【特集2】脱炭素化に向けてエネ全体を最適化 コージェネなどの設備をAI制御

2024年7月3日

【大阪ガス】

2050年カーボンニュートラル(CN)実現に向けて、再生可能エネルギーの大量導入が今後も見込まれている。再エネの大半を占める太陽光発電や風力発電は、天候や風向きに応じて出力が変動する。

この対応策の一つが需要をコントロールするデマンドレスポンス(DR)だ。一般送配電事業者などが発動するDRに対しエネルギー設備などの運用を制御することで、インセンティブを得ることができる。

23年4月には省エネ法が改正され、DR回数報告が義務化された。電力需給に応じてDRを実施すると省エネと評価されるようになったのだ。このように、DRが普及する環境が整備されつつあり、市場拡大が見込まれている。


VPPと省エネの制御機能 設備と分析の知見を統合

こうした中、大阪ガスとDaigasエナジーが手掛ける遠隔AI制御を利用したエネルギーマネジメントシステム「Energy Brain」が注目を集めている。Daigasグループのエネルギー設備の運用ノウハウやデータ分析技術を活用して開発されたクラウド基盤型エネマネシステムで、主に「自動VPP(バーチャルパワープラント)制御」と「省エネ制御」の二つの機能を有する。

自動VPP制御はコージェネ設備、空調設備、負荷設備、蓄電池などの顧客が所有する設備を遠隔自動制御するもの。顧客は設備操作の負担なしにDRを行うことができ、変動する再エネの調整力として寄与する。

実証で使われたコージェネ

もう一つの省エネ制御では、Energy Brainが継続的に設備の運用改善を行っていく。省エネにはエネルギー実績使用量の分析、運用計画の策定、設備の制御変更を反復して実施することが有効だ。ただ、これまでは人の手を介して行っていたため、見直しの頻度や扱うデータ量に限りがあった。Energy Brainでは、独自の気象予測データ、エネルギー実績使用量、需要予測結果、電気・ガス料金情報などに基づき、最適な省エネ制御パターンを高頻度で見直し、コージェネなどを遠隔自動制御することで、省エネを実現する。

システム開発においては、コージェネなどの設備分野の知見と、需要予測や運用計画策定などの分析分野の知見を一つのシステムに統合するのに困難が伴った。「当社グループに、コージェネや空調などの消費機器、DRビジネス、予測技術、システム構築など、各分野の専門家はいたが、それらの知見を一つに集約し、かつシステム化するというのはこれでにない作業だった」。大阪ガスエナジーソリューション事業部電力サービス開発チームの辻長知リーダーはこう振り返る。また当初、顧客が所有する設備群のパターンをある程度標準化した想定モデルを軸に考えたが、実際は顧客ごとに運用事情が異なり、現場に合ったエンジニアリングや設定が必要になるなど、気づきがあったという。

同システムの営業を担当するDaigasエナジーでは、新設や改修予定の商業施設や工場をターゲットに提案中だ。同社ビジネス開発部ビジネス企画チームの福田祐樹リーダーは「従来、DRはインセンティブが得られる点が着目されてきたが、CNに向けた取り組みが一般化する中、お客さまの意識も変わりつつある。また、当社がエネルギーに関する顧客の情報を受け取り、自動制御を行うと、人手以上にきめ細かな運用が可能になるほか、エネルギー管理業務を効率化できるなどお客さまのメリットが生まれる」と同システムの強みを強調する。

「Energy Brain」の概要

現在、Energy Brainの実証は同社グループの産業集積施設「京都リサーチパーク(KRP)」で実施中だ。KRPは京都の有力企業やスタートアップなどが入居する新産業創出拠点。東地区と西地区に分かれており、今回の実証は東地区で実施している。東地区の2号館地下にはガスエンジン発電設備(815kW)が2台、排熱投入型ガス吸収冷温水機(ジェネリンク、400USRT)が4台、ガス吸収冷温水機(210USRT)が1台あり、実証ではこれらの運用データを受け取り、Energy Brainのクラウドに送信している。

実証では、自動VPP制御と省エネ制御を実施。具体的には省エネ制御が先行しており、実機で問題なく制御できることを確認した。現在は、冬季の省エネ制御実証に続き、中間期の省エネ制御に着手し始めたところだ。自動VPP制御は、他の実証先で一定の実績があることも踏まえ、KRPでも実施予定だ。今後、Energy Brainはクラウドの強みを生かし、他社が開発したクラウドシステムと連携していく。既に空調制御のクラウド型遠隔制御システムとの連携を実証済みとのことだ。こうした取り組みによって機能拡張を図っていく。


コージェネ大賞を受賞 連携や使い勝手向上を評価

Energy Brainは23年度コージェネ大賞特別賞を受賞した。これについて辻氏は、「DXによるエネルギー設備の連携や調和、使い勝手の向上が注目され、顧客からのニーズも顕在化してきた。今回の受賞はそうした点から評価された」と話す。

今後は設備などのハード面の性能向上だけではなく、Energy Brainのようなシステムによる全体最適が、CN実現に向けて大きな鍵を握りそうだ。