火力のさらなる運用効率向上へ 最先端デジタル技術を導入

【東北電力】

火力発電は電力需要への供給力としてだけでなく、昼夜間や季節間による需要変動への対応や、天候に左右される風力や太陽光発電を最大限活用するための調整力としての役割も担う重要な電源だ。
東北電力は、従来からの安定供給の取り組みに加え、火力発電の運用の高度化や効率化に向け、AIやIoTといった最先端デジタル技術を活用した取り組みを加速している。

全火力へ新システム導入 外販による事業創出も

同社は2017年より東芝エネルギーシステムズと共同で、火力発電の運用効率のさらなる向上を目的に、最先端のデジタル技術の導入に向けた検証を行ってきた。こうした検証を踏まえ「設備の異常兆候を早期に検知するシステム」と「運転条件の変更による熱効率向上システム」を、20年3月までに同社が持つ全火力発電所へ導入。運用を開始した。

「高度な設備監視サービス」を提供する

「異常検知システム」は、ビッグデータの分析技術を活用し、重大なトラブルを未然に回避することが目的。過去の膨大な運転データから、通常運転時にあるべき運転データを算出する。算出した運転データと実際のデータを比較し、その差が大きくなった場合は何らかの異常兆候があると認識し、警報を発する。データ差が一定の閾値に達した際に発報する従来手法に比べ、早期の検知が可能となる。また、経験したことのない未知の異常の発見も可能だ。 

「熱効率向上システム」は、過去の熱効率が良好な時の運転データ(基準値)と現在の運転データ(運転実績)を比較することで、温度や圧力の違い、部品の劣化といった熱効率が低下する要因を特定する。その上で、燃料や空気、水の投入量などの運転条件の調整や、劣化した部位の補修などを行い、熱効率の維持・向上を図る。

同社は、「異常検知システム」について、より汎用性を高めた「高度な設備監視サービス」として、製造業を中心とした顧客などに提案する方針だ。21年ごろまでの事業化に向け、準備を進めている。
東北電力は、「東北電力グループ中長期ビジョン」のもと、電力供給事業において競争力を徹底的に強化するとともに、東北電力グループだからできる顧客への新たな価値の提供を通じ、スマート社会の実現に向け取り組んでいく考えだ。

室内をまるごとオゾンで除菌 社会経済活動を守る空気清浄機

【IHIアグリテック】

IHIアグリテックが製造・販売するオゾン空気清浄機が注目だ。
コロナ禍での事業継続のため導入する企業が増えている。

インフラを担うエネルギー事業者にとって、「電気・ガスは使えて当たり前」の世の中で、どのように社員を新型コロナウイルス感染症から守り、安定供給を継続できるかは重要な課題だ。

IHIアグリテックが製造・販売する 「オゾンエアクリアeZ-100」(以下、eZ)は医療分野で培ったオゾン発生技術を搭載した空気清浄機。厚生労働省の認可を取得している同社のオゾン殺菌装置と同レベルの性能を持つ。

オゾンエアクリアeZ-100。細菌やウイルスをオゾンガスで破壊する

2003年の発売以来、医療機関、老健施設などに約1万5000台の導入実績を誇る。一般の空気清浄機との違いは、除菌ができる空気吸引清浄機能と、オゾンによるくん蒸機能を搭載している点だ。

空気吸引清浄機能は、医療機関の感染防止室でも使用される「静電式HEPAフィルタ」を採用。ウイルスを含む飛沫は5ミクロン以上の大きさだが、HEPAフィルタは0.3ミクロンの物質を99.97%以上捕集する。室内の空気を吸引し、浮遊するウイルスを4層構造のフィルタで捕集した上でオゾンにより除菌・死滅させる。

くん蒸機能は、夜間や休日など人がいない時間帯に使用する。新型コロナウイルスはテーブルやドアノブ、共用の事務機器など、人が触れる箇所を介して接触感染する。くん蒸機能ではオゾンガスを放出し、室内の隅々まで充満させ、浮遊菌や付着菌を除菌することができる。例えば事務所などで、昼間は吸引運転モードで空気を清浄化し、退室時にくん蒸運転モードにセットすると、一定時間オゾンを放出。その後強制的にオゾンを分解して酸素に変える。翌朝出社した時にはまるごと除菌された室内に入ることができる。残留毒性もなく、後処理も不要。オゾンは電気と空気から作るので、ランニングコストも抑えられる。

日常も強力な除菌効果を持つ空気清浄機として使用できるため、新型コロナウイルスに限らず、季節性のインフルエンザやノロウイルス対策としても力を発揮する。

オプションで隔離用にも 1台3役で社会活動を守る

感染症の疑いがある対象者がいる場合には、eZにオプションの「簡易陰圧テントKT-7」を取り付け、隔離室を作る。テントの外にeZを置き、陰圧運転でテント内の空気を清浄化する。2.5Pa以上の差圧により、中の空気が外に漏れることなく、搬送までの一時的な隔離室として使用できる。テントはコンパクトに収納でき、2人で15分ほどで組み立てられる。

ez-100用 簡易陰圧テントKT-7で有事にも対応

eZと陰圧テントがあれば、飛沫感染対策・接触感染対策・発症者の隔離の三つの役割を果たせることになる。新型コロナウイルス発生後、学校や自治体、テレワークが難しい企業やインフラ関連企業での導入も増えているという。

環境プロジェクト部営業グループの若井一訓担当課長は、「日常的に使用でき、有事にも力を発揮するeZは、安心して社会経済活動を継続できる環境づくりを実現します。事業の領域を越えて、グループが協力し合っています」と、IHIが一丸となって取り組む新しい社会貢献だと話す。同社が医療分野で得た信頼と実績は、ウィズコロナ時代の社会経済活動を守っていく。

安定供給を守る感染防止策 複合災害にも備えを

【西部ガス】

新型コロナウイルス感染症が全国に広がりつつあった2月下旬、西部ガスは、非常事態を見据えた準備本部を立ち上げ、4月上旬には「第一次非常体制」に移行した。その後、政府により発令された「緊急事態宣言」を受け、感染対策を強化していった。

テレワーク推奨など出勤への自粛要請があっても、ガスの安定供給を使命とするガス会社は、事業の継続が大前提だ。同社は、安定供給に直接関わるガスの製造部門、供給部門従事者への感染を回避するため、①自家用車通勤、②交替勤務者の業務の引き継ぎには大型モニターを使い一定の距離を確保、③マスクの着用・換気の徹底、④執務室への入室要件を強化―など、新型コロナの特性に合わせた社内体制を取った。

LNG船からの原料調達の際も船陸双方の接触を避け、必要な連絡は電話やデータのやり取りで行うといった対応に切り替えた。

飛沫感染防止のパーティションを作成して事業を継続した

熊本地震での経験から対策 感染防止がBCPの鍵に

西部ガスの供給エリアは、福岡・北九州、熊本、長崎、佐世保の四つのエリアに地域が分散しており、一つのエリアが有事の際は、ほかのエリアから駆けつけて対応することができる。だが、熊本地震の際には熊本エリアのほぼ全戸の供給が停止し、自社だけでの対応が困難となった。こうした中、全国のガス会社からの応援を受けて早い復旧を実現することができた。

総務広報部総務グループの森本泰臣マネジャーは、「復旧応援を受け入れる際のノウハウはできたものの、今後は感染防止策も加えなければなりません。他社への応援が発生した場合も、自社で対策を取った上で応援に向かう必要があります」と、複合災害への対策を早急に取りまとめているという。

一方、社内では、医療従事者への自発的な募金活動が起こり、福岡県を通して約660万円の支援金を送った。沼野良成執行役員は、「一人ひとりが、インフラ企業でエネルギー供給事業に従事している責任を感じています。医療従事者の方々が不眠不休で現場を支える姿が、災害復旧時の自分たちの姿に重なったのでしょう」と話す。

ウィズコロナの時代、社員の感染防止という課題は、BCP対策の重要な鍵になっていく。

初の地熱発電所を奥飛騨温泉郷に 再エネ積極参入で自給率向上へ

【中部電力】

中部電力ミライズの100%子会社であるシーエナジーと東芝エネルギーシステムズは、共同で奥飛騨温泉郷中尾地区(岐阜県高山市)に「中尾地熱発電所」を建設する。9月に着工し、2021年度下期の運転開始を予定。中部電力グループにとって初めての地熱発電事業になる。

中尾地熱発電所第2生産井の噴気の様子

奥飛騨温泉郷中尾地区は、源泉の蒸気量が豊富で高温。地熱発電に適している地域だ。中尾地熱発電所では、中部地区で初となるフラッシュ方式(蒸気発電方式)を採用し、出力は最大1998kW。全量を中部電力パワーグリッドに売電し、約4000世帯分の電力を賄う。

生産井は深度1100mと1500mの2本で構成。地下から噴出する高圧蒸気と、同時に噴出する熱水を減圧沸騰させた低圧蒸気を蒸気タービンに送り、発電を行う「ダブル・フラッシュ方式」を採用した。一般的なシングル・フラッシュ方式に比べ、約20%高効率になる。ダブル・フラッシュ式を採用する発電所としては世界最小規模だ。

噴出する熱水は発電に活用するだけでなく、地元の温泉事業者へ供給する。地域活性化に向けた取り組みを検討し、温泉事業と地熱発電事業が共存・共栄していくモデルケースの構築を目指している。

再エネ開発を積極展開 設備量倍増を目指す

中部電力グループは洋上風力発電にも力を入れている。

6月から洋上風力の有望地点とされている、秋田県由利本荘市沖での環境影響評価を開始した。三菱商事パワーなどと3社で開発の可能性を検討しており、着床式で最大出力84万kW、出力8000~1万2000kWの風車を最大105基設置する計画だ。

さらに三菱商事パワーと2社で取り組む能代市・三種町・男鹿市沖でも環境影響評価を開始。着床式で最大出力48万kW、由利本荘市沖と同出力の風車を最大60基設置する計画だ。

ほかにも、丸紅などと秋田港・能代港沖で洋上風力発電事業の実施を決定しており、22年の商業運転を目指している。

中部電力グループは20年度の事業計画で、再生可能エネルギー開発の取り組みとして「30年ごろに200万kW以上の開発」を目標に掲げている。18年度末時点の約2倍の設備容量だ。達成すれば、年間300万t規模のCO2削減効果となる。

同社は供給エリアにとどまらず、地熱・洋上風力をはじめとした再エネ開発や保有拡大を全国で積極的に進める。国内のエネルギー自給率向上と低炭素社会の実現を目指していく方針だ。

「3密」での感染拡大を抑制 空気循環で清浄な空間を実現

【メーカー編/高砂熱学工業】

新型コロナウイルス禍の下、大雨や地震などの自然災害が発生すると、避難所や復旧支援部隊などの集団では「3密」の危険性が高まる。

避難所で一人当たり2m四方の空間を確保する場合、受け入れ人数は通常の4分の1程度になるといわれる。各自治体は、学校の教室や廊下、スポーツ施設、自治会館などを臨時の避難所にすべく準備を進めているところだ。

メディカル用クリーンブース「バリフローⅢ」は飛沫感染リスクを低減できる

高砂熱学工業のメディカル用クリーンブース「バリフローⅢ」は、新型インフルエンザが流行した2008年に開発。

同社が空調設備分野で培ってきたエアロゾル制御、気流可視化、気流制御技術などのノウハウと、仙台医療センターの知見をもとに製品化し、09年に販売を開始した。

医療従事者や患者が飛沫感染するリスクを低減する効果が期待できる。

陽圧・陰圧兼用タイプで、消費電力は350W。FFU(Fan Filter Unit)とアルミフレーム、ビニールカーテン製のブースで構成されている。

感染症がパンデミックの際はブース内を陽圧にし、医療従事者がブース内に入って診療などを行う。ブース内は、HEPAフィルタ(集中治療室やクリーンルーム、原子力施設の換気装置用で使用される)で塵埃を除去し、空気を清浄化。大風量ファンで空気を供給し、適正な気流を成形する。

清浄化した空気の循環はブース外にも及び、受診者側にも清浄な空間を作る。診察室程度の広さなら室内全体の清浄化が可能だ。

感染症の発生が初期の場合は、受診者がブース内に入る陰圧タイプで使用する。陽圧と陰圧の切り替えは10分程度の簡単な作業だ。

バリフローⅢを避難所に設置し、医療従事者が感染リスクを減らした環境でPCR検査などを行うことができる。避難所で医療機関受診の判断ができれば、感染患者を受け入れる病院や宿泊施設への搬送もスムーズになる。

個別隔離で拡散防止 搬送時の一時待機に活用

メディカル用クリーンフード「バリフード」は、ベッドに横になった受診者の上半身にかぶせて使用する隔離用フードだ。人工透析時のウイルス拡散を低減するために開発された。

医療用隔離フード「バリフード」は 同じ室内での感染を抑制できる

FFUとパイプ式フレーム、ビニールカーテン製フードで構成されており、HEPAフィルタでフード内を清浄化して排気を行う。消費電力は29W。重さ27㎏でキャスター付きなので移動も楽だ。

避難所や現地災害対策本部、復旧支援部隊において、急に体調が悪化した人を医療機関へ搬送するまでの間、隔離用として活用が見込める。救護室でも、怪我などの負傷者と一緒に搬送までの間待機することができる。いずれも2m四方の空間の確保が不要になる。

同社はバリフローⅢ、バリフードとも夏までにさらなる増産を進め、災害時の感染拡大の抑制をサポートするとしている。

資機材運搬で労働環境改善の無人ヘリ 災害時の早期復旧にも大きな期待

【九州電力送配電】

山岳地帯での電気工事作業員の業務は過酷で、今後の人材確保は喫緊の課題だ。
無人ヘリの導入は人力運搬を解消し、災害時には早期の復旧作業を実現する。

資機材をコンテナに入れて運搬する無人ヘリ

小売り全面自由化や発送電分離などの電力システム改革で、電気事業を取り巻く環境は大きく変化した。こうした中、高経年設備の更新量が増加している半面、送電線工事を行う作業員の減少に拍車が掛かっている。

送電線工事は山岳地帯で実施するものが多い。作業員は工事現場まで急峻な山道を毎日長時間通勤しなければならず、厳しい労働環境にある。さらに、資機材を運ぶための小型運搬車が使用できない急傾斜の運搬路では、作業員が25 kgほどの資機材を背負って何往復も上り下りし、人力で運ぶ。急斜面には危険も伴う。

今では運搬業務専門の作業員がいなくなり、架空送電線工事に従事する作業員が運搬を兼務しているのが現状だ。

少子高齢化も伴い人材確保が難しく、人力運搬の削減は送電業界にとって喫緊の課題となっている。

送電線工事に30年以上携わっている、九電送配電・送変電技術センターの近藤正徳・送電工事技術グループ長は「グループが発足したのは2年前。送電線工事現場の高度化・効率化に取り組むのが命題で、やるべきことははっきりしていました」と当時を振り返る。グループは4人体制だ。

人力運搬をなくす無人ヘリ コストや工期も削減

過酷な労働で人が辞めていく、何よりもまず作業員を楽にしたい―。

そう考えた近藤さんは、ヤマハ発動機の農薬散布用無人ヘリコプターに着目した。35 kgまで荷物を積むことができ、数千台出荷の実績もある。

送電線工事現場に導入したいと同社に連絡を取り、さまざまな形状の資機材の運搬が可能で、標高2800mまで対応できる無人ヘリの導入検討を依頼した。

その結果、資機材はコンテナに入れ、長尺のものは吊るして運搬できるヘリが開発された。

どんな形状の資機材もバランスよく運搬できる

「安全で安定した飛行ができるよう、さまざまな場所で実証試験を行いました。現在は無人ヘリによる資機材運搬工法を確立し、気象条件が整えば、35 kg以内の全ての資機材が安全に運搬可能です」と、同グループの鳥越浩義さんは試行錯誤の成果に胸を張る。今後は積載重量の増加や運搬効率の向上に取り組む。

工事現場で必要な約1tの資機材を運ぶ場合、遠距離の人力運搬では作業員4人で4日かかるが、無人ヘリを使用すると1日で運ぶことができる。作業員は、到着した資機材を現地で受け取る2人で済む。 

一昨年の西日本豪雨で鉄塔周辺が崩壊した北九州幹線の復旧工事では、無人ヘリを使って1・5tの資機材を17時間で運搬した。小型運搬車での運搬に比べ500万円のコスト削減と、2カ月の工期短縮を実現している。

ガソリンを燃料とする無人ヘリは約100分間、90㎞の連続飛行が可能だ。バッテリー式のドローンに比べ約10倍の飛行時間となり、担える役割も多い。

離着陸は目視でマニュアル操作を行う。飛行中は自動操縦に切り替え、作業地点上空まではGPS制御する自律飛行だ。飛行ルートは、住宅の密集地や交通量の多い道路を避けるなど、最適なルートの検討を行う。

「無人ヘリの導入を電力業界だけでなく他業界にも広げ、『運搬は無人ヘリ』が当然の世の中になってほしい。人力運搬業務の機械化は私のライフワークともいえます」(近藤正徳グループ長)。長年にわたり、作業員が苦労してきた姿を見ているからこその思いだ。

近藤正徳グループ長(左)と鳥越浩義さん

【太陽光】新しい業界ビジョン 20世紀型からの脱却

コロナ禍の影響が日本の太陽光発電業界にも及び、短期的な収益悪化に加え、将来を危惧する声も聞こえてくる。そんな状況下、少し明るいニュースがあった。

太陽光発電協会(JPEA)が新しい業界ビジョンを公開した。2050年の太陽光発電(PV)の導入量を、従来の2億kWでは不十分であり3億kWを目指すべきとする。簡単に言うが、設備容量としては日本の最大電力需要の2倍近い数字だ。将来の話とはいえ大胆過ぎはしないだろうか。JPEAの主張は、国の目標である「50年までに温室効果ガス80%削減」を実現するには、PVの導入量は少なくとも3億kW(電源構成の31%)は必要とのこと。それだけの大量導入になると、調整力は足りるのかとか、国民負担は大丈夫かなどの疑問が湧いてくる。その疑問に対し、JPEAは出力抑制を10%以下に抑えるための蓄電池の必要量や、便益が費用負担を上回ることなどを定量的に評価し、3億kWは技術的、経済的にも不可能ではないことの根拠を示している。この点では、従来のお手盛り業界ビジョンから一歩進み、率直に評価できる。

ただ、現実にはFIT価格の低下や系統制約、度重なる制度変更などの影響で、PVの導入量は減少傾向にあり、このままでは3億kWの実現は極めて困難だ。コロナ禍の影響を克服して、どうやって縮小傾向の市場を拡大傾向に反転させるのか。このことについてもJPEAビジョンにヒントを見出すことができる。

例えば、コスト競争力をつけるために燃料費がかからないPVの稼働期間を延ばす工夫や、小売り電気料金との比較で競争力に勝る自家消費モデルへの転換など、今までのモデルから脱却することで可能性が見えてくる。ただ、これら民間の努力だけでは現状の打開は難しい。やはり、FITからの自立と主力電源化に向けた国の本気でぶれない施策が何よりも重要である。そのためにも50年より先を見据えて、国の脱炭素化を本気で目指し、デジタル化や分散化、全体最適化が遅れている20世紀型の電力システム、官僚機構からの脱却を切に望む。(T)

【住宅】自家消費の蓄電池 支援の正当性は

経産省は6月5日に公開した「エネルギー白書2020」の中で、住宅用太陽光発電の固定価格買い取り制度(FIT)の終了が、2023年に累計165万件、670万kWに達することに言及しつつ、今後は余剰売電を前提としたFITから、FIT対象外となった自立電源と蓄電池や電気自動車(EV)を組み合わせて自家消費率の向上を図っていくことが、新しいZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)のあり方として検討されるべきとしている。

増えていく卒FIT太陽光に対応し、今年は蓄電池を売りたいメーカーや事業者が群雄割拠している。しかもテスラの「Powerwall」という格安の黒船が予約販売を開始しており、激しい競争が予想されている。

一方、住宅用太陽光発電に蓄電池を追加する際の支援政策としては、「災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金」という補助制度がある。18年に発生した北海道胆振東部地震による北海道全停電を受け整備された。公募は昨年の11月末でいったん終了。現在は6月末が締め切りの追加公募を残すのみで、以降追加の予定はないという。

もともと同制度は時限的なもので、しかもその目的は災害対策であるので、必ずしもエネルギー白書に示されているような平時の自家消費を目的としたものではない。終了によって勢いづくかと思われた家庭用蓄電池市場にブレーキが掛かるかもしれない。

制度の終了に伴い、追加の支援を求める声があるが、そもそも太陽光発電の自家消費を目的とした家庭用蓄電池の価値が、その蓄電池の価格に見合うものなのか、公的な支援に値するものなのか、という疑問もある。

多くの場合、節電効果で蓄電池のコストを回収することは困難であり、さらに蓄電池がなくても電力事業者による電力の買い取りや仮想預かりのサービスがあるので、必ずしも蓄電池を購入する必要はない。万が一のための非常用電源としても、蓄電池を購入可能な個人のみを支援することは、公平性の観点からも問題がある。(T)

【終了】欧州次世代エネルギーシステム動向視察

★オーストリア・ウィーン

〜先進スマートシティ事例調査〜

■Aspern(アスペルン)地区

アスペルン・プロジェクトでは太陽光などの自家発電と蓄電池を利用して地産地消を進めており、エネルギー事業者のWien Energie、通信事業者のWiener Netze、Siemems、オーストリア技術研究所と共同で、ASCR(Aspern SmartCity Research) という研究会社を 設立。ウィーン市が進めるマイクログリッド型エネルギーシステム構築プロジェクトです。

〜エネルギー業界のブロックチェーン取引・サービスの動向〜

■Wien Energie, Grid Singularity など予定

オーストリアはエネルギー業界としてのブロックチェーンへの取り組みに熱心な国であり、ユーティリティ企業やスタートアップ企業での取り組みが活発になっております。

〜VPPビジネスへの取り組み動向〜

■cyberGRID社 など予定

VPPソリューションの開発のスペシャリストとして2010年に設立.。ストレージ容量と大量の断続的なエネルギーを備えた分散型グリッド用のITプラットフォームを提供。既存の発電資源の有効利用、貯蔵、そして再生可能エネルギー資源の統合を促進します。

★デンマーク・コペンハーゲン

■State of Green・・デンマークの再生可能エネルギー全般の紹介

■DBDH(デンマーク熱供給協会)・・地域熱供給全般の紹介

■大規模地域熱供給システム(第4世代地域熱供給導入済の施設など)

 及びその熱導管敷設の現地調査予定

★デンマーク・オールボー

■House of Energyでのセミナー

  (熱供給事業者、研究者、熱供給関連企業の産業クラスター)

■太陽熱収集、蓄熱槽

■熱利用を含めたエネルギー・マネジメント・システム、断熱パイプ、

 スマート熱メーターなどの周辺技術

■オールボー周辺の熱供給関係施設(木質ペレット・ワラを利用したボイラー など)

★デンマーク・フレゼリシア

■Energinet DK (電力と温熱の相互融通システム)