【コラム/9月24日】“夏は一休み”とは言えない制度設計の進展

2025年9月24日

戦略地域として、①コンビナート等再生型、②データセンター集積型、③脱炭素電源活用型(GX産業団地等)の3つを掲げ、インフラ整備、産業競争力強化、脱炭素への貢献、地域との連携という観点から立地の選定を行う。既にコンビナート等再生型とデータセンター集積型は8月26日から10月27日の間で募集を開始しており、自治体や企業からの提案を待っているところである。

選定されればGX経済移行債を原資とした資金的な支援が受けられるほか、国会戦略特区と連携した規制・制度改革が行われる予定であり、地元産業の活性化を諮りたい自治体にとっては関心の高い施策となるだろう。ただし、いずれも自治体の強いコミットが必要であることから、参入する企業としっかりと連携を取り、実効性高いものにしなければならない。脱炭素先行地域で具現化に苦戦しているケースも多く見受けられるが、理念だけで先行しないような仕組みや仕掛けが必要だろう。


電力システム改革の次のステージに向けた制度設計は有効打となるか

現在の電力システム改革は、東日本大震災により露呈した脆弱性を踏まえ、①安定供給の確保、②電気料金の最大限抑制、③需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大という三つの目標に基づき、電力広域的運営推進機関の設立や小売全面自由化、送配電の法的分離といった施策を段階的に行い、その完了から5年が経った。それを受け、昨年度に電力システム改革検証を行い、この3月に取りまとめが行われた。取りまとめでは、課題として挙げられた論点について、25年度に議論を行い、必要な制度設計を行うとしており、5月から具体的な検討が始まった。

制度設計に当たっては、新たに整理した目指すべき姿の3つの論点に基づく、10の検討事項のうち8つについて、新たに設置したワーキンググループで議論が行われている。

供給力確保のために必要な燃料の確保や、脱炭素電源の投資促進、大規模系統整備のための資金調達と円滑な回収、供給力確保した電源を活用するための短期的な取引市場(同時市場)と中長期的な取引市場の整備、発電事業の予見性向上や需要家への急激な料金変動の回避等を目的とした小売電気事業者への量的な供給力(kW時)確保義務化、依然とした残り続ける経過措置料金の解除に係る課題整理といったことが検討項目として挙げられているが、とりわけ、話題をさらっているのが、小売電気事業者への供給力確保義務と中長期取引市場の創設である。

昨年度のエネルギー基本計画や電力システム改革検証の議論でも有識者から課題として挙がっていた論点であり、何かしら制度的措置があると予想されていたが、具体的な確保義務の期間や割合、実施時期をみて、業界内では色々と意見が出ている状況にある。議論では、有識者側は総論賛成・各論は慎重にといった意見が多く、事業者側は、そもそもの意義や実効性を問う声が多いと感じる。また、発電・小売が一体となっている事業者と小売専業の事業者とでは意見が異なっている。

これ以外の検討事項についても、相応の影響が出ることから、まずは意見募集(9月9日~10月8日、行政手続法に基づくパブリックコメントとは異なるもの)を行い、それを踏まえて、今後の議論が進められることとなる。多くの意見が出されることが予想されるが、エネルギー基本計画や地球温暖化対策計画のパブリックコメントで見られたような主観的・感情的な意見でなく、実務への影響や実効性の確からしさを踏まえた合理的な意見を出すことで、今後の議論を誘導できるようにしなければならない。

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