【終了】水素社会を拓くアンモニア

※本セミナーは、2020年2月24日に開催し終了したものです。

<プログラム>
【13:00~13:30】「CO2フリーアンモニアによる低炭素社会の実現」
東京ガス株式会社アドバイザー 村木 茂 氏
【13:30~14:00】「なぜ、アンモニアか? ~CO2フリー燃料、水素キャリアとしてのアンモニアの可能性~」
住友化学株式会社主幹、元内閣府大臣官房審議官 塩沢 文朗 氏
【14:00~14:30】「JERAゼロエミッション2050」の取り組みとアンモニア混焼の展望(仮)」
株式会社JERA 経営企画本部 調査部長 坂 充貴 氏
【14:30~15:00】「日本の燃料アンモニア導入・拡大に向けた取組について(仮題)」
経済産業省資源エネルギー庁 資源・燃料部 政策課 石油・LNG企画官 渡邉 雅士 氏
【15:00~16:00】パネルディスカッション
モデレーター/塩沢氏、参加者/村木氏、渡邉氏

【特集2】超々臨界圧・微粉炭火力の新1号機 バイオマス混焼進め低炭素化へ エネ共存時代の火力運用

電源開発 竹原火力発電所

低炭素化に向け石炭火力の運用に新しい視点が必要となってきている。再エネ大量導入を見据えて負荷調整機能を高めながらバイオマス混焼も進める。

2020年6月、広島県竹原市の竹原火力発電所で約6年の歳月をかけ建設していた新1号機が営業運転を開始した。

新1号機は、出力25万kWの旧1号機と出力35万kWの2号機の合計60万kWと同容量の出力を持つ。

竹原火力新1号機と3号機の全景(提供:Jパワー)

蒸気条件として超々臨界圧(USC)を採用し、発電所の熱サイクルを最適化して向上させ、主蒸気温度600℃を実現(再熱蒸気温度は630℃、主蒸気圧力は27MPa)。微粉炭燃焼の火力発電設備として世界最高水準となる発電端効率48%を達成している。

さらに最新鋭の排煙脱硝・排煙脱硫・集じん装置の導入で、新1号機は旧1号機・2号機に比べ硫黄酸化物(SOx)・窒素酸化物(NOx)・ばいじんを大幅に削減。高効率の達成と最新鋭の環境対策設備の導入は、地域社会への環境負荷低減をもたらしている。加えてCO2排出量を大幅に削減。発電電力量当たりの排出量を約2割削減している。

また、さらなる低炭素化を実現するために木質バイオマス燃料を積極的に活用することにも注目したい。一般的には数%程度の混焼率であるが、竹原火力では10%の混焼率を達成すべく高い目標を掲げている。

今後も導入拡大が進む再生可能エネルギー電源の出力変動にも柔軟に対応する、高い運用性能を実現する。

CO2削減に挑戦する火力 エネルギーの安定供給のために

新1号機の建設は14年に始まった。旧1号機(1967年運転開始)、旧2号機(74年)は設備を廃止するまで可能な限り稼働させつつ、3号機(83年)の運転にも支障をきたさないよう建設を進めてきた。廃止設備を運転させながら建設を進める「ビルド&スクラップ方式」を採用し、通常の建設工事に比べ1.5倍の工期をかけながら、難易度の高い建設をマネジメントしてきた。その間、定期的に工事状況についての説明会を実施し、刊行物を発行するなど地域の理解を得ながら工事を進めた。

民家との距離も近い立地であるため、旧1号機の運転開始から半世紀たった現在も変わらず環境対策に取り組み、地域住民とのきめ細かい情報共有に努めている。

竹原火力発電所は半世紀を超えてなお地域とともに歩み、高効率石炭火力の世界最高技術でCO2削減に取り組み、国内の安定供給を支えていく。

【特集2】アンモニア混焼でCO2を削減 石炭火力で実現する燃焼技術

レポート/IHI

CO2フリーの燃料として期待されているのが、アンモニア(NH3)だ。水素と違ってマイナス33℃または8・5気圧で液化し運搬できるため、特殊なタンカーは不要。既に農業分野で肥料として使用しており、製造の技術開発も必要ない。また、可燃性ガスなので直接タービンに入れて利用できるといった利点がある。

IHIは内閣府が2014年度から18年度にかけて取り組んだ「戦略的イノベーション創造プログラム」に参画し、同社のガスタービン、微粉炭焚ボイラー、SOFC(固体酸化物形燃料電池)でアンモニア混焼の原理実証を行った。

相生事業所では石炭火力ボイラーの試験設備にアンモニアを20%混焼し、CO2の排出量を直接的に20%削減。IGCC(石炭ガス化複合発電)よりもCO2の排出量は少なくなり、排ガス中の未反応NH3はほぼゼロ、NOxも石炭と同等との結果が出た。

石炭火力向け大容量燃焼試験設備(相生事業所内)

現在は混焼技術の高度化を目指すNEDOのプロジェクトで、石炭火力向けに60%混焼を可能にするバーナーを開発した。21年度以降に100万kW級の商用石炭火力での実証開始を目指す。ガスタービンではアンモニア100%専焼の研究を開始予定だ。

大規模改修は不要 既存火力でもCO2を削減

資源・エネルギー・環境事業領域ビジネス創生グループの須田俊之グループ長は、「CO2削減への取り組みが加速している今、規模は小さくても早く社会実装することが重要です」と話し、使いやすさの面でもアンモニアは非常に適したソリューションだと強調する。

設備を大規模改修しなくても、IHIが開発したアンモニア混焼用のバーナーを導入すればCO2は削減できる。そのほか必要な設備はアンモニア供給のためのタンクと気化器のみだ。

IHIは日本エネルギー経済研究所とサウジアラムコが進めるブルーアンモニアのサプライチェーン実証試験に協力しており、混焼試験の一部にはこのブルーアンモニアを使用している。

サプライチェーンが本格化し導入も進めば、カーボンニュートラルな燃料としてアンモニア活用への期待はさらに高まる。

新電力の苦境は自己責任か 松村東大教授が電力危機で提言

今冬の電力需給ひっ迫により卸市場価格が高騰し、多くの新電力が経営危機に陥っている。電力政策に関わる松村敏弘東大教授は、今回は天災と比較し得る事態であり、新電力の救済を検討すべきだと指摘する。

昨年12月下旬から電力卸市場で、異例な価格高騰が続いた。全容がはっきりしない中、まだ十分に事態を消化できていない私がうかつに発言するのはリスクがある。このような災害ともいえる事態では、慎重に発言する必要がある。しかし、今後理不尽な議論が横行することを懸念している。

今冬の卸価格の継続的な高騰の主な原因は、LNGの調達量不足に起因するkW時の不足で、発電設備(kW)の著しい不足ではない。にもかかわらず、今冬の需給ひっ迫を口実にkWを調達する容量市場の需要曲線の引き方や埋蔵電力の議論などをゆがめ、高すぎる消費者負担引き下げの改革を阻害する、あるいは石炭火力のフェードアウトの議論に逆行する、火事場泥棒のごとき議論が横行しないか懸念している。

発電事業者の責任追及は酷

12月上旬まではかなり穏やかな天候だったため、LNGの調達が厳寒に備えるものになっていなかったと推測している。穏やかな天気が続けば、需要減と太陽光の発電量増加が見込まれ、LNGを厚めに調達していれば結果的に使い切れず、その非効率的な利用で損失が出る可能性もある中、厳寒への備えが足りなかったと発電事業者の責任を追求するのは酷。調達量不足が見込まれた後に慌てて追加調達する局面では、さまざまなLNGの供給支障要因や国際的な需要増が重なり、十分に調達できなかった。

複数の大きなLNGの供給支障を主因として、天候、発電機トラブル、新型コロナウイルスの影響など、ここの要因は「災害」と呼べるレベルでないとしても、これだけ重なれば、大地震などの天災とも比較し得る事態と整理するのが妥当だ。

価格上昇は正常なメカニズム

需給ひっ迫によって価格が上昇すること自体は正常な市場メカニズムの現れだ。正常に市場メカニズムが働けば、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格が200円、あるいは将来はさらに高くなるコマが現れても不思議ではなく、事業者は相対(金融)契約、先物市場やベースロード電源市場で備えておくべきリスクだ。一部の新電力は今冬以前のスポット価格の低下傾向に目を奪われ、リスクに対する正常な感覚と対策が欠如していたのではと疑っている。

一方で、多くの有識者や発電事業者は、今冬の需給ひっ迫の前には、「変動再エネが普及すれば卸市場価格は傾向的に低下する」「卸市場価格には少なくとも一部の固定費は含まれておらず、取引所で電力を調達する小売り事業者は固定費負担を免れてただ乗りしている」などと、ミクロ経済学のイロハが分かっているのか怪しい、物事の一面しか見ない愚かな議論を振りまいてきた。これが正しければ、固定費の乗ったベースロード電源市場を活用せず、小売り事業者が過度にスポットに頼る経営をしたとしても、価格高騰への備えを怠っても、むべなるかな。

 事業者は価格変動に対応すべきだ

理論的には、変動再エネが普及すれば、卸価格がほぼゼロ円になるコマの増加はあるものの、気象条件や供給支障などのショックに反応して価格が高騰する可能性も増加し、価格がただ下がるのではなく変動が激しくなると予測すべきだ。固定費はこの価格高騰時に多く回収されるものだ。あらかじめ手当てしなければ、価格高騰時に小売り事業者は多額の固定費相当額を負担することになる。こんな当然の考えが普及していなかったことは、小売り事業者だけの責任ではない。

さらに、私自身もLNGの調達不調によって、これほど長く取引所の価格高騰が続く事態がこんなに早く起こるとは予想していなかった。今回の事態は想定外の災害とも言える事態で、災害により新電力が壊滅して競争が失われる事態は避けるべき。需給ひっ迫はまだ続いているがその収束を待たず、早急に新電力の救済の可否やそのやり方を検討する必要がある。

一方で今回の事態は長期的な制度設計の観点からも、学ぶべき多くの教訓を含んでいる。kWだけでなくkW時の確保も見据えた安定供給対策とその費用負担の制度設計、燃料制約下での限界費用概念の再整理、リスクを低コストで合理的にヘッジできる環境整備、各種の電力市場、とりわけインバランス市場の再検討など多くの課題がある。

今冬の悲惨な状況を招いた一つの原因は、不適切なインバランス料金かもしれない。(基本的には調整電源の限界費用と等しい)社会的限界費用よりも高いインバランス料金が持続するリスクが起点となって、卸価格を高騰させたと疑っている。従来の議論は、インバランス料金が社会的限界費用を下回ることの弊害に偏り、逆の事態に対応できなかったのかもしれない。

短期対策と制度設計の峻別を

一方で、恒常的な厳しい上限価格規制などの短絡的な制度設計はすべきでない。電力供給の社会的限界費用が200円になるコマでは、価値が200円を下回る電力消費は積極的に抑制されるべきだ。そのような抑制を伴うデマンドレスポンス(DR)に貢献した消費者・事業者が正当に利益を得られる状況をつくり、DRの合理的な発展を促すためにも、卸市場価格が高くなることを安易に「悪」と捉えるべきではない。今冬の経験を、都合よく解釈して制度改革をゆがめ、長期的に消費者負担を増やしてはならない。 今回の問題は卸価格が高いコマがあったことではなく、社会的費用に見合わない高騰が異常に長く継続していることにある。問題をはき違えてはならない。

松村敏弘 東京大学社会科学研究所 教授 1965年生まれ。88年東京大学経済
学部卒。博士(経済学、東大)。大阪大学社会経済研究所助手、東京工業大学
社会理工学研究科助教授を経て現職。専門は産業組織、公共経済。

水素エネルギーへの期待の高まり 燃料電池製品が次々に登場

【リレーコラム】大平英二/新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)次世代電池・水素部統括研究員

水素への関心が国内外で高まっている。2017年12月に日本が世界で初めて水素戦略を策定した後、近年では欧州各国をはじめ韓国、オーストラリア、チリなど多くの国々で水素戦略を発表し、国を挙げて水素の取り組みを加速している。水素に関する国際会議も盛んで、「ウェビナー」というコロナ禍で普及したツールも相まって、大きなものでは1万人規模の参加者という実績もあるようである。世界が目指す「カーボンニュートラル」の実現に向け、水素が大きな役割を果たすことへの期待の表れといえる。

これには、水素を利用するアプリケーションである燃料電池製品が世の中に出てきたことも大きく貢献しているのではないか。09年に販売開始された家庭用燃料電池は国内で30万台を超え、14年12月に市場投入された燃料電池自動車も、20年12月には第二世代が発表されるに至っている。都内では燃料電池バスを頻繁に見かけることができ、水素ステーションは全国で約150カ所を数えるほどになった。他国では燃料電池列車や燃料電池船も開発されている。

とはいえ、これらは「水素社会」の実現に向けた第一歩にすぎない。社会システムの中で、どのように水素を利活用していくか、グランドデザインを描いていくことが必要であろう。その点、欧州の政策の打ち出し方は参考になる。普及が拡大する再生可能エネルギーを電力セクターのみならず、運輸・産業・熱の各セクターで利用する「セクター・カップリング」の概念は、さまざまなセクターをつなぐという水素の役割を端的に指し示すものといえよう。また、「Hydrogen Valley」構想は、地域主導で低炭素社会を構築するというメッセージと受け止めることができる。

水素を巡る夢物語が現実に

日本でも1993年に水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術プロジェクト、通称「WE―NET」プロジェクトで水素社会の絵が描かれた。これは他国で製造した水素を日本に運び、水素航空機も含めてさまざまに利用するという将来の姿で、当時は夢物語ともされた。だが、現代では燃料電池車が走り、水素タンカーが開発され、水素飛行機も開発計画が発表されるなど、夢が現実につながっている。 先達の長年にわたる取り組みが下敷きとなっていることは言うまでもないが、われわれはこれを享受するだけでなく、新しい未来の姿を描き、50年カーボンニュートラルを担う次の世代にいかにつなげていくか、あらためてその責務の大きさを感じるところである。

おおひら・えいじ 1992年東京理科大理学部卒、NEDO入構。経産省出向、NEDOバンコク事務所駐在、蓄電技術開発室室長などを経て、2018年7月から現職。

次回は日本エネルギー経済研究所新エネルギーグループ研究主幹の柴田善朗さんです。

リモコンと浴室暖房乾燥機を活用 健康で快適な暮らしをサポート

【レポート/パーパス】

住宅のリフォームは、水回りを一新する機会となる。特に浴室はその機能が年々充実し、もはや入浴は体を清潔に保つためだけでなく、リラックス効果など健康維持のための重要な時間だという認識が浸透している。

パーパスの給湯器リモコン「AXiSスマート(900シリーズリモコン)」は2019年に登場した。「安心入浴サポート機能」を搭載し、ドアセンサー、水位センサー、人感センサーで浴室内の事故を防ぐ機能が付いている。浴室内の安心安全をサポートして異常を素早く家族に気付かせると評判だ。

給湯暖房熱源機AXiS
安心入浴サポート機能 説明動画

このAXiSスマートは、健康管理にも活用できる。コロナ禍で生活スタイルが変わり、スポーツができなくなるなど運動不足を感じる人も多い。AXiSスマートは、あらかじめ基本情報と体重をセットしておけば、浴槽に漬かるだけで水位センサーが体脂肪率と消費カロリーを測定する機能を持つ。測定したデータはクラウドで一括管理し、専用アプリ「パーパスコネクト」を使ってグラフ化。推移がひと目で分かり運動不足解消のきっかけになる。

個別の基本情報は5人分までメモリー登録が可能で、入浴のたびに登録の必要はない。また暗証番号登録で個人のプライバシーも守れる。

体脂肪率の変化をグラフで確認

浴室暖房乾燥機で家事軽減 アプリで室内の温度を確認

コロナ禍では自宅で過ごす時間が長くなり、食事や洗濯の回数が増えるなど、家事の負担増にもつながった。パーパスはAXiSスマートを設置する際、浴室暖房乾燥機も併せて提案している。浴室暖房乾燥機を取り付ければ、洗濯物が増えても短時間で乾かせる上、換気しながらパワフルな温風で浴室を乾燥させて、カビやぬめりの原因となる湿気や結露を抑えることができる。自宅で過ごす時間が長くなる中、洗濯物が外に干せなくなる花粉の時期やPM2・5が気になる時に大量の洗濯物を干す場所に悩まされずに済む。

また、冬場は暖かい居間と寒い脱衣所や浴室、また入浴の際の熱い湯との大きな温度差がヒートショックの原因になるが、浴室暖房乾燥機であらかじめ浴室を暖かくしておけば、入浴時の事故を防ぐことにもつながる。夏場は涼風機能を使用して、浴室内での熱中症対策が可能だ。

さらにパーパスコネクトは、対応する床暖房リモコンを使用している場合、その部屋の温度もスマートフォンで確認できる。外出先から室内の温度を手元で確認し、アプリから床暖房のオンオフをすることで、より快適な暮らしを実現する。

営業企画部の鈴木孝之部長は「『おうち時間』をいかに豊かに過ごせるかという商品提案をしていきたい」と、これからのニューノーマルな暮らしに寄り添う製品作りを目指すとしている。

インフラ企業ならではの団地再生 継続的に関わり地域の未来を育む

【西部ガス/福岡県宗像市】

福岡県宗像市は福岡市と北九州市の中間に位置し、両政令指定都市のベッドタウンとして発展を遂げてきた。

同市にある九州最大級の団地「宗像・日の里」は21年で開発から50周年を迎える。日本住宅公団(現・UR都市機構)が開発し、面積は東京ドームの50倍に近い約217万㎡。駅に近く、多くの人が移り住み、街は活気に溢れていた。だが半世紀を経た今、建物の老朽化や空き家の増加など、課題を抱える。住民の高齢化率約35%という高い数字は、日本の10年後の姿だという。

UR都市機構は20年、公募していた日の里団地の一部、約1万8000㎡の土地建物を「福岡県宗像市日の里団地共同企業体」に譲渡した。共同企業体は西部ガスのほか、住友林業、パナソニックホームズ、セキスイハイム九州などのハウスメーカー8社と、街づくりをプランニングする東邦レオの計10社が名を連ねる。

10棟の団地が立ち並んでいた土地は6棟を解体撤去した後に引き渡されたが、既存棟を生活利便施設として活用し、拠点化することが条件として挙げられていた。既存棟の活用と新築の戸建というハイブリッド型の団地再生事業だ。


ハイブリッド型団地再生は、日の里5丁目地区で進められる

西部ガスの都市リビング開発部暮らし・まちづくり推進グループの今長谷大助マネジャーは、「ここは都市ガスエリアではないので、最初は参加しようとは思っていませんでした」と振り返る。

こうした中、グリーンインフラを担う東邦レオの吉田啓助ディレクターが、西部ガスが手掛けた北九州市城野地区の街づくりを視察。西部ガスとチームを組めば新しい取り組みができると考えた。互いに街づくりへの思いを話すうち、「地域に元気を届けるインフラ企業になりたい」という同じ思いを持っていると気付いた。

西部ガスは共同企業体に参加して土地建物を所有する一方、東邦レオと連携して既存棟を共同運営する体制を取った。

所有者が運営するという形態は従来のエリアマネジメントにはない発想だ。開発した土地に長期的に関わることはデベロッパーの事業として成り立たないからだ。

団地再生は、既存棟1棟を残すことになった。残した48号棟を「さとづくり48」と名付け、リノベ改修。1階を中心に地域に開かれたコミュニティースペースを展開する計画だ。地ビールを製造するブリュワリー、住民のためのDIY工房、コミュニティーカフェ、保育所、福祉施設などの入居が予定されている。

改修してコミュニティー拠点となる既存棟「さとづくり48」

また、更地には64の戸建住宅を新築する計画だ。一帯を緑地化し、塀や垣根で敷地を区切らず住宅を建てる。キャンプ場の中のバンガローのイメージで、公園の中にいるような暮らしをつくり、コミュニティー形成を後押しする。

「周りとの関係性の中で暮らす場所にしたい。災害時の共助や20年後、30年後の助け合いが生まれるコミュニティーづくりに寄与したいです」(今長谷マネジャー)

事業のコンセプトは「サスティナブル・コミュニティ」だ。半世紀にわたる日の里の歴史を大切にしつつ、新たなコミュニティーを付加する―。コミュニティーの持続可能性を軸とした社会の実現を目指している。

子どもを中心に街をつくる 地域を巻き込むプロジェクト

コロナ禍では、運営の計画を大きく方向付ける出来事があった。例年通りの総合学習ができなくなった、日の里地区の小中一貫校である日の里学園から、工事エリアの囲いに絵を描かせてほしいとの申し入れがあったのだ。

これをきっかけに、地区内の小・中学校に通う子どもたちのアイデアを取り入れた街づくりが始まった。今ではPTAや学校の先生、団地の自治会や地域の大人を巻き込んで、子どもたちが実現したいこと、やりたいことを大人が全力で叶えるというプロジェクトに発展した。

「10年後、20年後の街を作るのは、この子どもたちです。自分の街は自分で変えられるという思いが、子どもたちの中に芽生えています」(今長谷マネジャー)

大人と子どもが一緒になって街をつくる

西部ガスと東邦レオは運営の一環としてこのプロジェクトを積極的に支援している。団地再生は住民が主役であり、地域が活性化することによって実現すると考えているからだ。

今長谷マネジャーは「需要家を増やすことも大切ですが、日の里に深く継続的に関わることで、『圧倒的な信頼』を築きたいと思っています。インフラ企業だからこそできる街づくりなのです」と、日の里との関わりは新しい営業の形だと意気込む。地域の交流が盛んになり、日の里団地が活性化すれば、団地の入居率も上がって、結果としてガスの利用も増える。戸建エリアでプロパン利用のエネファームが設置されれば、災害に強い街になる。

「さとづくり48」の本格オープンは21年5月。戸建エリアは9月に着工し入居開始は22年4月の予定だ。ハイブリッド型団地再生という日の里の取り組みは、全国の団地再生のモデルとして注目を浴びることになりそうだ。

USBは電線路の夢を見るか? 進む直流化で新ビジネスの可能性

【リレーコラム】橋本道雄/京都大学特定教授

2014年の春、ブルームバーグNEF社が主催する世界未来エネルギーサミットに参加する機会を得た。ジョン・ブラウンやエイモリー・ロビンスなど錚々たるメンバーによる講演もさることながら、エネルギービジネスの未来を占う挑戦的なメッセージがあちこちに掲げられ、熱い議論が交わされていた。その中の一つに「2025年、USBはコンセントに取って代わるか?」というものがあった。確かにスマートフォンやPCなど身の回りに情報機器が増え、交流のコンセントからAC‐DCアダプターを経て直流で充電されている。「いっそのこと最初からUSBで供給してくれれば」という気持ちはわからないでもない。

あらためて、そういう目で見回してみると直流化はあちこちで進んでいる。需要側では、モバイル機器のみならずテレビなどの大型家電でもアダプター経由で電力供給されている。試作段階ではあるがエアコンの直流仕様もあるそうだ。さらにその先には電気自動車だってある。12年にUSB‐PD(Power Delivery)の規格が制定されて最大で100Wの電力供給が可能になったそうで、この流れを加速しそうだ。発電側を見ると、太陽光発電や燃料電池など直流の発電機の普及が進んでいる。送配電では、例えば北海道と本州の間などの長距離大容量の送電には直流送電が使われている例がある。欧州においては、近年の洋上風力発電の著しい拡大により海底での送電網構築が必要になっているが、そこでは高圧の直流送電も検討されていると聞く。

さらに配電はといえば、内閣府とソニーコンピューターサイエンス研究所が、13年に沖縄科学技術大学院大学の教職員住宅を使って、直流で配電し余剰の再エネを相互融通する実証事業を行っている。電力システムのあらゆる段階で直流化は着実に進んでいる。

直流化に挑戦し新たな価値を見出す

だからといって直ちに全てが直流に置き換わっていくかというと、きっとそうではないのだろう。交流には交流の良さがあり、それゆえ電力システムが現在の形になっているからである。しかし、だからといってこのまま手をこまねいて見ているだけでよいのだろうか? 技術にしてもユーザーにしても常に変化しているものであり、この変化をつかまえてチャレンジをしていかなければ新しい価値は生まれない。世界を見渡すと6年前にはもう議論が始まっている。エネルギーのビジネスは価格競争が激しくなってきているが、周りをよく見渡せば高付加価値路線に転換する新しいネタが、まだまだありそうだ。


はしもと・みちお 1988年3月九州 大学工学部応用原子核工学科卒。 NEDO 新エネルギー部長などを経て 2020 年 5 月から現職。東京工業大学 特任教授、大阪大学招へい教授を兼 務。

次回は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の大平英二さんです。

臨時療養施設を支えるLPガス

【日本財団災害危機サポートセンター】

コロナ禍で建設された、国内初のペット同伴型臨時療養施設。避難所建設のモデルケースとして研究機関の注目を浴びている。

お台場エリアにある船の科学館駐車場と日本財団パラアリーナを合わせた約1万㎡の土地に「日本財団災害危機サポートセンター」が建つ。新型コロナに感染した比較的軽症者向けの臨時療養施設だ。

新型コロナ感染拡大による医療崩壊を防ぐため4月に着工し、7月に完成。東京都が運営し、10月半ばから入所を開始した。

14棟のプレハブハウスにはワンルームタイプの個室140室・150床と、約2000㎡のパラアリーナ内には間隔を十分に取り、仕切りで区切った100床が用意されている。さらに物資の貯蔵や医療従事者の待機場所として1張りの大型テントがある。


各個室の給湯器はLPガスで供給する

個室にはテレビやパソコン、冷蔵庫や洗濯機などが備えられ、生活に必要な環境が整う。特長はペットも一緒に入所できる点だ。種類は限られるが、ペットを理由に入院療養をためらう罹患者がいることに着目した。ケージを用意するだけでなく、室内はペットが外に飛び出さないよう工夫を凝らす。

「災害時にペットがいるため避難をせず二次災害に遭った例が多くあります。生活スタイルを極力変えずに療養・避難できる施設は入所者の健康を守ることにもつながります。運用面のモデルケースとして今後に生かしていきたいです」。災害対策事業部の樋口裕司チームリーダーはこう話す。

臨時施設の建設は短期間・低コストであることも必要な条件だ。その設備造りにLPガスは欠かせない。

インスタの口コミで広まる「乾太くん」 テレビCMで新たな利用シーンを提案

便利な生活設備として、口コミで広まるガス衣類乾燥機「乾太くん」。オール電化への流出防止のキラーコンテンツとして注目が集まっている。

「乾太くん」でランドリースペースを設けた生活シーン

リンナイのガス衣類乾燥機「乾太くん」が好調だ。コロナ禍にあって、2020年の出荷台数は昨年の約7万台を上回り10万台に迫る勢いという。ここまで普及しているのはガス事業者の営業が奏功しているのはもちろんだが、近年はインスタグラムをはじめとするSNSによる消費者の口コミが大きく影響しているそうだ。確かに「#乾太くん」で検索すると多くの投稿があり、「導入して良かった設備」「これは外せないオススメ設備」「使って良かった」といったコメントが見受けられる。
インスタに掲載される投稿の中には、乾太くんを設置する棚を自宅のインテリアに合わせて造作されている写真も多数見られる。同社も、従来の脱衣室兼洗濯部屋にアイロン掛けまでできるランドリースペースを設けるといった提案を行っていて、最新のテレビCMでは、そのような生活シーンを映像化した。同CMは消費者だけでなく、設計事務所やハウスメーカーから問い合わせがあるなど反響を呼んでいる。営業企画部の中尾公厚部長は「利用者によるSNSへのコメントや口コミによる反響が、そのまま販売台数につながる好循環を生んでいます。この流れを続けていきたい」と好調ぶりを口にする。

業務用も販売を促進 ペット関連で新たな需要

同社では、業務用「乾太くん」にも注力する。業務用の販売領域は病院や介護施設、ホテルなどの宿泊施設、社員寮などに設置する5~9kgクラスだ。今般、コインタイマーを内蔵した製品をラインアップした。従来は外付けコインタイマーを販売していたが、顧客からの要望で製品化した。これにより、電気乾燥機のリプレースを狙っていく。
また、新たな用途としてリンナイが注目するのがペット分野だ。ペットサロンではペットをトリミングするとき、たくさんのタオルを使う。使用後のタオルは店舗で洗濯するわけだが、その際乾太くんが思いがけない点で重宝するというのだ。
「タオルに付着したペットの毛は洗濯しただけでは落ちず、以前はペットサロンのスタッフが手で取り除いたそうです。乾太くんを使うと、ドラム回転によって毛がたたき落され、除けるため手間が省けます。さらに、ペットのウイルスも80℃以上の高温風によって除去できるため、非常に好評です」と中尾部長は語る。
リンナイでは家庭・業務用問わず好調な乾太くんを、オール電化への食い止めや見直し、新たな用途開拓に貢献するキラーコンテンツとして、今後もアピールしていく構えだ。

LPガスで都市ガスと電気を製造 病院や避難所のBCP対策に貢献

【I・T・O(旧伊藤工機)】

ガス供給機器メーカーのI・T・O(旧伊藤工機)は、地震や台風でライフラインが停止した時に、LPガスを利用して、都市ガスと電気を製造する防災対応システム「BOGETS(ボーゲッツ)」を販売している。

学校空調で採用された「BOGETS」

「BOGETS」は、液化石油ガスエア(プロパン・エアー)発生装置「New PA」、発電機、耐震LPガス容器スタンド、都市ガスとプロパン・エアーガスを切り替えるワンウェイロックバルブなどで構成される。災害発生から72時間をしのぐことをコンセプトに開発された。病院や福祉施設、避難所、企業のBCP向けに、初心者でもタッチパネルの操作などで供給を簡単に再開できる仕組みだ。

システムの根幹をなすプロパン・エアー発生装置「New PA」の開発は1990年にさかのぼる。当時の旧通産省では都市ガスを高カロリーガスに統一する「IGF21」計画が進んでおり、日本ガス協会のワーキンググループにおいて、13Aガスに統一するための熱変工事用ツールとして同装置の原型「移動式ガス発生装置」が取り上げられた。

しかし当時はガス事業法で使用が認められておらず、95年の阪神・淡路大震災の際、避難所で都市ガスが使えないことが各方面から指摘された。「移動式を活用できないか」との要望で急きょ制度が見直され、同年中に製品化にこぎつけた。

その後、2007年に発生した新潟県中越沖地震の災害対応で注目され始め、11年の東日本大震災でも活用。その存在が広く認知されるものとなった。

複雑な操作は不要 マンションからも引き合い

同装置の有用性は認識されたものの、従来型では手動による都市ガスラインとプロパン・エアーラインの切り替えなど複雑な作業が必要で専門性が高く、操作要員の確保が依然課題だった。これらの課題を解決したのが、前述の「BOGETS」だ。19年には「新型プロパン・エアー発生装置を用いた防災減災対応システム」としてコージェネ大賞の技術開発部門特別賞を受賞している。

同社は現在、全国の自治体に小中学校の体育館の空調用に「BOGETS」の導入を提案している。最近は高級マンションからも、防災のため引き合いが増えているとのことだ。

【マーケット情報/10月19日】原油混迷、方向感を欠く値動き

先週の原油価格は、強材料と弱材料が混在し、各地で方向感を欠く値動きとなった。16日時点で、米国のWTI先物、および北海原油の指標となるブレント先物は、前週比で上昇。一方、中東原油を代表するドバイ現物は軟化した。

米国の週間在庫統計は、前週比で減少。また、ロシアの調停で停戦協定を結んだにもかかわらず、アゼルバイジャンとアルメニアの軍事衝突が激化。周辺地域からの供給不安がさらに強まった。 一方、供給増加の予測も台頭。米国メキシコ湾岸では、ハリケーンDeltaからの復旧が進み、16日時点で、92%の原油生産設備が再稼働済み。リビアのEl Sharara油田は、11日に生産を再開し、日量30万バレルの増産が見込まれている。さらに、ノルウェーでは9日、労働ストライキが終了。石油ガス田での生産が、近く再開する見通しだ。

WTI先物(NYMEX)=40.88ドル(前週比0.28ドル高)、ブレント先物(ICE)=42.93ドル(前週比0.08ドル高)、オマーン先物(DME)=42.25ドル(前週比0.31ドル安)、ドバイ現物(Argus)=41.93ドル(前週比0.28ドル安)

コロナ禍の在宅勤務ストレスを可視化 精神状態を把握し新しい働き方を支援

【エムアイティーオフィス】

働き方改革で積極的な導入を推奨されてきたリモートワーク。

だが、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、半ば強制的に導入された自粛を伴うリモートワークでは、本来の良さを享受できていないのが現状だ。自宅にこもり、気分転換の外出もままならず、精神の疲労が蓄積して体調を崩す声が聞かれるようになっている。

エムアイティーオフィスが販売する「メンタルチェッカー」は、感情を数値化・可視化することができる精神状態測定ソフトだ。エルシスジャパンが、ロシア政府機関のエルシスが開発した技術を応用し、作成した。

人は通常、1秒間に10回程度の微細な振動をしている。この不随意な動きに感情が現れるという運動精神生理学に基づき、ロシア政府が2014年のソチ五輪開催時、テロ対策システムとして研究開発した。メンタルチェッカーはこの解析エンジンを使用し、日常のストレスや精神状態を自動判定する。

既に国内ではエネルギー関連企業や研究所での導入実績があり、メンタルチェックに使用されている。ストレスの高い環境で働く従業員のための導入が多かったが、コロナ禍では、従業員と顔を合わせる機会が減り体調の変化に気付きにくくなった一般企業での導入が増えている。PCとカメラを用意し、メンタルチェッカーのライセンスを導入すればすぐにスタートできる。

自分で気づくことが目的 病気を防ぎ人材確保にも

計測はカメラの前に60秒間座り動画を撮影する。撮影中の振動パラメーターからストレスや安定性、活力、緊張などの10項目を数値化し、グラフ化する。定期的に任意のタイミングで計測し、5回ほど測ると個人の正常値の範囲が分かるので、その逸脱具合によって異変を認識できる。低い数値でも安定していれば問題はない。

 計測データはグラフ化しエクセルで管理できる

出社時に会社で計測する場合、1セットをフル稼働すると、1カ月でのべ1000人以上の計測が可能だ。リモートワーク時は各自がスマホで動画を撮影し、メールで労務管理者などに送りデータ化してもらう。ただし、データの管理は個人で行い、あくまでもメンタルの不調に「自分で気付く」ために活用する企業がほとんどだそうだ。

コントロールできない潜在的な部分を可視化するため、周囲の意見や筆記式による自己申告に左右されない点も大きな説得力を持つ。

事業企画室の中川恵輔シニアマネージャは、「自分の精神状態を把握できれば、病気を未然に防ぐことにつながります。企業も大事な人材を失わずに済みます」と、長期化する自粛生活の中で社員のメンタルを守る重要性を説く。

自然災害などで長期の避難所生活や仮設住宅での生活を余儀なくされる人々にも有用だとしている。

顧客の継続的なSDGs活動を支援 CO2排出減らし途上国に明かりも

中部電力

SDGs(持続可能な開発目標)は、持続可能な世界の実現に向けて17のゴールと169のターゲットから構成される国際目標だ。「世界中の誰一人として取り残さない」ために、国連加盟の193カ国が2030年の達成を目指して取り組んでいる。

中部電力ミライズは、顧客のSDGs活動を支援する新たなサービス(SDGs支援サービス)の提供を開始した。再生可能エネルギーの普及と途上国での電化率向上に取り組む一般社団法人「グッドオンルーフス」と連携する。

SDGs支援サービスを提供する対象は、中電ミライズの太陽光発電の自家消費サービスを利用する大口需要家。サービスの利用料金に顧客の希望に応じた寄付金を上乗せし、途上国の電化率向上や、生活水準の向上に貢献する仕組みだ。

SDGs活動を支援するサービスの概要

具体的には、アフリカなどの途上国で現地の小学校の屋根に太陽光パネルを設置し、学校を充電ステーションにする。子どもに充電式のLEDランタンを持たせ、家庭にも明かりを灯せるようになる。さらに、日本で使用済みとなった電子黒板を提供し、動画や通信を用いて質の高い教育を促すといった取り組みに充てられる。

世界では5人に1人が電気を利用できておらず、その大半はアフリカなどの途上国に集中している。

SDGs支援サービスに参加することにより、「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」「質の高い教育をみんなに」などの項目で、継続的にSDGs活動に参加できることになる。

そのほかのメリットとして、①途上国で実施したプロジェクトの動画などをホームページに掲載し、取り組みを広くPR、②一定金額の寄付で、現地に建設する太陽光発電所の命名権を取得、③グッドオンルーフスの広報活動において、広報誌などに企業名が掲載される―が挙げられる。

社会貢献という付加価値 今後は一般家庭にも展開

中電ミライズの自家消費サービスは19年、大口需要家向けに開始した。店舗や工場といった法人の屋根に太陽光発電設備を設置し、運営している。法人は初期費用ゼロでCO2フリーの電力を使用。自立運転機能付のパワーコンディショナーを取り付ければ、停電時に太陽光発電システムを自立させて活用することもできる。CO2排出量の削減や災害時のBCP対策として導入が進んでいる。

自家消費サービスに加えSDGs支援サービスに参加することで、社会貢献という新たな付加価値がつく。中電ミライズは、今後は一般家庭への展開も検討している。

通信回線サービスで地域に貢献 スマートメーター活用の検針提供へ

【四国電力送配電】

四国電力送配電は、スマートメーターを活用した通信回線サービスに乗り出す。
地域が抱える課題解決に向け、電力インフラで培った信頼と実績を提供する。

海に囲まれ、自然豊かな四国。日本最後の清流・四万十川や、日本三大秘境の祖谷があり、四国山地には西日本最高峰の石鎚山がある。そんな四国地方も他の地方と同様、少子高齢化・過疎化といった問題を抱えている。

四国電力は6年前からスマートメーター(スマメ)を導入し、これまで電力検針業務の効率化や顧客へのサービス向上に寄与してきた。この実績をもとに、ガス・水道など同じく検針業務を行う事業者を対象として、スマメを活用した「IoT向け通信回線サービス」の準備を進めている。本年4月に発足した四国電力送配電の第1号の新規事業だ。2021年4月の開始を予定している。

通信回線サービスの概念図

社内で事業の検討会が始まったのは18年。ガス・水道事業に関する知見がない中でのスタートだった。部門を横断したメンバーで取り組みを開始し、翌年には複数箇所でフィールド実証試験を行った。無線通信端末を対象世帯に取り付け、電力スマメの通信システムを介して検針データを送信。データセンターを経由して各事業者に届ける流れだ。

企画部SM活用事業プロジェクトの堀口昌吾さんは「新しい分野で、一から知識や知見を積み上げました。検討会メンバーと協力しあって事業化が決定した時の達成感は、何ものにも代えがたい貴重な経験になりました」と振り返る。
堀口さんは現在、収集したデータを各事業者に連係するためのシステムづくりに取り組んでいる。

ガス・水道事業者は、6年にわたる電力の遠隔検針の実績に厚い信頼を寄せ、サービス導入を心待ちにしている。

北川圭一郎リーダー(左)と堀口昌吾さん

プラチナバンドを使用 セキュリティも確保

四国電力エリア内のスマメ化は19年度末時点で約147万台。普及率は約6割程度だが、従来式のメーターの交換時期に合わせてスマメに取り換えており、既に四国の隅々に行きわたっている。また、ガス・水道メーターに設置する無線通信端末とスマメ間は、回り込み特性に優れ、長距離通信が可能なプラチナバンドと呼ばれる920MHz帯無線を使用。無線通信端末は、周囲のスマメの中から電波強度の高いものを選択して通信するので、自宅がスマメ化されていなくても近くのスマメにデータを送る。

通信が不安定になっても、自動で他のスマメを探しルートを変更するため、安定した通信の提供が実現できる。これにより、6割程度の普及率でもほぼ全エリア内でのサービス展開が可能となるのだ。
通信データは強固な暗号化通信によりセキュリティを確保する。端末のソフトウェアアップデートも遠隔で実施し、セキュリティ上の対応が発生してもすぐに対処できる。