【特集2LPガス供給最前線】集中監視とAIで安全・安定供給を追求する伊丹産業の取り組み

2026年5月3日

1948年の創業以来80年近くにわたりLPガスを供給している伊丹産業は、83年のガス切れ事故を機に、集中監視システム「ACU24」の開発に着手した。配送員による経験則に基づいた従来の配送では、想定外の消費量による供給停止を防ぎ切れない懸念があったためだ。そこで、同機器の開発により、ガスの残量が基準値に達した場合、自動で通知される仕組みを構築した。


ACU24は、マイコンメーター、通信ユニット、集中監視センターで構成され、LPガスの安全と安定供給を見守るシステムだ。各家庭のマイコンメーター付近に設置された通信用の機器が、通信回線で集中監視センターにつながっている。センターでは24時間365日体制で専門技術者が遠隔から監視。異常流量や地震を感知した際、即座にガスを遮断し通報する保安機能に加え、ガス残量の管理や自動検針も行っている。

安全と安定供給を見守る集中監視センター

通信技術の進化で発展 ほぼ100%の設置を達成

運用を開始した80年代は、固定電話回線を用いたシステムだった。その後、機器の設置数は順調に伸び、通信インフラの進展とともに、2017年ごろからは低電力で長距離通信が可能なLPWAと呼ばれる無線通信が普及。19年には携帯電話回線を用いた新型ACU24の運用が始まり、現在、ほぼ100%の設置率を達成している。


LPWAの活用により、月1回の検針員による訪問に頼っていたガス使用状況が毎日自動で把握できるようになった。これにより、配送員一人当たりの担当件数は飛躍的に向上している。
通常2本あるボンベを、配送効率化のために同時に2本交換するのが理論上は最適だ。だが、そのためにはボンベの8〜9割を使い切る必要があり、ガス切れのリスクが高まる。


「LPガスは使いたい時にいつでも使えて当たり前。ガス切れは絶対に許されない」と、髙木裕則・執行役員保安部長は強い使命感を抱く。同社にはガス切れ事故を機にACU24を開発した経緯とともに阪神・淡路大震災でLPガスを早期復旧させた実績や、顧客の信頼を1件ずつ積み重ねて供給エリアを拡大してきた歴史がある。髙木部長の言葉にはLPガス事業に対する基本理念が凝縮されている。


同社はAI技術を活用した配送の効率化にも取り組んでいる。AI配送を試したガス事業部の塚本欽也次長は「天候や道路事情などその日の動的な情報までを含めると、適切に判断できる人間のほうが優れている」と話す。AIの進歩を確認するため、今年4月からは再度実証を行い、さらなる効率化を模索する。


物価高や人材確保など、厳しい事業環境にあるが、配送効率化、保安高度化を追求し、同社は安全と安定供給という揺るぎない責務を果たし続けていく。