していくことで、相当大きな新規需要が創出される可能性がありますが、今、そうした企業もGX(グリーントランスフォーメーション)に向けどう対応していくべきか非常に頭を悩ませているのが実情です。産ガス国がどういった条件を提示してくるのか、国内でLNGの位置付けがどうなっているのか不透明であり、現時点では方針を決める段階にありません。

【マーケット情報/1月26日】原油上昇、需給逼迫感が強まる

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み上昇。需給逼迫感の強まりが、価格に対する上方圧力となった。米国原油の指標となるWTI先物、および北海原油を代表するブレント先物は、それぞれ前週比4.6ドルと4.99ドルの急伸となった。WTI先物は、2か月振りの高値を記録した。

米商務省経済分析局が発表した2023年第4四半期の国内総生産(GDP)の成長率は3.3%となり、予想を上回る高水準を記録。米国の経済回復、原油需要の増加が期待され、買いが優勢となった。

加えて、米国では寒波の影響で、一部の原油生産が停止。米エネルギー情報局が発表した原油の在庫統計は、産油量の減少を背景に、大幅な減少を示した。同国では、寒波により原油精製も停止し、需要の弱さが懸念されていた。ただ、それを上回る生産減の影響が示されたことで、原油価格が上昇した。

中東情勢の悪化も引き続き、供給懸念として価格を支えている。イエメンを拠点とする武装集団フーシが、紅海を航行中のコンテナ船にミサイルで攻撃。これを受け、米英両軍が、報復措置として、フーシの軍事拠点を再度空爆。中東地域の緊迫感がさらに強まった。


【1月26日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=78.01ドル(前週比4.60ドル高)、ブレント先物(ICE)=83.55ドル(前週比4.99ドル高)、オマーン先物(DME)=81.56ドル(前週比2.77ドル高)、ドバイ現物(Argus)=81.59ドル(前週比2.85ドル高)

次代を創る学識者/坂口綾 筑波大学数理物質系化学域放射線・アイソトープ地球システム研究センター教授

環境中の放射性同位体や安定同位体を用いた、地球・環境化学の研究に従事。

放射性物質への正しい理解が社会に広がるよう、人材育成の重要性を強調する。

放射性同位体や安定同位体を用いた地球・環境化学についての研究を手掛ける筑波大学数理物質系/放射線・アイソトープ地球システム研究センターの坂口綾教授。これまで、環境中の放射性物質に着目し、海流の動きや地層の年代指標となるマーカーとして活用する研究などに携わってきた。

例えば、核実験や原発事故由来などの人工放射性物質の中から、長期にわたり環境に残存する半減期の長いものを探し出し、それを用いて表層だけではなく深層の海流を3次元的に観測することで、海水循環を明らかにする。海洋は気象と気候に大きな影響を与えているため、温暖化が進むのか、寒冷化に転じるのかといった地球のこれからを予測する重要なパラメーターとなり得るという。

東日本大震災発生時は、広島大学理学部地球惑星システム学科で、地球表層の物質循環を研究していた。事故によって放射性物質が環境中に拡散されるようなことは起きてはならないが、それでも、放出された放射性同位体の濃度を正しく定量的に評価できる人が少なかったために、間違ったデータが世の中に広まり、震災後の社会の混乱に拍車をかけたことに忸怩たる思いを募らせた。

そしてこれが大きな動機となり、2014年、環境中の放射性同位体を専門に研究する施設があり、世界をけん引していこうという研究者がいる現在の所属の前身である筑波大学アイソトープ環境動態研究センターに活動の場を移した。


自然科学の解明へ 不可欠な放射性物質研究

子供の頃は、特に理科系科目が好きだったり得意だったりするわけではない、「ごく普通の少女だった」という坂口教授のターニングポイントとなったのが、金沢大学理学部化学科4年時の研究室選びだ。親しくしていた教員に進路を相談したところ、「坂口の性格に合っているのはここ」と、勧められたのが「低レベル放射能実験施設」だった。

研究室のOBに連れられて、琵琶湖に初めてのフィールドワークに赴き、宇宙線と大気の核反応でできる微量の放射性物質を検出する研究に従事。フィールドワークで自ら試料を採取し、それを研究室に持ち帰って分析し、その結果から事象を考察する楽しさに気づき、研究にのめり込んでいった。

新型コロナウイルス禍でフィールドワークに出かける機会は極端に減ったものの、「新たな放射性物質を利用することで、これまで見えなかったものが見えるようになることが楽しい」と、研究者としての初心を忘れず、学生にテーマを与えるだけではなく、ともに実験・分析し考察するという研究スタイルを続けている。

「有事の際の適切な対応のためのみならず、自然科学を語る上で放射性物質は外すことができない」と強調。一般社会に正しく理解してもらうためにも、「この分野の研究に面白さを見出し、携わってくれる人材が育ってくれれば」と願っている。

さかぐち・あや 2002年金沢大学理学部化学科卒。07年同大自然科学研究科博士後期課程修了。博士(理学)。広島大学理学部准教授、筑波大学数理物質系/アイソトープ環境動態研究センター准教授などを経て23年4月から現職。

最新EVに試乗できる! EVイベントのすすめ

【どうするEV】陰山惣一/『Eマガジン』編集長

世界的に新型EVの発表が相次ぐ昨今。日本でも各メーカーがEVのCMを放映し、「次のクルマはEVに?」と検討をされている方もいるかもしれません。

2023年度、日本で新たに購入できるEVは約15台が追加され、スタイル、価格、航続距離もさまざま。検討するにしても「ディーラーに行くのはハードルが高いし、そもそもどんなEVがあるのか実際に見て試乗もしてみたい」と考える方も多いのではないでしょうか。今回はそんな皆さまのために、最新EVを一気に見ることができ、さらにご自身で試乗もできる入場無料のEVイベントを二つ紹介します。

春に東京の二子玉川、秋に神戸と年2回開催しているのが、欧州車を得意とする自動車雑誌『ル・ボラン』が主催する「EV:LIFE」です。開催場所は二子玉川ライズと神戸旧居留地という、ラグジュアリーな街や商業施設。蔦屋家電横のガレリアや神戸大丸前の並木道にEVが並ぶ姿は圧巻で、欧州の高級EVが似合うイベントとなっています。しかも当日予約(先着順)でポルシェやレクサスといった高級EVにも試乗可能。23年の神戸では発表されたばかりのアバルト500eが人気となっていました。

「EV:LIFE KOBE 2023」では公道に最新EVがズラリ

一口にEVと言っても、それぞれモーターの数やパワー、航続距離や車内エンターテインメントの楽しみ方など個性がいろいろですが、助手席にはEVに詳しいコドライバーが同乗するので免許さえあれば大丈夫。リアシートにも同乗できるので、ご家族で訪れるのもよいかもしれません。

軽井沢プリンスショッピングエリアで5月、10月と年2回開催しているのが「軽井沢モーターギャザリング」です。「はじめようサステナブルカーライフ」をテーマとし、有名ブランド店舗が並ぶエリアに併設する芝生の広場では、最新EVや次世代エネルギー車を展示。イベントで使用される電力は展示するEVからの給電で一部を賄い、「古いものを大切にする」という観点からヴィンテージカーの展示やコンクールオブデレガンス(車両の審査会)も開催しています。さらにアウトドアエリアでは最新のキャンプグッズやたき火でのマシュマロ焼き体験も可能で、広くファミリーの方にも楽しんでいただけるイベントになっています。

このイベントも「EV:LIFE」同様、当日受付で最新EVに試乗できるのですが、緑豊かな軽井沢の街並みを静かなEVで走れるとあって、買い物の合間での人気コンテンツとなっています。10月のイベントでは発表されたばかりで注目を集めていたBYDドルフィンの試乗が人気となっていました。

今後のイベントとしては二子玉川で開催される「EV:LIFE FUTAKOTAMAGAWA 2024」(3月23〜24日)がおすすめ。地方からのお客さまも多く、最新EVが気になる方は是非訪れてみてください!

かげやま・そういち 『世田谷ベース』などライフスタイル誌の編集長を経て、EV専門誌『Eマガジン』を創刊。1966年式の日産・セドリックをEVにコンバートした「EVセドリック」を普段使いしている。

【山田修 東海村長】「BWRの再稼働は必要」

やまだ・おさむ 1961年生まれ。水戸市出身。86年高崎経済大学経済学部卒、茨城県庁入庁。財政課、産学連携推進室室長補佐、地域計画課課長補佐(総括)などを経て2010年東海村副村長に就任。13年村上達也前村長の引退を受け東海村長選挙に立候補し初当選。現在3期目。

茨城県庁からの出向で副村長を務め、東日本大震災後の2013年に村長に就任した。

東海第二原発、日本原子力研究開発機構など原子力関連施設が集積する村のかじ取りを担う。

水戸市に生まれ、高崎経済大学卒業後は茨城県庁に入庁。県庁時代はさまざまな部署を渡り歩き、東海村とのかかわりはほとんどなかったが2010年4月、出向で副村長に就任した。当時は東海第二原子力発電所が稼働中。関連企業で働く人も多く「原子力が地域経済を支えている」と実感した。

13年9月、震災後に反原発の旗色を鮮明にした村上達也前村長が4期目の任期を終えようとしていた。支持者からは「もう1期」という声もあったが、村上氏は悩んでいたという。東海村へ来て3年間、村民はいい人ばかり。原発を巡って対立する姿は見たくなかった。そんな中、ある有志のグループから山田氏擁立の機運が高まり、原発問題は「中立」という立場で村上前村長からも後継指名を受けた。地元出身ではないが、「村民の対立を私が防げるのなら」と火中の栗を拾う気持ちで出馬を決意した。

原子力は日本のエネルギー供給にとって重要だと考えている。東海第二原発の再稼働判断については、「原子力規制委員会の最終的な審査、広域避難計画などの防災対策の整備、住民の意向把握」が不可欠だが、震災後に再稼働した原発が全て加圧水型原子炉(PWR)に偏る中で「沸騰水型原子炉(BWR)の再稼働は必要」との考えを持つ。

現在、東海第二原発は安全対策工事中で、ゼネコンなど多くの人が村内で働いている。しかし、震災前には定期検査など運転に関わる人たちの雇用があった。さらに村には、日本原子力発電だけでなく、核燃料を製造する三菱原子燃料と原子燃料工業(原燃工)が所在する。前者はPWR用の燃料を製造するが、後者はBWR用だ。原燃工の社員の中には、家族を村に残し単身赴任で関連企業に出向している人も少なくない。BWRが再稼働すれば、原燃工の社員が家族とともに過ごすことができる。再稼働には税収や雇用だけではなく、村民により豊かな生活をもたらす効果もあるのだ。

グループの技術と知見を結集 設備や運転ノウハウを一括販売

【エネルギー企業と食】エア・ウォーター×サーモン養殖

近年、海水温の上昇や赤潮などで漁獲量が減少している。漁業従事者の高齢化や人手不足も問題だ。こうした課題に対し、環境に依存しない安定的な漁業モデルである陸上養殖の拡大を目指しているのがエア・ウォーターだ。

同社は長野県と北海道の2カ所で陸上養殖を行っている。どちらも海に面していない内陸地だ。長野県の松本市にある「地球の恵みファーム・松本」は、食物残渣から生成したメタンなどを利用するエネルギー循環型の施設を建設中。北海道の東神楽町にある「杜のサーモンプラント・東神楽」は、寒冷地における陸上養殖のモデルプラントだ。陸上養殖は一般的に、気候が温暖な西や南の地域で展開される。寒冷地では熱エネルギーのロスが大きいからだ。また商業規模で採算を取るには大型設備が必要だとされている。そこで同社は杜のサーモンプラントで、1000㎡程度の中規模設備での採算性などについて実証を行っている。

杜のサーモンプラント・東神楽

東神楽町は養殖の第一条件である豊かな地下水に恵まれた町だ。旭川空港を有し、東京から2時間程度とアクセスも良い。内陸地の町で水産課もない中、町長をはじめ手厚い協力もあったという。

同施設は2023年5月30日に稼働を開始した。現在、およそ1万2000尾のニジマスを飼育。出荷前の数週間のみ人工海水を使用し、サーモンとして出荷する。人工海水を用いることでうま味も増す。この人工海水を利用し、ウニの飼育も進めている。6月に50gほどだったパイロットフィッシュは600gほどに、卵からかえった稚魚も約50gにまで育った。目安は2kgほどで、25年の夏ごろがめどだ。ふるさと納税の返礼品に、との要望もあるという。

この陸上養殖はエア・ウォーターグループが有する技術や知見が組み合わされている。水に溶かし込む酸素のほか、人工海水はグループ会社の日本海水のものを使用。養殖水槽の加温用のボイラーではLPガスだけでなく、鹿追町で手掛ける家畜糞尿からつくり出したバイオメタンの混焼利用も進める。

そしてエア・ウォーターが販売するのは、サーモンではない。養殖プラントの設計から設備の運転、メンテナンスまで一貫したパッケージで販売する。すでに多くの見学者を受け入れ、具体的な提案を進めている。陸上養殖事業部の大城優氏は「これから初めての冬を越え、ランニングコストなどを検証できるようになる。事業採算性が合うプラントを提案し、陸上養殖を広めていきたい」と意気込みを語った。

【コラム/1月25日】新年経済の課題を考える~財政頼り日本病の回復に向けて

飯倉 穣/エコノミスト

1,経済政策と膨張予算に疲れ

日本病が時折語られる。経済低調の下で、経済政策の迷走が継続している。財政出動、金融緩和、賃上げ、貯蓄を投資に、エネ価格補てん、特定産業設備投資補助金交付等々である。そして膨張予算が継続している。報道は、伝える。

「来年度予算案112兆円・過去2番目 政府決定 社保・国債費、最大の58% 実質は増額、予備費圧縮」(日経23年12月23日)、「飛躍2024 動かす福来る日本へ 運用立国の「基盤」は私が 「貯蓄から投資」に担い手増やせ」(日経同)、「まずは経済だ・・新たな経済へ移行する大きなチャンスをつかみ取るための本丸は物価上昇を上回る賃上げの実現だ・・(首相会見の要旨)」(日経同1月5日)

近年の財政出動は、エネ価格等物価関連補助金等で必要性疑問(思い付き)の予算措置や、個々人が生計を立てる基本を逸脱する「無料化打ち上げ・誰かの負担」というばら撒き的予算も目立つ。それを財政赤字継続、国債増発、日銀国債購入が支える。そこに日本病の言葉がある。平成・令和時代(特に2010年代以降)の経済・財政政策は、日本経済の成長や健全化をけん引しただろうか。日本経済の病因と課題を考える。


2,日本病の現象~症状は

日本病とは、バブル崩壊以降の日本経済の低迷と根拠希薄な経済政策の挫折の姿である。経済関係の指標を見れば、一目瞭然である。幾つかの指標を見てみよう。例えばGDPの伸び率(~22年、暦年平均伸び率)は、過去10年間(12年から)で名目1.1%、実質0.5%(同30年間:92年から名目0.4%、実質0.7%)である。経済は、高水準ながら、ほぼ横ばいで推移した。橋本6大改革の後、小泉改革「改革なくして成長なし」やアベノミクス(三本の矢)も喧伝されたが徒労に終わった。

日本の一人当たりGDP(年度)は、各国比較で過去円高やバブル経済の名残(400万円/人)で先進国中第1位の年(ドル換算:95年、1ドル94円)もあった。今(22年)は、G7で最下位となった。

大きな変化は、財政赤字、政府債務残高にある。財政赤字は、過去29年連続公債依存度20%超、多くの年次は30%超である(GDP比財政赤字5~10%で推移:24年度5.7%)。

毎年30兆円の借り入れで経済水準を押し上げ、喘ぎ喘ぎの循環である。好循環か悪循環か。その結果普通国債残高は、90年度末166兆円、そして24年度末見込み1,105兆円(GDP比180%)である。

これらの経済・財政指標を見れば、日本病と揶揄する段階を超え、瀕死の状態である。それでもこの状況を深刻に憂える国民は如何程であろうか。経済人も財政依存経済に浸かり、言葉や行動に危機感を感じさせない。今となっても経済成長は政府の仕事と政府施策・予算を要求する。そして財政再建・健全化は、成長頼りが続く。これが日本病である。

OECDは今年も財政収支・債務問題を危惧し、段階的な消費税率の引上げの必要性を言明した(日本記者クラブ会見1月11日)。

政治的に浮上したトリガー凍結解除 問われる石油関連税制の在り方

【多事争論】話題:トリガー条項とガソリン暫定税率

トリガー条項を巡っては与野党協議が行われるなど国民の注目を集めた。

石油元売りに補助金が投入され続ける中、有識者はこの問題をどう考えるのか。


〈 石油諸税の総額は6兆円弱 特例税率廃止を検討すべき時期に 〉

視点A:伊藤敏憲/伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー代表取締役兼アナリスト

石油製品に関する税金には、原油および石油製品の輸入時点で課される石油・石炭税、輸入石油製品に課せられている関税、ガソリン税(国税の揮発油税1ℓ当たり48・6円うち特例税率24・3円、地方税の地方揮発油税5・2円うち特例税率0・8円、沖縄県は総額5・5円軽減)、軽油引取税(32・1円うち特例税率17・1円)、航空燃料税、石油ガス税などの石油製品に係る税がある。石油製品の小売価格に課されている消費税を含めると石油関連税の総額は、政府の2023年度予算で約5兆7600億円に及ぶ。

なお、ガソリンは、税率が高く、かつ石油石炭税やガソリン税を含めた小売価格に消費税が上乗せされた「二重課税」になっているが、石油関連税以外で同じ扱いなのは酒税とたばこ税だけである。

燃料油の国内市況は、原油価格の高騰と円安を反映して21年に急騰した。国民生活や経済活動への影響を抑えるため、21年12月に「燃料油価格激変緩和対策事業」が閣議決定され、レギュラーガソリンの小売価格が支給基準額1ℓ当たり170円(当初)を超えた22年1月から、卸売事業者にすべての燃料油を対象とした補助金が支給され、卸売価格が同額抑制されている。燃料油の国内市況は、この対策の効果によって、22年3月以降、原油価格や為替レートの変動に左右されず、ほぼ横ばいで推移している。

燃料油価格激変緩和対策事業の規模は予算ベースで、22年1月から23年9月末までで約6兆2千億円。23年10月から24年4月までの事業規模は、原油価格および為替レートを横ばいで想定すると約2兆円に及ぶ見通しで、石油関連税の総額の約3分の2が相殺されている。


トリガー条項の復活 過去の経緯踏まえて検討を

トリガー条項は、10年3月31日に導入されたガソリンと軽油の価格抑制策である。レギュラーガソリンの全国平均が3カ月連続で同160円を上回った場合に、ガソリン税と軽油引取税の特例税率の課税を停止することでガソリンと軽油の価格を引き下げる制度だ。ただ、発効することなく11年4月27日に凍結されたので、同条項を発動するためには法律を改定する必要がある。トリガー条項が発効すると、ガソリンは特例税率に消費税を加算した同27・6円、軽油は特例税率同17・1円、それぞれ小売価格が低下する。

このトリガー条項の復活を求める声に対して、鈴木俊一財務相が、①発動直前に買い控えが起こる、②発動直後に駆け込み需要が生じる、③発動前後に販売現場での混乱が生じると予想される―などの理由を挙げて「トリガー条項の発動は見送る」と発言したが、この説明の一部は間違っていない。

10年4月に国会審議の遅れなどにより、ガソリン税と軽油引取税の暫定税率(現在の特例税率)が一時的に失効した際、その数日前からガソリンと軽油の買い控えが起き、失効直後に需要が急増。暫定税率が復活した数日前から駆け込み需要が発生し、上昇後に需要が減少した。そして、失効前後と復活前後に、給油、受発注、配送などが混乱し、給油所のタンクの在庫の税率と販売時の税率との差から販売事業者の収支が圧迫された。

【需要家】子供と大人の対話 気候変動問題こそ重要

【業界スクランブル/需要家】

先日、小中学校で環境教育をしている学校の先生と話す機会があった。例えばプラスチック問題について授業で取り上げ、「なるべく使わない」「リサイクルする」といった話をしても、スーパーに行くと圧倒的な量のプラスチックを目にし、どうにもならない現実を子供たちは思い知るのだそうだ。そのため今の環境教育は自己満足に陥っているとの危機感を覚えるのだという。

これは環境問題だけではないだろう。世の中に重大な問題が多くあることを伝えても、ではどうしたらよいのか、現時点では答えのない問いを皆で議論する経験は、従来の学校教育ではなかなか得られない。「こういう技術や制度があればよいのではないか」という議論を起こし、その道の専門家とも対話できれば、将来のイノベーションにもつながる可能性があると思う。しかし、これを学校だけに求めることは妥当だろうか。本来は、日本社会でそうした議論の土壌を醸成すべきではないか。

「1・5℃目標」は社会構造そのものを作り変えなければ到底達成できない。だからこそ本当は、大人と子供が一緒に「これからの社会をどうしたいか」「そもそも社会はどうあるべきか」という根源的な問いに向き合うべきだし、ともに答えのない解決策を考えるべきだ。これは、通常の学校教育の範囲に留まっていては実現できない。

脱炭素は容易ではないが、だからこそイノベーションの源泉にもなり得る。子供たちとそのことをポジティブに話し合うことは、学校というよりも大人に託されていることだろう。今のインターネット技術があれば、ある程度トライできると思う。それができなければ、いずれAIネイティブの子供世代に「大人は不要」という烙印を押されるかもしれない。(O)

自動運転への思いを胸に EV充電インフラを支える

【エネルギービジネスのリーダー達】四ツ柳 尚子/e―Mobility Power 代表取締役社長

日本のEV充電サービスをけん引してきたイーモビリティパワー。

電気料金の高騰や急速充電器の高出力化などの課題に挑む。

よつやなぎ・しょうこ 仙台市出身。早稲田大学卒業後、東京電力入社。主にオール電化住宅の普及に向けた企画などに携わる。2018年経営技術戦略研究所リソースアグリゲーション推進室室長補佐。19年から現職。

電気自動車(EV)の充電インフラ整備を手掛けるイーモビリティパワー。東京電力と中部電力に加えて、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダ、三菱自動車といった自動車メーカーなどを株主として、2019年10月に設立した。代表取締役社長を務めるのは東電出身の四ツ柳尚子氏だ。


EVの進化とつながり深く 正解がすぐには分からない仕事

「思い返してみれば、EV充電につながる仕事をしていた」と振り返る東電時代。オール電化への切り替えプロモーション「スイッチキャンペーン」のリアルプロモーションの責任者を務め、ショールームにはEVや充電器を展示していた。

かねて四ツ柳氏が強い関心を寄せるのが自動運転だ。現在も駐車サポートや衝突回避などコンピューターが自動車の運転をサポートするが、その先には運転手を必要としない完全な自動運転時代が到来すると期待している。

16年には、東電の「次世代リーダー研修(NLT研修)」に参加した。「30年の東電の新たな収益の一つの軸となるようなビジネスを提案する」という課題に対して、チームで提案したのは「モビリティ事業」だった。自動運転は制御性に優れるEVとの相性が良く、「EVの背中を押すのは自動運転だと思った」。福島第一原子力発電所の構内で自動運転のプロジェクトを行ったこともある。

自動運転への熱い想いを胸に秘めながらも「目指すべきゴールは一緒」との思いでイーモビリティパワーの社長に就任した。「電力業界は脱炭素や原発の再稼働などの難題に立ち向かっている。日本経済も成熟期を迎えた中で、EVは数少ない右肩上がりの領域」と充電インフラ事業のポジティブな要素を語る。一方で、自動車の電動化はどの国も経験したことがない未知の領域。EVの普及スピードには違いがあり、「軽自動車大国」の日本では、流通する車体も異なる。何をするにも「正解」はもちろん、ベンチマークとなる事例も少なく、常に手探り状態。それが事業の難しさであり、やりがいにもつながる。

【再エネ】自治体が直面 再エネ導入の壁

【業界スクランブル/再エネ】

最大50億円、そんな大規模な補助事業に注目する自治体が増えている。環境省主導の交付金における「脱炭素先行地域づくり事業」では、地域特性に応じて脱炭素に向かう先進的な取り組みを行う地域を少なくとも100カ所選定する。現時点で第4回の選定を終え、36都道府県95市町村による74提案が選定されている。

重視されるのは、他地域のモデルとなるような先進性と計画の実現性だ。この両立が非常に難しい。すでに多くの取り組みが採択される中、既存の内容と重複せず先進性を打ち出しながらも、地域の合意形成を含めて実現可能性を高めることが求められるからだ。他方、同交付金で補助金上限が20億円の「重点対策加速化事業」については、比較的要件が緩やかで申請数が少ないこともあり、今までは穴場の補助事業と言われてきた。だが、脱炭素先行地域への採択を断念する自治体が駆け込みで申請すると見込まれており、今後の採択に向けた競争率は急激に高まっているように思う。

国は自治体に対して地域の特色を生かした再エネ導入と活用を促すものの、カーボンニュートラルの実現に向けて面的に再エネを普及させるための費用負担を考えると、こうした補助金に頼らざるを得ないのが現実だ。加えて、太陽光発電や陸上風力発電はこれまで比較的大規模な開発が容易なエリアから導入されてきたが、今後はより小規模かつ分散型での電源開発、つまり住宅地に近いエリアでの開発の機会が増えることになる。いくら環境意識が高まりつつあるとはいえ、住民との合意形成のハードルはますます上がっていくだろう。地域の合意形成をいかにスムーズに進め、同時に財源を確保することができるか。それが今まさに自治体が直面している課題なのである。(K)

【火力】将来の需給シナリオ 大切な責任と覚悟

【業界スクランブル/火力】

経済産業省の発表によると、今冬の電力需給は、全国的に必要となる予備力を確保できる見込みであり、2年ぶりに節電要請を行わない方針とのことだ。電力の安定供給に関しては、多種多様な対策が講じられるわけだが、昨年春以降に全国で300万kWを超える新設火力が運転を開始した効果が最も大きいと考えてよいだろう。

このようにこの1年は供給力が増加したが、その先は供給力減少の傾向が避けられそうにない。昨年運転を開始した火力設備は、東日本大震災直後の電力不足時に計画されたものであり、その先の2026年から30年にかけては、火力の新設がなくなる一方で、運開後45年を経過する設備が1200万kW以上もあり、これらが順次停止していくことが想定されている。

現在、長期脱炭素電源オークションや予備電源などの制度整備が進められているが、大型電源投資を判断する上で必要となる長期の予見性が十分確保されておらず、それに対応するため「将来の電力需給シナリオに関する検討会」が広域機関を事務局として立ち上げられている。

これにより、発電部門として計画的な発電設備の新陳代謝や既設設備の脱炭素化が進むことを大いに期待するところではあるが、不安の方が大きいというのが本音だ。当然のことながら、20年後30年後を正しく想定することは容易ではなく、幅広の検討結果は、単なる評論で終わってしまう恐れが強い。

大切なのは予測を当てることではなく、予測が外れた時の対応策をどれだけ準備できるかに加え、何よりそれをやり抜く責任と覚悟を固めることだ。国もエネ基と切り離して自由に検討してくれと逃げを打つのではなく、エネ基の策定により国益を確保するとの気概を持ってもらいたいものだ。(N)