【特集2LPガス供給最前線】技術と知恵で生産性を向上 ライフライン「最後の砦」の矜持
人口減少や配送員不足など課題が山積みのLPガス業界。各社が知恵を絞りながら供給システムの維持に奔走している。
中東戦争に揺れるわが国のエネルギー供給。石油に代表される化石資源調達の見通しが不透明な中、日本はLNGと同様にLPガスの中東の依存度を下げてきた。ここ10年近くにわたって、アストモスエネルギーなど元売り企業がアメリカやカナダ、豪州といった調達先の多角化に着手。そんな事情が功を奏して、直ちに供給不安が漂う状況にはなっていない。
一方、下流に目を向けると決して安泰とは言い難い。近年は人口の減少や配送員の高齢化、人材不足など、ちまたで叫ばれている課題が日を追うごとに顕在化している。これは、災害時のライフラインとして、エネルギー基本計画に明記された「最後の砦」の機能を果たせなくなる事態が静かに訪れようとしているからだ。
そうした中、物流配送業務を効率化させ安定供給を維持するために知恵を絞る各社の動きが加速している。販売大手の岩谷産業やニチガスの取り組みはその好例だ。
岩谷は神奈川県の根岸液化ガスターミナルでLPガス容器の出荷基地を刷新している。外洋からのタンカーの受け入れ基地が隣接している地の利を生かした形だ。この拠点はもともと東京ガスグループの基地だったが、岩谷が東ガスからLPガス事業を譲り受けたことで実現した。タンカーから容器に詰め込むまでのチェーンを一カ所の拠点で一気通貫する体制を整えて、物流配送の合理化を実現している全国でも珍しい取り組みだ。

また、ニチガスは世界最大規模となるLPガス容器のハブ施設「夢の絆・川崎」を整備した。容器を積んだトレーラーがゲートを通過するたびに、容器に貼り付けられたバーコードが読み込まれ、出入庫を自動的に管理する。「他社も利用できるオープンなプラットフォーム。利用する販売店が増えれば、それだけ容器当たりの配送単価を下げられる」(ニチガス関係者)という。このように、ハードとソフトの両面から効率化を進めている。

バルク設置で配送を削減 作業員の労働負担を緩和
低い電力消費によって長距離の無線通信を可能にしたLPWAのインフラが整備されてきたことも業界が取り組む合理化を後押しする。
早くから独自の集中監視システムを取り入れた伊丹産業では、LPWAを組み込んだことでガスメーターによる残ガス量の管理が容易になった。検針員や配送員が担当する件数の大幅な向上につなげているほか、災害時には早期普及にも貢献できる。また、国がこうした集中監視システムの導入割合に応じて事業者にインセンティブを持たせる制度を開始したことで、大小問わず、多くの販売店が取り組みを進めている。
一方でこうした高度なシステム刷新だけが合理化を実現する方策ではない。長野県のとある事業者は「配送の効率化のためにバルクを置いて供給する方法を一部採用している」と話す。通常であればLPガス容器で配送するが、どうしても配送頻度が高まり手間が増える。とりわけガス需要が高まる冬場には安定供給が脅かされるリスクをはらむ。また、容器の運搬は力仕事で女性や高齢の作業員には難しい。その点、バルクであればLPガス容器に比べて貯める量を増やせるため配送頻度を抑えられる。また、力仕事でもないため、配送員不足の解消にも効果的だ。
加えて、もう一つのメリットをこの事業者は打ち明ける。「元売りが提示するLPガス価格の安いタイミングで調達する方法が考えられる。例えば、夏場に調達してユーザー宅のバルクに供給しておくことで、価格が高くなる冬場の調達量を減らすことができる」。設置スペースの確保や設置コスト、バルク検査業務の負担などのハードルはあるが、各種条件がクリアになれば面白い手法だ。
異業種間で配送を共同化 繁閑期の平準化にも期待
物流配送に課題を抱えているのはLPガス業界だけではない。物流業者や荷主業者など多くの企業が参画する団体のフィジカルインターネットセンターは、輸送時の積載率を上げるスマート物流の取り組みを進めている。
例えば、A地点からB地点へ物を運び終わってA地点へ戻る時に、荷台に物を載せて運べば、トータルの積載率が上げられる。考え方はいたってシンプルなのだが、現状では30%台に留まっている積載率の改善を進めている状況だ。
また、異業種間のコラボによる共同配送も試行錯誤しながら行っている。同業であればライバル同士で、かつ運送物が似通っていたりするため実現は難しいが、異業種同士であれば運送物の内容が異なり、とりわけ繁閑期の平準化にもつなげられる。実際、食品メーカーと飲料メーカーが共同配送を行い、一定の成果を上げている事例も生まれているそうだ。
こうした他業界の取り組みが直ちにLPガス業界の参考事例につながるわけではないだろう。ただ、同じような悩みを抱える非エネルギー業界がどのような対策を模索して進めているのか、アンテナを貼っておいて損はないはずだ。
いずれにせよ電気や都市ガスとともに、国民生活に欠かせないのがLPガスだ。エネルギー基本計画に最後の砦と位置付けられたエッセンシャルワーカーとしての矜持が試されている時である。


