【中国電力 中川社長】電源の低炭素化と市場対応力の強化で 経営の安定化に努める
井関 今回のアクションプランの実現に向け、組織改編を実施する目的は。
中川 30年度までに取り組む主な課題としては、発電卸事業および小売事業における着実な利益の確保に加え、事業推進を支える適切なコンプライアンス・リスク管理の徹底、将来の利益成長に向けた新規事業開発への準備、さらにはこれらの課題に対応するための労働生産性の向上などが挙げられます。こうした諸課題に対応していくことを目的として、このたび社内組織の改編を行いました。
井関 今回の組織改編では、「パワー・トレーディング本部」の新設などが目を引きます。狙いをお聞かせください。
中川 電力システム改革の進展に伴って、総合エネルギー事業は、電源部門と小売部門が市場を介して内外無差別な状態で運営していく必要があり、発電卸事業と小売事業それぞれで利益の最大化を図っていくことが不可欠です。
発電卸事業においては、電力の需給状況やそれに伴う市場価格の変動を踏まえ、最適な電源運用、燃料調達を通じて収益機会を的確に捉えていくことが求められます。このため、火力発電所の発電計画や出力調整、LNGをはじめとする燃料の調達といった業務を、トレーディング業務と一体的に運用する体制を構築するべく、これらの機能を集約した「パワー・トレーディング本部」を設置することとしました。
私が社長に就任して以来、電力システム改革に伴う市場環境の変化に対応するため、部門の壁を越えたクロスファンクショナルなプロジェクトチームを多数立ち上げ、事業戦略とともに組織のあり方についても集中的に検討してきました。その検討成果を踏まえ、今回、経営ビジョンの実現に資する恒常的な組織として構築したものです。
井関 島根3号機や柳井新2号機は、国の長期脱炭素電源オークションを活用しています。
中川 現在、エネルギー業界は将来の燃料価格や制度変更などを見通すことが難しく、投資回収の予見性が極めて確保しづらい状況にあります。その中で、当該制度は、固定費相当の収入が安定的に得られるものであり、事業者として投資の決断を後押しする仕組みと捉え、応札しました。
第7次エネルギー基本計画とあわせて示された40年度におけるエネルギー需給の見通しでは、原子力比率は2割程度とされています。島根3号機が稼働すれば、当社の自社電源の発電電力量に占める原子力比率は、これを超える見通しです。島根3号機の運転開始に向けては、現在審査中の国の適合性審査に合格することや、地域のご理解をいただく必要がありますので、具体的な運転開始時期を申し上げられる段階にはありませんが、当社の発電事業におけるCO2削減目標(30年度CO2排出量を13年度比半減)も踏まえて、30年度までの運転開始を目指し、取り組んでいるところです。

井関 再エネや蓄電池など分散型電源への取り組み状況は。
中川 再エネについては、引き続き最大限の導入を進めるとともに、電力の安定供給の観点からは揚水発電や系統用蓄電池、火力発電などを活用した調整力の確保が課題の一つと認識しており、「再エネ導入拡大」と「調整力確保」を両輪で進めます。至近では、下松発電所跡地に当社初の系統用蓄電システムとして下松蓄電所(出力1・6万kW、蓄電容量4・8万kW時)の導入を進めており、28年度中に運用開始予定です。また、旭化成と蓄電池運用最適化システムの共同開発を進めています。将来的には、同技術を活用したアグリゲーションビジネスを展開し、新たな収益機会の創出につなげます。
DC需要取り込む 低炭素電源が武器に
井関 今後、AIの普及に伴うデータセンター(DC)建設などにより電力需要の増加が予想されています。中国エリアへの誘致や進出の動きはありますか。
中川 非常に注目している分野です。現時点では、DCは大都市圏に集中していますが、将来的には地方分散が進むでしょう。特に、革新的な光通信技術が社会に張り巡らされれば、遅延性の問題は劇的に改善され、地方のハンディキャップは解消されます。当社としては、最先端技術の進展に伴う地方分散型の需要を取り込みつつ、電力の安定供給という使命を果たしていきたいと考えています。島根3号機のような低炭素電源があることは、DC事業者にとっても大きな魅力になるはずです。自治体とも連携し、土地やインフラの課題をクリアしながら誘致をサポートしていきます。また、日本が誇る「省エネ技術」をDCに掛け合わせることが重要です。オイルショックの時に日本が省エネ技術で世界をリードしたように、光通信技術によるDCの省電力化と、当社の安定したエネルギー供給が組み合わされることで、新たな日本の競争力になると期待しています。
井関 島根2号機におけるプルサーマル計画について、立地自治体や周辺自治体への説明状況はいかがでしょうか。
中川 プルサーマル計画に関しては、今年7月から地域の皆さまへの説明会を順次開催することとしており、引き続き、広くご理解を深めていただけるよう、工程ありきで進めるのではなく、一つひとつのご説明を丁寧に尽くしていきます。
井関 山口県上関町で進めている使用済燃料中間貯蔵施設建設計画の進ちょくはいかがですか。
中川 昨年8月に中間貯蔵施設の設置に係る立地可能性調査結果の報告書を上関町長に提出しました。本調査により得られた客観的なデータに基づき、分析・確認を行った結果、立地の支障となる技術的に対応できない問題はないとの評価をしています。現在は、調査によって得られたデータを踏まえ、具体的な事業計画の検討を進めているところです。今後も地域の皆さまのご要望などを踏まえながら、施設の必要性や安全性について分かりやすく説明していきます。


