複雑化する電力業界の課題解決へ 先回りしたソリューションを提供

2020年8月7日

ENICが考えるエネルギーポートフォリオのイメージ図

ENICが担う三つの役割 複雑化する業界に順応

――挙げられた三つの役割についてお聞きします。まず、「電化の促進」に向けては、どのような研究をされていますか。

芦澤 需要家の皆さまの便益向上や新しい価値提供を目指して研究開発を進めています。例えば、当所では湿度を自在にコントロールする技術と、これをヒートポンプに巧みに組み込む技術の開発を行っています。実現すれば、電気自動車の暖房効率を高められるので、バッテリーの消耗を抑制し走行距離を延ばすことができます。また、商店などで使用されている冷凍・冷蔵ショーケースの着霜防止や省エネ化にも役立てられます。

――「配電系統のスマート化」については、どのような研究を行っていますか。

芦澤 太陽光発電の大量導入が配電系統に与える影響の評価、異常現象発生時の原因究明と対策・規格基準への反映など、様々な課題に電力各社と取り組んでいます。また、21年から始まる需給調整市場や卒FIT増大に対応するための分散型エネルギー資源の活用など、複雑化する系統運用を円滑に制御する技術や、人口減少や偏在が進む中でのアセットマネジメントを支援する評価技術の開発などに取り組みはじめたところです。

――「デジタル技術の活用」とはどのような研究ですか。

芦澤 電力業界も他の産業と同様にデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。AIやIoT、クラウドロボティクスのような新しい技術を活用しながら、保全業務の効率化や太陽光発電の出力予測など、電力供給のサプライチェーンのあらゆる分野で活用できるデジタル技術の研究開発を行っています。

他業種との共同開発も 先回りしたサービスを提供

――研究成果はどのように活用されていますか。

芦澤 電気事業で直接ご利用いただいている研究成果もありますが、電力・メーカ・サービス提供者との連携をサポートする専門部署を設置し、より利便性の高いソリューションを提供しています。最近の事例では、NECと当所が保有している画像認識システムを組み合わせた、ソリューションを共同開発しました。

 これは各種メーターをスマートフォンなどで撮影した画像をクラウド上にアップロードし、メーターの数値をデータ管理するという内容です。これは、すでに昨年7月からNECのサービスとして提供されています。

――ENICにおける、今後の研究の展望を教えてください。

芦澤 これまでお話しした3つの役割を果たしながら、電気事業の一員として社会的責任を果たしていきたいと考えています。またライフ/ワークスタイルの変化に対しても先見性を持ち、社会のニーズに先回りした便利なソリューションを提供していきたいですね。

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