【特集2】再エネとEV軸に脱炭素化へ「ゼロカボ」サービスを展開


コスモ石油マーケティング】

コスモ石油マーケティングはグループのノウハウを結集したエネルギーソリューションを展開。
脱炭素化の取り組みを本格化したい自治体や企業の間で大きな注目を集めている。

コスモ石油マーケティングでは、地方自治体や企業など法人向けにCO2排出ゼロを目指した「コスモ・ゼロカボソリューション」(ゼロカボ)を提案している。このサービスはコスモエネルギーグループの持つ風力発電・太陽光発電などの再生可能エネルギー「コスモでんきビジネスグリーン」「ソーラープラン」と、電気自動車(EV)のカーリース・カーシェア、エネルギーマネジメントを活用することで、自治体や企業の脱炭素化の実現を目指すものだ。

現状、自治体や企業が抜本的な脱炭素化を進めるには、新たな予算確保や手続きの煩雑さなど、課題が多い。「ゼロカボ」では、「手軽でおトクな脱炭素ソリューションをワンストップで提供」というコンセプトの下、コスモエネルギーグループの持つエネルギー・モビリティ事業のノウハウを生かし、RE100に適用可能な電力調達、EV購入時における国の補助金の手続きサポートなど、包括的なサービス提案を行っている。

昨年9月のサービス開始から、100近い自治体や企業と面談したといい、次世代事業推進部の吉村卓一地域エネルギーグループ長は「政府が掲げる2030年度温室効果ガス46%削減というターゲットに向けて取り組みを開始しているものの『脱炭素を進めたいが、何から手を付ければよいか分からない』という方が大半です。そこで、電気と車という主要CO2排出要因の脱炭素化をパッケージ化して提案しています」と語る。初期費用がかからず、電気と自動車をコスモでんきビジネスグリーンやEVに変更することで、すぐに脱炭素化が図れる点が魅力だ。

ゼロカボによるエネマネと災害時対応

自治体に追い風のEV事業エネマネ・新型車導入へ

中でもゼロカボ内のEVカーリース・カーシェアに対する自治体・企業の期待は大きい。コスモエネルギーグループは同分野のスタートアップ企業REXEV社と提携。地域でのカーシェアを進めることで、地域住民の交通手段や観光用車両としての活用を見込んでいる。また、自治体の公用車は一日の走行距離や走行スケジュールが把握しやすく、行路も予定されたものが多いため、EV導入に適している点も追い風になっている。

エネルギーマネジメントの機能にも注目が集まる。EVのモビリティの力、蓄電池としての価値を最大限に生かすため、REXEV社のエネマネシステムを活用する。同システムを用いることで、①EVの充電タイミングを太陽光発電の余剰電力が発生する時間にシフトして、EVに充電される再エネ利用率向上を図る、②施設の電力需要ピークの時間を予測し、充電時間をシフトすることでEV充電によるピーク制御を行う。またバッテリー放電により電力需要を抑制する、③災害時など電力系統からの供給が途絶えてしまった場合にEV充放電器を活用し、EV・太陽光発電から施設へ給電する―といったことが可能だ。

これにより、再エネの有効活用、業務用途の電気料金の上昇抑制、BCP(事業継続計画)対策などが実現し、分散型電源の特長をより際立たせて利用することができるようになる。「19年に千葉県で起きた台風災害では、EVが電力供給において大きな役目を果たしました。災害対策としても、EVに注目する自治体・企業が増えています」。次世代事業推進部長の大高敬世氏はこう話す。

「コスモMyカーリース」で取り扱う国産各メーカーのEVを提供するのに加え、昨年EV開発メーカーのASF社に出資、来年早々にも新型車両の提供を開始する。ASF社の強みについては「バッテリーのコストパフォーマンスの良さが特長で、性能も他社に引けを取りません。ASF社は佐川急便と連携し、運転席を大きくして作業員の乗り心地を改善したり、台車を取り出しやすくしたりするなど、業務用途に特化した製品づくりを行っています」と大高部長はアピールする。

ゼロカボについて語る大高部長

将来的な分散型電源構成へ EVの蓄電池活用も視野

同社は30年に向けて、前述のように、自治体と企業向けに電気と車の切り替えを訴求する。40年には再エネの自給率とEV比率の向上、さらに50年にはEVを用いたエネマネを進化させ、VPP(仮想発電所)やマイクログリッド構築などを目指す。

「こうしたビジョンを実現するための機能開発においてもREXEV社との提携が有効になる」と吉村グループ長は話す。このほか、EVバッテリーのリユース、リサイクル事業の立ち上げも計画する。マイクログリッド内の電力安定化に蓄電池を利用することも検討していく方針だ。

コスモエネルギーグループのエネルギー・モビリティ事業が、これからの脱炭素化社会や分散型電源システムをリードしていく。

【四国電力 長井社長】エネルギー情勢混迷の中 リスクマネジメント強化で 電力安定供給を維持する


昨年3月に「よんでんグループ中期経営計画2025」を公表。電気事業と電気事業以外を両輪としてグループ全体で経営基盤を強化し、脱炭素社会の実現に取り組む。

【インタビュー:長井啓介/四国電力社長】

志賀 ロシア軍のウクライナ侵攻は日本人に大きな衝撃を与えました。同時に、石油・ガス・石炭など化石燃料の世界的な価格高騰で、わが国のエネルギー供給システムがいかに脆弱かが示されました。海外依存度の高い国でありながら、大規模な紛争に巻き込まれないことを前提としたエネルギー政策を取っていたと思います。

長井 そうですね。エネルギー資源の乏しいわが国において、エネルギー政策の大前提は、「S+3E」です。ウクライナ情勢の緊迫した状況が続く中、まずはエネルギーセキュリティの確保、電力の安定供給を第一に考えることが、国民生活や経済活動を維持していくうえで何よりも重要であると痛感しました。
 エネルギー需給を見ると、昨今のコロナ禍からの経済回復などにより需要が堅調に推移しています。一方、脱炭素化に伴い、石炭をはじめとする新規の資源開発投資の停滞によって供給が制約を受け、世界的に燃料需給のタイト化が進んでいました。そこにウクライナ情勢の緊迫化が重なったという認識です。

志賀 今後の化石燃料価格の動向についてどう考えていますか。

長井 価格の高騰は当社の経営への影響が極めて大きく、対ロシア経済制裁に伴う価格影響を含め、その動向を緊張感を持って注視しているところです。

志賀 燃料調達にロシアへの制裁などの影響はありましたか。

長井 石油とLNGはロシアからの調達はなく、石炭は一部をロシアより調達していましたが、足元で他国からのソースに振り替える対応をしており、当面の必要量確保に大きな問題はありません。
 しかしながら、世界のエネルギー情勢は、時々刻々と変化しており、現時点で将来どのような影響が出てくるのか正確に見通すことは困難です。当社としては、在庫を多く残した運用や早めの配船手配などリスクマネジメントの一層の強化を行い、燃料確保を最優先に対応することで、安定的な電力供給を維持していきます。

志賀 ウクライナ侵攻は、今までの世界のエネルギー地図を一変させたと思います。その中で、これからのエネルギー政策はどうあるべきでしょうか。

長井 昨今の国内外の情勢を踏まえた今後のエネルギー政策については、①安定供給と脱炭素化に不可欠な原子力発電の必要性を明確に発信すること、②再生可能エネルギー電源のさらなる導入拡大に際し、施策の優先度や実施スケジュールに留意すること、③足元で重要な供給力・調整力を担っている既設火力発電所の維持・活用に十分な目配りをすること―などが重要です。安定供給の確保と脱炭素社会の実現の両立を目指す観点から、より高い次元でバランスの取れた政策が求められていると考えています。
 将来的に脱炭素社会の実現を目指す国際社会の潮流に変わりはないでしょうが、電力の安定供給なくして、その実現はおぼつかないと思っています。

ながい・けいすけ 1981年京大大学院工学研究科修了、四国電力入社。2015年常務取締役総合企画室長、17年取締役副社長総合企画室長などを経て19年6月から現職。

【記者通信/4月27日】政府「総合緊急対策」で原子力活用へ 電気ガス代対策は明記せず


政府は4月26日、原油価格や物価高騰に対する「総合緊急対策」を決定した。対策には「原子力を含めあらゆる電源の最大限の活用を進めていかなければ、国民生活や経済活動に不可欠な電力の安定供給の確保に影響が出るおそれがある」と記載し、エネルギーの安定供給に原子力の活用を目指す考えを示した。一方で、エネルギー価格の高騰対策はガソリンに限られ、電力・ガス代の値上がりに関する対策は明記されなかった。

岸田首相は記者会見でエネルギー価格高騰対策を発表した(首相官邸HPより)

岸田文雄首相は、同日夜に記者会見を行い「原油価格や物価の高騰が、コロナ禍からの社会経済活動の回復の妨げになることは何としても防がなければならない」と表明。ガソリン価格維持のため石油元売りへの補助金に1.5兆円を充てるなど、国費6.2兆円を投入することを発表した。事業規模は合計13.2兆円ほどの見込みとしている。対策ではこのほか、エネルギーや原材料の安定供給に0.5兆円を充て、中小企業対策・生活困窮者支援などに乗り出す。今回の対策を第一段階として、6月までに経済財政運営の指針「骨太の方針」をまとめる方針だ。岸田首相は「今年の夏の参院選後にこれ(骨太の方針)らを前に進めるための総合的な方策を具体化し、エネルギー分野も含め経済社会の構造変化を日本がリードする」と参院選後にも第二段階の経済対策を進めるとしている。

補助金上限35円引き上げ。ガソリン価格4円程度の引き下げ狙う

物価高対策の第1の柱となる石油元売りへの補助金については、全国平均のレギュラーガソリン店頭価格を「当面168円程度の水準に抑制する」(岸田首相)としている。現在行っている激変緩和措置を強化し、上限単価の補填を35円に引き上げたほか、対象油種に航空機燃料を追加した。さらに補填が必要になった場合も、価格上昇分の2分の1を支援する。資源エネルギー庁が公表した4月18日時点でのガソリン価格は173.5円で、4円ほどの値下げを想定している。タクシーなどLPガスを使用する事業者に対しても、小規模補助金を活用し支援を行うとした。

第2の柱となる安定供給対策については、エネルギー、原材料、食料の各分野で実施。エネルギー分野では、①省エネルギーの推進、②クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進、③燃料供給の緊急対応策などの強化、④産油国・産ガス国への増産働きかけ――を掲げた。対策には、プラスチック製スプーンの受け取りを辞退したり、環境に配慮した商品を購入したりした場合、ポイントを受け取れる制度「グリーンライフ・ポイント」の促進も盛り込まれている。

岸田首相はそのほか、第3の柱に中小企業の価格転嫁や賃上げ対策。第4の柱には「電気・ガス料金を含む物価高騰等に直面する」生活困窮者への支援を挙げた。対策の財源には22年度予算の予備費を当て、その穴埋めと激変緩和措置の一部費用をまかなうため、総額2.7兆円の補正予算を編成。今国会での成立を目指すとしている。

電気ガス代への支援なし。「ガソリン偏重」に疑問

補助金の上限額引き上げにより、燃料価格の抑え込みを図る政府だが、萩生田光一経産相は26日の記者会見で「永遠に補助金を足し増ししていくのは現実的ではない」と述べ、激変緩和措置終了後の混乱に警鐘を鳴らす。また、ガソリン以上に負担がかさむ電気代やガス代の値上がりには、今回の対策による支援は盛り込まれなかった。「ガソリン偏重」の対策にどれほど効果が出るか、疑問の声も出ている。

【記者通信/3月25日】国会が「山中委員長」に同意 原子力規制委の姿勢転換に期待


参議院は3月25日の本会議で、原子力規制委員長に山中伸介委員を充てるなどの人事案を可決した。衆議院では24日に可決しており、人事は承認された。2017年に就任した更田豊志委員長は退任し、9月に山中氏が新委員長に就く。

山中氏は大阪大学副学長として教べんをとり、核燃料安全性研究の第一人者として活動。17年9月に原子力規制委員に就任して以降は、更田委員長の下で福島第一原発事故の対策に取り組んできた。原子力業界からは豊富な知見と人柄の良さに期待する関係者も多かったが、「規制委に就いたら、電力会社に強硬姿勢を取る更田委員長に忖度するようになってしまった。学者としての主体性が見られない」(ジャーナリスト)と落胆する声も出ていた。

山中氏の委員長就任に、一部野党からは反対意見も出ている。立憲民主党関係者は「山中氏には、JAEA(日本原子力研究開発機構)など関連企業団体から研究費として寄付金を受けた問題がある。就任直前には寄付金の記載漏れを修正するなど、規制する対象から支援を受ける人が規制委のトップに立つべきではない」(政務調査会)と批判、同党は就任に反対している。一方、電力業界では「田中俊一前委員長、更田委員長の路線から決別し、NRC(米原子力規制委員会)のように事業者とのコミュニケーションを重視する組織としてほしい」(業界関係者)と手腕に期待する関係者も多い。

更田委員長「山中氏は新委員長にふさわしい」

更田委員長は3月の定例会見で、山中氏について「(委員長に)極めてふさわしい方だと思う」と評価。原発再稼働を進める動きには「(山中氏は)5年近く安全対策審査にあたっている。原子力規制に対する姿勢はしっかりした芯があり、規制上の判断が揺らぐことはない」と、規制行政の方針変更を期待する声にくぎを刺した。更田委員長の退任で規制委の発足メンバーは全員いなくなるが、「人が変わって規制判断が変わることはない」と立場を堅持する姿勢に、業界からは「官邸が規制委員会を動かさない限り、原発の早期再稼働は難しい」(業界関係者)と諦観ムードが漂う。

原油価格高騰やエネルギー資源確保の地政学的リスク問題、火力発電所の老朽化などから、改めて原発再稼働の重要性が増している。しかし新規制基準の元で原発再稼働を行ったのは西日本の電力会社のみで、東日本はでいまだに原発ゼロの状態が続く。経団連の十倉雅和会長も、先日の電力需給ひっ迫問題に触れ「エネルギー安全保障の重要性が再認識されたのではないか。安全性が担保され、地元住民の理解が得られた原子力発電所については、速やかに再稼働させる必要がある」と再稼働議論の重要性を改めて示した。エネルギーひっ迫待ったなしの状況下で、山中新委員長がどのような方針を打ち出すのか注視したい。