【コラム】2026年度前半の政策・制度設計の振り返り

2026年9月2日

電力需給の安定化は当面の課題として重要性の高い論点

依然として課題となっている供給力確保においては、既存制度(容量市場、長期脱炭素電源オークション、予備電源)の入札が続けられ、容量市場では既に契約が発効されている。並行して、次回入札に向けた制度見直しを進め、足元の状況などを踏まえた要件の見直しが行われている。特に、容量市場については、最新の発電コスト検証ワーキンググループのデータを使い、NetCONE(指標価格)の諸元が見直された結果、次回のメインオークションでは、kWあたり2万円を超える価格となり、応札次第ではあるが、容量確保契約金額の増額、ひいては容量拠出金負担の増加が見込まれている。

また、火力発電の休廃止状況の要因分析や中長期の厳気象H1需要時の供給予備率見通しの試算を踏まえ、2030年度までと31年度以降での供給力確保の在り方が整理された。特に30年度までは既存制度を最大限に活かすことが提案されており、新たに、既存電源最大限活用策と短期供給力確保策の二つの施策の具体的な制度設計に入っている。まずは、既存の容量市場を補完するオークションを行い、高経年電源を念頭に確保する制度設計が進められている。

こうした制度的措置に加え、建設リードタイムが長く、投資額も大きい大規模電源・送電線(地域間連系線や地内基幹系統)の整備等について、民間金融機関のリスクを一部補完するため、電力広域的運営推進機関が民間との協調融資に応じる貸付制度が、改正電気事業法として成立し、26年内の施行に向けた詳細設計が行われ、9月1日より融資希望事業者の事前相談受付を始めたところである。

一方、需要側については、引き続き、省エネやDRといった対応を促進することが重要とされ、分散型エネルギーリソースの推進に向けた整理ではリテラシー醸成や実態把握、補助支援の継続といった方策が提示されている。

夏季の電力需給は、厳気象H1需要時の最小予備率で3%以上を確保できる見通しだが、引き続き、予断を許さない状況にあることから、例年通り、供給・需要双方の対策を講じている。現時点でひっ迫している状況にはないが、エリア・時間帯によっては広域予備率が低下し、一般送配電事業者による揚水発電運用や広域融通が行われる日も出ている。

電力分野の脱炭素の取り組みは、電源を中心に進展

原子力発電は、21年度に策定した行動指針について、足元の状況を踏まえ見直しの検討を行い、改定案として取りまとめ、関係閣僚会議で決定された。全体的に基本的な柱構造は変えずに内容を変更している。今回初めて、次世代革新炉の建替えの目安(2040年度に220~250万kW)が明示された。電力需要増加の見通しがある中、40年度の電源構成上、2割程度を賄うには、既存炉だけで補完することは難しく、建替えの必要性が出てきたもので、いわゆる「崖グラフ」にある設備容量の減少を防ぐことが求められる。一方で、建替えについては、各種調査、規制対応、地域調整、事業性評価等が必要なことから、果たして40年度までに実行できるかは未知数である。対象炉は、実用化が見えている革新軽水炉と小型軽水炉の2つになるとみられる。

脱炭素電源の双璧のもう一方である再生可能エネルギーについては、事業規律強化のため、法令違反対応や環境アセスの規模要件引上げ、使用済み太陽光パネルのリサイクル法の成立、望ましい営農型太陽光発電の整理を踏まえた農山漁村再エネ法基本方針改定等が進められる一方で、主力電源化に向けたフォローアップ(2030年度エネルギーミックス目標の進捗確認)や事業用太陽光発電のFIT・FIP制度における支援重点化、次世代技術(太陽電池、地熱発電)のグリーンイノベーション基金を使ったプロジェクトの拡充・公募の実施等、メリハリをつけた政策が進められている。

次世代電力ネットワーク構築は、試行錯誤の日々

系統増強については、広域系統整備計画に則った5プロジェクト(北本、東北東京、東京中部、中部関西、中国九州)の進捗について定期的にフォローアップを実施している。東京中部は当初予定から遅延し2031年3月運開となる見通しだが、それ以外は計画通り、進捗していることが確認されている。

今後の目玉となる北海道本州間(日本海ルート、海底直流送電)については、年末に提出期限となっている実施案の検討と並行して、既に整理された技術面の予備評価を先行して実施している。課題となっているプロジェクトファイナンスの適用を含む事業性評価がどこまで詰め切れるか、兆円単位のプロジェクトであることから、その行方は注視されるところである。

系統制約対応では、優先給電ルールに基づく変動再エネの出力制御が初めて東京エリアで実施された。2035年度を目安とした長期見通しも出てきたが、これからは全国どのエリアでも再エネ出力制御は起こることが、ある意味、前提となっており、その頻度・量の増加が見込まれている。これまで最も多かった九州エリアから、今後は、北海道、東北、北陸、中国が制御率という点では高くなる見通しとなっている。出力制御量の低減策では九州エリアでの転送遮断システムの設置やオンライン特高区分の運用等、新たな取り組みが始まっているが、蓄電池の活用や上げDRといった比較的、短期に実施可能な需要側施策の促進も、より一層求められると考えられ、小売電気事業者やアグリゲーターでの取り組みが期待される。

系統接続については、データセンターなどの局地的大規模需および系統用蓄電池の規律強化策の検討が進められ、各施策は順次、実行に移されている。ある意味、過熱的になりつつある系統用蓄電池については、長期脱炭素電源オークションや導入支援補助金の要件の厳格化も行われており、既に3万5000kWという相応量の契約申込をいかに迅速かつ見極めをした上で接続・運用開始を進めることが、新規接続検討・契約申込を受け入れる条件になるかもしれない。

調整力確保においては、需給調整市場が3月14日より全商品前日取引・30分単位取引に移行したことに伴い、入札状況の初動確認が毎月、資源エネルギーおよび電力・ガス取引監視等委員会の関連審議会で行われている。結果的に、競争環境の改善がみられたとは言い難く、今後も抜本的改善がすぐに見込まれる可能性が十分にないと判断され、9月1日から一次調整力・二次調整力①・複合商品の上限価格の引き下げが行われる。また、電力広域的運営推進機関では、専門的知見から、引き続き関連委員会で各論点について議論が進められている。また、調整力不足に課題のある5エリア(東北、東京、中部、関西、中国)では、揚水発電の随意契約が締結され、その調達が始まっており、電力・ガス取引監視等委員会では引き続き、監視を行っている。 

供給力や調整力としての活用が期待される分散型エネルギーリソースについては、需要側・供給側双方の現状と課題を洗い出し、施策の方向性と足元における具体的な対応策が整理された。今後、実態把握調査や補助金の要件見直しなどが行われる予定となっている。

また、託送料金については、28年度から始まる第2規制期間に向けた制度設計(一律料金の見直し、事業報酬諸元の見直しなど)に着手しており、年内を目途に制度設計を進め、省令改正等を行い、来年度第1四半期には「収入の見通し」の申請が行われる予定となっている。

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