電力システム改革に対するエネチェンジの主張が「現実路線」に近づいてきた。同社は7月6日、「未来志向の電力システム改革の実現に向けた当社見解」を発表した。電力産業はGX(グリーントランスフォーメーション)において中心的な役割を担う重要産業であり、旧一般電気事業者による一連の不祥事に対する対応は未来志向で行うべきだとして、①送配電部門、②発電部門、③小売部門――の3点で、法的分離の厳格化や内外無差別の徹底、規制料金の撤廃などを求める改革案を提示。発表に先立つ5日には、同見解を資源エネルギー庁に提出しており、今後は国会議員にも説明を行っていく構えだ。

送配電部門は厳格な法的分離で
送配電部門の改革案では、所有権分離を「長期的には有効な選択肢」としたものの、憲法29条の財産権に抵触する恐れがあることや制度設計に時間を要することなどから、「厳格な法的分離(ITO)」を求めた。具体的には、各部門との人事交流時の監視強化、建物・ITシステムなどの物理的分離、罰則強化(直接罰への対象拡大)、監視強化(通報窓口設置、外部人材からのチェック機能新設、内部監査機能の強化)といった人・技術・物・資金面の独立性、自立性の強化と、インサイダー取引規制のように情報が流出することを前提とした違反者への罰則規定を整備すべきだとした。
電力業界の一連の不祥事を受けて、内閣府の「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」や立憲民主党と日本維新の会は、所有権分離を求める提言を西村康稔経済産業相に提出している。こうした中、ITOにとどめたエネチェンジの見解は早期に実現可能な改革案で、「さまざまな事業者の声を集めて代弁」(同社の城口洋平CEO)したものだという。同社はかねて所有権分離の必要性を強調していたことから、トーンダウンした格好といえよう。
内外部差別は指針・法制化で対応
発電部門では内外無差別について、旧一電の自主的コミットメントではなく、ガイドラインもしくは法制化を進めるべきだとした。内外無差別の徹底は利益最大化という経営原則と相反する場合があるため、自主的コミットメントでは実効性に懸念が残るが、「コンプライアンス違反」となれば発電事業者も対応せざるを得ないという理由からだ。
また来年開始の容量市場で、発電部門で優越的な地位にある旧一電の競争力が強化される懸念に対しては、旧一電の部門ごとの会計の透明性を担保し、電力ガス取引監視等委員会などが小売部門の競争条件に不当な影響がないか監査する必要性を記述した。
規制料金撤廃の早期検討を
小売部門では特に内外無差別の徹底を条件とした上で、規制料金撤廃の早期検討を求めた。撤廃時には需要家への周知徹底策として、固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り期間満了時の通知方法と同様に、契約可能な小売事業者の提示など切り替え情報の提供が必須だとしている。
エネチェンジはこの見解をエネ庁だけでなく、GXや電力システム改革に関心を持つ政治家などにも提出する構え。城口氏は発表に先駆けて行われたメディア向け勉強会で「今後、小委員会などで参考資料として使われるようになればいい」と意図を語った。事業者側の意見として、今後の議論にどう生かされるのか注視したい。