【コラム】「敗戦後81年、経済財政運営を考える~経済敗戦を反省し、自滅を回避しよう」

2026年7月24日

飯倉 穣/エコノミスト

1,景気判断と財政運営に違和感

敗戦記念日が近づいている。日本経済は停滞ながら史上最高水準の位置にある。敗戦時の姿を考えれば、夢のようである。この経済を近時の政権は巧みに運営しているだろうか。

現在の状況は、イラン戦争・石油供給不安ながら、「景気は緩やかに回復」(月例経済報告26年6月)。日銀短観(同調査)は、イラン問題を抱えながらAI牽引景気を示唆する。設備投資も堅調で、業況良しという判断である。そして資産価格は、株価7万円前後、路線価5年連続上昇(前年比2.9%増、日経7月1日)とバブル的様相である。

この景況感の下で「経済財政運営と改革の基本方針2026」の取り纏めがあった(7月21日)。強い経済の実現を目指して、責任ある積極財政で運営の見直しを図ると述べた。

そして「行き過ぎた緊縮志向」と「未来への投資不足」の流れを断ち切り、「国内投資」を徹底的にてこ入れし・・官民投資ロードマップ策定等で・・早期に、実質1%を上回る、名目3%を上回る経済成長を定着させ、更に引き上げることを目指します」と総理発言もあった。

報道もあった。「「骨太」積極財政へ転換 投資強調「健全化」消える 閣議決定」(朝日7月22日)。「骨太、成長企業に補助金 国主導で競争力底上げ 閣議決定「財政健全化」文言なく」(日経同)。「経済成長「名目3%超」国内投資強化「骨太」閣議決定」(読売同)。

この景況感で、責任ある積極財政は必要だろうか。成長戦略で危機管理投資と成長投資が目指す強い経済の姿はどのようなものか。現施策は、過去30年間の苦い経験を克服出来るだろうか。強い経済を目指す政治家・官僚の選択肢と思考回路を考える。

2,強い経済とは何か~バランスこそ重要

一昔前なら、成長力、失業率、物価、貿易収支、国債利回り、公定歩合(政策金利)、財政収支等の各国比較で、自国経済の姿(経済パフォーマンス)を把握することが一般的だった。

バブル前の1984年は、成長率(80-84)3.2%、失業率2.7%、卸売物価0.0%・消費者物価2.2%、国際収支343億ドル、国債利回り6.81%、公定歩合5.0%だった。主要先進国比較で良好な姿を保ち、財政収支(公債依存率21.3%)のみ改善努力が必要という状態だった。GDP比債務残高は念頭に浮かばなかった。

バブル形成・崩壊後、構造改革ばやりの1990年代を過ぎた2000年、小泉改革後の2006年、アベノミクス後の2018年の数値は、成長率・財政指標等で劣化した。そして2024年の数値は、成長率(20-24)1.3%、失業率2.5%、企業物価2.3%、消費者物価1.7%、経常収支29.2兆円(貿易▲2.7兆円)、国債利回り1%、政策金利0.25%等だった。成長率で期待に達せず、財政状況(公債依存率実績見込30%)も、改善の兆しを見せず、公債残高は劣化の一途を辿っている。この経験から何を学ぶべきか。

3,官民投資不足とは何か~数値上は思い至らず

経済の流れから投資を考えると、政府投資と民間企業投資となる。過去日米貿易摩擦で米国要求や日本の内需拡大論者に貯蓄投資論があった。日本の貯蓄過剰が輸出増狙いの投資に偏重し、貿易黒字を増加させている。故に日本は、貯蓄を政策的に消費の増加、消費の拡大をもたらす民間投資や生活関連社会資本に向けるべきと言われた。その結果は、金融・財政出動でバブル生起・財政不健全化に至った。

今回の投資不足論は、企業の貯蓄(過剰か否かの判断は別として)を、17戦略分野の官民投資に誘導すべきという主張である。民間企業の投資水準は、過去(高度成長期20%超)と異なることは当然であるが、最近のGDP比17~18%は各国比較でもむしろ高い水準と言える。この現状に対し、政府は、財政出動で危機管理投資と成長投資を大胆かつ戦略的に進めるという。政府の認識が那辺にあるか理解しにくい。

(財政は投資超過状態)

財政との絡みでみるとむしろ投資超過の姿になる。経済は、生産、所得、支出の連続的流れである。生産で生まれた所得をどのように支出するか。多くは消費、そして設備投資、一部は税の納入=歳出となる。成長がなければ、循環的である。時に景気対策として経済水準維持に国債発行・歳出増を行う。成長(税収増)がなければ、次年度の水準維持にさらに国債発行・歳出増を余儀なくされる。これが累積債務の増大となる。この姿は、所謂投資超過の状況である。これを継続すれば、経済は下方圧力を続ける。つまり需給面からみれば、過大供給が継続する。需給バランス的には国債発行頼りの公的需要を抑制することが肝要である。現経済の現状をみれば、インフレ税収分を累積国債残高の削減に使うこと適切である。また法人税を引上げて少しでも財政均衡に寄与する努力も必要である。消費税減税に首を傾げる。 

4,民間企業設備投資とは~企業経営の判断次第

民間企業の投資は、夫々の経営判断である。多くは、現在の生産水準維持か拡大を目論む利潤投資反応的な設備投資である。そして技術革新が牽引する独立投資もある。企業経営を考えた場合、現在の投資水準が過剰なのか過小なのか経済財政諮問会議の委員がどのようにして判断できるか不明である。マクロ的な景気変動との絡みでは、前述のGDP比投資水準や投資の時系列的な増減動向をとらえたとしても、適正水準を示すに至らない。あくまで企業サイドの投資回収可能性の判断に委ねられる。その際薄利多売的な行動をとるか高利益重視の行動を取るかは、企業の判断次第である。

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