【目安箱】沖縄で原子力発電はできるのか⁉ 専門家が可能性を検討
沖縄で原子力発電は可能だーー。こんな構想を考える研究メモを有識者らが執筆した。採算性と安全性を高めた小型原子炉(SMR)やマイクロ炉(MMR)を活用すると、十分採算が取れて、電力料金も大幅に下がるという。最新技術で電力ビジネス、そして沖縄の未来に可能性が広がっている。

出力30万kW級の発電設備で効率化
この構想は電力関係者やエネルギー研究者でつくる「SEJ・日本のエネルギーを考える会」の論考「沖縄地域における小型モジュール炉およびマイクロ炉導入に関する可能性の検討」(今年6月14日)で、原子力研究者の植田脩三氏が示した。小型炉は発電能力30万kW、マイクロ炉は数万kWクラスの原子力発電の炉をいう。
試算では、沖縄本島に30万kWの小型モジュール炉、宮古島と石垣島に2万kWのマイクロ炉を設置し、電力が最も多く使われる夏場を4つの時間帯にわけて、各時間帯の需要を満たせるかなどの分析をした。
想定した原子力発電設備であれば、これら三つの島では太陽光、風力をカットすることなく、またコストの高い火力発電の使用をかなり抑える形で電力需要がまかなえる、効率的な発電ができるとの試算が得られた。それによって運転費用(ランニングコスト)が安くなる。
電力は需要・供給の規模が大きければ価格は下がる。離島はそれが限定されるために、発電コストが高くなる傾向にある。沖縄もそうだ。その単価は1kW時当たり40〜60円だ。
米国のアイダホ国立研究所の試算によれば、マイクロ炉による原子力発電の場合は建設費を考慮に入れても同21円と約半額になる。設備建設費用は7000kWあたり110万円という。小型モジュール炉(SMR)については国際機関などの試算では、発電コストは同10~20円、初期投資単価は1kW当たり45~90万円とされている。原子力を使えば、沖縄の電力価格を大幅に下げられるのだ。
電力の供給では、大量に発電できる原子力を「ベース電源」として、気象状況に左右される再エネを「変動電源」としてそれに上乗せするのが、効率的でランニングコストが安くなる。再エネと原子力発電は対立するものではなく、それを合わせて使用することで電力システムは効率的になる。
沖縄県の電力供給での再エネ比率は10〜15%(日本全体では20%前後)にとどまり、脱炭素化が遅れている。CO2を排出しない原子力発電と再エネの組み合わせは、その削減にも貢献する。
かつてあった原子力発電の計画 新技術で状況は変わる
沖縄では、米国の施政下にあった1960年ごろに2基の原子炉を導入する計画があった。中止の理由は、当時の原子力発電技術の未成熟と、採算性と思われる。
今はその予定地に、沖縄電力金武火力発電所がある。その後、地域の事実上の独占企業である沖縄電力による原子力発電所の建設計画は具体化していない。
理屈の上で原子力発電所の建設は可能であっても、原子力は政治的な争いに巻き込まれやすいため、その実現は難しいだろう。また現在は中国との緊張が高まっており、東アジアの米軍の拠点になり、台湾有事に巻き込まれる可能性のある沖縄で、安全保障上の観点から沖縄での原子力発電所の建設を疑問視する声も出ると思われる。
ただし、それでもこの構想を考える意味はあるだろう。
思い込みを取り払って沖縄の未来を考える
現在、SMRはまだ実証研究段階で、量産は始まっていない。軽水炉型の原子炉の大型化が進み、最新型は発電能力で140万kWを超える。ただし邦貨で1兆円近い巨額の建設費用がかかるため、世界の先進国では原子力発電所の建設が停滞している。SMRを使うことで、採算性のある効率的なシステムを作れる。
日本政府は米国との共同開発でSMRの開発と商用化を進めようとしている。高市早苗首相は政治家としてSMRを積極的に支援してきた。SMRには世界各国で期待が広がり、政府と消費者、経済界の支援という追い風も吹いている。
「建設が大変」とか「危険」との原子力をめぐる思い込みを取り除いて、「沖縄で世界に先駆けて小型炉やマイクロ炉で原子力発電を行う」ことの可能性を考えてもいいだろう。新しい技術は社会や経済を変えていく。これから社会実装化の始まるSMRも、電力ビジネスや経済、社会の姿を変えそうだ。沖縄に限らずSMRの活用を国づくり、地域づくりのために考えることは、未来の可能性を広げる。


