【東北電力 樋󠄀口社長】地域とともに スマート社会実現へビジネスモデルを転換

2020年9月2日

スマート社会実現へ  サービスを拡充 

志賀 東北エリアの競争環境をどう見ているでしょうか。 

󠄀口 電力小売り全面自由化以降、東北6県および新潟県でも事業者間の競争は進展しています。法人・家庭用のいずれの分野でも一定の離脱が発生しており、今後も市場や地域の垣根を越えた競争がますます激化していくものと考えています。当社としては、中長期ビジョンで掲げたスマート社会実現事業を見据え、電気を中心としたサービスの充実やお客さまのくらしをサポートする新たなサービスを積極的にご提供していくことにしています。 

至近では、新型コロナウイルスの影響により在宅時間が長くなっていることを踏まえ、対象条件を満たしたお客さまの電気料金の基本料金を2カ月分無料にするサービスを実施(7月31日で申し込み期間終了)したほか、部屋の環境を整えたいというニーズに対応した宅配収納サービス「サマリーポケット」の提供を開始しています。今後も現状に立ち止まることなく、お客さまのご意見やご要望をお聞きしながら、価格、非価格の両面での競争力を徹底的に高め、当社をお選びいただけるよう取り組んでいきます。 

志賀 エリア内およびエリア外の営業戦略で重視しているのはどのような点でしょうか。 

󠄀 当社の最大の使命は、東北6県および新潟県のお客さまに低廉な電力を安定的にお届けすることです。これに加え、お客さまのライフステージやビジネスニーズに着目したサービスを拡充し、エネルギーとサービスをトータルパッケージで提供することで、お客さまの満足度向上と収益力強化の両立を目指すこととしています。電気を中心としたサービスの充実に加え、くらしやビジネスをサポートする新たなサービスを今後も積極的に提供していきます。 

その上で需要が集中し、当社エリアと隣接している首都圏において、小売り、卸売りの両面から電力販売を展開することで、効果的に収益を確保できるよう取り組みます。 

志賀 コロナ禍の影響はどのように見ていますか。 

󠄀口 第1四半期決算における新型コロナウイルスの影響として、宿泊業や娯楽などの業務用、鉄鋼や自動車関連などの産業用で稼動の減少があったことなどで、小売りの販売電力量は、前年同期と比較し、8億kW時程度減少しています。今後、経済活動の正常化に合わせ、電力需要が戻ることを期待しています。一方で、感染拡大への懸念や、新しい生活様式による影響なども考えられるため、引き続き動向を注視していきます。 

志賀 ウィズコロナを見据えた働き方改革は進みそうですか。 

󠄀 社会や経済の構造およびビジネススタイルは急速に変化し、まさに転換期に差し掛かっています。こうした動きを踏まえ、今後の当社の働き方も生産性がより高まる形へ大胆に見直していく必要があると考えています。フレックスタイムや在宅勤務も活用しながら感染予防対策を講じている状況にありますが、こうした取り組みについては、引き続き積極的に推進し、関連する通信機器などの環境整備も行っていきます。 

志賀 国で非効率石炭火力のフェードアウトに向けた検討が行われています。 

󠄀 18年に策定された現行のエネルギー基本計画に記載されている事項であり、地球温暖化対策の方向性として理解しています。石炭火力は、燃料の調達安定性や経済性などに優れたベースロード電源であり、東日本大震災以降、原子力の代替として、電力の安定供給に貢献してきました。性急に進めた場合には、安定かつ低廉な電力供給などに影響を及ぼす可能性があります。また、発電所の立地する地域の経済や雇用への影響も懸念されます。具体的な制度政策議論を進めていく際には、このような諸課題も踏まえた上で進めていただきたいと考えています。 

志賀 激動の時代にどうかじ取りされるか大いに注目しています。本日はありがとうございました。 

対談を終えて
大学で電気工学を専攻し地域に貢献したいという思いで東北電力に入社。日本最初のコンバインドサイクル発電所として、後に日本産業技術大賞も受賞した東新潟火力3号系列の建設に携わった。東日本大震災で被災した原町火力の奇跡の復興では、所長として大任を果たした。トップダウンの実効性を強く認識しており、明るい性格と相まって、新社長への期待は大きい。変化の時代にふさわしいリーダーの誕生だ。 (本誌/志賀正利)

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