【LPガス大変革時代に挑む】経済性にとらわれず 長期的な視点に立って 安定供給基盤を築く
佐藤利宣 社長/アストモスエネルギー

世界各地のサプライヤーと強固な関係を持つアストモス。
設立20年の節目を迎えた同社の佐藤社長に話を聞いた。
―設立20年目を迎えた節目の今年、社長に就任しました。
佐藤 三菱商事時代、石油部門の経歴が長く、ほぼ全ての石油製品に関わりました。ただ、LPガスだけは未経験でしたので、アストモスでLPガスに関わることは何かの縁を感じます。
―どのような点がアストモスの強みだと考えていますか。
社長 世界各地のサプライヤーとの強固な関係を構築している点と、保有している26隻の外航船を使った調達能力です。これによる安定供給が、従来からの強みだと考えています。これは上流を手掛ける元売り企業としての特徴ですが、近年では下流部門にも注力しています。グループである小売りの会社「アストモスリテイリング」はその一つですが、こうした上流から下流までの垂直統合型のバリューチェーンを保持しているのが、強みだと考えています。輸入元売りという枠にとらわれないLPガスの一貫総合企業と言えると思います。
こうした強みを生かして、地域の特約店や販売店の方々とも一丸となり最終顧客である消費者向けに満足度の高いサービスを提供したいと考えています。
戦争危機で中東代替 地政学リスクに対応
―中東情勢による影響をどのように受け止めていますか。
佐藤 ここ10年近くにわたってLPガス調達の中東依存度を下げてきました。現在、日本全体で中東産のLPガスが占める割合は4%ほどで、多くがアメリカから、それ以外に豪州やカナダから調達しています。その観点から「LPガスの供給や価格はあまり変わらない」といった印象を持つ人は多いかもしれません。ですが、LPガスも石油連動商品であることは間違いなく、50ドルだったWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)が100ドルになれば、当然それに類する値動きが生まれます。
インドや中国などの消費大国が中東代替のLPガスを求めて、北米に向かい始めており、3月中旬時点では、アメリカに引き合いが殺到しています。これが最終的にどういった形で日本への輸入価格に影響するのか。少なくとも紛争前の価格帯が続いていくことは考えにくい。
―アメリカ調達のリスクは。
社長 トランプ政権の相互関税政策に見られるように政治的リスクには注意する必要があります。不確実性が高まる時代において、経済性の観点にだけ捉われることなく、あらゆる地政学リスクも含めて対応する必要があります。よって、紛争解決後も中東からの調達をゼロにすることは今のところ考えていません。バランス感を持って、長期的な視点に立った安定供給の基盤を構築したいと考えています。

日本のエネルギー守る あるべき姿を率先垂範
―三菱商事時代で印象深かった仕事は何ですか。
社長 辛い思い出が多いです(笑)。印象に残っているのは東日本大震災での対応です。今回の中東戦争と重なることがあり、エネルギーチェーンが分断されました。当時、重油販売を担当していて「工場が止まってしまう。燃料の重油を手配してくれ」といった声に答えるべく奔走しました。また、三菱商事は福島県の小名浜に石油基地を構えており、原発による避難命令が出される中、緊急車両向けの出荷のために最後まで職員達が残って対応してくれたことを今でも思い出します。
エネルギーの仕事は、平時では電気やガスを使えることが当たり前で、めったに感謝されることはありません。有事の時ほど、エネルギーの重要性やエネルギー企業としての真価が問われます。その意味で東日本大震災とは異なりますが、今回の中東紛争はホルムズ海峡の事実上の閉鎖という過去にない危機的な状況です。日本のエネルギーを守る、国民生活を守る。これまでもそうして行動してきましたし、今後もそういう姿勢で取り組みたいと考えています。それがエネルギーパーソンとしての誇りであり信念であります。
―液化石油ガス法の対応は。
社長 消費者の方々から、料金体系の不透明性や過剰な営業に対する指摘については理解しています。当社も自らリテール事業を手掛けており無関係ではありません。法令順守、コンプライアンスの徹底は企業活動の大前提で、自らが率先垂範してあるべき姿を業界に浸透させたいと考えています。
アストモスエネルギー
三菱商事LPガス部門、出光ガスアンドライフ、三菱液化瓦斯が統合して2006年に発足した。社名の由来は「明日を灯す」。リテール事業も手掛け、昨今はカーボンオフセットLPガスの販売に注力する。


