【九州電力送配電】
山岳地帯での電気工事作業員の業務は過酷で、今後の人材確保は喫緊の課題だ。
無人ヘリの導入は人力運搬を解消し、災害時には早期の復旧作業を実現する。

小売り全面自由化や発送電分離などの電力システム改革で、電気事業を取り巻く環境は大きく変化した。こうした中、高経年設備の更新量が増加している半面、送電線工事を行う作業員の減少に拍車が掛かっている。
送電線工事は山岳地帯で実施するものが多い。作業員は工事現場まで急峻な山道を毎日長時間通勤しなければならず、厳しい労働環境にある。さらに、資機材を運ぶための小型運搬車が使用できない急傾斜の運搬路では、作業員が25 kgほどの資機材を背負って何往復も上り下りし、人力で運ぶ。急斜面には危険も伴う。
今では運搬業務専門の作業員がいなくなり、架空送電線工事に従事する作業員が運搬を兼務しているのが現状だ。
少子高齢化も伴い人材確保が難しく、人力運搬の削減は送電業界にとって喫緊の課題となっている。
送電線工事に30年以上携わっている、九電送配電・送変電技術センターの近藤正徳・送電工事技術グループ長は「グループが発足したのは2年前。送電線工事現場の高度化・効率化に取り組むのが命題で、やるべきことははっきりしていました」と当時を振り返る。グループは4人体制だ。
人力運搬をなくす無人ヘリ コストや工期も削減
過酷な労働で人が辞めていく、何よりもまず作業員を楽にしたい―。
そう考えた近藤さんは、ヤマハ発動機の農薬散布用無人ヘリコプターに着目した。35 kgまで荷物を積むことができ、数千台出荷の実績もある。
送電線工事現場に導入したいと同社に連絡を取り、さまざまな形状の資機材の運搬が可能で、標高2800mまで対応できる無人ヘリの導入検討を依頼した。
その結果、資機材はコンテナに入れ、長尺のものは吊るして運搬できるヘリが開発された。

「安全で安定した飛行ができるよう、さまざまな場所で実証試験を行いました。現在は無人ヘリによる資機材運搬工法を確立し、気象条件が整えば、35 kg以内の全ての資機材が安全に運搬可能です」と、同グループの鳥越浩義さんは試行錯誤の成果に胸を張る。今後は積載重量の増加や運搬効率の向上に取り組む。
工事現場で必要な約1tの資機材を運ぶ場合、遠距離の人力運搬では作業員4人で4日かかるが、無人ヘリを使用すると1日で運ぶことができる。作業員は、到着した資機材を現地で受け取る2人で済む。
一昨年の西日本豪雨で鉄塔周辺が崩壊した北九州幹線の復旧工事では、無人ヘリを使って1・5tの資機材を17時間で運搬した。小型運搬車での運搬に比べ500万円のコスト削減と、2カ月の工期短縮を実現している。
ガソリンを燃料とする無人ヘリは約100分間、90㎞の連続飛行が可能だ。バッテリー式のドローンに比べ約10倍の飛行時間となり、担える役割も多い。
離着陸は目視でマニュアル操作を行う。飛行中は自動操縦に切り替え、作業地点上空まではGPS制御する自律飛行だ。飛行ルートは、住宅の密集地や交通量の多い道路を避けるなど、最適なルートの検討を行う。
「無人ヘリの導入を電力業界だけでなく他業界にも広げ、『運搬は無人ヘリ』が当然の世の中になってほしい。人力運搬業務の機械化は私のライフワークともいえます」(近藤正徳グループ長)。長年にわたり、作業員が苦労してきた姿を見ているからこその思いだ。



