【コラム/4月24日】見直し見直しの電力自由化を再考する ~制度改革に疲れた日本は、無間地獄の寸前
4、市場期待で改善は可能か~原点に返れ
電力システム改革の端緒は、9電力体制敬遠者が、電気を通常の財として扱えると強弁したことにある。国民経済的に電力需給を考える際は、電磁気学的な視点に加え、電気の財としての性格の捉え方が重要である。通常の私的財(商品)なのか、それとも準公共財かである。前者なら、価格で需給問題が解決し何ら社会的不安・問題を生まないだろう。政府の電気事業担当部署も不要で、行政関与無し、放置が適当である。消費者は、望む財を即時か耐えうる範囲で入手可能である。ところが自由化後の政府の需給ひっ迫対応や節電呼びかけは、一般の商品と異なることを明白にした。つまり電気の同時同量性や生活必需財の視点から見れば、電気という商品は、準公共財(非競合性や非排除性)の扱いが依然妥当である。
この視点から他の政府機関は、異なる考えを述べている。「我が国は市場経済を基本としており、サービスの料金や商品の価格は、市場における自由な競争を通じて決められることが原則・・しかし、料金や価格の中には、国会、中央政府や地方公共団体といった公的機関が、その水準の決定や改定に直接関わっているものがあります。これらは総称して公共料金と呼ばれています。・・電気料金や都市ガス料金は引下げ改定の場合、鉄道運賃、乗合バス運賃は上限価格の範囲内での改定の場合は、それぞれ届け出ることとなっています」(消費者庁)と公共料金を紹介している。
市場任せでなく、政府関与を認めている。価格・供給の安定性が電気では何より大事な条件である。これを踏まえた供給体制の在り方を再構築すべきである。直近の20年近い自由化を巡る混乱を反省すれば、戦後60年間「垂直一貫体制、地域独占、総括原価方式」は、日本のエネ・電力の安定供給に寄与し有効だった。つまり幾つか課題もあったが、公益事業体制が優れている。現在も自然発生的姿である発送配電一貫体制が、取引費用縮減、供給・価格の安定性からも合理的であることに変わりはない。コバンザメ商法に近い新規参入者も含めて、再編成・再統合が必要だろう。
5、消費者から見れば
電力自由化試みの話が持ち上がった頃、消費者の多くは公益事業体制に違和感はなかった。当然消費者から見れば、料金の安定性・合理性が一番の関心事項である。それが適正か否か検証できなければ、負担の受容は不快である。また必需財で事業者が不当な利益を得ることも納得しがたい。昔の報酬率は8%であったが今はどうだろうか。今回電力システム改革見直しでは、小売り事業者の手数料稼ぎの実態(コストと利益)と公益事業体制時の取引費用比較、過去と現在を比較した電力料金・コストの評価資料が見当たらなかった。
公益事業体制の時は、決算関係資料や料金査定などの資料でコストの検証が可能だった。エネルギーの国際市場価格や供給にかかわる国内投資の必要コストの検証は重要である。この意味でも公益事業体制は、消費者が料金に関する意見を述べる機会があった。今はどこに意見を述べるのであろうか。重箱の隅をつつく意見交換と望まない方向に誘導する政府委員会等の意見公募の意味も問いたい。
民間企業は利益第一だろうが、公益事業なら安定供給・価格が第一で、一定報酬率前提の収支相償の姿となる。株式は、投資金融に左右されず、国民資産として確定利付債券に近い姿が適当である。国民経済・消費者の視点から、今一度公益事業の原点に回帰することを期待したい。
【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。
1 2


