日立基地2号タンク建設が佳境 茨城幹線整備で関東ループ化へ

2020年10月4日

最新工法のもう一つは、国内初の導入事例となる鹿島建設の「P3wallⓇ」。国土交通省が後押しし、さまざまな分野で活用されるコンクリート工のプレキャスト化、つまり工場で作ったコンクリート製品を現場で積み上げる手法を、LNGタンク建設に活用した。防液堤の土木工事は、現場で型枠を設置しコンクリートを打設していくのがこれまで一般的だったが、これを覆す工法だ。

コンクリート製品は工場で作るため、不純物が混入しにくく高品質で、かつ天候に左右されずに生産し、ストックすることができる。また、現場でのコンクリート打設はコンクリート製品同士の目地部分のみとなるため、現場作業が最少化できるというメリットもある。

2号タンク建設など日立基地Ⅱ期工事の工事事務所長である、TGESの佐塚公紀氏は、「二つの新工法を採用することで、今回は防液堤を鹿島建設、防液堤内側はIHIと、安全管理エリアを区分でき、工程も短縮できました。これにより、従来よりも運用開始時期を早くすることができ、エネルギーの安定供給に寄与できたと考えています」と説明する。

安全性向上や作業効率化、少人数化など、両者の相乗効果によるメリットは大きい。JCMⓇ(機械工事)とP3WallⓇ(土木工事)を並行して行えることで、全体の工期短縮につながり、トータルで7カ月の短縮を見込んでいる。「初めての工法なので慎重を期して取り組んできました。工事はおおむね予定通り進み、現在の進捗は全体の7割ほど。少子高齢化や人員不足といった業界を取り巻く課題に即した工法だと思います」と続ける。

関東ループ化の最終工程 同時並行で茨城幹線整備

まもなく関東広域のループ化完成へ

東ガスは、同時並行で高圧導管の「茨城幹線」敷設という、もう一つの重要工事を手掛けている。茨城幹線は、鹿島灘を沿うように、既存の「鹿島臨海ライン」(茨城県神栖市)と日立基地をつなぐ約92㎞に及ぶ幹線だ。17年11月から工事に着手し、日立基地2号タンクの稼働と同じく21年3月に竣工する予定。八つの工区のうち、1工区はTGESが担当している。

この工事は大きな意味を持つ。東ガスではここ10年ほどで、千葉県から茨城県の鹿島工業地帯にかけての千葉〜鹿島ライン、埼玉県から茨城県にかけての埼東幹線、茨城〜栃木幹線、栃木県の古河〜真岡幹線と、高圧幹線の整備を着々と進めてきた。

そして最後に残った区間が、茨城幹線だ。これが出来上がれば、関東広域のループ化が完成することになる。「日立基地と袖ケ浦基地の圧力は同じ7MPa。茨城幹線がつながれば、日立基地から茨城栃木幹線と茨城幹線の二つの高圧幹線にガスを供給できるようになり、大きなループが完成。関東広域の供給安定性の一層の向上につながります」(東ガス久野部長)

工事では、建設コストを上げずに、従来の建設実績から1年半ほど工期を短縮するという高い目標が設定されたが、順調に進捗しているという。ちなみにこの完成により、東ガスの高圧幹線の距離は1000㎞を突破することになる。

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