【電源開発 菅野社長】脱炭素と安定供給両立 より難しい局面こそ 果敢にチャレンジへ

2023年9月2日

2050年カーボンニュートラルに向け2年前に「J-POWER “BLUE MISSION 2050”」を発表したが、安定供給との両立など状況は一層厳しさを増す。だからこそ、この難題に気概を持って取り組み、自社に求められる役割を果たす重要性を強調する。

【インタビュー:菅野 等/電源開発社長

かんの・ひとし 1984年筑波大学比較文化学類卒。同年電源開発入社。執行役員経営企画部長、取締役常務執行役員、代表取締役副社長執行役員などを経て、2023年6月から現職。

志賀 筑波大学で現代思想を専攻されました。どのような経緯で電源開発へ入社したのでしょうか。

菅野 根本に、社会の基盤を支える仕事がしたいとの思いがあります。当時、ローマクラブの「成長の限界」や、エイモリ―・ロビンズ氏の著書「ソフト・エネルギー・パス」など、エネルギー問題への関心が高まり始め、ならばエネルギー事業者の仕事はやりがいがあるのではないかと考えました。

志賀 社長就任に当たっての抱負をお願いします。

菅野 社会の基盤を造ることにはさまざまな課題があります。だからこそやりがいを感じ、気概を持って取り組もうと企業グループ社員に呼び掛けており、私自身も初心に帰り、グループ一丸となって同じ方向を向いていきたいと考えています。

志賀 入社動機からつながってくるわけですね。さて、目下最大の課題である気候変動への対応方針として「J―POWER 〝BLUE MISSION 2050〟」を掲げ、カーボンニュートラル(CN)と水素社会実現に向けた対応に着手しています。ただ、策定以降、実にさまざまな状況変化があり、昨年には一般炭と原料炭価格の逆転といった異常事態も起きました。

菅野 より難しい局面になっており、特にエネルギーの安定供給の課題が強まりました。事業者が新規電源を造るに当たっての予見性が下がっており、設備投資への経営判断がさらに難しくなっています。燃料の調達環境を巡っても、主燃料の石炭では政府方針を鑑み、昨年度からロシア炭の輸入を減らし、今年度はゼロにしましたが、代替調達の課題はあります。そして、機関投資家が企業の気候変動対応の実績を見る目も一層厳しくなっています。

 月並みですが、トランジションでの安定供給とCNの両立は生半可なことではなく、「BLUE MISSION 2050」を策定中だった3年前よりも難しくなっています。ただ、だからこそチャレンジしがいがあり、関係者に広く理解を求めることが重要な仕事だと受け止めています。

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