【コラム/5月3日】福島事故の真相探索 第4話
強靭なジルカロイ酸化被膜
さらなる特徴は、酸化皮膜が非常に強靱な事である。その具体例として、米国のPBF(Power Burst Facility)におけるPCM(Power Cooling Mismatch)実験を紹介する。
PCM実験は、燃料棒表面温度を2000℃以上に加熱して膜沸騰状態におき、15分間実験を継続した。その間被覆膜は破れず、少量の放射能が実験ループ内に漏れ出ただけだったという。酸化皮膜はこれほど強靱なのだ。その理由は知らないが、酸化ジルコニウムは融点が2700℃ほどもあり、UO2の融点に匹敵するほど高いことに由来するのかも知れない。ジルカロイの酸化膜は融点が高く強靱である。これも特徴の一つだ。
このように、ジルカロイの酸化膜は緻密で、強靱で、融点も高い。従って、ジルカロイ被覆管は温度上昇に対して強く、事故時も強靱だと信頼されて、燃料設計で使われてきた。ところが、TMI事故でも、福島事故でも、炉心溶融が起きたばばかりでなく、安全審査でも予想していなかった水素爆発まで起きた。問題が存在していたのだがそれが分からず、思考上の欠落が判明されないままに、原子力発電所の安全が損なわれた。
思考上の欠落とは何か、これから述べるジルカロイ酸化膜が持つ弱点にある。
ただし、この弱点は防ぐことが出来る。それも容易に。この防護策は設計上の対応ではなく、運転員による事故時の対応操作にある。それも、炉心溶融も水素爆発も同時に防げる。ジルカロイ・水反応が起き得る状態に気付いて、運転員が沈着冷静に防護対策を実行すれば、事故は事故でなくなる。
事故が防止できる事を述べたところで、第4話を終え、ジルカロイ・水反応の話の続きは次回までお待ちを願う。