原子力の未来のために! 「設工認」取得へ士気高く

2025年2月4日

【電力事業の現場力】日本原燃労働組合

多くの組合員が体育館に詰めて審査対応に全力を注ぐ。

精神的負荷が大きい業務だが、モチベーションは高い。

猛吹雪で視界が遮られる中、青森県の三沢空港から北上すること1時間。突然、巨大な建物が見えてくる。日本原燃の原子燃料サイクル施設(六ヶ所村)だ。わが国の原子力政策の中核施設として、1993年に着工した。現在、再処理工場と混合酸化物(MOX)燃料工場は新規制基準適合に向けて審査中だ。電力会社やメーカーからの出向者を含む約400人が、本社前の体育館を執務室として設計および工事計画認可(設工認)取得のためオールジャパン体制で戦っている。

体育館で審査対応に当たる

審査対応は地道で根気がいる業務だ。原子力発電所の審査が地震(断層)や津波関連で長期化しやすい傾向があるのに対し、再処理工場は膨大な設備の安全対策がメインとなる。前処理・分離・精製・脱硝と複数の工程で放射性物質や薬品を扱うため、発電所とは異なる対策が求められる。

例えば万が一、安全重要度が高い建物、設備の近傍に航空機が墜落したらどうなるか。燃料が満タンだった場合の燃焼時間や温度は……。さまざまな角度から精度の高い安全対策の検討を行い、薬品タンクの地下化、冷却塔の竜巻対策など安全対策を講じてきた。約2万5000の機器の安全をどう確保するか。長く険しい道のりだが、協力会社も含め多くの技術者が日々努力を続けている。

ウラン濃縮工場は運転を再開

厳しい労働環境の中で原燃労組が行った直近のアンケートでは、組合員のモチベーションの高さが明らかになった。「設工認を得られなければ会社の将来はない」という使命感が、審査対応を担う組合員を奮い立たせている。一方、4年前の調査と比べると組合員の疲労感が増しているという。休みは取れているが、精神的な負担からか「疲れが抜けない」といった回答が目立った。原燃労組は技術継承の観点から、人材の維持・定着に大きな課題認識を持っている。今後も労働環境を注視し、組合員の声に耳を傾けていく。


地域に誇れる会社に 多くの仲間に支えられ

労組の重要課題の一つである春闘を巡っては、再処理工場、MOX燃料工場のしゅん工時期変更による影響を懸念する声が挙がっている。

建設中のMOX燃料工場

一方で、埋設事業では低レベル放射性廃棄物を定期的に受け入れている。また2023年8月にはウラン濃縮工場が運転を再開した。「組合員が抱いている不安を希望に変えていかなければならない。そのためには、労使でしっかりと会社の魅力を高めていく必要がある」。有馬文也本部書記長は切実な思いを口にする。何よりも、組合員が会社の存在意義について、自信と誇りを持ち続けられる職場であることが重要だ。「組合員が親、知人、地域の人々から『原燃に入って良かったね』と言われ、日本にとってなくてはならない事業だと理解してもらえるよう、研さんを積んでいかなければならない」(有馬氏)

低レベル放射性廃棄物の3号埋設施設

「原子力の未来のために共に頑張りましょう!」。原燃労組の事務所の壁には、悲願の再稼働を果たした他電力の原子力部門からの寄せ書きが張られていた。多くの働く仲間に支えられながら、再処理工場は26年度中、MOX燃料工場は27年度中のしゅん工を目指す。

身を切られるような寒風に吹かれながらも、組合員がくじけることはない。