2024年12月25日、総合資源エネルギー調査会基本政策部会で「第七次エネルギー基本計画(案)」および関連資料として「2040年度におけるエネルギー需給の見通し」が示された。並行して、12月26日の GX実行会議で「GX2040年ビジョン(案)」 、12月27日の地球温暖化対策推進本部で「地球温暖化対策計画(案)」 が示された。その後、パブリックコメントを経て、いずれも25年2月18日に閣議決定された。
◎25年2月18日閣議決定
●第七次エネルギー基本計画
●地球温暖化対策計画改定
日本のNDC(国が決定する貢献)→国連気候変動枠組み条約事務局に提出
●GX2040ビジョン 脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 改訂
ここでは、閣議決定に至る一連の動きについての報道や有識者の見解などを紹介していきたい。 まずは少し遡って、原子力発電について「可能な限り依存度を低減」との記載が残された前回の第六次エネルギー基本計画から、その後の岸田政権でのエネルギー・原発政策の転換について振り返る。
◆第六次エネルギー基本計画策定(21年10月閣議決定)
第六次エネルギー基本計画については、 第七次計画策定に至る前段階・プロセスという視点で、当時の状況などを振り返っておきたい。
1.第六次エネ基本計画 排出削減目標「46%減」の中での原発の扱い
21年4月22日に開催された地球温暖化対策推進本部、気候変動サミットにおいて、米国との交渉などの中で官邸主導の形で、30年度温室効果ガス排出削減13年度比46%が表明された。
参考= それより以前、20年10月26日、菅義偉新首相の所信表明演説で、「2050年温室効果ガス排出実質ゼロ」を表明
◎21年4月22日の経過
午後3時半~6時半
●総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会「2030年に向けたエネルギー政策のあり方」
<同時間帯に並行して>
午後5時45分~6時10分
●地球温暖化対策推進本部 →排出削減目標「46%減」を正式表明「13年度比46%減、さらに50%減という高みに向けて挑戦を続ける」
夜
●気候変動に関する首脳会合(気候変動サミット)→日本の新しい排出削減目標の表明
この高い温室効果ガス削減目標設定の動きを受けて、自民党内では脱炭素電源としての原発の活用に向けた調査会や議連の動きが活発化した。
●4月12日 脱炭素社会実現と国力維持・向上のための最新型原子力リプレース推進議員連盟(稲田朋美会長)発足・第1回会合
●4月23日 電力安定供給推進議員連盟(細田博之会長)「第六次エネルギー基本計画の策定に向けた提言カーボンニュートラル実現に向けて ~原子力発電を最大限に活用しつつ 現実的・複線的な取り組みを~」
●5月25日 自民党政務調査会総合エネルギー戦略調査会、経済産業部(額賀福志郎調査会長)「第六次エネルギー基本計画の策定に向けた提言」
しかし一方で、総合エネルギー調査会基本政策分科会でのエネルギー基本計画策定(本文案提示)の動きが止まった。当時、自民党の総合エネルギー戦略調査会の幹部は、メディアの取材に、「公明党が原発ゼロを言っているからだ。(現在のエネ基にある)『依存度を限りなく低減する』という文言修正も難しそうだ。リプレースも」と述べた。原発の新増設・リプレースなどの議論については、「必要な規模を持続的に活用していく」とされたものの、「可能な限り原発依存度を低減する」という第五次エネルギー基本計画での記載は残る方向で固まっていった。
第六次エネ基 概要より(抜粋)
〇東京電力福島第一原子力発電所事故後10年の歩みのポイント
◇50年カーボンニュートラルや30年度の新たな削減目標の実現を目指すに際し、原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。
〇50年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応のポイント
◇電力部門は、再エネや原子力などの実用段階にある脱炭素電源を活用し、着実に脱炭素化を進めるとともに、水素・アンモニア発電やCCUS/カーボンリサイクルによる炭素貯蔵・再利用を前提とした火力発電などのイノベーションを追求。
◇50年カーボンニュートラルを目指す上でも、安全の確保を大前提に、安定的で安価なエネルギーの供給確保は重要。この前提に立ち、再エネについては主力電源として最優先の原則のもとで最大限の導入に取り組み、水素・CCUSについては社会実装を進めるとともに、原子力については、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していく。
2.公明党の動き
公明党の地球温暖化対策推進本部(本部長:石井啓一幹事長 当時)は、21年5月28日に「2050年脱炭素社会、カーボンニュートラルの実現に向けた提言」を官房長官に提出している。この提言書では、原発についての章立てはなく、原子力に関する記述は1カ所だけで、「再生可能エネルギーの大量導入」の項で、「再エネ主力電源化の取組等を通じて、原発の依存度を着実に低減しつつ、将来的に原発に依存しない社会を目指すべき」と書かれているのみであった。
◎公明党提言の中で原発に言及した部分(21年5月28日)
1.「経済と環境の好循環」実現に向けたグリーン成長戦略の促進
(2)再生可能エネルギーの大量導入
50年カーボンニュートラルや30年度目標の実現には再エネの大量導入が欠かせない。――太陽光発電を再エネの主力電源と位置づけ大量導入を進めつつ、新たなパネルなどの開発に取り組むべきである。また、再エネの主力電源化に向けた課題を克服するため、余剰電源を貯蔵する蓄電池の普及、地域との共生に向けた再エネ設備の安全性向上などに取り組むべきである。あわせて、再エネの主力電源化に向けた取組などを通じて、原発の依存度を着実に低減しつつ、将来的に原発に依存しない社会を目指すべきである。また、原発の再稼働については、原子力規制委員会が策定した世界で最も厳しい水準の基準を満たした上で、立地自治体などの関係者の理解と協力を得て取り組むべきである。
◎21年5月26日、公明党竹内譲政調会長(当時)記者会見(抜粋)
「わが党は、できる限りこの原発比率を下げていくべきだという従来の方針は変わっておりません。新増設は基本的に認めないということでありますし、(既存の原発も)60年を超えてやらないと、法律にもなっておりますので、この辺の基本的な考え方は変わっておりません。」