【緊急特集 イランショック】アジア太平洋諸国で供給逼迫 石油緊急事態体制への移行が急務 ※期間限定無料公開

2026年4月1日

市場の調整力が働かず 抑えの効かぬ暴騰も

この未曾有の供給ひっ迫、およびそれが起こす石油の地域的偏在――アジア太平洋と大西洋地域の分裂――は、市場の自律的調整力を圧倒する。需給の断絶があまりに大きく、短期的には価格上昇や経済収縮を通じての、自律的な調整で埋めることができない。

3月中旬時点、ブレント原油価格がバレル当たり100ドル近傍で止まっているのは、海峡の早期開放への期待に加え、同原油が石油の偏在する大西洋地域の指標だからだ。アジア太平洋地域では既にドバイ原油価格が、多分に名目的ながら170ドル前後で見積もられている。いずれにせよ実質150ドル前後は、これまでも市場の正常な働きの中で現れてきた「平時の高値圏」に過ぎない。

図3 石油供給逼迫の平準化に要する純輸入増減:ホルムズ海峡封鎖*ケース
*追加的迂回供給は原油日量300万バレルを想定 平準化は対需要比

ホルムズ海峡封鎖が続けば、価格には事実上、無制限の上方圧力が掛かる。抑えの効かぬ暴騰がアジア市場で始まり、大西洋市場との価格差が異常に拡大し、裁定取引を通じた供給ひっ迫・需要削減の平準化(図3)を求め続ける。

そうした中で国内需給を最終的に整合させるのは各国政府による制御・統制となり、石油貿易も政府間合意の下での管理が必要になる。在庫がいったん底をつき始めれば、こうした事態が急速に展開する。

在庫をいかに長く使うか 価格は「段階的上昇」必要

今、特に日本を含むアジア太平洋自由主義諸国にとっては、在庫をいかに長く使い得るかが課題だ。国内石油消費の抑制を急ぐ一方で、輸入量の最大確保に努め、その差を在庫取り崩しで埋める。西側全体では米国の輸出増と、その仕向け先の大幅なアジア太平洋向けシフトが必要だ。欧州には輸入減を求めることになる。IEA加盟国は計4億バレルの備蓄放出を決めたが、このような共通目標と各国の役割への言及を欠く。輸出増に直結しなければ、米国の備蓄放出は無意味だ。

日本は最終的には石油需給適正化法に基づく需給統制をにらみつつ、段階的な規制措置の準備に入るべきだ。また既に備蓄放出開始で「石油有事」の入り口を通った以上、国内価格は当面市場実勢に合わせて上昇させ「黄信号」を発信する必要がある。政府による価格介入は低水準での「上限設定」から、輸入価格の上昇分をならす「段階的上昇」へと目標を変えねばならない。22年以降、日本は燃料油補助金と暫定税率廃止によって巨額の国費を石油消費の支援に費やし、自らを弱体化させた。その惰性がこの緊急時でも続いている。

3月19日の日米首脳会談で高市早苗首相は見事な外交力を示した。しかし会談後の記者会見を見る限り、石油に関する日米協力はいずれも中期的なものだ。まずは迫り来る巨大な石油危機からアジア太平洋自由主義諸国をいかに守るか、その現実を把握し対応策を立てる司令塔役を日米が果たすべきだ。

アジア太平洋輸入国の在庫が底を打つ前に、ペルシャ湾岸の生産・出荷施設に甚大な損傷のないまま、ホルムズ海峡が開放されるか否か。時間との戦いになってきた。

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