東京電力ホールディングス(HD)と東電エナジーパートナー(EP)は1月23日、低圧向け経過措置料金(規制料金)について、平均29.31%の値上げを経済産業省に申請したと発表した。6月からの実施を目指す。低圧自由料金についても、規制料金と同額になるよう平均5.28%の値上げを行う。値上げ対象は約1000万件とみられ、値上げ申請は東日本大震災後の2012年以来11年ぶりとなる。

同日に行われた記者会見で東電HDの小早川智明社長は、燃料価格・市場価格高騰に伴う電源調達費用の増加を値上げの理由に挙げた。東電EPの規制料金は燃料費調整単価の上限張り付き状態が昨年9月から続いており、赤字供給を余儀なくされている。小早川社長は「この状態が続くと、23年度で2500億円ほどが東電EPの負担になる」と言う。昨年6月末には67億円の債務超過に陥り、東電HDが引受先とする2000億円の資本増強したものの、今年度末の経常損失は5050億円に膨れ上がる見通し。規制料金の値上げを目指すとともに、1月末を期日とする3000億円の追加増資を決定することで収支悪化による財務基盤の改善を目指す。小早川社長は「このままでは電力の安定供給に支障を来す恐れがある。本意ではないが、(値上げの)苦渋の決断に至った」と理解を求めた。
昨年には東北、北陸、中国、四国、沖縄(高圧含む)の大手5社が経産省に対し、規制料金の改定(平均値上げ率、東北32.94%、北陸45.84%、中国31.33%、四国28.08%、沖縄40.93%)を申請している。今回の規制料金値上げで、東電EPはおよそ3000億円の収支改善を見込む。値上げに当たっては、東電EPで新たに年平均2642億円の経営効率化を織り込み、老朽火力を契約対象電源から除外するなどして固定費を削減。代わりに高効率火力などからの新規調達を行うことで購入電力量の抑制を図る。
原発稼働なければ再値上げか どうする第四次総特
一方で「お客さまの負担軽減のために原発再稼働を一定程度織り込んだ」(小早川社長)とする柏崎刈羽原発。7号機は今年10月、6号機は25年4月稼働を前提とした原価算定をしているが、今のところ再稼働のめどは未だ立っていない。小早川社長は「再稼働の時期を約束するものではない」としているが、再稼働が出来なかった場合の対策については「徹底した経営合理化を行う」と話すにとどめている。
「柏崎刈羽の10月再稼働が実現できるかどうは、正直全く分からない。東電のさらなる重大ミス発覚や設備トラブルなどが起きれば、途端に10月再稼働は危うくなるだろう。もし原発が想定通りに動かず収支が悪化すれば、再値上げや再追加増資の可能性もあり、その時は『負担軽減のためという説明は何だったのか』と相当な批判を浴びるだろう。であれば、今回はあえて再稼働を織り込まない水準で上げるだけ上げておいて、稼働した際に速やかに値下げするほうが、需要家の納得感を得やすいのは間違いない。東電経営陣はそのあたりの判断を読み違えたと考えている」。元東電幹部はこう警鐘を鳴らす。
余談だが、東電EP救済のための増資計5000億円は、平時であれば福島の賠償に充てられる資金だったはずとの見方もある。そもそも『2022年度までに(小売事業の)利益減少に歯止めをかける』としていた第四次総合特別事業計画とのかいりをどうするのか。東電EPの大幅な赤字拡大によって、同計画の見直しは避けられないだろう、需要家のため、福島のため、そして東電グループ社員のためにも、現経営陣の責任において経営の早期健全化を図っていくことが求められる。