複雑化する電力業界の課題解決へ 先回りしたソリューションを提供

2020年8月7日

【電力中央研究所】

電力業界の価値向上に資する技術を研究する、エネルギーイノベーション創発センター。 複雑さが加速度的に増す業界のニーズを拾い集め、先回りして新技術を提供する。

芦澤正美
一般財団法人電力中央研究所 エネルギーイノベーション創発センター(ENIC)所長
あしざわ・まさみ 慶應義塾大学大学院理工学研究科機械工学修了。1988年電力中央研究所入所。火力分野でIGCCやバイオマス研究に携わり、企画グループを経て、2020年6月から現職。

――エネルギーイノベーション創発センター(ENIC)設立から約4年になります。

芦澤 電力システム改革など電力業界の事業環境が大きく変化する中、需要家部門と配電部門に軸足を置き、原点の設立意義を見つめながらデジタル技術を駆使した成果を創出すべく活動してきました。

 この間、脱炭素化ニーズの高まりもあり、FIT制度のもと、とりわけ太陽光発電の導入が進みました。より複雑化する課題を整理し方向性を見定め、さらに飛躍すべき段階に入ったと考えています。

――複雑化する課題について、どのように捉えていますか。

芦澤 ENICでは、エネルギーポートフォリオのイメージ図を描き、「需要家の電化」、「発電の低炭素化」、「電力ネットワーク(NW)の高度化」の三つを進めていくことが重要と捉えています。

 需要家においては、ヒートポンプや電気自動車などが普及してきていますが、引き続き業務・産業部門などの電化を促進することが重要です。一方で、発電は需給バランスを満たしつつ、既存電源と再エネを上手く共存させ、低炭素化を進めることが求められるでしょう。将来的に再エネ電源が大半を占めるようになれば、電気を水素などに変換する「Power to Gas(P2G)」も視野に入るかもしれません。そうした場合、再エネ電力を最大限活用するためにセクターカップリングの重要性がより高まります。この需要家と発電をつなぐ重要な役割は電力NWが担っています。昨今では需要家が売電を行うプロシューマー化により、電気の潮流が双方向となり、ICTを活用した需給の柔軟性向上、自然災害時のレジリエンス強化などが求められています。

――エネルギーポートフォリオの中で、ENICはどういう役割を担っていますか。

芦澤 先の三つは相互に依存しているため、足並みをそろえて進めることが重要です。例えば、需要家の電気利用機器を増やし、ピークシフトなど、電力需要をスマートに変化させられれば、再エネの変動に対応できる容量と手段が増えることになり、再エネの発電機会や導入量を拡大できます。このとき、電力需要や再エネ出力の正確な予測、VPPの実現など、複雑化する需給バランスをマネジメントできる電力NWが必要です。

 この中で、ENICでは、「電化の促進」「配電系統のスマート化」「デジタル技術の活用」の三つの役割を担っています。

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